日本は海に囲まれた島国である。
この地政学的環境が他国から踏み込まれるリスクを大幅に減らしている。
陸続きのウクライナの苦闘の歴史を見れば一目瞭然だ。
領海と様々な経済的な権益を持つ排他的経済水域を足した面積において、「日本の海」は世界第六位の広さを誇る。
この広大な海を1.3万人で守っている。
年間予算はたったの約2400億円だ。いかにも少ない。
海上保安官は正義感の強い、熱き人が多いという。
だからこそ元海上保安庁長官佐藤雄二さんは「冷静かつ毅然と」対応するように繰り返し伝えたという。
海上保安庁法25条は、
海保またはその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。
軍隊と言うよりも海の警察という位置づけだ。
海上保安庁は最初から「緩衝材」として位置づけられていたと言えよう。
軍隊同士の接触は偶発的な戦争の引き金になりかねない。
この位置づけがあるために日本近海で大きなトラブルもなく「平和の海」が守られてきたのだ。
今まで一度も発動されたことはないのだが、自衛隊法80条では「海保を防衛相の統制下に入れることが出来る」となっている。
有事には自衛隊と海上保安庁が一体で動く必要はある。
最近、海上保安庁を平時から自衛隊の中に組み込もうという動き(海上保安庁を補助部隊として使う)もあるようだが、極めて危険な動きだ。
力には力と言う考え方は、日本の取るべき道ではあるまい。
元海上保安庁長官佐藤雄二さんは次のように語る、(朝日新聞2022.12.2)
海保も自衛隊も懸命にやっていますが、現場に頼り切ると危険です。尖閣諸島をはじめ、境界線の問題は現場では解決できません。政治、外交、経済といった多角的な対応で、何とか打開策を見つけてほしいです。
まったくその通りだと思う。