日本のジェネリックは高すぎる 高いジェネリックが新薬開発を阻害している

日本のジェネリックは高すぎる 高いジェネリックが新薬開発を阻害している2014.12.01 [多田 智裕]

安いジェネリックを使用すれば、年間3000億円ほどの医療費削減効果が見込まれると言われます。それを聞けば、誰もがそうすべきだと思うことでしょう。

 でも、日本の薬剤費の金額は年間8兆円に及びます。ですから、ジェネリックによって節約されるとされる3000億円はそのうちの数%に過ぎません。

 私は、ジェネリックの推進よりも、ジェネリックの“価格決定方法”を見直すことの方が重要だと考えています。なぜなら現在の日本のジェネリック価格は法外に高く、それが新薬開発を阻害しているのです

ジェネリックは「先発品と同じ」ではありません

 以前のコラム「ジェネリックは『先発品と同じ薬』ではありません」でも述べましたが、ジェネリック(後発医薬品)は「先発医薬品と同一の有効成分を同一量含有している」だけであり、添加物などは異なります。先発医薬品と決して「同じ」ではありません

ですから「質を落とさない薬剤費の抑制」の一番正当な方策は、「特許切れの先発品価格をジェネリックと同じ程度の価格にする」ことのはずです。

 なぜ、それができないのでしょうか?

ジェネリックを高く設定する日本の価格決定方式

 アメリカでは先発品の特許が切れた後に発売されるジェネリックの値段は「先発医薬品の10~20%」が相場です。しかし、日本では、厚生労働省により「先発医薬品の60%」と高く設定されているのです。

また、ジェネリック価格が高く設定されていることにより、日本では先発医薬品の売り上げがジェネリック発売後もそれほど下がりません。  ジェネリックが先発品の15%程度の価格で発売されているアメリカでは、ジェネリック発売後のわずか半年後に先発品は7割のシェアを失うとされています

一方、ジェネリックと先発品の価格差が少ない日本では、ジェネリック発売後1年に先発品が失うシェアは1割程度にすぎないと推定されています。

 5000円の薬が800円になれば、7割以上の人はすぐに変更することでしょう。しかし、3000~4000円にしかならないのであれば、大半の人が変更しないのも当たり前です。

 ジェネリックの価格が高く設定されているために、先発品メーカーは特許切れ後も利益を挙げ続けられます。結果として、製薬メーカーの新薬開発への取り組みが遅くなるという悪影響が生じています。その上、私たちは特許切れの薬を安く購入できない状態におかれているのです

ジェネリックの価格は高いが新薬は低く抑えられている

 話はそれだけでは終わりません。日本では、ジェネリックが高価格で維持されている一方で、新薬の価格は低く抑えられています。

胃腸科の例で言うと、3年前にアストラゼネカ(イギリスの製薬メーカー)から発売された、逆流性食道炎などに対する新薬「ネキシウム」(胃酸分泌抑 制薬)は、なんと同社の既存薬の「オメプラール」よりもよりも薬価が安いのです(オメプラール97.0円に対して、ネキシウム96.7円での新規薬価収 載)

 海外で高い売り上げを誇る「良い薬が安く入った」と喜ぶのは早計すぎます。「新薬が既存薬と同等の値段でしか薬価収載されない」というルールのた め、武田製薬の「タケプロン」の改良薬「TAK-390MR」が開発中止(薬としては完成しているが、発売申請を取り下げた)になるなど、新薬の国内発売 が断念される例が相次いでいるからです。

このように、新薬を安く認可すること、は巡り巡って、新薬の国内での発売断念というというデメリットを私たちにもたらすのです

ジェネリックの価格を適正に引き下げ、新薬に開発費用を盛り込んだ価格を設定する方を先に行うべきではないかと考えます。  ジェネリックの価格低下は利用者にメリットをもたらします。同時に新薬に加算を設定して、特許切れの薬から新薬への新陳代謝を促すことこそが、真の成長戦略

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