土木の工程と人材成長

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イスラム過激派の暴走を止める方法

2024-05-04 12:34:32 | 思考
以下、佐藤優「世界史の極意」NHK出版新書、2015.1.10の抜き書きである。例えばP207で佐藤は、『イランが核兵器を持った場合、イスラエルはそれを上回る核兵器を持つので、イランは核を使わないと考えたくなる。ところが、イスラエルが核で攻撃してきても、お隠れになったイマームが現れて、イランを守ってくれるに違いない。イランの支配層がそう信じているとすると、イランが暴走する可能性もある』という。

これは、P205では、『イスラム教徒が約束をした時間に遅刻すると、「ごめんなさい」とは言わない。「アッラーを恨むな」と言う。「私が遅れてきたのはアッラーの神様が遅れるようにしたからで、だから文句を言うんじゃない」。そういう発想になる』と書いており、すべての教徒の考え方ではないかも知れないが、イスラム教信徒の考え方の一面をよく表していると思われる。

で、PP222-225には原理主義の暴走を止める方法として、「そのヒントはネイション(国民)にある」と佐藤は言う。『ネイションの基にはエトニ*1(共通の先祖・歴史・文化・価値・記憶・言語・血統と、ある特定の領域との結びつき、内部での連帯感をもつ集団)がある。このエトニにイスラム原理主義を無力化する鍵がある』とする。また、『こうしたイスラム原理主義の特徴を熟知して、その暴走を事前に食い止めようとしたのがレーニンとスターリンだ。スターリンは、イスラム原理主義の信仰対象、慣習を尊重し、摩擦を起こさないようにし、エトニを刺激して、イスラムへの帰属意識よりも民族意識を強化する』を紹介している。

イスラム教は、コーランの中に日常生活の仕方、倫理、法律まで書かれており、ラマダンなど厳しい戒律を守る信者であるから、おいそれとはいかないであろう。しかし、レーニンとスターリンが歴史で証明している。この可能性を大事にすることは、人間としての基本を外しておらず、大いに期待が持てると思う。十字軍の遠征で、フェデリコ二世がローマ教皇の命令に従わず、スルタンと手紙のやり取りを行い、無血でエルサレムの解放を行ったように*2、人としてこの世に生まれ、生きる意味と価値を考えた場合(哲学的思考)、エトニの考え方はイスラム教徒の心に浸透していくのではないだろうか。

*1 エトニ(同書P120):アントニー・D・スミス「ネイションとエスニシティ」名古屋大学出版会、1999.6.10,P39
*2 フェデリコ二世:2024.5.3,21:00~22:30.BS1,パクス・ヒュマーナ~平和という“奇跡”