桜玉吉(さくら たまきち)という漫画家を知っていますか?
代表作は【しあわせのかたち】【防衛漫玉日記】など。
ゲームのパロディや、自分の日常生活を漫画に描くエッセイ漫画を得意とする漫画家さんです。
【しあわせのかたち】には、黄色のお面をかぶった二頭身のキャラとして
自分自身を漫画に登場させています。
【しあわせのかたち】以降も、【防衛漫玉日記】、【幽玄漫玉日記】…と、発表される作品には
すこしずつ姿を変えて桜玉吉先生自身が主人公として登場します。
今ではそれほど珍しくないエッセイ漫画ですが、桜玉吉先生が【しあわせのかたち】を
連載していた頃にはまだ珍しく、その作風はとても新鮮なものでした。
また、キャラクターデザイナーとしても知られ、【サンサーラナーガ】シリーズや
【タワードリーム】シリーズなど、いろいろなゲームのキャラデザも手掛けています。
今回は、そんな桜玉吉先生の漫画作品に登場する「桜玉吉」自身をキャラとしてとらえ、
複数作品にまたがってその物語を追ってみようと思います。
あくまでも、「漫画に登場する桜玉吉」をキャラとしてとらえるということで、
決して、現実の桜玉吉先生本人の物語を追うという内容ではありません。
桜玉吉先生の変動の激しい作風もあわせて、おたのしみください。
【しあわせのかたち】連載初期
ゲーム雑誌「週刊ファミ通」が、まだ「ファミコン通信」(隔週刊)だった時代。
1986年に【しあわせのかたち】の連載が「ファミコン通信」の誌上で始まりました。
内容はゲームを題材にしたパロディギャグ漫画です。
わずか2~4ページのオールカラー漫画でした。
初期の【しあわせのかたち】でメインに活躍することとなったのは、「例の三人組」と呼ばれる
「おまえ」「こいつ」「べるの」の三人でした。
桜玉吉先生の独特のキャラクターセンスで、この三人組は読者の好評を博し、
【しあわせのかたち】をファミコン通信の人気漫画へと押し上げます。
特にべるのの人気はすさまじく、その可愛らしさは今でも色あせていません。
現在でもよく使われる「~だお」という語尾の元ネタは、このべるのから来ています。
ホントだお!
※追記※
ウソだったお!
ご指摘がありました。江口寿史先生の「すすめ!!パイレーツ」という漫画にて、
しあわせのかたちより遥か前に「~だお」という語尾をやっていたようです。
この「例の三人組」が活躍するゲームパロディ漫画の合間合間に、作者である桜玉吉先生本人が
キャラクターとしてちょいちょい登場することがありました。
といっても、「例の三人組」の活躍をジャマしない程度にです。
エッセイ漫画としてのスタイルが確立されるのは、【しあわせのかたち】連載後期から。
初期はあくまでも、「ゲームパロディ漫画」でした。
ゲームパロディ漫画としての【しあわせのかたち】
桜玉吉の物語の本筋を追う前に、ゲームパロディ漫画としての【しあわせのかたち】が
どんな作品だったか触れておこうと思います。
ファミコンの名作ADV「オホーツクに消ゆ」のパロディ!
当時は誌名に嘘いつわりのない「ファミコン」通信でしたから、当然ファミコンのネタです。
ゲームの本編をがっつり漫画にした内容ではなく、題材のゲームはあくまでも小ネタ程度。
基本的には、桜玉吉先生のオリジナルストーリーが展開されます。
なんと、テトリスまで漫画に!
コマ割りをたくみに利用した斬新な作品でした。
元のキャラクターの壊しっぷりもすさまじく、「ドクターマリオ」を元にした
「ドクターオリマ」はケツアゴの外人が暴れまくる本当にひどい作品でした。(褒め言葉)
「ソニックザヘッジホック」が売ってなかったから想像で描いたという体の、「ソニックザグッホジッヘ」。
なんとソニックが針さしですよ。 ありえねーから、そんな間違った想像!
でも、グッホジッヘよくみると可愛いんですよ。当時女性に大人気だったらしいですよ。針さしなのに。
「スーパーアレスタおやじ」はシューティングの自機・アレスタになりきったオヤジが
海水浴場やスキー場で大暴れする話です。オヤジキャラに定評のある玉吉!
・・・まぁ、以上のような感じです。
ゲームパロディ漫画の頃もはっきり言って非常に面白いです。
僕は当時、ファミコン通信を買っていなくて単行本で読んでいましたが、
まだゲームパロディの頃の1~3巻も非常にたのしく読んだ記憶があります。(小学生くらいだったか?)
ですが、これが単行本第4巻にさしかかる頃。
連載でいうと1991年頃、【しあわせのかたち】の作風に劇的な変化が起こります。
変化のきっかけ
事件は、「エフゼロエグゼス」という、スーパーファミコンのレースゲーム「F-ZERO」の
パロディ漫画連載中に起こりました。
緊迫した場面で「つづく」という引きをやった直後、なんと桜玉吉先生の首が動かなくなってしまったのです!
突然の作者体調不良により、【しあわせのかたち】は数ヶ月間連載がストップに!
そして数ヵ月後、月刊ファミコン通信が週刊化となるに伴って、
【しあわせのかたち】は劇的な復活を遂げます。
その復活回がこちら!
桜玉吉のキャラクターが作品上に登場しておわび。
そして、次の回にあらためて「エフゼロエグゼス」の続きが始まるかと思いきや・・・
な、なんと日記風の漫画が始まったではないですかっ!!
これ以降、【しあわせのかたち】では何ごともなかったかのようにエッセイ漫画スタイルが続きます。
当時、このようなエッセイ漫画はかなり珍しく、読者にとっても新鮮だったかと思います。
(「エフゼロエグゼス」の続きは、連載中断時より約2年後に単行本に描き下ろされることになります)
一話一話変動する作風
さて、こんな感じでなしくずし的に始まったエッセイ漫画スタイルですが、
その作風は、一話一話でテイストががらっと変わりました。
上で紹介した多摩川の釣りの話は、玉吉が多摩川で出会った人、起こった出来事を
のんびりと紹介していくという、一般的なエッセイのような作風でしたが、
その次の回では怪奇特集になったりと、本当にバラエティに富んだ内容となりました。
従来のゲームパロディ漫画も皆無ではなく、時折、エッセイ漫画とエッセイ漫画の合間に
挿入されることもありましたし、一話まるまる使ってゲームパロディ漫画のときもありました。
(上で紹介した「ソニックザグッホジッヘ」と「スーパーアレスタおやじ」はエッセイスタイルに
移行してからの作品です)
そして、作風のみならず画風までもが回ごとに(あるいはコマごとに)変わりました。
時に色鉛筆によるパステル調に。
急に主線が太くなったり。
なんかテキトーな感じになったり。
一般誌の漫画家のようにGペンで描いてみたり。
外国の漫画絵本みたいなタッチになったり。
後に確立される墨絵タッチの画風の片鱗も見え始めます。
こんな感じで、一話一話本当にやりたいようにやっているのです。
そして、やりたい放題の極め付けはこちらです↓
ある回で急にあらわれた、一般誌に載るような4コマ漫画。
その次の回は8コマに! 当然、担当編集者は戸惑いますが、玉吉は無視。
次の回はなんと、1ページに増量! さすがに担当も動揺します。
「ラブラブROUTE21」というヘンなタイトルまで付きました。
そして、次の回はなんと、ほぼ本編まるまる使っての大・増・量☆です。
玉吉は「これ以上スペースでかくなることはないから大丈夫」といいますが、その次の回は・・・
2ページ連載漫画で、オキテ破りの3ページブチ抜きで本格・暗黒舞踏、同棲漫画「ラブラブROUTE21」を
やってしまったのです!
労力をかけてまで人を驚かせて楽しい!という玉吉。
このネタ精神が、今後玉吉の物語を追う上で結構重要になってきますので、メモメモ。
ちなみに、この「ラブラブROUTE21」は読者から好評だったようで、
なんとアンケートベスト3入りを果たします!
担当のヒロポンも嘆いてますが、暗黒舞踏漫画がアンケートベスト3入りするゲーム雑誌って一体・・・。
・・・とりあえず、ここまでで「桜玉吉」というキャラクターの大体を掴んでいただいたと思います。
次回以降、いよいよ桜玉吉の物語を本格的に追って行きますので、よろしければお付き合いください。
(ちょっとニッチな作品なので、ついてきてくれる人がいるか不安ですが・・・)
次回へ続く
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代表作は【しあわせのかたち】【防衛漫玉日記】など。
ゲームのパロディや、自分の日常生活を漫画に描くエッセイ漫画を得意とする漫画家さんです。
【しあわせのかたち】には、黄色のお面をかぶった二頭身のキャラとして
自分自身を漫画に登場させています。
【しあわせのかたち】以降も、【防衛漫玉日記】、【幽玄漫玉日記】…と、発表される作品には
すこしずつ姿を変えて桜玉吉先生自身が主人公として登場します。
今ではそれほど珍しくないエッセイ漫画ですが、桜玉吉先生が【しあわせのかたち】を
連載していた頃にはまだ珍しく、その作風はとても新鮮なものでした。
また、キャラクターデザイナーとしても知られ、【サンサーラナーガ】シリーズや
【タワードリーム】シリーズなど、いろいろなゲームのキャラデザも手掛けています。
今回は、そんな桜玉吉先生の漫画作品に登場する「桜玉吉」自身をキャラとしてとらえ、
複数作品にまたがってその物語を追ってみようと思います。
あくまでも、「漫画に登場する桜玉吉」をキャラとしてとらえるということで、
決して、現実の桜玉吉先生本人の物語を追うという内容ではありません。
桜玉吉先生の変動の激しい作風もあわせて、おたのしみください。
【しあわせのかたち】連載初期
ゲーム雑誌「週刊ファミ通」が、まだ「ファミコン通信」(隔週刊)だった時代。
1986年に【しあわせのかたち】の連載が「ファミコン通信」の誌上で始まりました。
内容はゲームを題材にしたパロディギャグ漫画です。
わずか2~4ページのオールカラー漫画でした。
初期の【しあわせのかたち】でメインに活躍することとなったのは、「例の三人組」と呼ばれる
「おまえ」「こいつ」「べるの」の三人でした。
桜玉吉先生の独特のキャラクターセンスで、この三人組は読者の好評を博し、
【しあわせのかたち】をファミコン通信の人気漫画へと押し上げます。
特にべるのの人気はすさまじく、その可愛らしさは今でも色あせていません。
現在でもよく使われる「~だお」という語尾の元ネタは、このべるのから来ています。
ホントだお!
※追記※
ウソだったお!
ご指摘がありました。江口寿史先生の「すすめ!!パイレーツ」という漫画にて、
しあわせのかたちより遥か前に「~だお」という語尾をやっていたようです。
この「例の三人組」が活躍するゲームパロディ漫画の合間合間に、作者である桜玉吉先生本人が
キャラクターとしてちょいちょい登場することがありました。
といっても、「例の三人組」の活躍をジャマしない程度にです。
エッセイ漫画としてのスタイルが確立されるのは、【しあわせのかたち】連載後期から。
初期はあくまでも、「ゲームパロディ漫画」でした。
ゲームパロディ漫画としての【しあわせのかたち】
桜玉吉の物語の本筋を追う前に、ゲームパロディ漫画としての【しあわせのかたち】が
どんな作品だったか触れておこうと思います。
ファミコンの名作ADV「オホーツクに消ゆ」のパロディ!
当時は誌名に嘘いつわりのない「ファミコン」通信でしたから、当然ファミコンのネタです。
ゲームの本編をがっつり漫画にした内容ではなく、題材のゲームはあくまでも小ネタ程度。
基本的には、桜玉吉先生のオリジナルストーリーが展開されます。
なんと、テトリスまで漫画に!
コマ割りをたくみに利用した斬新な作品でした。
元のキャラクターの壊しっぷりもすさまじく、「ドクターマリオ」を元にした
「ドクターオリマ」はケツアゴの外人が暴れまくる本当にひどい作品でした。(褒め言葉)
「ソニックザヘッジホック」が売ってなかったから想像で描いたという体の、「ソニックザグッホジッヘ」。
なんとソニックが針さしですよ。 ありえねーから、そんな間違った想像!
でも、グッホジッヘよくみると可愛いんですよ。当時女性に大人気だったらしいですよ。針さしなのに。
「スーパーアレスタおやじ」はシューティングの自機・アレスタになりきったオヤジが
海水浴場やスキー場で大暴れする話です。オヤジキャラに定評のある玉吉!
・・・まぁ、以上のような感じです。
ゲームパロディ漫画の頃もはっきり言って非常に面白いです。
僕は当時、ファミコン通信を買っていなくて単行本で読んでいましたが、
まだゲームパロディの頃の1~3巻も非常にたのしく読んだ記憶があります。(小学生くらいだったか?)
ですが、これが単行本第4巻にさしかかる頃。
連載でいうと1991年頃、【しあわせのかたち】の作風に劇的な変化が起こります。
変化のきっかけ
事件は、「エフゼロエグゼス」という、スーパーファミコンのレースゲーム「F-ZERO」の
パロディ漫画連載中に起こりました。
緊迫した場面で「つづく」という引きをやった直後、なんと桜玉吉先生の首が動かなくなってしまったのです!
突然の作者体調不良により、【しあわせのかたち】は数ヶ月間連載がストップに!
そして数ヵ月後、月刊ファミコン通信が週刊化となるに伴って、
【しあわせのかたち】は劇的な復活を遂げます。
その復活回がこちら!
桜玉吉のキャラクターが作品上に登場しておわび。
そして、次の回にあらためて「エフゼロエグゼス」の続きが始まるかと思いきや・・・
な、なんと日記風の漫画が始まったではないですかっ!!
これ以降、【しあわせのかたち】では何ごともなかったかのようにエッセイ漫画スタイルが続きます。
当時、このようなエッセイ漫画はかなり珍しく、読者にとっても新鮮だったかと思います。
(「エフゼロエグゼス」の続きは、連載中断時より約2年後に単行本に描き下ろされることになります)
一話一話変動する作風
さて、こんな感じでなしくずし的に始まったエッセイ漫画スタイルですが、
その作風は、一話一話でテイストががらっと変わりました。
上で紹介した多摩川の釣りの話は、玉吉が多摩川で出会った人、起こった出来事を
のんびりと紹介していくという、一般的なエッセイのような作風でしたが、
その次の回では怪奇特集になったりと、本当にバラエティに富んだ内容となりました。
従来のゲームパロディ漫画も皆無ではなく、時折、エッセイ漫画とエッセイ漫画の合間に
挿入されることもありましたし、一話まるまる使ってゲームパロディ漫画のときもありました。
(上で紹介した「ソニックザグッホジッヘ」と「スーパーアレスタおやじ」はエッセイスタイルに
移行してからの作品です)
そして、作風のみならず画風までもが回ごとに(あるいはコマごとに)変わりました。
時に色鉛筆によるパステル調に。
急に主線が太くなったり。
なんかテキトーな感じになったり。
一般誌の漫画家のようにGペンで描いてみたり。
外国の漫画絵本みたいなタッチになったり。
後に確立される墨絵タッチの画風の片鱗も見え始めます。
こんな感じで、一話一話本当にやりたいようにやっているのです。
そして、やりたい放題の極め付けはこちらです↓
ある回で急にあらわれた、一般誌に載るような4コマ漫画。
その次の回は8コマに! 当然、担当編集者は戸惑いますが、玉吉は無視。
次の回はなんと、1ページに増量! さすがに担当も動揺します。
「ラブラブROUTE21」というヘンなタイトルまで付きました。
そして、次の回はなんと、ほぼ本編まるまる使っての大・増・量☆です。
玉吉は「これ以上スペースでかくなることはないから大丈夫」といいますが、その次の回は・・・
2ページ連載漫画で、オキテ破りの3ページブチ抜きで本格・暗黒舞踏、同棲漫画「ラブラブROUTE21」を
やってしまったのです!
労力をかけてまで人を驚かせて楽しい!という玉吉。
このネタ精神が、今後玉吉の物語を追う上で結構重要になってきますので、メモメモ。
ちなみに、この「ラブラブROUTE21」は読者から好評だったようで、
なんとアンケートベスト3入りを果たします!
担当のヒロポンも嘆いてますが、暗黒舞踏漫画がアンケートベスト3入りするゲーム雑誌って一体・・・。
・・・とりあえず、ここまでで「桜玉吉」というキャラクターの大体を掴んでいただいたと思います。
次回以降、いよいよ桜玉吉の物語を本格的に追って行きますので、よろしければお付き合いください。
(ちょっとニッチな作品なので、ついてきてくれる人がいるか不安ですが・・・)
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【中古】その他コミック 1)しあわせのかたち(愛蔵版) / 桜玉吉 【10P26Jan11】【画】価格:660円(税込、送料別) |
ここまで詳細にやられては
画像の違法アップも許されるのかもしれないな(笑)
ネットで使ってる奴もべるのしか知らない奴がほとんどだお。
そういえば
PS1、サターンで発売された「ガンバード」というゲームにイラストを寄稿してましたよ。そねみっぽいかんじの墨絵イラストでした
そうでした。
記憶がごっちゃになってるなー。
記事訂正しておきました。
ご指摘ありがとうございます。
ただ週刊化しただけかと。
マジかお!?
べるのが「だお」のパイオニアだと思っていました…。
「すすめ!!パイレーツ」をwikiったら、
たしかに「だお」を史上初めてやったと書いてありました。
本文中に追記という形で訂正させていただきました。
ご指摘ありがとうございますお!