KAKEN — 研究課題をさがす | ダム建設と運用による河川の水温異常とその生物影響 (KAKENHI-PROJECT-15510033) (nii.ac.jp)
ダム湖がその下流河川に及ぼす生物影響について、天竜川(静岡県)、飛騨川(岐阜県)、球磨川(熊本県)等の河川を対象として調査した。 ダム下流河川の一次生産者の種類組成については、淡水紅藻類の分布にダム放流水による低水温が影響する例を見出した。河川の付着藻類の現存量は、ダムを欠く河川では、冬季に増加することが多いが、ダム下流では、夏季にそのピークが観察された。一方、一次性生産速度は、ダムのない対照河川のそれと異なる顕著な変化を検出することができなかった。 ダム下流の河川の水棲昆虫の生息密度は、ユスリカ科の幼虫を除き、対象としたダムを欠く河川よりも、年間を通じて低い値であった。ダムからのプランクトンの形の有機態懸濁物濃度と負荷量は、流下に伴い速やかに減少した。ダム直下流での、造網型のトビケラの優占とその消化管内容物の観察から、沈降とともに水棲昆虫の消費がその減少に寄与しているものと思われる。 付着藻類食のアユの消化管中の藻類の種類組成は、ダムが運用されている河川とそのような施設を欠く河川では大きく異なっていた。即ち前者では藍藻類、特に糸状のHomoeothrix janthinaが、後者では珪藻類が充満している個体が多かった。アユの肥満度は、両河川で有意な差が認められた。
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