gooブログはじめました!散歩写真の達人 石ちゃんのフォトエッセイ ーーー30年の私写真散歩 少しずつお見せしましょう。

「東京原色図鑑」散歩とスナップ写真1万点。
80年代の東京も。大好きな写真家に、濱谷浩、石元泰博、森山大道氏等。

カメ漫だらだら石ちゃん散歩 心機一転002

2013年03月09日 | 散歩 余暇 趣味 健康 デジカメ

 前回、あまりにも取り上げた本の、ここが面白かったとか、ウム、ここいいよなあ、等と
いう点が具体的に書かれていなかったことが気になっていて、書き加えようと思います。

 「南十字星に針路をとって」 崎山克彦著 新潮文庫

 この作家の本は、偶然、「何もなくて豊かな島」も、「青い鳥の住む島」も読んでいたが
3冊目の今回ご紹介する 「南十字星に針路をとって」がぼくの一番心に届いて、この作者の南の島にほれ込んで島を買って住むようになった話も感動的であったが、・・・・・・

 いやあだめだなあ、ぼくには、この本いいなあとは好き嫌いで言えても、客観的にどこに感心したかを書くとなるとまるで駄目だなあ。書評って難しいんだなあと知る。

 この作家の生き方は前作2作で知っていたつもりであったが、今回舞い込んできたヨットに乗ってフィリピンから太平洋を渡って2万キロの、ヨットによる航海にチャレンジした記録がはからずも作者が憧れていた南太平洋のゆっくりのんびり航海記 となって読む者に架空の旅の楽しみを提供しているところが面白かった。

 アメリカまでヨットで行く、たびたび南の島をゆくその小さな島々の 現地の人々との
接し方、自然な振る舞いがとても良い。ビジネスマンとしてもかなり大きな仕事をしてきたと思われる作者、日本の誰でも知っている大出版社の重役としても、アメリカの出版社の中でもかなりハードな仕事をしてきたであろう作者、の白人とはすこし違う日本人らしい島の人々への優しい付き合い方がとっても良かった。ちなみに、ヨットのキャプテンもアメリカ人でいい男であるようなのであるが、アメリカに絶望して海で暮らすことを選んだらしい海の男であるようなのであったが、やはり白人は日本人とは少し違うようなのであった。分かってもらえるだろうかここら辺の微妙さを。

 一例をあげる。グアダルカナル島、ホニアラの街に寄った時、作者は、新鮮な野菜を買いたいがためにタバコを吸っていた一人のあんちゃん風の男に話しかける。親切に男はマーケットまで案内してくれ、お礼に夕方船の乗組員とともにホテルのバーに誘う。ところが、バーは、外国人はいいが、現地の人間はダメと断られてしまう。そこで、この作者は書く。
 「こういうところは、どうも虫が好かん。外国人だけが固まって、現地人と一体にならない原因をつくっているように思うのだ」こんなちょっとした文から、好きになってしまうのだよ。結局この若者の奥さんも一緒に食事に誘おうとするのだが、「お金がない」からと断られてしまう。男の言うとおり家に案内され奥さんやみんなに一生懸命なもてなしを受け交流をはかる。若者は音楽を目指して今はステレオショップで働いている。二人で100ドルもあれば暮らせるという。ところが島にはピアノなどの楽器もいろいろな種類の音楽を聴く機会もないという。作者は何度か家によばれて肉やビールを持ってたのしく食事をする。そして、日本からいろんな音楽を送ってあげようと決意する。「この国でピアノを習うのはとても無理なことだろう」と書いてあるが、できるだけこの若い夫婦の役にたてればとおもうところがよかった。旅で人と巡り合うことの楽しさ、とはこういうことではなかったか。
また新しい友人がひとり増えた、という一文を読むとこちらまで気持ちよくなってくる。

 旅の本を読むことは、こんな世界の人々と心の交流があるから旅とは楽しいものだと再確認することにあるのだとわかる。



                          エッセイ 石郷岡まさを