日々、雑多な日常

オリジナル、二次小説、日々の呟きです。

笑う人々(モニター越しに)そして夫婦と愛人と親子のざまぁ  

2021-08-20 16:40:12 | オリジナル小説

 モニターを見ながら、女が楽しそうに笑っている。
 独房という部屋に案内されたときの男の表情は見物だった、最初は出してくれ、説明させてくれ、家族や友人が心配している筈だと繰り返していた。
 だが、数日が過ぎてくると大人しくなった、元、愛人が亡くなった事を知らせてみた、諦めたような表情を見せたが、その後、信じられない嘘だと言い始めた、自分を正
当化しているのだろう。
 
 もし、愛人が死んだことが○○だと知ったらどんな反応を見せるだろうか。
 こんな目にあわせたのが、実の両親だと知ったら、どんな顔をするだろうか。
 そして全ての筋書きを考えたのが、隣を見て女はにっこりと笑いかけた。

 「満足してくれた」
 
 その問いかけに女は頷いた、外国人で公人で金がある自分、だが、それだけだ、こんな筋書きを考える彼女(彼)を尊敬する。
 モニターに映る男は知っているだろうか、自分の妻の正体を、何故、浮気しても文句を言わなかったのか、別れようとしなかったのか。
 彼女が本当は、だということを。

 最後には種明かしをしたら、どんな顔をすると思うと聞かれて女は笑った、勿論、ばらすのは本当に最後の時だが、それまでは楽しませて貰うつもりだ。

 


 大丈夫だよ、妻は僕たちのことには気づいていないし、今日は夕方までは帰ってこないからね、病院なんだ。
 その言葉に愛人は安心したように、服を脱ぎ始めるとベッドに潜り込んだ、続いて男も裸になると女の体に抱きついた。
 付き合い始めて半年程が立つがたつが、体の相性は抜群だ、それに美人だ、やはり離婚を考えてしまうのも当然のことかもしれない。
 
 行為の後、彼女は自分を誉めてくれるのも今まで付き合った男とは違うと、そんなところも気に入っていた。
 

 「あらっ、今、物音がしなかった、帰ってきたんじゃない」
 
 男は驚いた、まさかと思いながら服を着替えようとしたとき、いきなりドアが開いた、だが入ってきたのは妻ではない、数人の男性だ。

 「な、なんだ、君たちは人の家に、勝手に」

 「いました、行為に及んでいたようです、今からレベル確定を」
 
 若い一人の男がいきなり男に向かってベッドに腰掛けるようにと声をかけた、女にもだ。
 もしかして泥棒かと思ったが、違うと思ったのは態度と服装だった、裸のまま、ベッドに腰掛けた二人の男女は困惑したのはいうまでもない。

 「確認の必要はないよ、青井君、彼の睾丸、腹部の皮膚を見たまえ」
 「先生、僕には、あっ」
 
 青年は声をあげた。
 裸のままではと下半身にシーツを巻き付けていたので分からなかったのだ、わずかですが、黄色に青井斑点がありますと言われて男は驚いた。
 そのとき、どうぞ、奥さんと男が部屋の外に声をかけた。

 部屋に入ってきた妻の姿を見て夫と愛人の二人が顔色を変えたのはいうまでもない。
 だが、浮気の現場を見て普通なら怒る、泣く、罵倒するなどの感情表現がないことに男は驚きというよりも不気味さを感じた。
 入ってきた妻に男性が話しかける。

 「どうします、あなたの許可と承諾さえいただければ、今からご主人を、その際の手続きもこちらで行います」

 「な、何を言っているんだ」
 
 男は妻と話している男性に向かって叫んだ。

 「ああ、失礼」

 妻と話していた男性は男に向かって軽く手を振った、すると男のそばにいた若い男性が我々は管理局の者ですと説明を始めた。
 
 「あなたは以前、外国人の女性と関係を持ちましたね、企業接待という名目ですが」
 
 愛人と妻のいる前で、その質問はと思ったが、部屋の中の空気と自分に向けられた視線に耐えられなかった。
 
 「実は、その外国人、あるウィルスの保菌者なんですよ、そしてあなたは、今の愛人と出会うまでにも他の女性と関係を持ったようですね、神崎という女性に心当たり
は」

 名前を出されて男は渋い顔になった。

 「夫の会社で働いていた女性だと思います」

 妻の言葉に男は、何故、口を出すんだと言わんばかりの表情になった。

 「亡くなりました、あなたとの接触が原因です」

 ご覧になりますかと男が胸ポケットから一枚の紙、写真を取り出したが、それを見た男と覗き込んだ愛人の顔色が変わった。

 「濃厚接触で感染するんです、このウィルスは海外から持ち込まれたものですが、どうしました」

 あたし、死ぬのと愛人が叫んだ


 一体どういうことだ、自分がウィルスの保菌者、そして感染した女性は死ぬだと、信じられない、男は呆然とした。
 
 妻と話している男達が、時折自分を見る、今、目の前で起きている、自分に降りかかった出来事が信じられなかった。
 これでは離婚は決定的だ、別れなければならないだろう、そう思っていると、別れるなどという選択はないですよと男が言った。
 どういうことだと思っていると、あなたと彼女、隣にいる愛人を見て、あなた方は、○○かったんですよ言われた。

 「あなたは、これから隔離病棟に、戸籍も抹消されます、このウィルスの存在を世間から消す為にです」
 「家族は、両親がいるんだ」
 
 すると男は首を振った、答える気はないらしい。

 「あ、あたしはどうなるの、感染してるの、死ぬなんて嫌よ」

 「どうでしょう、先生」

 若い男が女性を見る、その表情、視線に女の顔色が一層、青くなった。

 「私たちの仕事は保菌者の確保だよ」

 それ意外は関係ないというより、興味がないと言いたげな男は、奥さんと声をかけた。

 「最後に何か言いたいことは、もう、会うことはないんですから」

 男の言葉に妻はそうなんですかと不思議そうに尋ねた。

 「ええ、施設に入ったら出ることはないんです」

 この瞬間、体、足が震えた、男は信じられないというように男を、いや妻を見た、助けてくれとすがりつくような視線だった。
 突然、叫び声を上げて女が部屋から飛び出した、追いかけようとした若い男に病院に行ったところで追い返されるだけだ。
 
 「可哀想に」

 妻の呟きから感情が読み取れず、自分の膝が震えていることに気づいた男は唇を噛んだ。
 言葉が出てこなかったのだ。


 「ニュースに出てたよ、飛び込みらしい」

 その日、男は自分の元愛人が自殺したことを知って驚いた。
 信号待ちの歩道で、突然、奇声をあげて車の前に飛び出したというのだ。
 
 「女性が感染すると脳に異常をきたすんです」

 説明されても頷くしかできなかった。
 自分は、ここから出る事はできない、ずっと、一生、いや、死ぬまでだ。


  

 「あたし達、悪いことをしたのかしら、たった一人の息子を」
 「やめろ、会社には大勢の人間が、社員を犠牲にはできないだろう」

 夫の言葉に妻は頷いた、自分の一人息子が外国の公人に見初められて、欲しいと言われた時は驚いた。
 現在、夫の会社は経営が苦しい、家族経営、小さな会社なら諦めもつくが、そうではない、大きな会社だ、社員だけではない、取引先にも色々と世話になってきた。
 そんなとき、援助するという話を持ちかけられた、その見返りとして息子だ。
 息子と結婚したいというなら話はわからないでもない、だが、相手の女性は笑った。

 「彼とのセックスは刺激的だったけど、ああいう男が」

 英語ではない、どこの国の人間だろうかと夫婦は通訳の人間に何を言っているのかと尋ねた。
 だが男は答える代わりに、この取引はあなたの会社だけでなく、あなた自身にもプラスになる筈ですとにっこりと微笑んだ。

 「実は息子さんの奥さんにも話を通してあります、承諾してくれましたよ」

 結婚して半年後に初めての浮気、だが、その後も隠れて息子は浮気をしていたらしい。
 妻である彼女も愛想が尽きたのだろう。

 「ああ、信用して貰うのが先ですね」

 二ヶ月あまりで会社の運営、下り坂を滑るように落ちていた業績が立ち直ったときは信じられなかった。
 そして目の前に積まれた代償に二人は驚いた、人世の半分をすぎた老夫婦には十分、使いきれないほどの金だ。
 これは自分が見せる誠意なのだから遠慮も金を返す必要もないと言われて二人は驚いた。
 そして、もし息子をくれるなら、これ以上のものを用意すると言われて無言になった。
 二人の背中を押したのは息子の嫁だ。

 息子一人、でも会社で働いている人たち全員と引き替えにしたら、どちらが大切です。

 義理の娘の言葉に夫婦二人が決断を下したのは当然かもしれない。


見舞い来てくれたブラッド、後妻の申し込みはレイブンから?

2021-08-15 23:17:40 | ハガレン

 三人の男女が帰った後、翌日、起きたばかりの彼女の顔色は悪かった、具合が悪いのかとマルコーは気になって手伝いはいいから、休みなさいと声をかけたのだ。
 
 その日、電話をして自分を訪ねてきた男女のこと、キンブリーの協力があって帰って行った事をノックスに報告すると、退役軍人、レイブンの名前が出たのかと友人は電話の向こうでもしばし無言になった。

 「ネェちゃんに、話したか」
 
 一応はと言いながら、もしかして、まずかったのかとマルコーは尋ねた。

 「名前、出したのか、レイブンの、そうか、仕方ねぇな、少し休ませてやってくれ、ネェちゃん、ああ、見えてナイーブなところがあるからな」
 
 一体何がと思ったが友人の答えは、どこか歯切れが悪い、いつものざっくばらんな長じてない事が気になったが、深く尋ねる事はしなかった。
 とりあえず休ませようと思った、ところが、翌日、療養所を訪ねてきた男を見て驚いた。

 

 フルーツの缶詰とバラの花束を抱えて、やってきた男はお見舞いに来たんだよとニコニコと笑っている。
 どうしてとマルコーが聞くと、ノックス医師から聞いてね、で、彼女の容態はと聞かれて、ストレスだと思うとマルコーはどこか気まずそうに答えた。
 


 「さあ、アーンして」

 男は、にこにこと笑いながら、フォークで突き刺した桃を差し出した。
 断る事ができないというか、返事をする気力もなかった、食べなければいけないんだろうと口を開ける、二日ばかり寝込んでいて、何も食べていないせいか甘い桃の汁は胃袋に浸みて、美味しいという感想しかない。
 思わず口から漏れた呟きに眼帯の男は笑いながら、高級缶詰だからと言葉を続けた。

 「倒れたと聞いた時は驚いたよ」
 
 どうして来たんです、セントラルからここまで、結構な距離なのにと尋ねると、お見舞いだよとブラッドは笑った。

 「まあ、療養所の事については気になっていた、後で説明するつもりだが、なんだね、その顔は」

 「すみません、迷惑を沢山というか、一杯」

 「女性の我が儘というものは大抵の場合は許されるものだ、知らないのかい」
 
 手を伸ばすと、少し眠った方がいいねと女の頬にかかる髪を、そっと払った。


 レイブンという男は、なかなかのやり手でねとブラッドレイはマルコーの顔を見ながら君の友人には息子がいたねと話し始めた。

 「仕事を斡旋すると話を持ちかけたんだよ、父親を取り込む為にだろう、ところがね」
 
 気づいた人間がいてねとブラッドは手をテーブルのカップに手を伸ばして、紅茶を一口啜った、誰だと聞いたのはスカーだ。

 「軍の施設内にレイブンが姿を頻繁に見せるようになって、その時点では、まだ退役していなかった、講座廃止、学校設立の噂が持ち上がっていた最中だ、レイブンは講師達にも接触していた、それで調べたんだろう」

 「調べたと、どうやって」

 尋ねたのはスカーだ。
 
 「軍人と結婚した女性もいたから、多少はわかったようだが、ところが講師でない人間が軍の施設内でレイブンと話していた、その人物がノックス医師の息子だと知って、何かを感じたんだろうね、で、彼女に話した、まあ、相談だ」

 分かるだろうとブラッドから意味ありげな視線を向けられてマルコーは、はっとした、彼女に話した、相談したのは同じ日本人、つまり生徒達ではないのかと。

 「学校設立、建設、ノックス医師にも何か話があったんだろうね、レイブンが医師の息子に持ちかけた話は自分の利益にしかならないだろう、それで」
 
 ブラッドは不意に視線を外すようにドアへと向けた。

 「まあ、向こうにしてみれば痛いところを突かれただろうな、ははは」
 
 えっ、マルコーとスカーは訳が分からないという顔になった。
 
 「何かしたのか」

 「誰にでも知られたくないこと、弱みはあるということだよ、それで」

 不意にイスから立ち上がったブラッドはドアへ向かうと、ノブに手をかけた。

 「寝てたんじゃないのかい、盗み聞きかい」
 
 違います、立ち聞きです、ドアの向こうに立っていた彼女にブラッドは手招きした。


  入りなさいと言われて女は少し困ったような顔をしながらも部屋に入ると、どこか居心地が悪そうな感じだ。
 
 「今回の件だがね、ここに来た人間は自分に取り入ろうとして勝手に動いたということだ」

 「だから、なんです、都合のいい言い訳みたい」
 
 その言葉にブラッドは、あの男も色々と思うところがあるんだろう、今回の学校設立の件はしばらくは保留になるだろうと話し始めた。

 「そうなんですか」

 じゃあ、この話は、もう終わりですねと少しほっとしたように女だが、いや、続きがあるんだよとブラッドは言葉を続けた。
 レイブン、彼が後妻に来ないかと言っている、三年前に妻を亡くしているからね。
 金はある男だ、町医者の助手よりいい生活をさせると言っていたな、どうするねと女の顔を見たが、どこか面白がっているようにも見える表情だ。

 「金はなくても困るけど、あっても困るんですよ」
 
 「なんだね、苦労したのかい」

 わずかに俯いた彼女は無言だった、その様子にブラッドはマルコーとスカーに視線を向けた。


我慢できると思った男(貴族だから)末路はざまぁといえるのだろうか、正妻は何もせず 

2021-08-10 18:20:28 | オリジナル小説

 結婚する事になったと男から聞かされたとき、すぐには信じられなかった、貴族だから結婚は当然だろう、三十路になったばかりだ、だか、そんな素振りも気配もなかったので驚いたのだ。
 だが、話を聞くと相手の女は男よりも年上で爵位も決して高くはないと聞いて安心した。
 それに男の表情から、この結婚は上から命令されたもので望んでいないと聞かされて女は安堵した。
 まだまだ、自分は甘えて、色々なものを買ってもらい、贅沢な暮らしがしたいと思っていたのだ。
 男は他にも女がいることを女は知っていた、若い女に眼がないのだ。
 金と地位があれば多少の浮気は大目に見たほうがいいと亡くなった母親はいつも言っていた。
 しかし、その結果、母は惨めな最後を遂げた、自分は母とは違う、多少の浮気は許す、だが、自分の立場を脅かすようなら許さない。
 下町の女、自分より若い女に手を出したときには人を雇って、対処した、痛い眼に遭わせて近づかないようにと、従わないなら最終手段に出ることもあった。
 だが、相手が正妻、貴族ともなると下手に手出しはできない、自分も貴族出身と名乗っているが、負けるのは眼に見えている。

 正妻が館にやってきても殆ど顔を合わせることがなく、これなら自分の地位は脅かされることはないと女は安堵した。
 
 しばらくして、館に荷物が運ばれてきた。
 メイドに尋ねると奥様への贈り物だという、次々に館に運ばれてくる綺麗な包みや箱を見て女は驚いた、数が多すぎる、もしかして妻である彼女は浮気をしているのではないだろうか、夫が愛人を作っているのだ、当てつけに妻が愛人を作っていてもおかしくはない。
 あの包み、贈り物は妻の愛人たちからかもしれない。
 男というのは自分の浮気には寛大なくせに、妻や恋人が他の男から少しでも気のある素振りをされたりすると嫉妬する。
 証拠を握って、奥さんは浮気をしていると告げたらどうなるかと女は考えた、もしかして自分が正妻に成り代わることができるかもしれない。
 いや、それはあまりにも夢を見すぎだ、だが、屋敷から追い出すぐらいはできるかもしれない。
 
 正妻の部屋に入るのは初めてだった。
 沢山のドレスや装飾品、衣装ダンスの中を見た女は見とれてしまった、手触りのいい生地、上等な仕立てのドレス。
 こんなにたくさんあるんだもの、後で返せばいいんだと自分に言い聞かせて女は手を伸ばした。

 茶会に出ると皆が自分を見ているのがわかった注目を浴びている、なんて気持ちがいいんだろうと思っていたが、ふと、気になったのは視線だ。
 一人の女性が自分を見ている、その視線が気になった。
 自分ではなくドレスを見ているのだということがわかった、だが、それは茶会が終わってからのことだ。


 年上の女性を妻にもらうというのは正直、どうなのかと思いつつ、断ることをしなかったのは出された条件を見て悪くないと思ったからだ。
 白い結婚、子供は作らない、夜の生活はなし、最低限の生活を保障してくれたら結構だという相手の条件は男にとって都合が良かった。
 書類上の結婚式をあげることもなく、結婚生活が始まった。
 そして、現在、男は自分の置かれた状況に混乱していた。

 その日、城に来るようにと使いが来た。
 突然の呼び出しという事もあり、愛人と出掛けるつもりだった男は急遽、予定を変更した。
 デートはお預けだと告げると愛人は気分を悪くしたのか不機嫌な顔になった。
 この埋め合わせはしてくれるんでしょうねと男を見る。
 宝石、ドレス、旅行に行きたいとねだってくるのかもしれない。
 付き合いも長くなると、だんだんとそれも面倒になってくる、潮時かもしれないと男は考えた。
 
 城に着くと自分を待っていたのは宰相だ、その顔色は正直、よくない、普段から感情を表に出すことなく、冷静沈着な王の補佐をしている男、という印象しかなかったので驚いた。
 何かあったのかと聞くと、あなたの愛人、とんでもないことをしでかしてくれましたねと言われて驚いた。
 正直、心当たりがない、爵位は決して高くはないが、一応は貴族出身なのだ、すると宰相は笑いを漏らし、表向きはねと言葉を続け、下町出身の女に生ま
せた子でしょう呟いた。

 「先週、ある貴族のお茶会で注目を集めたそうですよ、話題になったのはドレスです、心当たりは」

 ドレス、先月、新しいのがほしいと言われてプレゼントすると約束したことを思い出した。

 「そのドレスは、奥方のものなんですよ、何故、愛人風情が奥方のドレスを着て茶会に出席するんです」
 
 「そうなのか、妻に借りたのではないか」
 
 宰相はとんでもないと声をあげた、そのドレスはある外国の貴族が奥方に贈られたものなんですと言葉を続けた。

 「茶会に出ていた貴族達の中に高位の中に皇族の方もいらして」

 「奥様の友人や交友関係をご存知ですか」

 「いいや、人付き合い、社交は苦手だからと言っていたが」
 
 それは表向きですよと宰相の言葉に男は、どういうことだと聞いたのは無理もない。

 「あなたの奥様の爵位が低いのは両親や祖父、代々の放蕩三昧の末ということになっています」

 「ああ、だから、だから、この結婚も譲歩した末に、私が彼女を仕方なく、もらい受けるという形で」
 
 男の言葉を聞いていた宰相は溜息を漏らした、その眼が、どこか小馬鹿にしたような、そんな感じがして男はむっとし
た。

 

 祖母の遺言に従って贈ったドレスを恩義ある女性に送ったが、そのドレスを茶会で知らない女が着ていた、どういうことか説明してほしいという使者の言葉に国王は驚いた。
 
 あの男に嫁がせたのはいいが、愛人はバカなのか、事情を知る為に調査をする人間を派遣し、その報告を聞いてがっくりとした。
 男の愛人と正妻の仲は世間では普通、良くないものだが、二人は普段から顔を会わせることもなく、不仲という訳でもなかった。
 ところが、最近になって女の元に色々な贈り物が届くようになって気になった愛人がこっそりと、その贈り物を。

 愛人という女は、どういう女なんだと王の問いかけに調査員は軽く咳払いをした。
  
 「ドレスが高価なものだと思い、自慢したいと思ったのでしょうが、ものを知らないにもほどがあります」
 
 調査員は、先進国の亡くなった国母のものです、自分が死んだら彼女に贈るようにと遺言されていたようです、話を聞いていた王の顔色はだんだんと青ざめていく。
 
 「国王、知らなかったではすみませんよ」
 「そうだな、その女は貴族というが」
 
 見た目が良かったので貴族が愛人にと手をつけたんでしょうが、庶民、それも下層階級の出身ですという言葉に、そういう女の子供だから男はと国王は言葉にするのも面倒になり、軽く手を振った。


 「おまえの愛人は、とんでもないことをしてくれたな」

 怒りよりも呆れたといいたげな声に男は部屋に入るなり、深々と頭を下げた。
 妻に贈られたドレスを愛人は内緒で着て茶会に出席した、最初はそんなことでと思ったが、話を聞くうちに男は驚いた。
 外国の王族から贈られたドレスと聞いて、何故、自分の妻がと驚いたのだ。

 「妻である女性の事をおまえは、よく知らなかったようだな、我が国の貴族は、これで、どれほど愚か者かと他国が知ることになったわけだ」
 
 「申し訳ありません」

 「愛人のしつけもできんのか」

 「返す言葉も」

 「女の首を贈っただけでは無理だ」

 ではどうすればいいのかと男は王を見た、まさか自分も同じように、いや、確かに、愛人のやったことは知らなかったとはいえ、頭を下げただけの謝罪ではすまないだろう。
 ドレスを弁償するといっても、国宝級と言ってもいい、そんな高価なものできる訳がない。

 「少し買いかぶりすぎていたようだ」

 それきり、王は無言になった。


 王との謁見の後、狼狽した、自分はどうすればいいのかと男は迷った、愛人のことなど頭にはなかったといってもいいだろう。
 どうすればいいと迷ったあげく頼るのは一人しかいなかった。
 自分の妻だ、久しぶりに彼女の部屋を尋ねると留守だった。
 奥様はお出かけですとメイドから聞かされて、部屋の中を見回す、カーテン、家具、壁を飾る絵画、嫁いできたときには見なかったものばかりだ。

 その日の夕方、帰ってきた妻に男は懇願した、助けてくれと。
 愛人がしでかしたことは謝る、このままでは自分は破滅だと頭を下げる男を見ながら女は仕方ありませんわと呟いた。

 「あなたの愛人がしでかしたことでしょう、でしたら、あなたが責任をとるのが当然では」
 
 自分に死ねというのか、男の言葉に軽く首を振り、では私を当主にしてくださる、領地と権限を全て譲歩してくださると聞かれて男は迷った。
 平民になれというのか、すると女は首を振った。
 
 「今まで通り、貴族の生活をすればいいわ」


 男は助かったと思った、首を跳ねられることなく、以前と同じ生活が始まった。
 貴族の集まりも愛人と一緒に、時に城に呼ばれることもある。
 最初は妻の温情だと喜んでいた。
 周りの貴族たちも以前とと変わりなく接してくれている、だが。

 「私たち、ねえっ、どうしてあなたは我慢できるの」

 ある日、愛人がぽつりと呟いた、その顔は苦痛に歪んでいた。
 その顔を見て当たり前だと思いながらも、男は言葉にしなかった、分かっていないのだ、この女は自分の罪を、貴族社会というものを。
 周りから馬鹿にされ、見下されている、そんなのは当たり前だ。
 だが、何があっても、自分は貴族の生活を捨てられない、周りから馬鹿にされても、何故なら貴族だからだ。
 だが、この女は、どうだろう。
 今更、やめられるのか、愛人を、この暮らしを、それを聞けば女は首を振るだろう。
 自分が貴族達からどんな眼で見られているかなど、今更だ。
 
 昼間は貴族の生活、夜は彼らの不満と愚痴、欲望の捌け口になるなど、いったいなんだというのか。
 自分の生活、プライドの為ならなんだってできる、貴族なのだから。

 


怪しい訪問と勧誘、呆れるマルコーと援護射撃のキンブリーさん 13

2021-08-05 16:55:21 | ハガレン

 その日、療養所を訪ねてきたのはスーツの男性二人と一人の女性だった、民間の病院を作りたいという申し出は突然すぎるものだが、それだけではない。
 そこで働いて貰えないかというのだ。

 「結構な話だが、ここにも患者はいる、君たちの話を聞くと病院はセントラルでというのだろう、向こうにも腕のいい医者はいる」

 自分でなくてもいいだろうというと三人は首を振り、元軍医でもあったマルコーの腕を見込んでと言葉を続けた。

 「イシュヴァールも人が増えていますが、セントラルのような都会とはいえません、まだ色々と不便な事も多いのではないでしょうか、それに」

 男は言葉を切ると軽く咳払いをして、先ほど彼女が出て行った扉へと向けた。

 「先ほど女性は助手と仰っていましたが」

 平静を装いながら、彼女はセントラルでも助手をしていたんだとマルコーは言葉を続けた。

 「ドクター・ノックスですね、存じております、しかし、町医者の助手では先生のような方のお仕事は大変ではないでしょうか」

 正規の、ちゃんとした看護婦でないと務まらないということか、役に立たないと言っているのか、自分の表情に気づいたのか、気分を悪くなさらないでください、すみませんと殊勝な顔になった男は隣にいる女性の紹介をはじめた。

 「彼女はセントラルの大病院で看護婦として・・・・・・」

 看護婦、いや、女優のような美貌の持ち主だと思いながら、マルコーはちらりと見ただけで男の方に視線を戻した。

 「療養所は新しく立て直したばかりだ、正直、ここを離れるつもりはないんだよ、それに私も若くはない、ここでゆっくりと医者として暮らしていくつもりだ」

 正直、この会話を続ける事は苦痛だ、話を聞きたくないというよりも、三人を追い返したい気持ちがだんだんと大きく膨れ上がってくる。

 「悪いが、今の私は、ここでの仕事が忙しくてね」

 そのとき、ノックの音がした、よろしいですかと男の声がして入ってきたのは白スーツの男性、キンブリーだ。

 
 
 
 何を話しているのか気になるけど盗み聞きなんてしたらいけないのはわかっている、でも、絶対、いい話じゃないのはわかる、というか予感がするのだ、診療所が新しくなって、自分も助手として頑張るぞって気持ちになっているときに。
 ここ最近、診療所もだがマルコーさんは往診に出掛けた際に手紙、電話をと数時間留守にする事があった、大事な話だろうと思って詳しく聞いたらいけないのかと思ったら、病院の事だから、いずれ話すよという言葉に、あのときは頷いて、あえて聞く事はしなかった、けど、今日の訪問客で不安になってしま
った。
 
 いつもより少し昼食をすませたときだ、こちらはドクター・マルコーの診療所ですねと尋ねてきたのは二人の男性と一人の女性だ、口調や物腰からなんとなく街、都会の人間だという雰囲気で、女性が中に入って診療所の中を見る目つきが気になった。
 
 「あなたは、助手の方ですか、どちらのご出身でしょうか」

 男性の言葉を遮るようにマルコーさんが診察室へと三人に声をかけた、何も出す必要はない(お茶も)その言葉に不安になったのはいうまでもない。


 もしかして、最悪の場合、ここを出て行くなんて事になるかもしれない、助手といっても正式な医術の知識なんて、現役医者のノックスとマルコーさんの二人に教えてもらった知識しかないのだ。
 なんだか悪い事ばかり考えてしまう、やっぱりお茶を出すふりで話を盗み、いや、駄目だ、そんなことをしては床に突っ伏して、悲観しているとドアの開く音がした。

 「おや、なんです、お祈りですか、どこかの僧侶みたいですね」

 「キ、キンブリーさん」

 どうして、ノックの音したと不思議そうな顔をすると男は人差し指を口に当てて静かにという仕草をした。

 「そろそろ、来る頃だと思っていたんですよ」

 挨拶をしてきましょうかねと言ったキンブリーの顔がいつものようなにこやかな笑顔でない事に気づいた

 

 ノックの返事を待たず、入ってきたキンブリーの姿に驚いたのは訪問客達だ、彼らは無言で、相手をじっと見た。


 「ああ、以前お会いしましたね、たしか、中将のところで、隠居されたんでしょうか、どうなんでしょう、レイブン殿は」

 三人の男女はレイブンという名前が出てきた事に、わずかに顔をしかめた。

 「引退したから軍とは関係ない、民間というのは、少し無理がいえ、都合がよすぎませんか」

 流暢に続くキンブリーの言葉、だが、反対に三人の顔色が少しずつ変わり始めた。

 「傷の男の報告はどうでした、一応軍とはいえ、彼の上司はアームストロングの」
 「知っている、だが、我々は錬金術師の未来の為に」
 「それで丸め込まれたわけですか、言っておきますが、元軍人、退役した人間の欲に付き合っていると、足下を救われますよ」
 「君とて、我々は同じではないか」
 
 どうでしょうとキンブリーは笑いながら、私の生徒は優秀なんですよとポケットから取り出した紙切れを三人の前に突き出した。

 

 
 マルコーはふうっと溜息をついた、これで終わってくれたらいいんだがとキンブリーを見ると、やれやれといった感じで自分を見ている。

 「退役して暇を持て余す元・軍人というのは厄介ですね」

 このとき、あの紙はと気になっていた事をマルコーは尋ねた。

 「色々とやっていたみたいですね、現役の頃に」

 手渡された紙には軍人としてはあるまじき、事実と行為が書かれていた、退役したからといっても、これが表に出ればタダではすまないだろう、だが。

 「これを教えてくれたのは、元、大佐のブラッド氏かね」
 
 キンブリーは、それだけじゃないんですとマルコーを見ながら傷の男は、まだこちらにいますよねと尋ねた。
 
 「ドクター・マルコーの保護というよりは監視もありますが、ノックス医師が彼女をこちらに来るように仕向けたのは良かったですよ」

 「何か関係していたというのか、彼女が」

 「いいえ、ただ、学校建設の事に関して先生が講座を辞めた後でも、あちらでは色々な噂が流れていましてね、ノックス医師も彼女も、色々と考えるところがあったようですね、それで、今日のことを」

 「ああ、電話するよ、心配をかけたようだ」

 マルコーの言葉にキンブリーは彼女にもと、扉の向こうにちらりと視線を送った。