紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【地獄先生ぬ~べ~】のメイキングからみる連載当時の世相

2011-03-07 00:34:42 | コミック全般
以前、【地獄先生ぬ~べ~】文庫版おまけ「メイキング・オブぬ~べ~」が面白い という記事を書きましたが、
今回はその続き的な記事を書きます。

前回の記事から引き続きぬ~べ~文庫版を買い続け、ようやく20巻中の14巻まで来ました。
連載でいうと、ちょうどTVアニメ放映が終了した頃くらいの話が載っているぐらいのところです。
で、相変わらず楽しく「メイキングオブぬ~べ~」を読んでいくうちに、【地獄先生ぬ~べ~】という
作品は、連載当時の世相が大きく反映された作品なんだなーと気がつきました。
これについて、原作の真倉翔先生と作画の岡野先生は文庫1巻のメイキングで以下のように語っています。

真倉
 「鏡だね、まさに。」
岡野
 「えっ?なにが?」
真倉
 「マンガが、だよ。当時の流行や社会状況が、如実に映し出されている。
 だから、同時代に生きた人間でないと、そのマンガのもつ隠された意味とか風刺性は
 完全には理解できない。もちろん、不変的なおもしろさはあるけれど、時代の空気みたい
 なものもあるからね。」
岡野
 「そういったところも、この文庫版では補足しつつ進めていくことにしましょうよ」


両先生の言葉通り、ぬ~べ~の各話で当時の時代を反映したような話があったときは、
メイキングにて両先生が当時の世相を振りかえる対話がされました。

今回の記事では、この「当時の世相」をキーワードに、ぬ~べ~が連載された時代というものを

「政治」「芸能・スポーツ」「流行・テクノロジー」「他のジャンプ連載作品」

以上4つの観点から、「メイキング・オブ・ぬ~べ~」を通じて見ていこうと思います。

参考までに、ぬ~べ~が少年ジャンプで連載された期間は1993年~1999年。(アニメは1996-1997)
文庫版は2006年に刊行されています。
つまり、2011年現在との時差は、連載時で12~18年。
文庫のメイキングで語っている時点では、5年の時差があることになります。
その点も踏まえて、今回の記事を読んでもらえると良いかもです。
では、どうぞ


 「政治」

一見、ぬ~べ~とは関係なさそうな「政治」という観点ですが、本編とメイキングを読んでいくと
意外と当時の政治状況を反映したようなエピソードや小ネタがありました。



まずは、こちら。消費税の額です。
10000円で、300円の消費税・・・?

そうです。当時は3%だったんですね、消費税。
2011年現在では5%となっており、しかも何時これより上がるかわからない状況になってます。
岡野先生は文庫収録時に5%に直すか迷ったそうですが、結局このまま掲載されました。




つづいて、こちら。細川元首相・・・。
この話の雑誌掲載時は現首相でした。細川護熙という難しい名前も特徴的。
日本新党の党首で、細川内閣の発足により、結成以来政権を維持してきた自民党が
初めて野党に転落したとか。でも、結局一年も持たずに内閣総辞職。
ちなみに、この人の後ろには小沢一郎の影がありました。
あらあら。なんだか現在と状況が似てますね。



またもや首相ネタ。村山元首相です。コミックスでは現首相でしたが。
まゆげが特徴的な人で、同じくまゆげに特徴のあるぬ~べ~のイジリ文句に使われてます。



つづいては、百年使われないうちに捨てられたモノが九十九神になるという話。
この話自体は政治的な要素はないのですが、メイキングでの両先生の対話が興味深いです。
以下に、真倉先生と岡野先生の対話を載せてみます。

真倉
 「百年も使うなんてありえないもんねえ。最近の製品は壊れるのも早いし、
  修理しようにも部品の在庫がすぐなくなるし・・・」
岡野
 「変な法律も作られちゃいましたからね。中古家電の販売を規制するってやつ。」
真倉
 「あんな法律、いつの間にできたんだろう?なんか最近の国会って、バカな
  パフォーマンスで国民の目をそらしておいて、その隙にこっそり重要な法律
  作ってるって気がするよ。」
岡野
 「そのうち"ハレンチマンガ規制法"なんか出来たりして・・・」
真倉
 「そしたらぬ~べ~発禁だよ!そうなったら大変だから、今のうちに買っておいた方が
  いいぞ、きっと。」

文庫版の刊行が2006年なので、このメイキングの対談もその頃されたものでしょうが、
ここで冗談めかしく話している"ハレンチマンガ規制法"に近いかたちで、
最近都条例が改正されましたね・・・。


 「芸能・スポーツ」

これは本当に数が多かったです。当時の芸能界やスポーツ界を感じされるネタの数々。



まずは、芸能人ネタについて。
一話しか登場しませんが、アイドル「桜井奈絵」というキャラクター。
このキャラは、「安達裕実」をイメージして描かれたのだそうです。
ちょうど「家なき子」がやっていた頃でしたね。



ぬ~べ「これはくだんだ」
広   「えっ、マルシアと結婚した?」
郷子  「それはぎたん」


タレントのマルシアと結婚した大鶴義丹と、妖怪の「くだん」をかけたダジャレネタ。
現在、マルシアと義丹はとっくに離婚されています。



郷子がものすごい格好で唱えているのは、美樹が吹き込んだ胸が大きくなるという
デタラメな呪文です。

「ひなひなひなひなあおたのりこ~ ビビアンクロフォード
 セクシーポーズでハブアキットカット」


呪文のひとつひとつがグラビアアイドルに関係しているようで、

 ひなひな … 雛形あきこ
 あおたのりこ … 青田典子
 ビビアン … ビビアン・スー
 クロフォード … シンディ・クロフォード
 キットカット … 一色紗英(キットカットのCMに出てた)

ということらしいです。
青田典子については、この話より10年後の、メイキング対談してる2006年になって
ブレイクすることになるとは、「ジーザス!」と両先生驚いておりました。



つづいて、スポーツ選手ネタです。
郷子が言ってる「カタリーナ・ビット」は88年のカルガリーオリンピックの
フィギュアスケートで金メダルをとった旧東ドイツの選手なのだそうです。
うーん、知らない・・・。
岡野先生は「今なら迷うことなく荒川静香みたいって書きますね」と言い、
真倉先生は「僕はミキティのほうがいいなあ」と言いますが、
このメイキングから5年経った現在では、「浅田真央」と書くのが一番自然な気がしますね。



今度はスピードスケートの選手から。
「黒岩」⇒カルガリーオリンピックで銅メダルをとった選手でした。



オリンピックネタ、まだあります。
アトランタオリンピック(1996)の女子マラソンで有森裕子選手がゴール後の
インタビューで語った言葉「自分で自分をほめたい」のパロディネタ。
「こんなアホな幽霊に言わせちゃってごめんなさい」と10年越しの謝罪!



つづいて、当時のCMパロディネタの数々です。今じゃもうほとんどわからん・・・。
美樹がよく使う「アンビリーバボー」というのは当時のはやり言葉で、
真倉先生は「防虫剤のCMかなんかで松田聖子が言ってたんじゃなかった?」と言ってますが、どうでしょう。
「あんびりーばぼー」って、スラムダンクの彦一がよく使ってた印象の方が強いなー。



ものすごい画ですが、これは当時のポッキーのCM「ポッキー四姉妹物語」のパロディらしいです。
うーん、憶えてないナリー



古代人の遺跡の映写機で、ポケベル(!)らしき機械のCMが。
広末涼子似の古代人が機械の使い方を説明してますが、これも当時のCMからだそうで。
岡野先生は「広末のおかげでドコモはシェアNo.1になれたって言われてた」と語ります。
真倉先生も「そうだよねえ。あのころの広末は、本当によかった・・・」と続きます。
あの頃「は」ってなんですか。「は」って。



「そんな、声まで変わって…」
これは憶えてます。ナオミキャンベルがやってたエステティックのTBCのCMですね。
同じ時期、藤崎竜先生も【封神演義】でネタに使ってたような気がする。


 「流行・テクノロジー」

ぬ~べ~は、一話完結方式ということもあり、当時の流行りものを取り入れた話の作り方が
されることもよくありました。



たまごっち(!)欲しさに船に忍び込んだり



プリクラが登場し出した頃には、一話まるまる使ってプリクラがらみの話をやったりもしました。



流行りというか、ちょうどこの話の頃(1997年)に地球に大接近する「ヘールボップ彗星」が
話題になってときにはすかさずネタにしていました。



育てゲー「プリンセスメーカー」をネタにした話。
記事冒頭の消費税3%のときにはスーパーファミコンのゲームを買っていた兄妹ですが、
この話ではCD-ROMを手にしてます。
ゲーム機も16ビットから32ビットに進歩したんだね。
でも、克也は変わらず小学5年生。 うーん、サザエさん時空。



テクノロジー系の話。
広が福引で当てたPCに謎のOSがインストールされてしまうという話ですが、
「夢の3Dポリゴン」って・・・。むっちゃカクカクしとる。
でも、当時は最先端の3D表現技術でした。



郷子が15年後のパラレルワールドに行ってしまう話です。
つまり、今くらいの時代が舞台なのに、「VHS」って・・・。
もはやDVDもブルーレイにとって変わろうという時代なんですけどね。
岡野先生も「そんなん予想できなかったもん!」とキレ気味。




流行といえば、イタコ女子中学生のいずなです。
このコは本当に流行に左右されまくってました。


最初の頃はフツーにしゃべってたのに、再登場時はコギャル語全開!


ひどいときはこんなんです。「チョベリバ」。ありましたねー。


ポケベルを使っていたかと思えば


次の登場では携帯電話を使ってます!
うーむ、いずなを追っていけば当時の女子の流行とテクノロジーの変遷がわかるかも?


 「他のジャンプ連載作品」

ぬ~べ~では、当時ジャンプで連載されていた作品のパロディが度々みられました。



ぬ~べ~が黒板に書いてる「めそ」・・・。
これは、【セクシーコマンドー外伝 すごいよ!マサルさん】のネタですね。
「めそ」という謎の生物が人気を博しました。



ぬ~べ~が手に持ってるのは【究極!変態仮面】という作品。
読んだ人ならわかると思いますが、今じゃジャンプでは連載できないようなマンガです。



いずながやってるのは【るろうに剣心】の飛天御剣流の技ですね。
【るろうに剣心】と【地獄先生ぬ~べ~】は当時のジャンプを引っぱっていったエース級の作品でした。
【ONE PIECE】や【NARUTO】、【ハンター×ハンター】に火がつくのはもう少し後になります。



「幕張」!
これは当時のジャンプ読んでた人には伝説的なマンガでした。
なにせ、当時ジャンプに連載していた他のマンガを片っ端からパロディのネタにしてましたから。
特に、【心理捜査官 草薙葵】のネタにされっぷりは、「バカにしてんじゃねぇのか」ってくらい
すごかったです。
ぬ~べ~の両先生は【幕張】の在り方を好ましく思っており、「(ぬ~べ~をネタに)使って」という
意味を込めて、このシーンを描いたのだそうです。
もちろん、しっかりネタにされましたとさ。


と、こんな感じでぬ~べ~連載当初を振り返っていきました。
ぬ~べ~は本当に時代背景が深くにじみ出た作品でした。
そのような作品が、終了10年後に文庫本になり、メイキングにて
このように当時を振り返りながら語っているようなコーナーができたのは
とても貴重なことだと思います。

これがまた、さらに10年後とかに読んだときにはどう感じられることか。
今から楽しみでもあり、少し怖くもありますね。

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6 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-03-11 14:43:34
ここには載ってませんが晶の買ったゲームに「エノキアス」がありましたね。ヘイムダルの背中にエノキが生えてるとかゼノギアス好きにはニヤリとさせられました。
まあ呪いのゲームで石化するんですが

「魔剣伝説」とかゲーム系の小ネタなら他にもありそうですね

返信する
Unknown ()
2011-03-20 16:38:15
一巻で魔剣伝説買ってた克也たちが
巻がすすむとお嬢様メーカーとか、
時代の流れを感じますねぇ。

エノキアスもそうだけど、
あの頃のスクウェアはよかった・・・。
(おっと、そういう話じゃなかった)
返信する
面白い着眼点です (某資料館管理人)
2012-04-28 17:06:05
パロディネタって本当に世相を反映するものですよね。また、当時の流行や価値観なども垣間見えて興味深いです。

元細川首相、元村山首相発言についてですが、実はジャンプ掲載当時だと当然、元は付いていません。

それから、文庫版はコミックス版と比較すると、かなり著作権や知的財産にシビアになっているようで、あちこちに改変が見られます。

一番顕著なのは、ぬ~べ~が外車を買う話なんですが、これはコミックスだとポルシェとなっています。それからプリクラの話はプリクラが登録商標のため、写真シール機になっています。

他にも彼らがよく遊ぶゲーセンの名前は「マリオ」でしたが、これも文庫版だとマリオという名前がそのまま消されています。
返信する
Unknown ()
2012-05-01 00:53:34
>某資料館管理人さん

ま、まさかあの資料館の管理人さんでは!?
アワワ、全話早見一覧非常に便利でした…!

なるほど、あの外車ポルシェだったんですね。
こういう名称変更は本誌→コミックスの際に
ほとんど直ってるものだと思ったんですが
文庫化でさらに直されるとは。
こういう観点で作品を語り倒すには
本誌、コミックス、文庫のコンプが必要そうですが
かなりハードルが高そうですねー
返信する
Unknown (5ノ3)
2014-03-01 18:07:57
魔剣伝説って聖剣伝説のパロディですね
あれSFCじゃ出てないんですよね~ 1はGBでした
SFCとPSの現役時期はかぶっているのでこの点についてはあながち矛盾もないと思います
SFC 90~98
PS 94~00
返信する
昔の日本のアニメは最高 (台湾人)
2016-10-01 18:06:09
アメリカ合衆国のシンディ・クロフォードとクリスティー・ターリントン、ドイツのクラウディア・シファー、カナダのリンダ・エヴァンジェリスタは当時1980年代晩期から1990年代まで一世を風靡した伝説のスーパーモデルですよね。

台湾ではクラウディア・シファーがしばしばマスコミに取り上げられ、テレビではクリスティー・ターリントンのメイベリンの化粧品のCMがよく放送されていました。

昔の日本のアニメは本当によかったです。2000年以後はあまり共感できる物がなくなってしまい、とても落胆しております。
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