日々、雑多な日常

オリジナル、二次小説、日々の呟きです。

帰ったマルコーさん、スカーも一緒らしいです(その後のセンラルと彼女の事情)10

2021-06-27 20:51:25 | ハガレン

 車窓の景色をしばらく眺めていたマルコーは小腹が空いたと思い、貰った紙袋を開けてみた、サンドイッチや飲み物以外にも飴や焼き菓子も入っている、汽車に乗り込む
まで色々とノックスと今後の相談をしていたので、食べ物を買う時間もぎりぎりで我慢するしかないと思っていたので有りがたかった。
 何を食べようかと迷っていたがふと視線を感じて顔を上げると、底には自分を見下ろしている大男がいた。
 
 「スカー君じゃないか、どうしたんだね」

 仕事か、どこかへ出掛ける途中なのだろうか、良かったら座らないかと声をかけると同時に、自分が抱えている紙袋を見ている事を気づいて沢山有るんから食べないかと
飲み物とパンを差し出した。

 「帰るとは聞いていたが、今日だったのか」
 「ああ、予定が早まってね、君は」
 「行き先は同じだ、良かったら泊めてくれるか」

 構わないと頷いたマルコーは仕事かねと尋ねた。

 「今、イシュヴァールに移住する人間が増えている、土地が安い事もあるんだろう、それで区画整理だけでなく、色々と」
 
 一人で帰らなければならないと思っていただけに、連れができたのは嬉しかった、たとえ日頃から無口な相手でもだ、長いと思っていた汽車の旅もあっという間だった。

 自宅に着いたときはほっとした、二ヶ月、いや、それ以上か、なのに自分の住んでいた付近には新しく家が数軒、軍から派遣された医者が自宅近くで診療所を開いていた
のでほっとした。
 夜になったらノックスに連絡しようと思い、早めの昼食を食べようとしていたとき電話が鳴った。

 

 「おう、そろそろ着く頃じゃねぇかと思ってな、実はな、錬金術講座のことだが、近いうちに廃止になるみたいだ」

 えっ、何故と聞き返す、急すぎないかというとノックスも昨日、聞かされたばかりだという、だが、それだけではない、軍が学校を作る準備をしていると聞いて驚いた。

 「誰でも入れるのかい」
 
 すると入学金とか、色々と金が結構かかかるらしい、講座を金儲けに使おうと考えている連中の仕業だといわれて納得した。
 錬金術講座に最初は見向きもしなかった高官が、ここにきて考えを変えたらしい、講座の事を知った金持ちが自分の子供達を錬金術師にしたいと高官達に金、つまり賄賂
だと聞いてマルコーは、がっくりとなった。

 「まあ、そういうことを考えてるのは老害と呼ばれても文句は言えねぇ連中だ、正直なところ、学校が成功するかは半分賭け、博打じゃねぇかと俺は思ったね、他の皆
も、そう思っている」
 
 偉い教師が手取り足取り教えたところで全員が錬金術師になれるわけではないといわれて確かにとマルコーは頷いた。

 「で、キンブリーやイズミ、希望のある奴は弟子にしたいと言ってるしな、退役軍人が養子先とか、弟子入りできそうなところを進んで斡旋してくれるみたいだ」
 「そうなのか、退役というと」
 
 ブラッドレイ、マルコーの脳裏に退職して暇だ、やることがないとぼやいていた男の顔が浮かんだ。

 「ところで、おまえさんが以前、気になっていた医術書だったか、再版がかかったぞ」

 驚いたのも無理はない、するとノックスは笑った、作者が亡くなって出版業界も変わったんだろう、医術の独占は進退の妨げになるとか、一部の人間が言い出したらし
い、ただ、内容が難しく、情報量もかなりだからと続く言葉を遮った。

 「金は出す、頼む」
 「おおっ、即決か、流石だな、多分遺族の最後のあがきだな、冊数まで限定されて高額だが」
 
 任せろという友人の言葉にマルコーは、ほっとした。


 その日、マルコーの元に客が来た、セントラルの職人の元で働いているという二人の男女は先生は甘い物が好きですよねとクッキーと焼き菓子の詰め合わせを持ってき
た。

 「すまないね、それにしても、こんなところまで来るとは仕事なのかい」

 「支店を出さないかって話があるんですが、その前に下見をしようということになって、他の職人達も、こっちに来ているんです」
 
 「そうか、ところで」

 この時、気になっていた事を尋ねようと思った、ノックスとの電話の後、医術書の事に夢中になって聞きそびれたのだ。

 「彼女、木桜さんは元気かね」

 すると二人は、マルコーをじっと見た、青年が何か言いかけようとした瞬間、どかっと隣の女性が青年の脇腹に肘鉄を食らわせた。

 「あんた、余計な事を言わない、当人は気にしてないわよ、余計な事を言ったら先生が気にするでしょ」

 なんだ、今のやりとりだけで凄く気になるんだがとマルコーは二人をじっと見た。

 ぶんぶんと首を振る女に青年の方がやっかみですと呟き、隣の女を見た、話した方がいいよと促すように声をかけた。

 「少し前からノックス先生の助手として軍の医療室で働いているんですけど、そしたら桜さんに文句を言ってくる人がいて」

 「ノックス先生も、ほっとけって言ってるわ」

 「おまえ、言ったのか、先生に」

 ま、まあねと曖昧な返事が返ってきた。
 
 「なんだよ、それ、俺より先に告げ口してたのかよ」

 ぶつぶつと呟く青年は俺たちも詳しい事は知らないんですと言われてそうか、マルコーは頷いた、ノックスに聞いた早いと思ったのかもしれない。


 「困っていることはないのか」
 
 夕食が終わった後、いきなりかかってきた電話を受けたノックスは珍しく、興奮しているなと落ち着けよと声をかけた。
 教え子が自分の家に来た事を話すと、ノックスは笑いながら話を切り出した。

 「まず、報告だが、俺は明日で軍医はやめる、ただの町医者に戻ったよ」

 肩の荷が下りた気楽なもんだ、笑い出す友人の声に、どうしてだと聞き返した。

 「学校建設だよ」
 「それは以前」
 「まあ、聞け、自国、アメ人を優先ということになっている、裕福な金持ち学校ってのが本音だろうとキンブリーの兄ちゃんが言ってたがな、だが、そういうのは馬鹿げ
ていると言ったんだが、そしたら重箱の隅をつつくみたいに俺の粗探しだ、軍医としてどうなんだ、異国の女を助手にしてときたもんだ」
 
 で、こっちから辞めてやったというわけだ、とにかくこれで軍とは無関係だ、今後一切呼び出しをするなと大佐に嫌みを言ってやったぜと笑うノックスにマルコーは頷い
た。

 「ところで本の予約だが、喜べ」
 
 手に入ったら送ると言われて喜んだが電話を切った後、また、彼女のことを聞き損ねてしまったとマルコーは、はっとした。

 

 「おうっ、ネェちゃん、頼まれてくれねぇか」

 途中で事故にあったり、盗まれたりしたら大変だからな、旅費と弁当代を出すぞと言われて不思議そうな顔になったのはいうまでもない。
 数日後、荷物を抱えた彼女はイシュヴァール行きの汽車に乗り込むこととなった。
 汽車の旅なんて久しぶりだと窓の外を見ながら、マルコーさん喜んでくれるだろうかと、その瞬間の事を考えた。
 ノックスさんに頼まれて医術書を届けに行くのだが、セントラルからイシュヴァールまでは結構かかるらしい、汽車で乗り換えをしながら三日ほどと聞いて驚いた。
 慌てることはない、途中で下車してゆっくりと行けばいいと言われたので気楽なものだ。
 講座がなくなって、暇になったなあと思ったら色々と教えてやるからとノックスさんに医術書、助手として働けと色々と教えてやると言われて本を読みあさり、消毒薬や
簡単な治療の仕方を教えて貰っていたら一日、数日なんてあっという間だ。
 少し悲しかったのは巨大ベアとお別れすることだ、あれはノックスさんの診療所待合室で子供達のアイドルになってしまった。

  午前中の診察は殆ど終わり、少し遅めの昼食を食べていると車のエンジン音が聞こえてきた、誰か来たのかと思って外に出るとスカーが、続いて降りて来たのは知らな
い女性だ、ところが。
 お久しぶりです、マルコーさんと声をかけられて驚いた。


 「おう、着いたのか、時間かかったな」
 
 電話の向こうの友人に聞きたい事があるとマルコーは低い声で呟いた、隣の部屋で寝ている彼女は疲れきっていて起きることはないだろう。

 「顔色がよくないぞ、体調、病気じゃないだろうな、それに少し痩せている」
 「化粧のせいじゃねぇか」
 「本気で言ってるのか」
 
 あー、まあ、間延びした声で色々とあったんだと電話の向こうの声のトーンが少し下がった。

 「おっ、患者だ、すまん」

 患者と言われては話を続ける事ができない、とりあえず、彼女が目を覚ましたら、消化のいいものを食べさせようとマルコーは台所に向かった。
 


イシュヴァールへ帰る(マルコー)軍に内緒で携帯電話を貰いました 9 書き直し

2021-06-22 20:36:12 | ハガレン

9話、後編を書き直しました、再投稿です。 

 

 先生、マルコー先生じゃないですか、講義が終わって夕食の買い物を済ませて帰ろうと考えていたときだ、声をかけられて驚いた、イシュヴァールの診療所で、お世話になっていたという言葉に思い出した。

 「セントラルに、こちらにいるなんて驚きました」
 「色々とあってね、今は、こっちで仕事をしているんだ」

 そうですかと頷いた男は、戻らないんですかと聞いた。

 「イシュヴァールにも医者はいるんですが、古い患者はマルコー先生に看て貰いたいという人もいるんです」

 男の言葉に勿論、帰るつもりだよとマルコーは答えた。

 「ただ、今すぐという訳には色々とあってね」
 「もしかして、今は軍医として、お仕事を、ですか」
 「ああ、色々とあってね」
 
 男は少し残念そうな顔になったが、セントラルで医者として開業している訳ではないと聞いて安心したようだ、だが、軍医として働いているのなら色々と大変だろうと思ったのだろう。
 男と別れた後、言い訳がましくなかっただろうかと思い返してみる、帰る気がないわけではない、講師として、それにノックスの療養所を手伝っている事もある、だが、こちらに来て、随分とたつ、やはり、一度は帰った方がいいのかもしれないと考えた。


 「で、帰るのか、まあ、長いこといるからな、家も空き家同然だったら泥棒が入っていてもおかしくはないだろう」
 「取られるようなものはないがね」
 「数日なら講師は俺が代わりにと思うが、先の事を考えるとなあ、大佐に相談してみるか」

 自分の講座の事は数日ぐらいならノックスが自分の友人が代わりを務めてくれるだろうが、だが、どれくらいの期間になるか分からないとすれば正直、迷ってしまい安易に頼むとはいえない、確かに長く、こちらにいすぎたかもしれないと今更のように思ってしまう。
 帰るとしたら、彼女に伝えなければいけないな(また、一人の生活に戻るのか)
 そんな事を考えると、帰る足取りが、わずかに遅くなってしまう。
 

 「なんか浮かない顔だな、どうした」

 「一度帰ることにした、大佐にも伝えてはある、後の事ほ頼めるか」
 
 任せろと友人の言葉にほっとするマルコーだが、ノックスは、んっという顔になった、何か気になる事でもあるのかと言われて、言葉を濁そうとすると、ネェちゃんには言ったのかと聞かれてしまい無言になる。

 「連れて行けばいいだろ、助手代わりにどうだ、俺のところでも手伝ってたしな、大丈夫だ、保証してやる」
 
 マルコーは首を振った、ここセントラルと違って自分の住んでいるイシュヴァールはド田舎といってもいい、何もないところなのだ、不便な事もあるだろう、そんな簡単に自分の都合で手伝い、助手代わりに連れて行くなどできないと呟く。
 すると、真面目だなあとノックスは笑った。

 だが、その数日後、イシュヴァールに帰るんですかと彼女から聞かれてマルコーは驚いた。
 まさか、話したのかと思ったが、生徒達の間で講座の規模が縮小され、講師の数が減るかも知れないという噂になっているらしい。
 
 「あー、そのいずれは帰ろうと思っているんだが、診療所も埃だらけだろうし」

 

 イシュヴァールに帰るかもしれないという噂、マルコーさんがいなくなるのか、だが、向こうで医者として仕事、診療所を開いていたのだから、いつかは帰る日が来てもおかしくはないのだ。
 だが、それを聞いて自分は、うーん、ショック、気落ちしている。
 二人で暮らしていて凄く居心地が良かったというか、良すぎたので、長く続いて欲しいなんて思ったけど、我が儘だと思ってしまうのだ。
 助手として連れて行ってくださいなんて図々しい事はさすがに言えない、かといって。
 ノックスさんのところで助手として雇ってもらおうか、でも息子さんがいるし、いや、その前に、この家で一人で住むというのもなんとなく気が引けてしまう。
 
 その日、デートしないかねとニコニコと笑いながら声をかけられた。
 講義が終わって、夕方までは時間があるしぶらぶらと、本屋にでも行こうと思っていたのに。
 元気がないねと言われて、そんな事ないですよと言いかけるとにっこりと笑いかけてくるので妙な気分になってしまった。

 「それは地図かい、で、どこか旅行にでも行くのかい、ああ、イシュヴァールか、少し遠いね」
 「な、なんですか」

 地図をただ、開いていただけなのに、何故と思ってしまった。

 「ははは、当たったかな」
 「ブラッドさん、その、遠いんですか、イシュヴァールって」

 そうだねぇという返事の後、軽く髭を撫でながら、汽車で数日かかるね、その後はと続く言葉に女は肩を落とし、遠いんですねと小声で呟いた。
 
 「一緒に行けばいいんじゃないか」

 ブラッドレイの言葉に、ムムッと困った顔になった彼女はわずかに顔を伏せた。

 「図々しい事、言えませんよ、無職でプーですよ」
 「随分と殊勝な事を」 
 「おまけに居候ですから、三重苦ですよ」

 それは大変だと笑うブラッドレイだが、恨めしそうな視線に気づいた。


 一度、家へ、イシュヴァールへ帰るという話を伝えると大佐の顔は渋いものだったが、反対される事も引き留めもなかったことには正直、ほっとした。
 自分が帰ると事を知った講座の生徒達は、困惑と戸惑いの表情を浮かべだか、以前よりも講義を受ける姿勢に熱が入ったことは喜ばしいことだった、しばらくはノックスが引き受けてくれるらしいが、新たな後任を検討中だというひとでほっとした。
 もしかしたら、セントラルに戻ってくることはないかもしれない、ふとそんな事を考える。
 近い距離とはいえないし、イシュヴァールで診療所を再開するとなったら、こちらへ戻ってくる事もあまりないだろう、その事は話しておいた方がいいだろう。
 

 月末には帰るよと伝えると、あと一週間しかありませんよと驚いた彼女は奔走した、イシュヴァールでは手に入らない食材などを買い込み、小型の電化製品を送るように荷造りをして、あっという間に数日が過ぎた。

 「困った事があったら連絡しろよ、変な遠慮するんじゃねぇぞ」
 「ああ、色々と世話になった」
 
 駅のホームで友人の言葉にマルコーは頷いた、おまえの家は電話がないよなと言われて田舎だからと言葉を続けるとノックスは頭をぽりぽりと掻きながら、ポケットから取り出したモノを手渡した。
 何だと不思議そうな顔になったのはいうまでもない。

 「携帯電話だ、トランシーバーよりも性能がいい」

 軍の一部の人間が開発に携わっている、キンブリーの生徒が提案したらしいと聞いて驚いた。

 「あっちの世界では一般的らしいな、ただ、今の段階では音声だけを伝えるのが精一杯というところだ、着いたら連絡してくれ、イシュヴァールーまではかなり距離があるだろう、使Lなら、こんな便利なモノはねぇ」
 「軍が作る、いや、開発しているということか」
 
 ノックスは小声で民間だと呟いた、出資は退役オヤジで表向きはキンブリーだと。

 「おまえさんがイシュヴァールに戻ると性能を試せるからな試験的に、だが、これは内緒だ」
 
 軍に内緒でというが、ばれたらまずくないのだろうか、すると、あの男も色々と考えているんだろう、講師を辞めたら軍から離職するつもりだなと聞いて驚いた。

 「マルコーさーん」

 その時、自分を呼ぶ声がした、荷物を抱えて彼女が向かってくる。

 「これ、汽車の中で食べてください、ローストビーフにカツサンド卵とハムとミックスサンド寝飲み物は紅茶に珈琲、フルーツジュース」
 
 一人で食べるには沢山過ぎないかと驚くとイシュヴァールまで遠いし、帰ったらお腹が空いて、作る気にもならないだろうと聞いて納得した。

 「着いたら連絡してくださいね」
 「ああ、数日かかるな、田舎だから、手紙が届くのも」

 ああ、また妙な言い訳がましい事をと思いながら汽車に乗り込む、窓の外から友人と彼女の姿を見ると妙な気持ちになった、長くこちらにいたせいかもしれない、こういうのをセンチメンタルな気分というのだうろか。
 汽車が走り出すと自分が思ったよりも寂しいと感じていることに、改めて気づいた。

 

 


マルコーさんは帰るらしいのでキンブリーがお願いしました、生徒を連れて行ってくださいと 9

2021-06-20 14:47:48 | ハガレン

 先生、マルコー先生じゃないですか、講義が終わって夕食の買い物を済ませて帰ろうと考えていたときだ、声をかけられて驚いた、イシュヴァールの診療所で、お世話になっていたという言葉に思い出した。

 「セントラルに、こちらにいるなんて驚きました」
 「色々とあってね、今は、こっちで仕事をしているんだ」

 そうですかと頷いた男は、戻らないんですかと聞いた。

 「イシュヴァールにも医者はいるんですが、古い患者はマルコー先生に看て貰いたいという人もいるんです」

 男の言葉に勿論、帰るつもりだよとマルコーは答えた。

 「ただ、今すぐという訳には色々とあってね」
 「もしかして、今は軍医として、お仕事を、ですか」
 「ああ、色々とあってね」
 
 男は少し残念そうな顔に鳴りながらも、セントラルで医者として開業している訳ではないと聞いて安心したようだ、だが、軍医として働いているのなら色々と大変だろうと思ったのだろう。
 男と別れた後、言い訳がましくなかっただろうかと思い返してみる、帰る気がないわけではない、講師として、それにノックスの療養所を手伝っている事もある、だが、こちらに来て、随分とたつ、やはり、一度は帰った方がいいのかもしれないと考えた。


 「で、帰るのか、まあ、長いこといるからな、家も空き家同然だったら泥棒が入っていてもおかしくはないだろう」
 「取られるようなものはないがね」
 「数日なら講師は俺が代わりにと思うが、先の事を考えるとなあ、大佐に相談してみるか」

 自分の講座の事は数日ぐらいならノックスが自分の友人が代わりを務めてくれるだろうが、だが、どれくらいの期間になるか分からないとすれば正直、迷ってしまい安易に頼むとはいえない、確かに長く、こちらにいすぎたかもしれないと今更のように思ってしまう。
 帰るとしたら、彼女に伝えなければいけないな(また、一人の生活に戻るのか)
 そんな事を考えると、帰る足取りが、わずかに遅くなってしまう。
 

 「なんか浮かない顔だな、どうした」

 「一度帰ることにした、大佐にも伝えてはある、後の事頼めるか」
 
 任せろと友人の言葉にほっとするマルコーだが、ノックスは、んっという顔になった、何か気になる事でもあるのかと言われて、言葉を濁そうとすると、ネェちゃんには言ったのかと聞かれてしまい無言になる。

 「連れて行けばいいだろ、助手代わりにどうだ、俺のところでも手伝ってたしな、大丈夫だ、保証してやる」
 
 マルコーは首を振った、ここセントラルと違って自分の住んでいるイシュヴァールはド田舎といってもいい、何もないところなのだ、不便な事もあるだろう、そんな簡単に自分の都合で手伝い、助手代わりに連れて行くなどできないと呟く。
 すると、真面目だなあとノックスは笑った。

 だが、その数日後、イシュヴァールに帰るんですかと彼女から聞かれてマルコーは驚いた。
 まさか、話したのかと思ったが、生徒達の間で講座の規模が縮小されルカもしれない、講師の数が減るかも知れないという噂になっているらしい。
 
 「あー、そのいずれは帰ろうと思っているんだが、診療所も埃だらけだろうし」

 

 イシュヴァールに帰るかもしれないという噂を聞いた時は驚いた、だが、向こうで医者として仕事、診療所を開いていたのだから、いつかは帰る日が来てもおかしくはないのだ。
 だが、それを聞いて自分は、うーん、ショック、気落ちしている。
 二人で暮らしていて凄く居心地が良かったというか、良すぎたので、長く続いて欲しいなんて思ったけど、我が儘だと思ってしまうのだ。
 助手として連れて行ってくださいなんて図々しい事はさすがに言えない、かといって。
 ノックスさんのところで助手として雇ってもらおうか、でも息子さんがいるし、いや、その前に、この家で一人で住むというのもなんとなく気が引けてしまう。
 
 デートしないかねとニコニコと笑いながら言われてしまうと、何故か断りづらい。
 講義が終わって、夕方までは時間があるしぶらぶらと、本屋にでも行こうと思っていたら声をかけられた。
 元気がないねと言われて、そんな事ないですよと言いかけるとにっこりと笑いかけてくるので妙な気分になってしまった。

 「それは地図かい、で、どこか旅行にでも行くのかい、ああ、イシュヴァールか、少し遠いね」
 「な、なんですか」

 地図をただ、開いていただけなのに、何故と思ってしまった。

 「ははは、当たったかな」
 「ブラッドさん、その、遠いんですか、イシュヴァールって」

 そうだねぇという返事の後、軽く髭を撫でながら、汽車で数日かかるね、その後はと続く言葉に女は肩を落とし、遠いんですねと小声で呟いた。
 
 「一緒に行けばいいんじゃないか、断らないと思うがね」

 ブラッドレイの言葉に、ムムッと困った顔になった彼女はわずかに顔を伏せた。

 「図々しい事、言えませんよ、無職でプーですよ」
 「随分と殊勝な事を」 
 「おまけに居候ですから、三重苦ですよ」

 それは大変だと笑うブラッドレイだが、恨めしそうな視線に気づいた。


  「少し、よろしいですか」

 講義が終わった後、キンブリーに声をかけられたマルコーは驚いた、イシュヴァールに帰られるんですよねと言われて頷くと、お願いがあるんですと言われて正直、驚いた。

 「実は私の生徒なんですが、御一緒させて貰えませんか」

 自分が付き添っていきたいが、今、セントラルを離れられないというキンブリーにマルコー何故という顔になった。

 「イシュヴァールで区画整理が行われるという噂があります、軍の施設をいう話らしいんです、先生の療養所付近なんですよ」

 あんな田舎に、一体何を建てるというのか、人口は少ないし、廃坑は古く、何もない土地と入ってもいい。

 「君の生徒というのは、もしかして、あの三人かな」

 キンブリーは頷いた、ドボジョの三人は有名らしい。

 「あちらは貧しい土地といいますが、それは今までのことがあったからです、実は区画整理の話も聞きつけてきたんです、彼女たちが」
 
 一体どこからと思ったのだという、最初はデマか、噂ではないかと思ったが、調べてみると確かに話はあるらしい、自分達の工房、職人の間では民間の職人に仕事は任されないのかと噂する者もいるようだ。
 キンブリーの話を聞きながら、マルコーは少し難しい顔になった、すると区画整理、軍が関係しているというのは、この際、無視してくださいませんかとキンブリーは真面目な顔になった。

 「イシュヴァールがどんな土地か、一度、見せておくのもいいかと思いまして、若いんです、選択は幾つあってもいいでしょう」

 キンブリーの言葉を聞いて、マルコーは驚きの目で相手を見た。 


 


五十、六十、よろこんで、ええっ、コミックスにになってたの

2021-06-18 19:00:13 | 漫画

以前Twitterで数ページだけだったけど凄く格好いいオジサマとバツイチ女性の話が、ああ、連載とか、作者さんが続きを書いてくれないかなあと思っていたら、pixivでも連載していたけど、コミックスになっていたとは驚きだ。
よし、買わなきゃねと思ったけどどうせなら本屋さんで買いたいなあ、特典とかないのかしらと。
女性がバツイチ、イケオジが60という設定も、ハートをがっちりと掴まれたわ。

ちなみに今、自分の書いてるハガレンのマルコーさん、ブラッドレイも60代ぐらいだから、スカーとかキンブリー、大佐が若すぎるなあと思ってしまうわ。
うーむ今回は一応、エロとか入れるつもりなので色々と漫画や映画ネタを探しているのよね。

 


退役軍人は偉い、みたいです、でも彼女は不安になっているようで 8

2021-06-14 22:19:56 | ハガレン

 わずかに肩を竦めた男は不満げな表情を隠そうともしないまま、大佐と呼びかけた。

 「賛成できませんね、講義を受けさせるのはアメストリス人だけ、それ以外の人間はというのは」
 「帰れる保証があるんだ、勿論、これは決定という訳ではないのだが」

 自分に話をしている時点で決定ではないなどと、それは無理があるのではと言いかけたキンブリーは、マスタングの顔を見た。

 「貴方がさっさと出馬して大統領になっていれば、問題にならなかったのではありませんか」

 それは皮肉か、嫌み、責めているように感じるぞと思いながらマスタングは黙りこんでしまった、だが、そんな男の態度に対してキンブリーは辛辣だった。
 気の毒だと思うわけでもなく、目の前の男に対して呆れたような顔で見た。

 「こんな事を言いたくはありません、ですが、今は講師として、貴方の前に立っているんです」
 「なんだ、その言い方は、まるで」

 話は終わりです、忙しいんですよと部屋のドアを開けて廊下へ出た、するとだだーっと駆け寄ってきたのは三人の女性だ、キンブリーは驚いた。
 もしかしてと思ったが、あえて自分から言い出すのは良くないと思ったのは心配させてしまうと思ったからだ。

 「あなたたち、どうしたんです、今日は仕事ではなかったんですか」

 「休みをもらってきました、皆、噂してるんです、あたし達、元の世界に帰されるんじゃないかって」

 真剣な顔つきで自分を見ている視線に生徒の間にも広がっているのかと、この時、初めて気づいた。

 「講座を受けてる子が、あたし達、扉の向こうから来た人間は全員、強制的に帰されるっていうんです」
 「真理の扉を開くって錬金術師でも大変だっていってたのに、強制的にって、そんな事できるわけないって言ったら」
 「錬金術の事を知らない人間が偉そうになんて怒ってくるから」

 三人の言葉を聞いていたキンブリーは、にっこりと笑った。

 「確かに、けれど、大事な事を忘れていませんか、あなた方は正式に弟子入りしているんです」

 セントラルの土木関係者の元に、まずは試しでということで半月余り、様子見ということで送り込んだのだが、その結果、頭領である男は自分の弟子達の励みにもなるし、見込みがあるということで正式に弟子として採用されたのだ。

 「不安になる気持ちはわかります、ですが、私の生徒であるということにあなたたちは自信を持ってくれてもいいのではないですか、それに私も軍人の端くれなのでツテというものがあるんですよ」

 「それってコネとか」
 「一般人には秘密ってやつですか」
 「先生って、やっぱり」

 多分、世間的にはいい意味ではないのかもしれないと思いながら、キンブリーはにっこりと笑った。

 三人が仕事に戻ると帰って行く後ろ姿を見送りながらキンブリーは他の生徒も知っていても不思議はないのだろうと考えた、あの三人は生徒達の中でも年上の方だ。
 だが、もっと若い、十代ぐらいの子達になれば不安を感じている者だっている筈だ、他の講師達も話を聞いているのだろうか。
 表だって噂になっているわけでもなさそうだが、これは聞いてみた方がいいかもしれないとキンブリーは足を止めて今日の講座の為に来ている講師の姿を探した。

 

 マルコーさんの作るご飯は美味しいし、気を遣わなくていいから凄く楽なんです、女の独り言のような粒や挙聞きながら、ブラッドレイは頷いた、以前、彼が職場の仲間に振る舞っているのを見ていたら誘われたことがある。
 あれは外国のヌードルだったか、茹でた小麦の麺に汁をつけて食べるだけのシンプルなものだったが、美味かったのを思い出した。

 「戻るなんて、強制送還って考えもしなかったけど」

 簡単な事ではないよと言いかけて、思案する、多分、上の人間が画策しているのは間違いないだろう、自分の隣を歩く女性の顔は元気がない、すれ違う若い軍人が何事と言いたげな顔つきでチラリと見るのが気になる。

 「どこに行くんです」

 「他の講師がこの話をどれだけ認識しているかというのが気になるところだ、二人から聞いた事はあるかね」

 ノックス、マルコーの二人から、今まで出た事はあったかもしれない、だが、生徒を全員強制送還させるなど、今まで聞いた事はないと女はブラッドレイを見た。

 食堂に着くと二人の医師だけでなく、キンブリーとスカーの二人も一緒だ、丁度いいと女の手を握るとぐいっと握るとブラッドレイは、四人のところへぐいぐいと歩き出した。


 「おうっ、珍しいな、元、偉いさんが何の用だ」

 「元気そうで安心したよ、しかも、変わらずの口の悪さだ、強制送還の話の事聞いてるかね」

 ああと頷いたノックスだったが、んっという顔になった。


 「で、なんて姉ちゃんと手をつないだままなんだ」

 「仲良しだからね、羨ましいだろう」

 「なんだ、ネェちゃん、泣きそうだぞ」

 ブラッドレイは、はははと笑いながら、ノックスの言葉はスルーした、そして、大佐の大統領選をどう見ると、この言葉に四人の男は思わず顔を見合わせた。

 「大佐が上に立つと困った事になると危ぶんだ人間がいてね、一人ではないと思うが、それで、今回の強制送還の話が持ち上がり、騒ぎの間に自分達の身辺を綺麗にしようというのが、今回の騒動の元何ではないかと睨んでいるんだが」

 ブラッドレイの話は四人には初耳だった。


 自宅への帰り道、途中、マルコーは隣をちらりと見た、わずかに俯いた顔は元気がないというよりも全身の力が抜けて脱力したという感じだ、声をかけるのも躊躇ってしまう、少し前に聞いたブラッドレイから聞いた話をマルコーは思い出した。
 結局のところ大佐がちゃんとしていれば良かったのだとキンブリーやスカーは呆れた顔になり、ノックスと自分は上の連中は、隠れて他にも色々とやっているんだろう(多分)と考えた。
 
 「実際、扉を開いて強制送還というのは口でいうほど簡単な事ではないんだよ、それも一人ではない、複数の人間ということになるとね」

 そういって隣をちらりと見るが、反応は薄い。

 「退役軍人が口を出す事になれば上の人間も色々と考える、つまりだね、ほら、そんな顔をしないで」
 
 心配する事はない、安心しなさいと、明日は休みだから朝食は自分が作ろう、隣を見ると初めて女が顔を上げて自分を見ている、それだけ事だがマルコーは内心、ほっとした。

 結局のところ、あの女タラシがちゃんとしていなかったから問題になったのでは、大統領選に出馬すると自分で口にしていながら、それが長々と伸びていた事に上の人間がつけ込んできた。
 ロイ・マスタングが現在のところ有力候補だが、他の候補者が出てくるという噂もちらほらとある、だが。

 「どうしたんです」

 声をかけられてスカーは我に返った、隣を歩く白いスーツの男は何故かニコニコとしている、普段から笑みを絶やさない画、それは表向きだ、だが。

 「正直、ほっとしましたよ、こういうのは長引かせるとよくありませんから、安心しましたよ」

 三人のドボジョの顔を思い出しながらキンブリーはわずかに口元を緩めた、ブラッドレイが関わってきたのは意外だったが、これなら問題は大きくはならないだろう、ふと隣を見ると傷の男の表情に彼は気づいた。

 「貴方は大統領の隣を見ていましたが、そんなに気になりましたか、彼女のこと」
 「なっっ、何のことだ」
 
 少し慌てるというより狼狽した感じの大男の顔を見てキンブリーは笑った。

 「優しいですからね、元、大統領は、息子さんがいることをご存知でしょう」

 奥様は息子を溺愛していますが、娘、女の子も欲しかったみたいですね、キンブリーの言葉にスカーは無言になった。

 

 強制送還、元の世界に皆が連れ戻される、そんな事が可能なのか、もし、可能だとしても正直な気持ちをいえば帰りたくないのが本心だ。

 (我が儘なんだけど、思ってしまうのよ、だって)

 熊のぬいぐるみに顔を押しつけて、ふと考えるのは先のことだ、講座だってずっと続く訳ではないだろう、今、こちらに来ている何人かは街の職人、工房に正式に弟子入りしている者もいる。
 なのに、一番年上と言ってもいい自分は、だらだらとした日々を過ごして、情けなくないかと思ってしまう。
 マルコーさんが帰ったら、どうしよう、ノックスさんのところに助手として弟子入りするというのは、でも息子さんがいる、いや、できれば自分は。


 「食事ができたよ」

 慌ててベッドから起き上がると台所に向かう、聞こうと思って先延ばしにしてきた言葉は、まだ大丈夫だと自分に言い聞かせてだ。