紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

あの頃の思い出のアニソンを振り返る~【高校生編】【大学生編】

2012-06-03 02:00:45 | テーマ縛り
前回からの続き


  高校生編~20世紀末

もうすぐ21世紀!
1000年に一度しか訪れないミレニアム・イヤーを
迎えたとき、私は高校生の少年でした。
世間では「2000年問題」が警戒され、コンピュータの
誤作動による社会機能の混乱が懸念されていました。
実際はフタを開けてみれば大きな事件は特に起こらず、
「なんだ結局なにもなかったじゃん」と拍子抜けしたものでした。
でも、それは社会の大人たちが連日夜遅くまでがんばって
システムを点検した結果の賜物なのだということは
自分も社会人になった今なら非常によくわかります。
本当にお疲れさまでありました。

さて、そんな大人たちの苦労も知らない高校生の私は
アニメの歴史的転換点を体験することになります。


『Serial Experiments Lain』OP Duvet


serial experiments lain(シリアルエクスペリメンツ・レイン)(1998)
仮想世界と現実世界の交錯を描いた深夜アニメです。
この時期、現在ではすっかり定着した深夜アニメという
概念はあまり深く根付いていませんでした。
アニメは朝か夕方に放映されるというスタイルはこの頃の定番であり、
平日の16時台~19時台くらいにかけてとか、
日曜の朝8時台がアニメにとってのゴールデンタイムでした。

この『lain』は私が初めて観た「深夜アニメ」でした。
(1997に深夜再放送されたエヴァを観てましたが、それはノーカンで)
全話を通して観たわけではなく、深夜1時台にテレビをつけて
偶然目にした数回がとてつもないインパクトを放っていて、
「なんだこれは」と引き付けられたのを憶えています。
この作品、ネットワーク世界と現実世界の交錯を描いた物語で、
すっかりインターネット環境が普及した現在では
題材的に珍しいものではありませんが、「インターネット」が
少しずつ普及しはじめた当時としては非常に画期的なものでした。
また、作品全体的に漂う救いようのないダークな感じ
朝や夕方に放映されているアニメでは絶対に観られないような
特殊なオーラをまとっていました。

OP曲の『Duvet』(※デューベイと読みます)はイギリスのバンド
「bôa」の曲で、当然ながら全詞英語でまったく意味はわからないんですが、
とにかく不安感をあおるような歌声、メロディーライン、OP映像は
高校生少年の心の琴線にジャストヒットし、
数回しか観なかったアニメの内容はあまり憶えていないのに、
このOP曲は心に深く刻み込まれていて、メロディをバッチリ憶えている

という妙な倒錯を生みだしました。
そんなわけで、ヘンな感じに思い入れのある曲です。


『To Heart』OP Feeling Heart


To Heart(1999)
そして、この作品が品行方正に生活していた自分の高校生活を
想像もつかなかった方向へ迷走させる一番の原因となりました。
この作品は、同時期にプレイステーション用ソフトとして発売された
恋愛ノベルアドベンチャーゲーム『To Heart』のアニメ化作品で、
当時いわゆる美少女ゲーにまったく興味のなかった自分を
一気にそっちの世界へ引き込んだ恐ろしい作品でした。
元々はPCの18禁ゲームでありながら、個性的な美少女キャラたちとの
さわやかな学園生活を送る
というゲーム内容で、かつてSFCで
流行したサウンドノベルの要素を取り入れたキャラと物語と音楽のみで
構成されたシンプルすぎるシステムが当時逆に新鮮でした。
ゲームの性質上、キャラクターが非常に魅力的に描かれており、
幼なじみ、メガネ委員長、金髪ハーフ娘などの今やテンプレと
なっている王道属性を押さえつつ、
格闘娘、超能力少女、オカルトお嬢様、メイドロボなどのちょっとぶっ飛んだ
属性のキャラクターも登場しています。
アニメ版は、PS版のプロモーションとも言うべき内容で、
物語らしい物語はなく、むしろキャラクターを魅力的に見せることを
重視
して作られていました。
また、やはり当時浸透し始めた深夜枠での放送でした。
以降、こんな感じの美少女系のアニメも深夜アニメの定番となりました。
ゲームプレイ済みの人にとっては好みのキャラクターがアニメで動くことに
感動を覚え、未プレイの人にとってはゲームをプレイしてみたくなる
ような上手いつくりになっていたのを憶えています。

ゲーム/アニメ共通のOP曲『Feeling Heart』(歌:中司雅美)
作品内容を代弁したかのようなさわやかな曲です。
この曲聴くと、当時の高校生活の思い出が走馬灯のように思い出されて
甘酸っぱい気持ちになりますぁ・・・。



『デジモンアドベンチャー』OP Butter-fly


デジモンアドベンチャー(1999)
ポケモンのアニメが始まったのは私が中学生の頃でしたが、
この「デジモン」のアニメが始まったのはポケモンから
すっかり卒業した高校生の頃でした。
「デジモン」は元々はたまごっちのような携帯育成ゲームで、
この『デジモンアドベンチャー』は言ってみれば子ども向け玩具の
アニメ化作品
でした。
当然、元々のデジモンには一切なじみのない状態でアニメの視聴を
なんとなく始めたわけですが、(愛知県では平日16時台に放送してました)
これが、とても子ども向け玩具が原作とは思えないような重い話だったのです。
メインの登場人物で、それぞれにパートナーデジモンを持つ少年少女たちは
ひとりひとりに複雑な家庭事情があり、現実世界で問題をかかえています。
そんな少年少女たちがデジタルワールドの冒険を通じて成長し、
現実世界での問題をも克服していく姿はとても感動的でした。
メイン視聴者層であろう小学生のみならず、中学生や高校生でも
のめり込めるような本格的な少年少女群像劇の側面を持つ作品でした。
もちろん、肝であるデジモンのカッコよさも素晴らしいです。

OP曲『Butter-fly』(歌:和田光司)は、
パワフルで印象的なイントロから始まるロック調の熱い曲で、
これまた子ども向けアニメの主題歌とは思えないようなカッコよさがありました。
特に「むげぇぇぇんだぁぁぁぁいなぁぁゆぅめのぉぉあとのぉぉぉ!!」
というサビの熱さは特筆モノで、カラオケで上手く歌えたときのカタルシス
ったらないです。
最終回の印象的な場面で、このサビから入るバージョンの『Butter-fly』が
挿入歌としてカットインされたということもあり、この部分を歌ったり
聴いたりすると、その場面が頭に何度も浮かんで涙が自然に・・・。
恐ろしい曲です。
後年、ニコニコ動画で弾幕曲として定着したのには本当に納得できました。
みんな好きだったんだなぁー。


  大学生編~21世紀初頭

ついに21世紀の到来です。
恐怖の大王が降りてくることもなく、核戦争が起きて
ヒャッハーな方々が跋扈する時代が来ることもなく、
ごく普通に日常は続きました。
自分も気が付けば大学生。
親元を離れ、一時的に手にしたかりそめの自由。
もてあますほどの時間を有効に扱い切れず、
授業にバイトに読書にゲームにネットに・・・。
そしてもちろんアニメの鑑賞にも、惜しげもなく時間を
投入してきました。後悔なぞしていません!


『フルーツバスケット』OP For フルーツバスケット


フルーツバスケット(2001)
「花とゆめ」人気少女漫画をアニメ化した作品です。
これまで少女漫画はほとんど読んだことがなく、少女漫画原作の
アニメもロクに観たことがありませんでしたが、
監督が大地丙太郎さんという大好きな監督さんだったため
なんとなく観始めたのがきっかけでした。
これが見事に激ハマりしてしまいました。
原作の雰囲気が大地監督の演出と非常にマッチしていて、
キャラクター同士のテンポの良いかけあいが実に心地よい作品でした。
異性に抱きつかれると十二支の動物に変身してしまう
という草摩家の人々と、主人公の女の子・本田 透との交流を
メインに物語が展開されます。
コメディとシリアスのバランスが良く、メインキャラの透-夾-由希-紫呉の
アホらしい会話のやりとりだけでニヤリとできたり、
特に「亥」の呪いを持つ楽羅の初登場回は爆笑の嵐でした。
かと思えば、十二支の物の怪に呪われた草摩家の人々の一人一人のエピソード
には涙がこぼれるほど切ない話もありました。
切ない話で特に印象深かったのは「辰」の呪いを持つはとりの
エピソードでしょうか。はーさん悲しすぎる・・・。
「雪が溶けたら何になるでしょうー?」
はい、わかる人だけわかってください。

OP曲『For フルーツバスケット』(歌:岡崎律子)は、
とてもOP曲とは思えないほど静かで優しい旋律が特徴の曲でした。
OP映像も非常におとなしく、キャラの後ろ姿が連続で表示されるだけ
というOPにあるまじき動きの少ないものとなっています。
でも、それが逆に視聴者に強い印象を刻み込んだのかもしれません。
作品の雰囲気にも異常なほどマッチしているこの曲、
現在もなお、聴いていると場面の数々が想起されます・・・!
タイトルがとても変わっているこの曲ですが、実は
作詞・作曲・歌のすべてを担当された岡崎律子さんが
楽譜に付けていた仮タイトルを大地監督が気に入り、
そのまま正式タイトルにしてしまったそうです。

岡崎律子さんは2004年に亡くなられています。
これは悲しかった・・・。


『明日のナージャ』 ED けせら・せら


明日のナージャ(2003)
今ではすっかり日曜朝の時間帯の顔となった「プリキュア」シリーズが
始まる前に密かにやっていた単発モノの作品となります。
視聴率的にも関連商品売り上げ的にも歴史的大敗を喫した
残念な作品
というのが一般の評価となっていますが、
私は結構楽しんで観ていました。
まぁ、この作品の直前に放映されていた『仮面ライダー555』を
熱心に観ていて、そのまま惰性で観ていたというのが
きっかけですが、それでも徐々に引き付けられていったのを
憶えています。
物語の主旨は、まぁ言ってみれば「母をたずねて三千里」という
ことで、孤児院で育ったナージャが母親の存在を知り、
旅芸人一座と旅をしながら母親を探すというものでした。
舞台は20世紀初頭のヨーロッパの各地を転々とし、
各土地の風土が作品内に生き生きとあらわれて、紀行モノとしても
魅力的でした。
うーん、まぁちっちゃい女の子にとってはちょっと地味だったかも
しれません。
そもそも、『おじゃ魔女』シリーズをやってきた時間枠ですからね。

ED曲『けせら・せら』は、本作が声優デビュー作となる
小清水亜美さんが歌っています。
ヨーロッパ各地のワードがたくみに歌詞に取り入れられ、
言葉遊びとしても面白い曲です。小清水さんのちょっと
ぎこちない感じの歌い方も味がありますね。
「倫敦どんより晴れたら巴里~♪」は今でも
ついつい口ずさんでしまう名フレーズだと思います。


『OVERMANキングゲイナー』 OP キングゲイナー・オーバー!


OVERMANキングゲイナー(2002)
かつて「皆殺しの富野」とまで言われた富野由悠季監督の作品です。
その作風は、『Vガンダム』や『イデオン』を作った人とは思えないほど
明るく楽しくハイテンションなものとなっていました。
一応、ロボットアニメの体をとっていますが、そのメインの題材は戦争ではなく、
目的地・ヤーパンまでの旅路を描くことがテーマとなります。
敵も異星人とか異国人とかではなく、「シベリア鉄道」というイチ鉄道会社。
微妙にスケールが小さいんだかなんなんだかという物語でした。
しかし、アクションシーンは動きまくりの撃ちまくりの斬りまくりで
かなり楽しいものに仕上がっていました。
しかも、本作のロボット「オーバーマン」には各機につき
「オーバースキル」という特殊能力が備わっており、
その特殊能力がジョジョのスタンドバトルのような緊迫感を付加し、
戦闘をさらに面白いものに演出しています。
また、キャラも濃すぎ!と思わず叫んでしまうほど濃いキャラばかりで、
ヤーパン(日本)を明らかにヘンに勘違いしているニンジャ暗殺者とか、
鉄道のダイヤ維持のためには手段を選ばないオカマの鉄道局員とか、
特務部隊の若きエリート実力者だが、そのエネルギーの原動力はすべて妹というテラ子安キャラ
とか、そんな奴等が織りなす物語です。
わりと本気で「毎回カオス回」と言うこともできます。
にもかかわらず、最終回には「俺たちのエクソダスはまだこれからだ!」

明らかに打ち切り的なエンディングを迎えているのもネタに事欠かない
この作品らしいなーと納得してしまうような、
とにかくすごいエネルギーをもった作品でした。

OP曲『キングゲイナー・オーバー!』(歌:福山芳樹)は、
そのハードロック調な曲もさながら、OP映像の奇抜さも物凄かったです。
この曲を背景に、主要キャラたちがミュージカル調に舞い、オーバーマンたちが
激しくモンキーダンスを踊るという映像
は、まちがいなくアニメOP映像の
歴史に刻み込まれるべき演出でした。
「キングキングキングゲイナー!」と、曲の中で主人公メカの名前を連呼するという
古き良きロボットアニメ主題歌の一面もある名曲です。



・・・と、ここまでにしておきましょうか。
本当なら社会人編まで一気に書き切ってしまいたかったですが、
思った以上に字数を使ってしまったのと、さすがに語り疲れたと
いうこともあって、ここいらで次回へ続くことにします。

次はいよいよ社会人編だ!
と、思ったけど、やっぱアニソン三昧レポートにしました。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-03-25 02:17:00
確か明日のナージャは欧州辺りで凄い人気だったような気がします!
何かの海外アニメ記事で読んだ気がするだけでうろ覚えですけど
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