
1970年(昭和45年)11月25日、作家の三島由紀夫は自らが設立した「楯の会」の若者4人と共に自衛隊・市ヶ谷駐屯地で
クーデターを呼び掛け、その後、割腹自殺をした。
そのときのことはおぼろげに覚えている。
反戦運動、学生たちのストライキ、フォークゲリラ…、若者たちを中心とした新左翼の運動が盛り上がっていた時代だったから、
軍服に日ノ丸の鉢巻き姿で演説をしている三島由紀夫は、アナクロニズムの権化のように思えた。というより何が何だか分からない
奇怪な事件だった…と言った方が正確かもしれない。私は子供ではなかったけれど、あの事件に深く興味を持ったり理解しようと
試みたりするほど成熟もしていなかった。
ショッキングな出来事だったが、間もなく話題にものぼらなくなった。自分に結び付けて考えるにはあまりにも特異な事件だったし、
一般の人を巻き込んで死傷者が出るということも無かった。彼等が自分たちの作り上げた世界で空回りして終わった…。
そんな印象だったのかもしれない。
昨日<11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち>という映画を観た。
結末は割腹自殺だから気持ちの良い内容ではないのは分かっていた。先週ジャズのライブで感銘を受けたピアニストの板橋文夫さんが
音楽を担当しているのでなければ観に行かなかったろう。
でも観て良かったと思う。あの事件が理解できたとは言えないが、少なくとも心情は伝わった。
国を憂える、真摯に国を愛する、魂がゆらゆらしたり腐っていてはいけない、真っすぐに進む、そのためにはどう行動したら良いのか。
彼等は悩み、自分を鍛え、行動のときに備えた。天皇のもと、自衛隊を国軍として日本を守る…それを目指した。
天皇といっても、それは幻想や概念の天皇だったろう。自衛隊は国軍になることなど、クーデターなど望んでいなかった。
それでも彼等は一途に切り込んで行った。総監を人質にとり、800名の自衛官を庭に集合させた。
憲法改正とクーデターを呼び掛ける三島由紀夫の演説は、自衛官たちの野次や怒号で殆ど聞きとれなかった。命をかけた訴えに耳を
傾ける者は殆ど居なかった。

三島由紀夫と「楯の会」の森田必勝の死は、無駄な死だった。彼等はそれを覚悟してメッセージを残した。日本人の魂を取り戻せと。
映画は、自決から5年後、三島由紀夫の妻にこうつぶやかせている。「何も変わらなかったわね」
1972年、あさま山荘事件が起き、私たちは醜い内ゲバを見せつけられた。何かが終わったような気がした。
それから日本はバブル期に向かい、お気楽な時代がやってきた。人は次第に三島由紀夫を記憶の片隅に押しやった。
三島由紀夫の行動を美学だ…という人もいるけれど、美学であんな壮絶な犬死は出来ない。
狂気だ…という人もいる。あんなに真剣な狂気があるのだろうか。
彼等は本当に真っすぐだったんだと思う。
今、三島由紀夫が生きていたら、どう行動しただろう。日本はあの頃よりもっと憂うべき国になっているような気がする。
<11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち>
監督 若松 孝二
三島由紀夫:井浦新
(楯の会メンバー)
森田必勝:満島真之介
古賀浩靖:岩間天嗣
小賀正義:永岡佑
小川正洋:鈴之助
平岡瑤子(三島由紀夫の妻):寺島しのぶ
知らない俳優さんが多かった。上手いのかどうか分からないけれど、ひたむきな演技が良かった。
板橋文夫さんのピアノは、出すぎず、効果的に使われていた。
クーデターを呼び掛け、その後、割腹自殺をした。
そのときのことはおぼろげに覚えている。
反戦運動、学生たちのストライキ、フォークゲリラ…、若者たちを中心とした新左翼の運動が盛り上がっていた時代だったから、
軍服に日ノ丸の鉢巻き姿で演説をしている三島由紀夫は、アナクロニズムの権化のように思えた。というより何が何だか分からない
奇怪な事件だった…と言った方が正確かもしれない。私は子供ではなかったけれど、あの事件に深く興味を持ったり理解しようと
試みたりするほど成熟もしていなかった。
ショッキングな出来事だったが、間もなく話題にものぼらなくなった。自分に結び付けて考えるにはあまりにも特異な事件だったし、
一般の人を巻き込んで死傷者が出るということも無かった。彼等が自分たちの作り上げた世界で空回りして終わった…。
そんな印象だったのかもしれない。
昨日<11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち>という映画を観た。
結末は割腹自殺だから気持ちの良い内容ではないのは分かっていた。先週ジャズのライブで感銘を受けたピアニストの板橋文夫さんが
音楽を担当しているのでなければ観に行かなかったろう。
でも観て良かったと思う。あの事件が理解できたとは言えないが、少なくとも心情は伝わった。
国を憂える、真摯に国を愛する、魂がゆらゆらしたり腐っていてはいけない、真っすぐに進む、そのためにはどう行動したら良いのか。
彼等は悩み、自分を鍛え、行動のときに備えた。天皇のもと、自衛隊を国軍として日本を守る…それを目指した。
天皇といっても、それは幻想や概念の天皇だったろう。自衛隊は国軍になることなど、クーデターなど望んでいなかった。
それでも彼等は一途に切り込んで行った。総監を人質にとり、800名の自衛官を庭に集合させた。
憲法改正とクーデターを呼び掛ける三島由紀夫の演説は、自衛官たちの野次や怒号で殆ど聞きとれなかった。命をかけた訴えに耳を
傾ける者は殆ど居なかった。

三島由紀夫と「楯の会」の森田必勝の死は、無駄な死だった。彼等はそれを覚悟してメッセージを残した。日本人の魂を取り戻せと。
映画は、自決から5年後、三島由紀夫の妻にこうつぶやかせている。「何も変わらなかったわね」
1972年、あさま山荘事件が起き、私たちは醜い内ゲバを見せつけられた。何かが終わったような気がした。
それから日本はバブル期に向かい、お気楽な時代がやってきた。人は次第に三島由紀夫を記憶の片隅に押しやった。
三島由紀夫の行動を美学だ…という人もいるけれど、美学であんな壮絶な犬死は出来ない。
狂気だ…という人もいる。あんなに真剣な狂気があるのだろうか。
彼等は本当に真っすぐだったんだと思う。
今、三島由紀夫が生きていたら、どう行動しただろう。日本はあの頃よりもっと憂うべき国になっているような気がする。
<11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち>
監督 若松 孝二
三島由紀夫:井浦新
(楯の会メンバー)
森田必勝:満島真之介
古賀浩靖:岩間天嗣
小賀正義:永岡佑
小川正洋:鈴之助
平岡瑤子(三島由紀夫の妻):寺島しのぶ
知らない俳優さんが多かった。上手いのかどうか分からないけれど、ひたむきな演技が良かった。
板橋文夫さんのピアノは、出すぎず、効果的に使われていた。
あの「制服(?)」と鉢巻きの印象的な姿で演説をぶつ三島 由紀夫の姿が子供心に印象に残りました。三島 由紀夫は、あの事件を起こさなければ、その後も平穏無事に生きて作家として賞賛されたでしょうに(どうもあの事件のイメージが強くて、作品を読んだことはないですけれど)。
市ヶ谷駐屯地...現在は防衛省がある場所ですよね。まだ防衛「庁」の時代、今は六本木ミッドタウンとなっている場所にその防衛庁があって、仕事で出入りしていました。周りは六本木、乃木坂、赤坂と華やかな街なのに、防衛庁の敷地の中だけ空気が違っていました。今の防衛省は外から見る限り近代的な建物ですが、その当時の防衛庁の、私が知る限りの建物は古臭いものでした。
あのあとパンダが来て大騒ぎになりました。
思い返すと、昭和という時代はすごかったです。
時代のパワーも人のパワーも…。
華やかで力強くもあり、貧しくいかがわしくもありました。
三島由紀夫の事件も含めて、あの時代を忘れないようにしなくちゃと
改めて思っています。
ミッドタウンに行くと、ここが防衛庁だったのか…と不思議な気持ちになります。
私はもちろん入ったことがありませんが、空気が違うという感覚は
分かるような気がします。