Journal de Tsurezure

雑多な日常、呟き、小説もUPするかもしれません。

なろうとあるアファでは、少し変えてます

2021-11-19 09:49:21 | オリジナル小説

「一人の男の犠牲の上に成り立つ幸せとは 男(夫の浮気を妻は知らない) 復讐する者、義父と友人」
小説家になろう https://novel18.syosetu.com/n5825hh/

アルファポリス
「だから最後は一人になった(夫)たった一人の男の犠牲の上に成り立つ、皆の幸せは、ここから始まっ た」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/587918429/225562497

元は同じ小説ですが、アルファに投稿した後、なろうには加筆、少し描写などを変えてなろうにUpしています。
ブログに再Upする際もと思いましたが、今後、こちらの方には突発短編、二次などを投稿しようと思っています。

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女だった良子はいない、そして男達は真実を知る

2021-11-11 17:51:20 | オリジナル小説

 名前を呼ばれて振り返るが、久しぶりと声をかけられて怪訝な顔つきになったのも無理はなかった、知り合いではない事は確かだ。
 すると、その男は笑いながら尾崎、大学で一緒だった尾崎良子だよと笑いながら近づいてきた。
 まさか、本当に、学生時代に仲の良かった友人、いや、それ以上だと思っていた相手だ。
 
 あのとき、突然、大学を辞めると言い出したときは驚いた、理由を尋ねると、はっきりとした事を言わない、曖昧な口調で生活が苦しいとか、勉強はあまり好きではなかったとか、こんな話し方は、正直らしくないと思った。
 何か、他の理由があるのではないかと思ったが、翌日から大学にも来ない、アパートを尋ねると引き払った後で忽然と姿を消してしまった。
 彼女と仲の良かった女友達に話を聞こうとしても駄目だった。


 良子なのか、尋ねると相手が笑った、そのことに男はほっとした。

 「久しぶりの日本、昔の友人にも会えてほっとしたわ」
 「友人、なのか、俺は」
 
 そうだよと屈託なく笑う相手に男は呼びかけた。

 「なんで話してくれなかったんだ」
 「話すって、何を、終わったことだよ、随分と昔のことだよ、それに言えないでしょう」
 
 男は首を振った。

 短かったけど楽しかったよ、田舎から出てきて大学生活、バイト先とアパートの往復は大変だけど初めての事ばかりで楽しかったとオザキは笑いながら言った、あのときまではと。

 「皆で楽しく飲み会なんて浮かれてた、田舎育ち、世間知らずの女なんて遊び相手、いやオモチャ以下だよ」
 「良子、そんな言い方、やめてくれ」
 「あんたは、とっくの昔に、結婚して子供ができて、幸せになったと、そう思ってたのに、違うんだね」
 
 男は首を振り、幸せだと呟いた。

 「尾崎良子に、やっと会えたんだ」
 「いいや、女だった良子は、もういない、こうして会いに来たのは、邪魔しないでって、言いにきた、それだけだよ」
 「あいつにか」
 
 頷く相手に男は近づいた。

 「俺にできることは」
 「気をつけろって言ってあげたら、友達だろう」
 
 自分の言葉は届かないのか、その場に膝をつく、そして地面に額を擦り付けると懇願するように男は叫んだ。


 
 「今夜は遅くなる、終わったら飲み会、で、遅くなったら会社に泊まるかもしれないから、親父のこと頼む」
 
 自分の言葉に妻は従順だ、少し、いや、微塵も疑っていない。
 仕事で遅くなるのは本当だ、だが、その後の飲み会は会社の同僚、仲間とではなく、二人きりだ、本当の事、それに嘘を少し混ぜることで真実味が増すというものだ。
 自分は学生の頃からモテていた、それは結婚した今でも変わらない、明らかに母親似なのだろう。
 父親とは大違いだ、母が亡くなってから何年だ、新しく女を作って再婚でもすればいいのに父は今も独り身だ。
 まだ、男じゃなくなる歳でもないのに、それほど母を愛していたということなのか、自分の妻と同じ、彼女も夫の俺一筋だ。
 最近の風潮ではないが、浮気の一つぐらいと思う、だが。
 
 (まあ、あいつに浮気する程の度量というか、ないな)

  

 「お待たせしました」

 待ち合わせの場所は公園のベンチだ、座っているとやってきたのは女性だった、オザキですと言われて男は驚いた。

 「変装ですよ、それで協力してくれるんですよね」
 「そのことだが、息子だぞ」
 「あなたは、そう思ってます、本当に彼はあなたの息子だと」

 友人に言われた言葉を、ここで、また聞かされるのかと男は女を見た。

 「あなたは奥さんが亡くなって随分とたつのに、新しく恋人を作ることも、再婚もしない、そんな、あなたのことをを亡くなった妻を愛していたからだと世間は思うでしょうね、でも、本当は」
 

 「不幸な女性の姿を見たいですか、ああ、違いますよ」

 不思議そうな顔で自分を見る男に、わからないんですかとオザキはふと視線を逸らした。
 男の表情がこわばるように固まった、誰の事を言っているか、わかったからだ。

 「ばれないと思っているんですか、浮気、いいえ、謝れば許して貰えるなんて思っているんでしょう、そして隠れて、また繰り返す、でも疑心暗鬼になり
ながらも彼女は許すんでしょうね」
 「そのときには」
 
 説得して別れるように、その方が互いの為だ、だが、男の言葉を否定するように別れませんよと、オザキは言った。

 「彼女は自分から言いません、別れるなんて絶対にです」
 
 断言するような口調に子供ができないんです、知らなかったんですかと言われて男は唖然とした、そんなこと二人は一度も行った事はない。
 言葉が出ない、返事ができないまま、無言になってしまった。
 どれくらい時間がたったろう、そう思った時。
 

 「ミサキさん、ですよね」

 手招きをする視線の先を見て男は驚いた、息子の嫁、彼女がいたからだ。

 
 

 「以前、同じ職場で働いて人でね、偶然、会ったんだよ、それでつい話しをしていたんだ」
 
 まるで、言い訳をしているような気分だと思いながらソファーに座り新聞を広げるが、記事を見ているわけでも、読んでいる訳でもなかった。

 「そうなんですか、あっ、お茶、入れましょうか」
 
 いつもなら、にっこりと、それなのに今は背を向けたままだ、どんな顔をしているのか分からない事に不安を感じてしまう。
 
 (顔を見せてくれ、笑っていて欲しいんだ)


 
 協力してくれますよねと言われて、はっきりとは断れないまま、迷っている自分がいた。
 先延ばしにして長引かせたたところで、オザキは仕返しをするのだろう、何をするのかわからない、だが、それで不幸になるのが自分だけではない、嫁の彼女だとしたら、あまりにも理不尽だと思ってしまう。

 その夜、遅く帰ってきた息子に男は部屋に来るようにと声をかけた、聞きたい事があると。

 

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友人から知らされたのは息子の浮気だった (義父は悩む) 1

2021-11-09 16:01:24 | オリジナル小説

なろう、ハーメルンにもUpしていますが、内容が少し違います。

これは今現在、ハーメルンで書いているものです。

 

 

 話があるんだが、友人から誘いのメールが来た時、つい先日、一緒に飲んだばかりなのにと思いつつも、すぐに返事をし、その日の夕方、会うことになった。
 いつもならどこかの居酒屋、飲み屋で会うのだが、この日に限って、友人は珍しく、自分の家に行こうと声をかけてきた。
 何かあったのだろうかと思いつつ、待ち合わせの場所で友人の顔を見たときだ、いつもと違うものを感じ嫌な予感がした。
 いつもなら酒をという流れだが、コーヒーや茶がでる気配もない。
 どうしたんだと、こちらから聞いてもすぐには答えない、友人は迷っている様子だ。

 「単刀直入に聞くぞ、息子は元気か」
 
 なんだ、いきなりと思いつつ頷きかけて、もしかしてと思う。
 
 「この間、見たんだ、その、なんというか」
 
 友人はわずかに顔を伏せたまま、小声で言いにくいんだがと呟やいていた、しばらく、無言になった後、場所が一人じゃなくて、どう見てもと、言葉をぶつ切りにしながら会話を続けようとする。 
 そんな態度を見ていれば嫌でもわかってしまう。

 「女と一緒だったのか」
 
 浮気か、ぽつりと呟き思わず額に手を当て、落ち着けと自分に言い聞かせながら、ふと窓の外を見た。

 「なあ、こんなこと聞いたところで愚問かもしれんが、本当におまえの息子なのか」
 
 そんなことを聞いてどうする、今更だと思いながら何を話せばいいのかと迷った。

 「結婚を許したのは間違いだったのか、今更だ蒸し返してもどうしようもないが」
 「友人として言わせて貰うぞ」
 
 真剣な声に言ってくれと促した。

 「あれは病気だ」

 その言葉に確か煮と納得してしまう自分がいた。

 「そうだろうな、いや、自分で言われるまでもなく思うよ」
 
 自分の息子が浮気をしているという話を聞いた後、ふと脳裏に浮かんだのは亡くなった妻の顔だ。
 
 (本当に、そっくりだ、おまえに)
 
 今、そんなことが思えるのは彼女がいないからだ、勝手なモノだと思いながらも正直なところ、ほっとする自分がいた。
 
 浮気なんて隠しても遅かれ早かれ、いつかはばれる、帰り道、友人の言葉を思い出す、確かにそうだ。
 もし、ばれたとしても息子のことだ、素直に謝るとは思えない、開き直るのが正直いいところだろう。
 それとも謝れば許してもらえると思っているのだろうか、だとしたら。
 


 自分と同じ轍を彼女に踏ませるわけにはいかない、そんな思いはさせたくないと思っている。
 家まではあと少しの距離だ、ドアを開けたら、おかえりなさいと息子の嫁は自分を迎えてくれるだろう。
 
 

 突然、名前を呼ばれて振り返る、近づいてくる相手を見て誰だと不思議に思ったのも無理はない。

 「お久しぶりです」
 
 オザキです、名前を言われてもすぐには顔が思い出せない、初めて見る顔だと思ってしまった。
 だから下の名前を言われてもすぐにはわからなかった、何故なら、目の前にいるのは長身の男性だったからだ。
 
 「十年以上も昔です、わからなくても当然で、あのときは、本当にお世話になりました、感謝しています」
 「感謝、馬鹿な、できることをしただけだ、謝るのは」
 
 相手は首を振った。
 
 「今も浮気しているんですね、それも同じ会社の女性ばかり、三人です、ご存知でしたか」
  
 友人が教えてくれた話だけでも驚きなのに、今更ながらに呆れるというか、愛想が尽きたといってもおかしくはない。
 どうしようもない男、いや、息子だと思わずにはいられない。
 
 「あの人は、あなたの息子さんなんですか、こんなことを言えば酷い人間だと思うかもしれません、でも、居なくなっても、いいんじゃないか、そう思いませんか」
 「少し前なら、そんな事は考えもしなかったよ」

 でも、今は、こんなにも負の感情で憎むことができるなど、自分でも驚く程だ。
 
 
 自宅まで、あと少しだ気持ちを切り替えなければと深呼吸して玄関のチャイムを鳴らすと足音と同時にお帰りなさいと息子の嫁が出迎えてくれる声にほっとした。

 「晩ご飯できてますよ」
 「すませてなかったのか」

 時計を見て遅すぎたと思ったが、仕方がない。
 
 「一緒に食べようと思って、カレイの煮付けと小松菜の煮びたし、兵頭の餡掛け、今日は少し寒いから芋煮も作ってみたんです」
 
 息子の家に同居する事になったのは一ヶ月になる。
 発端は住んでいたアパートでのぼや騒ぎだ。
 出荷が自分の真下の部屋だったこともあり、室内は勿論、家具なども水浸しで使い物にならないので新しいアパートを探す事も大変で息子の家に転がり込んだのだ。
 どうせなら、このまま同居しましょうと言い出したのは息子の嫁だ。
 子供もいない、義父は元気で高齢というほどではない、だが、将来の事を考えてという言葉に息子に同意
した。
 
 

 「味付けも丁度いい、いや、こんな美味い和食が食べられるのはありがたい」
 
 テーブルに並んだ料理を口にして素直に感想を口にすると、彼女は本当に嬉しそうな顔、笑顔になる。
 
 「誉上手ですよね、お義父さん」
 「いや、世辞ではないよ、本当に、お代わりをもらえるかい」
 
 ご飯のお代わりをして、息子は今日も遅いのかと思いつつ、いや、居ないことにほっとする。
 浮気を知った今、どんな顔をして話をすればいいのかわからない。
 少なくとも、嫁、彼女の前で言い争うのは避けたいと思ってしまう自分がいた。 

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復讐された男の末路 それは愛の為に

2021-11-02 12:03:56 | オリジナル小説

それにしても、あなたって酷い男よねと言われて男は仕方がない、妻とはもう何年もないんだよと答えた。
 自分の部屋に彼女を入れたのは初めてだ、物珍しそうに男の寝室を眺めていた女は少し残念そうに、あまりセンスが良くないわねと呟いた。
 男は内心、むっとしたが、既婚者の男の部屋なんて、こんなものだろうと呟くと女は意外そうな顔をした。

 「奥さんにばれてない」
 「ああ、大丈夫だ」

 断言する男の顔を見た女は、本当にと念を押すように尋ねたが、ばれてるわよと呟いた。
 
 「隣の人、見てたわよ、窓からね」
 
 嘘だろうといいかけたが黙り込んだのは隣人の顔など、あまり見ていない、いや、覚えていなかったからだ。
 最近の近所付き合いともなれば珍しくないだろう。

 「気づいてなかったの、まあ、いいわ」

 女の言葉に何故という疑問が浮かんだのも無理はない。

 「だって、これで終わりよ、あなたと付き合うの、今週末、会社を辞めるの」
 「なんだって、突然だな」

 結婚するのよ、とってもイイ人、凄く素敵な人なのと女は続けた。

 「おいおい、俺の前で他の男のノロケかい」
 
 最初から割り切った関係のつもりだったので、嫉妬するつもりはない、だが、女の態度はあまりにもあからさますぎて、正直、いい気分ではなかった。
 
 「それにしても隣の家の人間が見てたって、本当か」
 「笑って手を振ったのよ、もしかして子供だったのかしら、どうするの、まあ、離婚するつもりならいいんじゃない」
 「いや、それはない」
 
 結婚して三年、子供はいない、夫婦二人きりの生活だが、夜の生活に不満はあるものの、それ以外は満足しているのだ。
 料理も掃除もちゃんとしてくれる、家の中は綺麗で、そう、家政婦と思えばいいんだと男は割り切っていた。
 
 「まあ、奥さんもほっとしてるんじゃない」
 
 何故という顔になった男に良くなかったんだものと言われて、男は内心むっとした。
 
 「おい、なんだ、それ、最初の時は」
 
 女は笑った、演技に決まっているじゃない。

 「ちょっと、どんなものかなって試しに味見してみたの」

 女の言葉が信じられなかった、だが、先に誘いをかけたのは自分からだ、自惚れがなかったといえば嘘になる、女も自分に多少はその気があったのだろうと思っていた、だが、今の言葉からすると、明らかに自分は。
 自分との事は、それほどでもなかったということか、内心、男はがっくりとした。
 
 「あたし意外にも相手はいるんでしょ、受付の子だったかしら」

 今度はもっと可愛げのある女にしようと男は思った。

 ところが、数日後。
 今、男はホテルの一室で裸のまま、ベッドの上で呆然としていた。
 自分の目の前で起こっていることが信じられなかった、女がルームサービスで何か食べるものを頼んで、それから数分後の、あっというまの出来事だ。
 てっきりホテルのサービスがきたのかと思ってドアを開けると、いきなり、数人の男が入ってきたのだ。
 腹を殴られて、女が羽交い締めにされた、そして今、部屋の中には自分と男たちだけだ。
 まるで、映画かドラマのような信じられない、あっという間の出来事だ。

 「か、彼女をどうした」
 
 「ノープレブレム、アイ、シット、オウッ、日本、難しい」

 長身の男は金髪でサングラスをかけているが大きな黒いマスクをしている為か、表情が分からない。

 「旦那、丁度、欲しがっていた客がいましてね」
 「んー、ソウ、売レル、需要アル」
 「受けるんです、最近は男のほうが」

 何を話しているのかわからない、だが、よくないことを言っているのは確かだ、自分はどうすればいいのかわからないまま、ただ、男は呆然としていた。


 「どうしたの、あなた」
 
 元気がないのね、具合でもよくないの、妻に言われて男は我に返った。
 一瞬、ぼんやりとしていた自分に、しっかりしろと言い聞かせて、食卓を見る。

 この数日、心が、気持ちが落ち着かない、それというのも数日前の出来事だ、ホテルでの愛人との情事、あの後、女とは会っていない。
 翌日、会社に行くと女は会社を辞めていた。
 両親の具合が悪くなり、突然のことで挨拶もできないということだ。
 連絡をしようとしたが、スマホは繋がらない。
 ところが数分後、彼女の番号から電話がかかってきた。


 「おお、裸のおっさんか」

 聞こえてきた男の声、思わずスマホを落としそうになった、体が震えて男は自分でも分からず周りを見た、何故か分からない。
 
 「この間は楽しかったよ、だから、いいもの送ってやったから楽しみにしてろよな」

 なんだ、どういうことだ、足、膝が震えた。


 「あなた、これ大事な書類かしら」
 
 その日、自宅に帰るとポストに入っていたのと、妻から手渡されたぶ厚い封筒に男は嫌な予感がした。
 しばらくの間、悩んだ、このままゴミ箱に突っ込んでしまいたいと思いながら、それでも見なければと自分の部屋で中を確認する為、封を開けた。

 中に入っていたのは写真だ、しかも男の淫猥な裸ばかり、女とだけでなく男同士での行為の写真に、何故と思った。
 数人の男に組み伏せられて写真、だが、犯されている顔は自分の顔を貼り付けてある、ところが、見ているうちに男の顔色が蒼白になってきた。
 全てではない、最後の数枚は自分が裸で縛られている写真だ。

 「奥さん、これを見たら笑うだろうね」

 一枚の紙に書かれた文字、だが、それだけではない、漢字や英語で殴り書きのように書かれている。
 自分は脅されているのか、警察にと思ったが、どうやって説明すればいいのかわからない。
 それに話すとなれば、浮気の事も説明しなければならないだろう。   
 妻に浮気がばれたら互いの両親の知るところとなる、できるなら、それだけは避けたいと思っていた。
 ふと浮かんだのは友人の顔だ、確か警察に知り合いがいたはずだ、以前、事故を起こしたときに親身になってくれたとを思い出した。
 といっても、自分もそれなりの礼をしたのだ、決してやすくはなかったが、それだけの価値はあった。

 「浮気したのか、あんないい奥さんがいて」

 仕方のない奴だなと笑った友人の顔を見て、ほっとしたのは力になってくれると思ったからだ。

 「妻はいないんだ、それに外で話せるようなことじゃないし」
 「ふーん、まあ、聞かれたくない話なら尚更だな、ところで」
 「なんだ、何か」
 「隣の家の人間と仲いいのか」
 「い、いや、近所付き合いは殆ど妻に任せているんだが、何だ」
 
 友人はそうかと頷いた後、恨まれたりしてないよなと男の顔を見た。

 「まあ、それより本題に入ろうか、俺も仕事があるしな
 「そ、そうだな」 

 隣人の事など関係ない、男は机の引き出しから取り出した複数の封筒の中身をためらいながらも男に見せた。
 先日、また、送られてきたんだと説明すると中を見た男は何だ、こりゃと笑い出した。

 「おまえ、こういう趣味があったのか」
 「馬鹿をいうな、俺が男になんて、笑うのやめろ」
 「ああ、すまん、だが、悪戯にしては、これから段々とエスカレートするか、外国人っていってたよな、おまえ、競売に、出てるんじゃないか」
 
 競売、意味がわからない、だが、答えはなくスマホを操作する友人の横顔を男は不安そうに見つめた。

 「ほれ、見ろ」

 そこには初めて男たちとホテルで会ったときの裸で床に正座させられているときの姿が映っていた。

 「おまえ、商品として登録されているよ」
 
 人身売買の闇サイトだと見せられた画面を見て男は驚いた。
 
 「販売前だが、多分、すぐに買い手がつくそ、閲覧のバロメーター見ろ、凄いじゃないか」
 「感心してる場合か、犯罪だぞ」
 「こういう連中は何だってするからな、買い手がつけばすぐに誘拐されて売り飛ばされる」

 友人の言葉に男は驚いた、闇サイト、人身売買、誘拐、現実にあることは知っている、だが、自分に、そんなものは関係ないと思っていた。


 「俺がいなくなったら妻が」
 「例え場だ、奥さんに多額の見舞金が払われる、すると警察に通報はしないから事件にはならないって、どうだ」
 「どうって、なんだ、それは」
 「被害者がいない、訴える人間がいないんだよ、おまえの場合、売られたんだな、ここに人型のマークがついているだろ、情報提供した数だ」
 「俺を売る、そんなこと」
 「おまえ恨まれているだろ、特に女絡みで、昔からだけどな」
 
 そんなことはないと言い切れない自分がいた、結婚してから浮気は何度か繰り返してる、妻にはばれていない、というかおっとりとして、自分が浮気なんて微塵も疑っていないだろう。
 
 「おまえ、学生時代もモテてたし、結構、ひどい別れ方をした相手だっていただろう、顔はいいけど中身は最低男って言われてたしな」
 「おい、昔のことだろ、今は関係ない」
 「尾崎、だっけか、隣の表札」
 「なんだ、隣って」
 「昔、付き合ってた女、オザキって確か中絶したよな、おまえは知らんぷりして、結局、あの女、大学を辞めて、噂じゃ、もう子供は無理だって」

 何年前の、過去の事だ、少なくとも自分の中では、名前さえ覚えていない、言われてみて、ああと頷くぐらいだ。
 
 「なんだ、忘れてたのか、薄情だよな、まあ、恨まれても当然か」
 
 友人の言葉に多少なりとも気まずさと罰の悪さを感じて、少し視線を逸らした後、忘れてたと呟きを漏らした。 

 「じゃあ、その女が俺と付き合っていたことも知らないんだろうな」

 はっとして顔を上げると友人は笑っていた。

 「まあ、周りには付き合っているって言ってなかったし、それに昔のことだよ、正直、別れたいって思っていたから丁度、良かったんだ、渡りに船ってやつだな」
 
 その言葉に、ほっとして男はどうすればいいと呟いた。
 
 「安全で確実なのは情報提供者に競売を取り下げてもらう方法だ、恨んでいるから高い金を払って仕返しをなんて思っておまえを売ったんだ、自分は被害者なんだって思ってたら足下を救われるぞ」
 「恨みか、別れた相手とか、もしくは」
 「いや、まあ、そんなところだろうな(おまえの想像力だと)」

 パソコン、貸してくれるか、ウェブマネーが必要だと言われて男は自分がと言いかけた。

 「いや、俺が出す、おまえは商品だ、怪しまれるのがオチだよ、俺の仕事用のアドレスを使う」
 「すまない、世話をかける」
 「気が早いな、おまえの首は皮一枚だ、相手が競売の取り下げに応じなかったらどうする」
 
 警察にと言いかけると友人は首を振った、甘いなと。
 
 「警察に洗いざらい薄情するのか、最近のじゃなくて昔の女関係の事まで全部、オヤジさんは重役じゃなかたか、昔会ったけど、結構厳しい人だろ、一人で息子を育てて苦労した末が、これか、おまえが商品になったほうが皆、喜ぶんじゃねぇか」
 「おい、その言いぐさは」
 「事実だ、警察が動く事ができないから、俺みたいなのが呼ばれるんだよ、いざとなったら使い捨てにできるからな」
 「なんだ、それ、使い捨てって」
 「オザキの事も性欲発散した後は見向きもせず、今度はおまえが反対の立場ってわけだな、滑稽だ」

 助けてくれるんじゃないのかと男は改めて友人の顔を見た。
 パソコンに向かっている男の横顔に何を言えば、聞けばいいのかわからなくなる。

 「売った人間の事、知りたいか」
 「当たり前だ」
 「名前が出てきた、見ない方がいいと思うな、どうする」
 
 ローマ字で書かれた名前を見て男は驚いた。

 「実の父親に売られるとは、でも無理ないか、おまえ、散々、迷惑かけてるしな」
 
 迷惑、確かに金を工面して貰ったことは何度かあった。

 「裏口、揉め事の費用、親父さんが出したんだろう」
 「知ってたのか」
 「最悪なのは奥さんの妹、まさか、知られてないなんて思ってたのか、皆、陰で噂してたぜ、だから今回のことも」
 
 男の体が震えた、妻の妹のことを言っているのかと。
 一度きりのちょっとした浮気のつもりだった、それなのに姉と別れて自分と結婚してと言われて。

 「ああ、おまえの」

 友人の言葉に膝が震えた、本当にどうしようもない奴だよな、クズ以下だよと笑っている友人がモニターの画面から自分へと視線を向ける。

 「尾崎、彼女はな大学を卒業したら、一緒になるつもりだったんだ、なのにプロポーズの日に自殺なんて、どう思う」

 耳を塞ぎたくなったが、それができなかったのは、玄関から妻の声が聞こえてきたからだ、友人が囁くように、だが、笑いながら、おまえの奥さんもだよと言った。

 「随分、恨まれているよな」 

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