MVCメディカルベンチャー会議

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第60回MVC定例会in大阪

2008年05月17日 | MVC定例会
医療と報道について学ぶため、「医療報道の現場から」をテーマに、アナウンサーの横須賀ゆきの氏(読売テレビ編成局)を講師に、植村なおみ氏(読売テレビ編成局)をオブザーバーにお招きしてお話頂きました。VTRを見ながらの対話形式でのセミナーはMVC初の試みでした。参加者は25人でした。


①私がなぜ産科医療を取り上げたかというと、産科医が足りない現状を追うVTRや報道は各局なされていたけども、それを救う手立てまではどこも余り踏み込んでいませんでした。何とかこの現状を打破できる一手はあるのかという思いで、もともとは取り組んだものです。現状を社会に知ってもらうことも大切な報道ですが、ではどうすれば?という、あくまで一案ではあるけれども現場の知恵等を提示したかったのです。報道ができることはそういうことだと思います。

②まず見て頂きたい1本目の映像は2007年3月28日、ニューススクランブルの「追跡屋」というコーナーで放送したVTRです。10万人の人口を抱える滋賀県彦根市でたった一つの分娩施設になってしまった診療所の産科医に2日密着したものです。赤ちゃんを生める場所が減っていくと町や住民にどのような影響を与えるのか、産科医とそれを取り巻く「現状」をひたすら追ったVTRです。

③医療はどうしても難解というイメージがありとにかく分かりやすく視聴者に伝えようとする余りに、医療関係者から見ると、事実とずれている等の不満があるかも?と危惧しております。医師の方々はこれをどう見られるかお伺い出来れば幸いです。

④2本目の映像は、2007年4月18日放送の「追跡屋」で、産科医と助産師がタッグを組み、助産科を立ち上げたVTRです。このVTRはその姿を通して、産科医療を救えるかもしれない手立てとして取材を始めたのですが、取材を進めるうちに、今の日本のお産のあり方そのものを見つめなおした方がいいかも?と私が感じたこと、メッセージ性を織り込んだVTRです。

⑤これは、多くの医師、専門家、助産師、妊産婦さんにペン取材し、実際に、佐野病院の助産科の先生と助産師さんをカメラ取材しました。「お産の歴史」を振り返り、「医師を頂点とする病院の人事組織」、「医師と、助産師&看護師の関係」等の問題点を浮き彫りした上で、誰の為のお産なのか=妊婦の為のお産とは?を提示したVTRです。産科医不足とは言え数合わせだけで終わってはいけない。誰の為のお産かという原点に立ち返って対策をと訴えました。ゆえに、賛否両論色々あると思います。想像するに、医師の方から見たら、助産師に偏っていると見る人もいるかもしれません。

⑥読売テレビとしての医療報道のあり方や見解に関しては、特に大局的な見地がいつも示されているわけではありません。社員の数など物理的な問題から新聞社のように『医療班』というようなものを組む余裕もありませんので、結果として、取材現場の記者やアナウンサー、ディレクターに、その方向性は委ねられることが多くなります。ただ、大きな事件や事故の場合は、別です。

⑦読売テレビでは「テレビドクター」という番組を30年以上にわたり放送しております。毎週日曜日の朝6:15から30分までの番組で、身近なことから医療に関して啓蒙していくのが目的です。15分番組とは言え、診療現場の現役の医師の生の声が視聴者に直接届けられるというのはなかなか他の番組では難しいことで、それを数十年以上にわたり続けているというのは、ある一定の役割を果して来たのではないかと思います。

⑧テレビは臨場感を一番大切にしています。今回なら「お母さんが赤ちゃんを生む為に頑張る姿」、「医師や助産師が真剣にサポートする姿」、「生まれたての赤ちゃん」、いかに命を生み出す作業が崇高で素晴らしいことであるか、言葉を重ねるより、5秒の映像の方が視聴者の心を打ちます。「この素晴らしい現場を守られねば・・・」とみんなに感じて頂けると思うのです。最近はお母さんの表情をはじめ撮影の際に色んな制約が出てきました。病院側も個人情報にとても過敏。お母さんに許可とる以前に万が一ややこしいことになるからとカメラ取材NGとルールで決まっている病院もあります。例えば他の局、番組での産科企画には、先生の撮影はOKだけどお母さんの表情はNGなんだな。診察の患者もNGなんだなと感じるVTRが多くありました。

⑨これは誰が悪いではなく、時代の流れで致し方ないことだと思います。過去のマスコミ取材にも問題があることは否定できません。デリケートな取材ゆえに今回のカメラでの取材交渉も苦労しましたが、1本目の彦根市の神野先生も2本目の佐野病院の助産科も、妊産婦さんとの信頼関係がとても良好で撮影の許可をとってくださいました。そして先生や助産師さん、妊産婦さんも私達の取材の意図を理解し協力し信頼してくださいました。とても感謝しています。取材は信頼関係です。

⑩私たちアナウンサーは、ニュースを読むだけではなく、企画を立てて番組制作に関わる仕事もしております。医療についての問題点や改善策についての情報を頂ければ、それを企画として番組制作に生かすことが可能です。それが日本の医療を良くして行くきっかけになるかもしれません。またご協力頂ければ幸いです。

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