リニア新幹線と文房具、あるいはカローラ

三橋貴明

リニア新幹線と文房具、あるいはカローラ

・・・

今回のJR東海のリニア発注に際したカルテル疑惑において、対象となった工事は「南アルプストンネル」及び大深度地下の「品川駅」「名古屋駅」の三つが中心になります。この三つは、
「超絶に難関な工事」
 であるという現実を知らなければなりません。


 記事の後半で、ある大手ゼネコン幹部が、
「トンネルはかなり勉強が必要。うちでさえリニア計画発表から7、8年かけて勉強している。トラックの通り道や作業スペースの土地取得など事前打ち合わせに相当時間がかかる。中堅ゼネコンにどこまでできるのか。現実には難しいものがある」
 と、語っていますが、「価値観」的な話を排除すると、それはそうでしょう、としか書きようがないわけです。

 

 南アルプスの下をくり抜くような長距離トンネルは、過去に「人類」が経験したことがありません。その種のトンネルの仕事を請け負うとなれば、当然ながら事前に様々な準備が必要になります。


 例えば、大手ゼネコン企業がリニア中央新幹線のプロジェクトを見据え、莫大な金額を事前に投資し、技術を開発し、学び、発注に備えたとします。この種の事前準備にコストをかけた挙句、
「はい、一般競争入札です」
 という話になってしまうと、投資が無駄になってしまうわけです。


 そうなると、各社は「事前の準備」に費用を支出することが困難になり、誰もまともに応札あるいは工事ができず、「超難関」なリニア新幹線は実現しない
という話になってしまいます。


 もちろん、現在の独占禁止法では、大手ゼネコンやJR東海が「事前に調整」していたとなると、これは「カルテル」に該当し、違法という話になってしまいます。とはいえ、リニアのような超難関工事と、文房具の調達、あるいはカローラの調達について、「同じ基準」の法律を適用しているわけで、違和感を禁じ得ないのです。


 それはまあ、文房具やカローラであれば、品質が「市場」で評価されているわけで、一般競争入札で「最も安い企業」から買えばいいのです。
 とはいえ、リニア新幹線の南アルプストンネルは、
「本当に誰がやっても同じ品質になるのですか?」
 という話なのでございます。


 この手の話は、常識あるいは「良識」の範囲だと思うわけですが、それでも、
「いや、一般競争入札でなければならない。カルテルは違法だ」
 と、官公庁ならともかく、JR東海のビジネスについてまで「制約」しようとするのが、現在の日本政府であり、政治家であり、日本国民なのだと思います。


 我々、日本国民が早期に「良識」を取り戻さない限り、我が国の未来を覆う暗い帳が払われることはないでしょう。

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