38、農業と農山村
効率優先の農政の転換で、家族農業を中心に持続可能な農業と農山村を再生し、食料自給率の抜本的向上を図ります
2024年10月
わが国の食料の自給率は先進諸国最低の38%に落ち込んだままです。肥料・飼料・種子などの大半も海外依存で実質10%以下という指摘もでるほどです。近年の世界的な食料危機が警告するように、「食料は金さえ出せば輸入できる」時代ではなくなっています。食料の海外依存の危うさはあきらかです。
一方、国内の農業と農村は崩壊が急速に広がっています。農業の担い手(基幹的農業従事者)はこの20年で半減し、70歳以上が57%に達しています。近い将来の農業者の激減は必至です。このままでは、国内の食料生産も危うくなり、耕作放棄地が広がり、国土や環境の荒廃が一気に広がりかねません。
この事態に歯止めをかけ、農業と農村の再生、食料自給率の向上に本格的に踏み出すことは、国民の生存、社会の存続にかかわるまったなしの課題です。世界の食料危機の解決、持続可能な社会に向けた日本の責任でもあります。
農業つぶしを続けた歴代自民党政府の責任
今日の危機を生み出した最大の責任は歴代自民党政権の農政です。食料は安い外国から買えばいいとしてアメリカや財界いいなりに農産物輸入自由化を受け入れ、価格保障や所得補償などの農業保護を投げ捨ててきた結果です。大企業本位の経済成長のために農村から大量の土地と労働力を奪ってきたことも農村の疲弊を広げた根本にあります。
拍車をかけたのが安倍政権以降の農政です。TPPなど巨大な農産物の輸入自由化を次々に強行したうえ、効率一辺倒で農業の大規模化や企業参入を優先し、大多数の家族経営を切り捨ててきました。菅・岸田政権も、米価の大暴落を放置し、酪農危機にも有効な対策をとらず、農業・農村の危機に拍車をかけてきました。
今年の国会で改定された食料・農業・農村基本法は、輸入自由化・市場まかせに反省がないどころか、食料の安全保障の強化をいいながら自給率向上の目標を投げ捨て、海外依存の姿勢を強めています。そのうえ、「イザ」となったら農家にイモ作付け等を強制する「食料有事法制」まで創設。自民党政府が進める「戦争する国づくり」の一環であり、亡国農政そのものです。
こんな自民党農政が続けば、農村が崩壊し、食料の生産基盤のまったく失われた国になってしまいます。農業つぶしの無責任な政治を終わらせ、農業と農山村の再生、食料自給率の向上に踏み出すことはまったなしの課題です。
家族農業の支援、持続可能な社会は世界の流れ
それは、人類社会が直面する課題への責任でもあります。
21世紀に入り、効率一辺倒で農業の大規模化や工業化、貿易自由化などを推進する新自由主義の農政は、各国で小規模・家族農家を大量に離農させ、農村の疲弊を深刻にしました。環境や食の安全、生物多様性も脅かしました。その深刻な反省から、国際社会はいま、農政の大転換に踏み出しています。
国連が、地球温暖化の防止など17項目の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げ、その達成には小規模・家族農業の役割が欠かせないとして「家族農業の10年」をスタートさせ「農民の権利宣言」を採択しているのは、その表れです。
世界的な気候危機や新型コロナ感染拡大も、農林漁業のあり方や食料システムの転換の必要性を突きつけました。各国は、農業・食料の分野で環境負荷軽減の目標を掲げ、その達成をめざした農政改革に乗り出しています。
食料輸入大国・日本が、家族農業を中心に農業を再建し、食料の自給率を向上させることは、世界の食料問題の解決でも、地球環境の保全という点からも、国際社会への大きな貢献であり、責任でもあります。
農業を基幹的生産部門に位置づけ、農業と農山村を再生する
わが国には、温暖多雨な自然条件とすぐれた農業技術があり、安全でおいしい食べ物を求める消費者のニーズもあって、農業を豊かに発展させる条件は十分にあります。都市の若者が農山村に移住、就農する「田園回帰」の流れが広がっていることも農山村再生への希望です。
必要なのは、国際的にも異常な「市場まかせ」の農政を根本から転換し、その条件を全面的に生かす政治です。農業者や地域住民、多くの国民が共同し、豊かな自然や社会的な蓄積を生かしきる農政の実現です。
長期にわたる悪政で農業の縮小・衰退に拍車がかかっているだけに、その打開には、国政の位置づけを抜本的に転換し、国の関連予算を大幅に増やし、思い切った農業保護政策の実施が不可欠です。
日本共産党は、農業を国の基幹産業に位置づけ、食料自給率の向上を国政の柱に据え、農業と農山村の再生のために力つくします。農業・食料政策の大きな目標を次の点に置き、実現に力をつくします。
●食料の外国依存をきっぱり転換し、早期に食料自給率50%台を回復し、引き続き60%台をめざす
●競争力・効率一辺倒ではなく、国土の多面的な利用、環境・生物多様性・食の安全に配慮する人と環境にやさしい持続可能な農業をめざす
●大規模も中小規模も含めて多様な家族経営が営農を続け、暮らし続けられる農山村、新規参入者や移住者が元気に暮らせる農山村をめざす
●米・麦・野菜・果樹などと畜産が結びつく耕畜連携、地域循環型の農業を重視し、水田の多面的利用をめざす
●農林業の生産とともに加工・販売、自然エネルギーなど地域の資源を生かした循環型の経済で農山村での雇用や所得の機会を増やす
価格保障・所得補償を再建・充実し、
若者が安心して農業に励める土台を整える
大多数の農業者が営農を続け、暮らしが成り立つ土台を整える――いまわが国の農政に何より求められることです。若者が安心して農村に住み、就農できる最低の条件であり、食料自給率の向上を達成するうえでも不可欠です。最大の柱は、生産費をまかなえる価格を保障することを軸に、各種の所得補償を組み合わせることです。
農業生産は、気候・地形・土壌などの自然的条件に大きく左右され、多数の中小経営によって担われ、農産物価格も生産者自ら決めることができないため、市場まかせでは維持できません。生産費をまかなう農産物の価格保障は、農業者に再生産を保障し、意欲と誇りを取り戻すうえで決定的です。
農業大国の米国は、主な農産物に、販売価格が生産費を下回った場合、その差額を補填する仕組みを二重三重に整え、農業経営を下支えしています。EU諸国では農産物の価格支持制度を維持したうえ、環境の保全や条件不利地の維持などに配慮して手厚い所得補償を実施し、農業と農村を守っています。
肥料・飼料・燃料などの価格が急騰する一方、農産物価格はそれに見合わず、離農に追い込まれる農家が続出しています。この事態を打開するのは政治の責任です。
日本共産党は、品目ごとの価格・経営安定制度を、生産費にみあう水準に抜本的に改善・再建します。国土や環境の保全など農業・農村の多面的機能を評価して各種の直接支払い(所得補償)を充実します。
米価下落の不安をなくし、米生産の安定をはかる(別項)
➡各分野の政策「37、コメ問題」もごらんください。
麦や大豆、飼料作物などの増産への支援を抜本的に強める
2023年の小麦の自給率は17%、大豆は7%、飼料作物は27%です。世界の食料危機のもとで国内増産への支援を抜本的に強めることが急務です。
麦・大豆などの畑作経営安定対策は、過去3年の全国平均の生産費を基準とするもので、肥料代等の高騰が続く下では生産費の下支えにはなりません。
――経営安定対策の交付単価の算定にあたっては直近の高騰した生産コストを反映し、条件不利地での増産も可能になるよう対策を強化します。
大量かつ均一の輸入麦を使いなれた製粉会社等が、国内麦は品質にばらつきがあり、供給も不安定として引き取らないため、自給率が低い国産小麦が産地で売れ残るという事態がしばしば生まれています。
――国家貿易品目である麦の輸入は、内麦優先の原則を貫き、国産の増産に見合って削減します。
――麦・大豆などの一定量を政府の責任で備蓄するとともに、地場の中小製粉工場の立地を支援し、製粉メーカーが国内産を優先的に使用するか、国産麦を外麦と一体で使用するよう誘導・支援します。
――麦・大豆・ソバ・ナタネなどの増産を生産技術・流通・需要の面から支援を強めます。国産麦を活用したパンや加工品の学校給食での普及に務めます。米粉の生産コストの低減や製造施設、需要開拓を支援します。
水田活用交付金の見直し・大幅カットをやめ、維持・拡充する
自公政権が打ち出した水田活用交付金のカットは、減反政策に協力してきた農家への重大な裏切りです。転作の大半を担ってきた大規模経営や集落営農を破綻させます。水田における麦・大豆・飼料作物などの生産を崩壊させ、自給率をいっそう低下させる暴挙です。
――水田活用交付金の見直しを中止し、交付金は、米と他作物との収益性の格差を是正することを基本に維持・拡充します。
――水田での畑作物等の作付けが長期化し、実質的に畑地化している場合でも、麦・大豆・飼料作物の生産が維持できるよう手厚い支援を行います。
糖価安定制度への国の支援を強め、てん菜の生産を維持する
自民党政府は糖価安定制度の赤字を理由にてん菜の生産削減を押しつけようとしています。てん菜は北海道の輪作体系に欠かせず、製糖業や運送業などで地域経済を支える重要な作物です。
――国の責任で輸入調整金の収支の改善を図り、てん菜の生産を維持し、製糖事業者の経営も守ります。
――少量でも強い甘みをもつ人工甘味料(スクラロース等)の使用を見直します。
野菜価格安定制度を改善・充実する
――現行の野菜価格安定制度の対象品目や産地を拡大し、保証基準価格を生産費にみあう水準に引き上げます。事務を簡素化するなどの改善・充実をはかります。
畜産・酪農経営の危機を打開する
酪農経営安定ための制度を創設する
一昨年来、飼料価格が急騰する一方、生乳価格が低迷し、酪農経営は未曽有の危機に陥りました。22年は酪農家一戸平均で49万円の赤字、大規模経営を含めて倒産・廃業が相次ぎました。とりわけ畜産クラスター事業で規模拡大した酪農家が、コロナ禍で需要が落ち込み、生産制限や在庫処理の負担を強いられて深刻な苦境に追い込まれました。これに政府が有効な対策をとらず、酪農家に乳牛淘汰、生乳減産を押しつけたことも危機を深刻にしました。
一昨年、酪農家の団体とメーカーとの交渉で乳価がひきあげられたとはいえ飼料価格の高止まりのもとで酪農経営の苦境は続いています。このままでは「日本から酪農の灯が消える」ことになりかねません。
――飲用向け生乳の生産費を販売価格が下回った場合、差額を補てんする制度を創設します。加工原料乳の補給金単価ついても再生産が可能になる水準に引き上げます。
――乳製品のカレントアクセス輸入を減らし、国産の備蓄を増やすなど政府の責任で生乳需給の安定をはかります。
――「売る自由」の名目で導入された生乳流通の自由化は、生乳需給を混乱させ、指定生乳生産者団体(酪農協同組合連合会)に参加する酪農家に、コロナ禍でだぶついた脱脂粉乳の在庫処理の負担を一方的を強いています。これを見直し、政府が生乳需給の安定に責任をもつとともに、メーカーや指定団体以外の酪農家全体が参加して需給調整を行える仕組みを作ります。
――需要が伸びているチーズを外国産から国内産に切り替えるため、チーズ向け乳価を輸入価格並みに引き下げたうえ、生産費との差額を政府が補てんする制度を創設します。
牛・豚マルキン制度を改善する
粗収入が標準的経費を下回った場合、その差額を補てんする肉用牛肥育経営安定交付金(牛マルキン)・肉豚経営安定交付金(豚マルキン)は、積立金の4分の1を生産者が負担するうえ、基準となる経費が過去数年間の平均をとるため、エサ代急騰のもとでは経営は維持できません。
――牛・豚マルキンを国の全額負担による直近の生産費を補填する制度に改善します。
肥料・飼料・燃油などの価格高騰対策を実施する
肥料や飼料、燃料などの価格が高止まりしています。生産資材の大半を海外に依存するわが国農業のもろさの表れです。資材価格の高騰には政府の円安誘導策にも重大な責任があります。
――中長期的には農業資材の国内産への転換をめざしつつ、当面、既存の制度ではとうてい対応できない現実を踏まえ、特別対策を実施します。
――堆肥や稲わらなどの利用拡大を支援し、輸入肥料を削減します。
――燃油価格の高騰にたいしても、石油元売メーカーへの支援にとどまらず農業生産者に対して直接補てんします。
――当面、配合飼料価格安定基金への財政支援を強め、補てん財源の不足が生じないようにします。同時に、現行の制度では飼料価格が高止まりする場合、高騰分の一部しか補てんされず、畜産経営は維持できません。高騰が長期化する場合、高騰前の価格を基準に補てんできるよう抜本的に改善します。
農業の多面的機能に着目した所得補償を拡充する
多面的役割を評価した所得補償の拡充
農業者は、農業生産のなかで農道や水路の整備、草刈りなど環境や景観を守るなど多面的な役割も担っています。いわば国土の無償の管理人です。
――農業者のこうした労働を正当に評価して水田・畑地・樹園地などに応じた所得補償を実施します。
中山間地域等直接支払い制度の抜本的改善
中山間地域等直接支払い制度は過疎地での農業、集落の維持にも大きな役割を果たしてきました。しかし、5年間の耕作継続を要件とするため高齢化が進む中で申請を断念する集落も現れ、荒廃が一気に進む事態も生まれています。
――こうした事態に対処するために、複数集落による広域加算、支援単価に条件不利の補正にとどまらず中山間地域に居住すること自体を支援する性格(居住地手当的なもの)も加え、抜本的に改善します。
――政府が来年度から廃止を検討している、高齢者の見守りなど生活支援への加算措置について、継続したうえで充実します。
消費税を5%に引き下げ、インボイス制度を廃止する
消費税は、農業者にとって、生産費の上昇分を農産物価格に転嫁できず、赤字でも身銭を切って払わなければならない営農破壊税です。コロナ禍で国民の暮らしを守るため世界各国で消費税減税を実施しています。
――当面、消費税を5%に引き下げます。
23年から導入された消費税のインボイス(適格請求書等保存方式)制度によって、約9割が免税業者であった農業者の多くが取引から排除されるか、課税業者への転換を強いられています。
――農業者に大きな負担を強いるインボイス制度の導入を中止します。
災害等で打撃をうけた経営の再建を全面的に支援する
収入保険制度を抜本的に改善する
現行の収入保険制度は、対象を青色申告者に限ったうえ、価格下落が続けば、基準収入も下がり、加入者の安心を保障するものとは言えません。
――対象の限定をやめ、農業者の保険料負担を軽減し、基準となる収入も生産コストと関連させるなどの改善をはかります。
農業共済制度を改善する
―――農業共済事業は品目の実態に即して引き続き役割が維持されるよう加入者の促進、事務費の援助などを行います。
――加入率の低い果樹、施設共済などを利用しやすく改善します。
自然災害による想定外の甚大な被害に備える
異常気象による災害が多発し、農地や農業機械、農業施設が失われるなど甚大な被害が毎年のように発生しています。
――「災害による離農者を一人も出さない」ことを基本に、被災農業者に発生地域や規模に関わりなく復興・再建を支援する制度を日頃から整えます。
種苗の公共性を重視し、農業者の権利をまもる
――主要農作物種子法を復活し、主要な種子の開発・普及に公的機関が責任を持ち、優良で安価な種子の供給を保障します。
――種苗の開発者の権利に配慮しつつも、自家増殖は農民の権利と定めた国連「農民の権利宣言」を踏まえて、伝統的な農業や地域品種など多様な種苗を掘り起し、広げることを援助します。
――温暖化、気候変動に対応した品種の改良、技術の開発などを国・自治体の研究機関のイニシアティブで進めます。
家族農業を中心に多様な担い手の確保・育成に総力をあげる
わが国の農業を長く支えてきた世代の引退が加速し、後継者のいない農家や集落が広がっています。次代の農業をだれが担い、食料生産や農村地域をだれが担うのかは、日本社会が真剣に向き合うべき待ったなしの課題です。
歴代政府は全国の農地の8割を大規模経営に集積する目標を掲げ、農業の大規模化・法人化に力を入れてきました。条件の恵まれた地域では大規模化が進みましたが、最近では、大規模経営も主たる働き手が高齢化し、後継者不在で営農断念に追い込まれる例が増えています。政府が育成に力を入れてきた集落営農も解散が広がっています。政府の大規模化政策の破綻はあきらかです。
大小多様な家族経営の育成・支援を基本にする
わが国の農業経営の98.5%は専業や兼業など違いはあっても大小多様な家族経営です。今後の農業の担い手政策も、この現実から出発する以外にありません。農業生産や地域の環境、景観の保全、伝統・文化の維持など多面的機能を考えても、数多くの中小農家を存続させることこそ重要です。
自民党政府は、改定された食料・農業・農村基本法に兼業農家や小規模農家を位置づけるかのようにいいますが、大規模・専業農家を優遇する基本路線は変えていません。
――農業の担い手政策の基本を、効率化・大規模化一辺倒から大小多様な家族経営が数多く存続できる方向に明確に転換します。
各種補助金も担い手の選別でなく対象を広げる
―――政府の各種補助金や「経営安定対策」は大規模化や法人化を条件にせず、兼業農家、半農半Xなど地域の「続けたい、やりたい人(法人を含む)」すべてを対象にします。
――中小農家や新規参入者への小規模な機械・施設のリースなど自治体や農業団体が行う事業を抜本的に拡充しま