本屋デートは無事に終わった。
楽しそうに「また行きましょうね」と笑う美也の横顔が、午後の陽射しよりも眩しく見えた。
太陽が黄色く見えるのは――そう、たぶん寝不足のせいだ。
夜中に何度も「何か言いすぎてないか」「近すぎたか」と反省会を開催し、朝を迎えていたから。
「お土産です、修二さん♡」
美也がそっと差し出したのは、可愛らしい動物と景色の描かれたカラーの絵葉書。
裏には、作家らしいアーティストの直筆のサインが入っている。
「これ……君が選んで?」
「はい。甘い物は……もしかして遠慮されるかと思って」
一瞬、胸の奥がじんわり熱くなる。
ああ、気を遣わせてしまったのか。自分のために、こんなものを。
だがその直後、美也がもうひとつ、紙袋を差し出した。
「それと、こちらは――智久さんからです」
「……は?」
紙袋を開けた修二の手が、ピタリと止まった。
中にあったのは、どこからどう見ても、健康志向・脂質制限・糖質カットのスーパーダイエット三点セット。
──カロリミット、プロテインバー、そして「置き換え雑炊」。
「……捨てていいか?」
「だ、ダメですよ!智久さん、一生懸命選んでたんです。『これが修二さんの未来を救う』って!」
「いらん未来だわッ!」
思わず袋を床に叩きつけそうになりながら、修二は内心で誓った。
(絶対に次のデートでは、腕の一本くらい組ませてもらう。チョコレートだって受け取ってもらう。そして……ダイエット食品を押し返す!)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます