彼の「マッハ号」が天神に向けて3号線を加速し始めた瞬間
BGMのVELVET REVOLVERをかき消す程のエンジン音を巻き起こし
俺の体は助手席のシートに張り付いた。
凄まじい加速力だ。
福岡に来て2年と8ヶ月、今まで色々な人の車に乗ったが、ここまでGを感じた車は無かった。
そう、中学の時100mを12.4秒で走っていたスピード狂の彼は
車を手に入れてからもスピード狂だったのだ!
そして走る事10数分。JR博多駅、西鉄薬院駅を経由しいよいよボニータは迫ってきた!
「言っとくけど、今日行く店あやしいから」
と俺は言った。
そう、アナモトはボニータ初体験なのだ。
「…怪しいってどんなふうに?」
アナモトが不安げに答える。
「まぁ見ればわかるよ。あ、あれあれ」
マッハ号、ボニータ前を通過。
まるで船についてる戸を思わせる、丸い窓のついたこじんまりとした入口。
ボニータと書かれたアメリカンな立て看板。
そしてその側には、鼻メガネと釣り用のベストを着飾りフィッシャーマンと化した
上半身だけのマネキンが立っていた…。
(数か月前まではミリタリーのコスチュームを着たフセイン大統領風だった)
「…何アレ…」
「ボニータ」
アナモトは面白さ半分、怪しさ半分といった感じで黙り込む。
そう、ボニータの怪しさといったら、かの有名な
「どすこい喫茶ジュテーム」くらい怪しいのだ。
どすこい。
近所の駐車場にマッハ号を停め、ボニータに入る。
扉を開けると、そこにはサンタがいた…。
続く。