BAD COMPANY LIVE AT TOKYO INTERNATIONAL FORUM!

昔、BAD COMPANYのヴォーカリスト、ポール・ロジャースのソロアルバムを中古で買ったことがあった。
当時、自分はHELLOWEENなどのメロディック・メタル、あるいはMOTLEY CRUEなどの派手なロックンロールを好んで聴いていたが、ブリティッシュロックやブルーズロックはあまりよく分からなかった。いや、興味は持とうとしたんだけどね。
で、件のアルバムもほとんど聴かずに放っておき、結局また中古CDショップに売ってしまった。今考えればなんて愚かなことをしてしまったんだろうと後悔しているが。
一般的な評価の高いCD（映画でも、本でもいい）を試してみたものの、いまひとつ楽しめなかった、ということは誰にでもあると思う。もちろん、一般的な評価の高い作品がすべて名作とは限らないし、そうした作品を理解できない自分の能力を卑下する必要はない。
ただ、作品やアーチストがそこまでの評価を与えられるということは、それなりの理由があるわけで、その辺りを（肯定するにしろ否定するにしろ）押さえておくことは、自分の視野を広げることにつながるだろう。
で、そんな経験を積み重ねていくと、ある日突然、今までまったく興味のなかったものの素晴らしさや、まったく関係性を見出せなかった二つのつながりなんかに気づいたりすることがある。あるいは、いつの間にかすごく好きになっていたとか。私にとってはブルーズロックやプログレがそうだし、LED ZEPPELINでさえそうだった。だから、ツェッペリンに興味がある高校生と話したりすると、「こいつ偉いなー」なんて思ったりする。
CDにそのような「気づき」の効果があるとすれば、コンサートなどは尚更だ。何しろ目の前のアーチストと音楽を通じた濃密なコミュニケーションが直接交わされるわけだから。しかも、フェスティバル形式のコンサートなんかに行くと、演奏したバンドは例外なく、それなりの印象と記憶を自分に残してくれる。したがって、そのジャンルにおけるファンにとっては、経験値を著しく高めてくれるまたとない機会なのだ（という意味で、ここ数年「LOUD PARK」に行けていない私はメタラーとしてかなり怠慢である）。

で、BAD COMPANYです。お客さんの年齢層がかなり高かったのはTHE WHOのライブと同じ。ただ、THE WHOの時はいかにもロック好きです、って感じの格好をしたオヤジが多かったのに対し、この日はスーツ姿の男性がかなり多かったと思う。中にはコテコテのサラリーマン（っぽい人）もいて、こんな所にいなければまずロック好きには見られねーだろ！という人も。ちなみに20代以下はほぼ皆無。
そんなお客さんたちにとって、ギタリストのミック・ラルフスが急病のため参加できなくなったことは大きなショックだったのだろうか？　俺なんか申し訳ないけど、ポール・ロジャースしか知らないし、じつはBAD COMPANY自体そんなに知らなかったりする。要は、「今、見ておかないと絶対後悔する」という思いだけでチケットを買ってしまったミーハーなのだ。
しかし、結果的には自分にとって非常に印象に残るライブとなった。もちろんポールに対しては、ヴォーカリストとしての優れた技量に加え、フロントマンとしての卓越したパフォーマンス、そして垣間見える素晴らしい人間性に魅了されたが、驚いたのはバンドとしての一体感やグルーヴ・・・・・・そう、「グルーヴ」こそ今回のライブにおけるキーワードだったと思う。また、ポール以外のメンバーがポールを引き立てる、というのではなく、ポールがフロントマンやヴォーカルやピアノをマルチにこなしながら、バンドのグルーヴ作りに貢献している、という印象を持った。
お客さんも一体となって盛り上がっていたね。隣の席の女性なんか、髪の毛振り乱しながら、一緒に歌っていたもんなあ。パンフレットも、Tシャツもいくつか買っていたところを見ると、ずーっと長い間、彼らが来日するのを待っていたという感じだった。
アンコールにも何度も応え、FREEの名曲も演奏、サービス精神も満点だったね。
終演後、ロビーを歩きながら、周囲の満足そうな雰囲気での会話があちこちで耳に入った。そしてこの日の最大の後悔・・・・・・「予習って、大事だな」

派手さはもちろんそれほどないけど、貫禄と親しみやすさに満ちた、圧巻のパフォーマンスであった。

そういえば、会場にはコラムニストの山田五郎と漫画家のみうらじゅんも来ていたよ。