日々、雑多な日常

オリジナル、二次小説、日々の呟きです。

支給金の使い道(予定は未定)医者の不摂生でマルコーダウン

2021-09-17 21:28:51 | ハガレン

 これは着服、いや、横領ということでいいのかな、軍を退職した元、大統領の言葉に男は、すぐには返事ができなかった。
 何故、自分の目の前にいるのかと疑問に思うが、これだけははっきりと分かる、それはは自分が、とんでもないことをしたということだけだ。
 ばれることはないと思っていた、いや、発覚したとしても謝れば何とかなるだろう、なのに、これはあまりにも予想外のことだと混乱していた。
  
 数ヶ月前、何らかの異変で違う国から真理の扉の向こうから来た外国人、ほとんどが未成年といってもいい年齢だった為、軍は彼らに月々の生活費支給することを決定した。
 しかし、全員が子供というわけではなく、一人の成人した女性を見て男はよからぬ事を考えた。

 「いい年して、働けよ、恥ずかしくないのか」

 声をかけ、その女が受け取る筈の金を。
 最初は、ばれないだろうかと思ったが、何事もなく一ヶ月あまりが過ぎた、男が味を占めたのも無理はない、ところがだ。
 目の前には予想もしない人物が、自分のやったことを問い詰めてきた。
 それが今だ、しかもブラッドレイ、元、大統領だ、何故と思ったのも無理はない。
 
 「彼女が何も言わないのをいいことに、ずっと続けるつもりだったのかね」

 顔を上げて相手の顔をまともに見る事さえできなかった、だが、

 今後は、この口座に振り込みたまえ、勿論、今まで君が横領した金額もだと言われて男は深く頭を下げた。
 
 「君をクビにするのは簡単だ」
 
 退職したとはいえ、自分が言えばどうとでもできるといわんばかりだ、だが、いきなり目の前に出された書類を見ると男は不思議そうな顔になった。
 書かれていた口座名義は日本人の名前ではなかったからだ。
 
 「聞いたことぐらいあるだろう、二つ名を持つ人間は決して多くはない、彼女は彼の元で助手として働いている、もしも、今後、同じようなことをすれば君は錬金術師の心証を悪くするどころではない」
 
 「ま、待ってください」
 
 男は叫んだ、知らなかった、いや、自分はそんなつもりはなかったと。

 「卑怯というよりは姑息なやりかただ、誰かに指示されたのかね」

 「い、いえ、そんなことは、自分の独断で」

 「君が、これを始めたのは大統領選の進出で候補者が、いや」

 怖々と視線を向けると目の前の男はにっこりと笑っている、だが。

 「私は誰かの特別な後援、支援につくつもりはない、私の言いたいことがわかるかね」

 いや、これは独り言だよ、その言葉に男は顔を上げる事ができなかった。


 何か欲しいものはないかねと聞かれても、今のところは何もないですときっぱり、はっきり言われては返す言葉もない。
 正直、困ってしまうところだ。
 軍から支給される彼女の生活費が自分の口座に入金されるのは別にいいのだが、その使い道だ。
 彼女の金なのだが、医学書や診療に必要な器具や雑費に使おうとするのだ。
 女性なのだから服やアクセサリー、化粧品などに金をかけてもいいと思うのだが、これはあっさりと却下された。
 
 「金で買えるものが欲しいなんて、子供の頃ならともかく、今は無理です」
 
 真顔で言われてしまうと確かにとマルコーも思ってしまう、いや、答えづらい。
 世の中、大抵のものは金で買えるがそうでないものもあるのだと知ったのは分別がつくようになって、つまるところ大人になってからだ。
 
 「もう一度、○○したいとか、優しい△□○が欲しいとか思ったんですけどね」

 「何だね、それは」

 「叶ったというか、今、十分すぎるくらい満足しているからいいんです」

 にっこりと笑顔が返ってくる、正直、何が言いたいのか意味がわからない。
 金のことだけでなく、いや、それ以外のことも、彼女は大人なのだから口を出さなくてもいいのだ。
 だが、つい気になって口を、いや、世話を焼いてしまいそうになる、娘でもいたら、こんな感じだろうかと思いながら窓の外を見た。
 
 その朝、突然、言われてマルコーは驚いた。
 自分に支給された金を使って旅行に行きたいと言われてマルコーは一瞬、悩んだが考えてみれば、こちらに来てから休みらしい、いや休日といったものがなかったのだ。
 羽を伸ばしてゆっくりと休んで来るといいと送り出すつもりだったが、一緒に行くんですよと言われてえっとなった。
 助手が休んで先生が留守番なんて、おかしいでしょうと言われては返す言葉もない。
 観光とかはしなくていいから、ホテルに泊まって、ゆっくり休んで、ご飯を食べて、だらだら、のんびりしたいです。
 なんだか年寄りっぽい過ごし方だが、休みってそういうものですよ、観光して足も体も疲れてなんてごめんですと言われて、納得してしまう自分がいた。
 それに自分も楽と思い、なら週末を挟んで数日、療養所を休もうと考えていた、ところが。

 医者の不摂生ってやつですねと言われてマルコーは面目ないといわんばかりの情けない顔で天井を見上げたのは、どんな顔をすればいいのかわからなかったからだ。
 仕事が忙しくて夜更かしが続いたからとか、理由をあげればきりがないだろうが、こうなっては仕方ない。
 診療所は休みにしましょう、連絡はしておきますからと言われてマルコーは安堵した。
 助手がいて、細々したことを任せられて自分が休めるなど以前なら考えられなかった。
 寝込んでしまったことにより、旅行の予定をたてるつもりが中止になってしまった、悪かったと思ったが、彼女は仕方ないですよと自分の世話を至れり尽くせりというぐ
らいしてくれる。
 イシュヴァールに戻って一人だったら、大変だったなと思わずにはいられなかった。


試験には受かっていたようですって、後から言われても

2021-09-05 18:37:13 | ハガレン

「一人暮らしが長いと料理の腕もなかなかだ、羨ましいよ」
 
 そういってブラッドはマルコーの作った料理を遠慮なく食べる、勿論、遠慮なくお代わりもだ。
 夕食の時間、用意したのはローストビーフサンドにサラコーンスープ、温野菜のサラダだ。
 宿をとっていないのなら、泊まるかいとマルコーが尋ねると頷きながらブラッドは彼女のベッドで寝るから大丈夫だと隣を見た。
 その言葉に、部屋の中、彼女と言われた本人だけでなく、スカーとマルコーは無言になった。

 「ところで、確認しておきたいことがあるんだが」

 ブラッドは隣の彼女をちらりと見た。

 「先生には話したているんだろうね」
 
 女の顔が一瞬、んっっとなった、だが、次の瞬間、気まずそうな表情になった、助手が隠し事をするのは頂けないとマルコーはブラッドを見ると報告を受けてないんだねと尋ねた。

 「看護士の試験だ、ここに来る前、セントラルで受けたんだよ」

 そんなことは知らなかったとマルコーとスカーは驚いたように彼女を見たが、当人の表情は暗い、落ちたのだろう。
 
 「実はノックス先生が相談してきてね、基本はできている、自分が色々と教えたし、元々、資格は持っていたんだろう、前の世界では」」

 一瞬、ぽかんとした顔つきになった彼女に色々と教えて貰ったんだろう、ノックス先生にとブラッドは言葉を続けた。
 

 「それで調べてみたわけだ、色々とあってね、はい」

 胸ポケットから出した一枚のカードを手渡したが、それを見た彼女の顔が、えっという表情に変わった。
 
 「不合格は間違いだったらしい、手違いだったと言われてね」
 
 その言葉に不思議というよりも、不可解といいたげな表情になったのは無理もない、理由を知りたい、聞いてもいいですかと尋ねると軽く首を振ったブラッドは、まあ良いんじゃないかいと。
 
 「実は結果を聞く前に、私が君と親しい間柄と説明したんだよ、それに今は二つ名を持つ錬金術師の元で助手として働いていると言ったら、いや、余計な事を言ったかな、ははは」

 (それは恐喝、いや、元、退役軍人のなんというか)

 ブラッドの顔を何か言いたげに見る彼女だが、それはマルコーやスカーも同じだ。


 試験の事は初めて聞いたよとマルコーはどこか居心地の悪そうな顔でブラッドを見た。
 
 「実は試験を受ける時にイシュヴァール人ということで彼女は試験を受けたんだ、それがまずかったみたいだ」
 
 何故と疑問を抱いたのはスカーだ。

 「受験生の中に少し金持ちの子ががいてね、あと人数制限だ、それで落とす人間はいないかということで彼女にね」

 このとき、マルコーは初めて怒りというよりも呆れてしまった、試験の意味がないだろうと。

 


 「ところで、お茶にしないかい、レーズンバターサンドクッキーがあるよ」

 ブラッドの言葉に、寝る前にカロリーの高いお菓子食べたら太るから嫌ですという辛辣な返事だった。

 「そうだ、明日、デートしよう好きなところへ連れて行ってくれるぞ、スカー君が」

 何故、ここで自分の名前が出てくるのかとスカーはブラッドを見た、というより睨みつけた、だが、それ、罰ゲームですかと返ってきた言葉にブラッドは、はははと笑った。

 「年下だが、顔は老けてるぞ」

 褒め言葉としても微妙な言葉に、おやすみなさい、もう寝ますと行って自分の部屋に入っていく彼女の後ろ姿に先生にお任せしようとブラッドはマルコーを見た。