「枕草子」に 木の花はとあるは これなり
散りたるを 寄りて 足下に見やれば
薄紫の花弁に 鹿の子ちらしたるやうなる 薄き斑紋のある様
掩い囲みたるミドリハコベの 恥ずかし と思ふまで ひそやかにたふとし
皐月の空に 日をかへし 輝ける木の形
いと かなしふ あはれなり
婆様は 「墓参りには 紫に麗しき 藤の花咲きてから・・・」など言うも
「長き枝に ボテボテと咲きたる藤の 如何せん・・・」など 返す
藤は たふとからず 材は うねうねと曲がるばかりにして 用をなさず
桐は 材の目 密にして 質余り 硬からず・・・故に 箏となし 下駄となす
さも ありつる 撓む(たわむ)心根のまはりに
咲き起こせし房のさま まことにかしこく 人の
かくありがたき姿とぞ思ふ・・・
♪・・・草深き かすみの谷に 桐かくし 照る日のくれし けふにやは あらぬ・・・♪(本歌846古今)