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アドラー心理学は神や仏を持ち出さない宗教なのか? 

2019-06-24 12:13:30 | 人生経営
 日経ビジネスオンラインに、2014年4月8日に掲載された「嫌われる勇気を持てば幸せになれる対人関係に悩まない生き方―自己啓発の源流『アドラー』研究者の岸見一郎氏に聞くー」が、2019年6月21日に再編集され配信されてきた。

 その最後のほうに「岸見先生のお話を聞いているとアドラー心理学は宗教に似ているような印象を受けました」と、インタビュアーが聞いている。

 これに対して岸見氏は「神や仏を持ち出さない宗教と言えるかもしれません。神や仏を出すと受け付けない人がいます。でも神を信仰していると言っている人が、その教えを実践できているとは必ずしも言えません。だからアドラー心理学は神のない宗教と理解しています。最近の心理学では、あらゆることを脳の機能に還元するような傾向があります。例えば、人が誰かを好きなのは脳がそうさせている。人間には自由意志があって、何かを自分で決められることを否定している。しかし脳の仕組みで説明できることには限界があります。トラウマの話もそうです。心理学では様々なことを過去のトラウマのせいにするケースがあります。でもアドラー心理学を研究する立場からは「トラウマは存在しない」と考えます。人間が過去の経験や体験によって決まるなら、治療も教育も育児も関係なくなる。何でも過去の体験で決まっているというなら、治療のしようがない。私はカウンセリングで過去を聞きますが、あくまで理解のためで根掘り葉掘り聞くことはありません。過去を聞いても意味がない。それで、あなたはどうしたいのか。それが重要です。何か希望を持って帰ってほしいと思って話をする。 大事なのは、過去ばかりを振り返ってあれこれ考えることではありません。今、この瞬間をあなたが、いかに生きるのかです。変われるのは自分だけであり、自分が変われば、世界も変わります。」

 ここで岸見氏は「しかし脳の仕組みで説明できることには限界があります。」と答えているが、これはカントが「純粋理性批判」の中で明らかにしている、アンチノミーの言い換えだろう。カントのアンチノミーと言いだすと、説明が簡単には終わらない。そこを岸見氏ならではの、わかりやすい言葉で説明している。上記の引用の前には、岸見氏自身が精神生活において苦労したことが書かれている。苦労人ならではの咀嚼された言葉はわかりやすい。ただ、深くは理解できないので、なぜそう言えるのかは、読者が探して深めていくしかない。


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