小野美材

わが恋はみ山がくれの草なれや

繁さまされど知る人のなき


私の恋は、山の奥深い所に生えている草なのでしょうか。私の思いがどんなに激しかろうと、知ってくれる人はいないのです。

古今集


これは恋のうたですけれど、私はこのうたを詠んでみて恋する人への気持ちが伝わらない苦しみだけじゃないなにかを感じたのです。

自分が伝えようとすることにブレーキをかけているのです。表現することを押し殺している。

誰もがもっている表面だけではわからない苦悩が隠れているのです。

当の本人しかこの苦悩はわからないのです。

楽しそうに見える人生。その裏に隠された苦悩を見せられないもどかしさや絶叫です。

そのような背景を想像できて一人前です。それができないのはまだ何かに捕われて抜け出せないこころの垢が詰まっている証拠です。

誰もみな楽に見える。羨ましいところもあれば真似したくない嫌なものももっているものです。人を愛するとき恋人、親友でも家族でも悪いものもいいものもすべて受け入れて覚悟して愛することになる。

もし人が羨ましいと思ったらその人の悪い点が見えていないだけなのかもしれません。悪い点がみつかってその部分も羨ましいと思えるならばその人は完璧に幸せな人なんでしょう。