紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【週刊少年ジャンプ】伝説のジャンプリーダーズカップを振り返る

2011-05-05 21:25:34 | コミック全般

かつて、週刊少年ジャンプ誌上にて「ジャンプリーダーズカップ」という企画が行われました。
(週刊少年ジャンプ1997年22号~32号に渡って実施)
その内容とは、

読者によって選ばれた10名のジャンプ作家がそれぞれ読み切り漫画作品を一本描き、
読者人気投票によって誰の読み切りが一番優れているかを競う

という、読者にとっては夢のような、作者にとっては地獄のような企画でした。
この企画に選ばれた作家のほとんどが当時ジャンプに連載を持っていた作家さんだったので
ただでさえ過酷な週刊連載の合間に読み切り一本描かせるなんて編集部もエグいことするなぁ、
と当時他人ごとのように思ったものでした。

選ばれた10名の作家さんは以下です。(敬称略)

 鳥山 明
 和月 伸宏
 秋本 治
 つの丸
 梅澤 春人
 藤崎 竜
 浅美 裕子
 荒木 飛呂彦
 うすた 京介
 森田 まさのり

1997年当時、納得の豪華布陣といったところです。
胸熱にならざるを得ないッ!
ちなみに、当時のジャンプ連載陣はこんな感じでした↓

【るろうに剣心】:和月伸宏
【封神演義】:藤崎竜
【こちら葛飾区亀有公園前派出所】:秋本治
【地獄先生ぬ~べ~】:真倉翔・岡野剛
【BOY】:梅澤春人
【I"s<アイズ>】:桂正和
【遊戯王】:高橋和希
【WILD HALF】:浅美裕子
【すごいよ!!マサルさん】:うすた京介
【みどりのマキバオー】:つの丸
【花さか天使テンテンくん】:小栗かずまた
【幕張】:木多康昭
【ジョジョの奇妙な冒険】:荒木飛呂彦
【真島クンすっとばす!!】:にわのまこと
【Wrestling with もも子】:徳弘正也
【キャプテン翼 ワールドユース編】:高橋陽一
【魔女娘ViVian】:高橋ゆたか
【Merry Wind】:山本純二
【仏ゾーン】:武井宏之
【とっても!ラッキーマン】:ガモウひろし(最終回直前)


うーん、懐かしい。一作一作について当時の思い出を語りたいところですが、
主旨から外れるので自重します。
ちなみに、この企画の直後に現在も大好評連載中である【ワンピース】が連載開始となります。
(あと、伝説の作品【世紀末リーダー伝 たけし!】も)
ジャンプリーダーズカップが行われたWJ1997年22号~32号当時はそんな時期でした。

さて、そんな伝説のジャンプリーダーズカップの作品ですが、
最近、コンビニコミックである「ジャンプリミックス」から10作品をまとめた形で
刊行されたのです。



これは懐かしい!
ということで近所のコンビニで早速ゲットし、当時に思いを馳せながら奇跡の十篇を読み返しました。
今回は、この十篇の物語について当時を振り返りつつ語っていこうと思います。


  【魔人村のBUBUL】 鳥山 明



【概要】
普段はおだやかだけれども、怒らせると手が付けられなくなるほど大暴れする魔人たち。
そんな魔人たちの過ごす村に、ある日銀行強盗を犯した人間が逃げ込んで来るが・・・?

代表作【ドラゴンボール】も終了し、読み切りや短期連載をぽつぽつ発表する活動のみに
とどまっていた鳥山明先生のリーダーズカップ参戦は、当然のごとく読者に熱望されました。
当時はまだドラゴンボール熱も冷め切っていない頃。
90年代前半のジャンプを強力に牽引した看板作家の再起を、読者も編集部も
望んでいたんじゃないでしょうか。
ただ、この作品の内容はドラゴンボールのようなバトルものではなく、
キャラクターありきのほのぼの系物語でした。
これより前に掲載した読み切り【宇宙人ペケ】もそうですし、これより少し後に短期連載を開始する
【COWA!】もほのぼの系です。
きっと鳥山先生はこういう話が描きたかったのでしょう。



エアマックスとか、時代ですねー。
ちなみに、鳥山先生がCGで仕上げ作業をはじめたのもこの頃です。


  【メテオ・ストライク】 和月 伸宏



【概要】
身体は小さく力もないけど人の役に立つことを喜びとする少年・信矢に
ある日、空から降ってきた小さな隕石がつきささった!
頭に隕石のつきささったびっくり人間として一躍有名になった信矢だったが
この隕石が信矢に奇跡の力をもたらす。

【ドラゴンボール】【スラムダンク】が終了したあとのジャンプを強力に引っぱっていた
【るろうに剣心】の和月先生の読み切りも、この企画の目玉でした。
時代劇ではない和月先生の作品というのも新鮮さが光っています。
リミックスのコメントで和月先生も言っていますが、のちの武装錬金につながる
変なノリもあり、楽しい作品でした。



「原発だってちょっとやそっとで放射能漏らす程ヤワじゃない」
僕にもそう思っていた時期がありました・・・。
この作品は新潟が舞台のようなので、柏崎刈羽原発が意識されてるのかな?


  【R.P.G.】 秋本 治



【概要】
アメリカ人の母と日本人の父を持つ少女・エリス。彼女の悩みのタネはゲームクリエイターを
目指す日本人の父だった。父はゲーム作りに夢中で家族はほったらかし。その上、おもしろい
ゲームを作る才能も無いときている。エリスはそろそろ父に成功してもらわないと、
ということで父のゲーム作りに協力する。

【こち亀】の秋本先生の読み切りということで結構レアな作品です。
こち亀のイメージしかないので、ハーフの女の子が主人公の秋本作品は非常に新鮮!
親子ドラマ、サブカルチャー、チェイスアクション、サクセスストーリーと
いろんな要素が入っていて、内容も面白いです。



たまごっちというのも時代を感じさせます。
この作品を描くにあたり、秋本先生はセガに取材に行ったそうです。
ヘンで面白いゲームといえばセガ!


  【ときめきラブポーション】 つのま☆るみ



【概要】
超絶勘違い娘・トミ子のスポ根ギャグ漫画

【みどりのマキバオー】連載中のつの丸先生が「つのま☆るみ」名義で描いた作品で
10作品のなかで唯一のギャグ漫画となっています。
マキバオーの反動からか、ものすごいアホな作品です(褒め言葉)



キャラは一部の人物を除いて、おなじみの「つの丸顔」。
つの丸顔の人物とそうでない人物の対比が結構面白いです。
ハゲ子先輩って。


  【ICON】 梅澤 春人



【概要】
聖像画(イコン)を描く画家だった羽山聡明は、三年前の強盗事件で妻と娘を殺されてからというもの
おぞましい悪魔の絵を描くようになる。やがて聡明は拳銃自殺をするが、それはカンバスに現れた
悪魔との契約だった! 悪魔と契約した聡明の壮絶な復讐が始まる。

【BOY】連載中の梅澤先生の読み切りはかなりダークネスな内容でした。
典型的な悪人が悪魔にエグい復讐をされる話ですが、もっと復讐シーンにページを
さいてもよかったんじゃないかってくらいあっさりとした復讐だったのが残念かも。
まあ、規制も厳しかったんでしょうけど。



この作品を描くにあたり、梅澤先生は博物館に「鉄の処女」の取材に行ったそうです。
鉄の処女の顔の部分の内側は閉じると受刑者の目に針が突き刺さるようになっているんだとか!
ひいいい!


  【ユガミズム】 藤崎 竜



【概要】
天才少女スズキ・エンの最近の研究は、「歪み」を発生させる人間・人内積重の研究だった。
エンは積重が「歪み」を発生させる原因をさまざまな仮説を立てて突き止めようとするが・・・?

【封神演義】のフジリュー先生のSF(?)読み切りです。
まさにフジリュー!って感じの説明の難しいノリが展開されます。
フジリュー作品が苦手な人も結構いるようですが、僕は好きです。
ただ、フジリュー先生はこの作品があまり気にいっていないらしく、
連載中の執筆だったので時間があまり取れなかったと悔やんでいるようです。



この作品にはDVDが登場してますが、この頃まだ出始めたばかりで
それほど普及してなかったはずです。
フジリュー先生は新しいもの好きか?


  【ROMANCERS】 浅美 裕子



【概要】
何者かに命を狙われる女性・朝倉真紀はまだ少年のボディーガード・宝良を紹介される。
宝良は言葉をあやつる魔術師「ロマンサー」であった。

【WILD HARF】の浅美先生のちょっとイイ話系のアクションストーリーです。
今回の10人のメンツの中ではちょっと浮いてる感じがする浅美先生ですが、
当時【WILD HARF】は「それほど有名じゃないけど堅実な良作」といった立ち位置の作品でした。
【ROMANCERS】は、言葉をあやつる魔術師という設定がなかなかおもしろく、
のちに連載化されることになります。(単行本3巻分で打ち切りでしたけど)
十篇のうち連載化されたのはこの作品だけです。



浅美先生は現在一般誌での活動はされていませんが、同人活動はされているようです。
ちなみに、浅美先生の旦那さんは【アウターゾーン】の光原先生です。


  【岸辺露伴は動かない】 荒木 飛呂彦



【概要】
漫画家・岸辺露伴はイタリアでの取材旅行で懺悔室にあらわれた男の懺悔を聞く。
その懺悔は、男が味わった恐怖の体験であった・・・。

【ジョジョの奇妙な冒険】(当時は五部連載中)の荒木先生の読み切りなんですが、
この企画は「外伝禁止」のルールのもと行われているので、露伴のキャラを使ってるのは
若干ルール違反な感じがします。
まあ、露伴はこの物語の語り部的存在で実際に動くわけではないのでぎりぎりセーフですが。
タイトルの岸辺露伴は「動かない」とは、露伴は主人公ではなく物語のナビゲーターで
実際に動くわけではないですよという意味になります。
作品の内容は、荒木先生お得意の限定バトルといいますか、四部でよく見られた
ジャンケン対決やチンチロリン対決のようなシチュエーションがみどころです。
個人的に十篇の中で一番好きな作品でした。



露伴が言ってる「ある事故によるちょっとした負傷」は仗助にボコられた時のことでしょうね。


  【ビフィータ】 うすた 京介



【概要】
牧場の少年・タンゴは美しい少女・ジルバに憧れている。
ある日、一頭の牛をきっかけにジルバと仲良くなったタンゴだったが・・・?

【すごいよ!!マサルさん】のうすた先生のギャグのようでギャグじゃない作品です。
少年漫画としては王道のボーイ・ミーツ・ガールものですが、十篇中これだけですね、そういえば。
ギャグじゃないうすた作品は新鮮ですね。うすた先生自身も、当時の自分が何故こんな話を
思いついたのか今では不思議なようです。



でもなんかところどころギャグっぽくみえるんだよなぁ。
「キュピーン!」とか。


  【ギャングエイジ】 森田 まさのり



【概要】
小学生の裕太は気に入らない。大好きだった吉川先生が学校を辞めてしまう。
ある日、裕太は友人の提案に乗って吉川先生を人質に学校に立てこもることにした!

【ろくでなしBLUES】が終了してほどなくした森田先生の小学生を主人公にした作品です。
【ルーキーズ】の連載が始まるのは、この作品が発表された少しあとになります。
小学校高学年生特有の、「オトナって勝手だ!」という行き場のないモヤモヤとした感情が
よくあらわれている丁寧な作品です。
主人公は小学生ですが、作品の内容は子供が読むよりは大人が読んで子供時代の感情を
味わうような作品だと思います。



当時は携帯ゲーム機といえば初代ゲームボーイ!
ゲームボーイカラーすら出ていない時代でした。


以上、十篇振り返ってみました。
たしか人気投票で優勝したのは鳥山明先生だったと思いますが、
はっきり言ってこの企画、勝ち負けは二の次。
当時のジャンプ人気作家が読み切りを持ち寄って発表するという、
お祭り感覚がひたすらに胸熱だった記憶があります。

今のジャンプでやるとしたら、

 尾田、岸本、久保、島袋、空知、大場×小畑、篠原、天野、椎橋、田村

といった先生方が参戦されるんじゃないでしょうか?
おぉー、なんかすごい。
まぁ、やらないでしょうけど。

でも、またこういう胸熱なイベントを体験できればいいですね。

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1 コメント

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2023-09-12 18:04:15
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