カルーソーの吊り看板(ソレントにて)

2014-02-18 22:12:13 | 旅行 ・ 装飾吊り看板

      

 

  こんにちは、ご無沙汰しました

  ただ今ボランティアで多忙で、すっかり更新が遅れてしまい申し訳ありません。

      

  今日は、今までとは少し趣向の違う吊り看板をご紹介したいと思います。

  イタリアでは吊り看板はほとんど見かけることがありませんでした。

  でも、たった一つだけぽつんと掛かっている吊り看板が、なんとも重い意味のある

  看板だったりして、やはりイタリアって面白い国です。

 

  南イタリアの「帰れソレントへ」という歌曲で知られているソレントの街を歩いてい

  たとき、思いがけない人物の吊り看板に出会ったのです。

   

        

 

  イタリアの往年の人気テノール歌手、エンリコ・カルーソーです。

  看板は、当時のサイン入りブロマイドを加工したもののようです。

  20世紀初期に一世を風靡した歴史に残るオペラ歌手で、短くもドラマティックな生

  涯を送った、伝説の人。今で言うレジェンドですね。

  日本では、一般的にはあまり知られていない人ですが、歌曲ファンにとっては知る

  人ぞ知るカルーソー。   

  その半生は「歌劇王カルーソー」という映画(ハリウッド映画)にもなっています。 

 

  この吊り看板はソレントの路地裏の、「カルーソー」という名のレストラン(リストラン

  テ)にひっそりと掛かっていました(正面)。

 

        

 

  実は、この人のことを歌った「カルーソー」という歌がありまして

  今では、ご本人のカルーソーよりも歌の「カルーソー」のほうが有名なくらいです。

  世界中はもちろん、日本でも今もたくさんの歌手が歌っています。

  なので、お聴きになったかたもいらっしゃるかもしれません。

 

  歌の舞台はここソレントにあり、彼は喉頭癌にかかって48歳(1921年)の若さで

  亡くなっているのですけど、死期を悟った晩年に海を見晴らせるソレントのホテルの

  一室に長期滞在し療養していたその時の、死を前にした心情が歌われています。

  歌手としては人気も絶頂期のさなかのことでした。

 

      
                              ソレント

 

  歌の中にソレントの海の情景が印象的に出てきます。

  カルーソーの吊り看板を見たとき、思い浮かんだのはやはりこの歌のことでした。

  亡くなってからずっと後の1986年にイタリアのシンガーソングライター、ルチオ・

  ダッラが作詞作曲し、世界的なオペラのテノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティに

  歌ってほしいと捧げた曲です。

  歌が出来てわずか30年足らずとは思えないほど世界に浸透し、親しまれている

  名曲ですので、よろしければあとでお聴きになってみてください。

  日本語訳詞とともに歌をアップしておきます。

 

  カルーソーはナポリの貧民街に生まれ、歌で身を興し、ナポリで亡くなりました。

  ヨーロッパだけでなく、アメリカにも進出して華々しいオペラの活躍をするのですけ

  ど、オペラの他にもカンツォーネやポピュラーソングなど500曲ものレパートリーを

  持っていて、当時”はしり”だったレコード録音をさかんに行なって米ビクター社から

  売り出し、レコードによって世界一有名なスター歌手に登り詰めたのです。

  結果、円盤型蓄音機の普及にも大きく貢献した人でもありました。

  まだ旅客機もなく、船でアメリカに渡っていた時代のことです。

 

  後年、ルチオ・ダッラは航行中に船が故障しソレント港で下船したときに気が向い

  て、カルーソーが滞在していたというホテルに立ち寄り、テラスから海を見たとき歌

  の曲想が浮かんだと述べています。

  そのルチオ・ダッラと、歌を捧げられたパヴァロッティの二人の珍しいデュオを見つ

  けましたので、YouTubeからお借りしました。

  帽子をかぶっているほうがルチオ・ダッラです。

  すでに2012年3月に68歳で亡くなっていて、パヴァロッティのほうも2007年に

  70歳で亡くなっています。 

 


                          歌*パヴァロッティ&ルチオ・ダッラ(作詞作曲者)    

        
             ( http://youtu.be/tRGuFM4DR2Y)  
  
                                        
     

         「カルーソー」  ルチオ・ダッラ作詞作曲 訳詞者名・不明

                         

         海は輝き、風が吹きすさぶここソレント湾の古びたテラス 

         男が若い恋人を抱きしめている

         涙にくれた後、声の調子を整え、歌の続きを歌い始めた

            僕はあなたが大好きだ、とても、とても好きだ

            この絆は身体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまうんだ

         海の向こうの灯りを見て彼はアメリカでの夜を思った

         でもそれは漁師のランプ、船尾を洗う白い波

         妙なる調べが苦痛となり、彼はピアノから立ち上がる

         やがて月が雲間から顔を出すと、死さえも甘美に感じられた

         恋人の目を見つめると それは海のように碧く

         その中で溺れてしまうと思うほど、いきなり涙があふれ出た

            僕はあなたが大好きだ、とても、とても好きだ

            この絆は身体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまうんだ

         オペラは作り話のドラマでしかないが、演技や化粧をほどこせば

         自分以外の誰にでもなれる

         だが、今、目の前に現実を、こんなに切実な恋人の目を見ると 

         言葉を失くし 何もかもが小さく些末なことになってしまう

         アメリカでの夜のことまでも

         船尾を洗う白波を見つめながら、過ぎし人生を振り返る

         ほんとうに・・人生は短い

         だが、彼はもうそんなことはさして考えなかった

         それどころか 幸福感で高揚し 再び歌い続けるのだった

            僕はあなたが大好きだ、とても、とても好きだ

            この絆は身体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまうんだ

            僕はあなたが大好きだ とてもとても好きだ・・・

        ( 訳詞者名はいま調べているところです。申し訳ありません) 

 

  YouTubeにはパヴァロッティが独唱している「カルーソー」も投稿されていました。                                             

           http://youtu.be/I8A61eY1Efg  

 

  ちなみに上のパヴァロッティの独唱のアクセスは820万回以上で断トツ。

  デュオのほうも280万以上のアクセスで、この歌の人気の高さが伺い知れます。 

 

  最後に、街中にオレンジが実っていた海辺のソレントの街の写真をアップします。

  古くからのリゾート地で、著名な芸術家たちが創作や静養のために滞在しました。

      

      

    

            

  

  タッソ広場。 中央にソレントの守護聖人、聖アントニオ像が立っていました。

      

        

 

  ソレントを散策していたとき、別の角を曲がっていればこの吊り看板に出会うことも

  なく、みなさんにカルーソーをご紹介することも無かったことでしょう。

  ご縁の面白さ、ですね。(^-^*)♪

 

    

                            

 

                             

 

 

                          

 

    


最新の画像もっと見る