井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

島へ

2016年12月25日 | 日記

断食ペンションで、オーナーの施術を受けている間毎日低く流れている

BGMがあり、その中の一曲に知り合い・・・・私の友人であった元松竹

スター女優であった方の夫が作詞作曲した曲が混じっていました。

これは、私、世の中に出てヒットする前に聴かせてもらっています。

「○○さんが作ったの。聴いて」

と、奥さんがピアノを弾きながら歌ってくれ、それからしばらくして世の中には

その曲が流れました。

その後、夫は何の事件でか逮捕され、二人は離婚しました。

夫にも私は会ったことがありますが、傲岸不遜で(アーチストとしてはあながち

欠点というわけではありません)、感じが良いというたぐいの人ではありませんでした。

しかし、半世紀近く生き延びているであろうと思われるその曲も詞も、愛らしく澄んでいて

「あの夫」のイメージとはえらく、かけ離れています。

夫の中に密かに小さく息づいていた清純とか愛らしさとか、そういう部分に

いきなり、何かが感応して「降ってきた」作品かと思われます。

残る作品というのは、概ねそうかもしれません。

と、他人事で言ってますが、私にも「残っている」作品があります。

数少ない作詞があるのですが、その中の1つは武満徹さんの作曲です。

「島へ」 作詞:井沢満 作曲:武満徹 (高崎コスモス合唱団)

いたずらで、気軽に書き流しておき忘れていた詞に武満さんが目を留め、曲をつけてくださったのです。

混声四部合唱ですが、長く歌い継がれそのうち石川セリさんとか、ドミニックビスさんとか

国内外のアーチストがソロで、CDを出してくれたりしました。

しばらく高校の教科書に掲載されていたこともあります。

今も歌われ続けていて、こちらは30年間オーバーというところでしょうか。

おそらく半世紀ほどは生き延びると思います。

「ジョージィ!」という私が書いた物語は、30年を経て今年もローマの

劇場で上演されているし、詞はこういう形で残っています。

ドラマにも単発と連ドラにそれぞれ、「伝説の」と冠がつく作品が

残せました。

いずれも苦労して書いた作品ではありません。

「降りてきた」ので、書くのに苦労はありませんでした。

・・・・・・詞は降りてきたものの、作曲家がぽかをして成立さえせず

消えてしまった作品もあります。高倉健さんが歌う歌として

依頼された詞なのですが、作曲家の選別を誤ったプロデューサーの

失敗でもありました。

「ロシアホテル」というタイトルの作品で、クレムリン広場にチャイコフスキーが

流れる、という歌の詞としては破格でしたが、「降りてきた」ので

出来は悪くなかったと思います。健さんの激賞の言葉が返って来ました。

そして・・・・曲が付き・・・・・・コケました。

パセティックな歌い上げるようなトーンの詞に、そのヴェテラン作曲家は

鼻歌レベルのメロディーをつけて来たのです。

ヒット曲の複数ある人でしたが、はい流行歌でございますという

レベルの詞しか相手にして来なかったので詞の世界観を全く

読解出来ていませんでした。

「歌えぬ」と健さんは言っていらして、さすがに敏感でいらっしゃいました。

その遥か以前に、私には健さんからの映画脚本執筆依頼をお断りした

経緯があり、それは私の幼い意地っぱりが原因だったからですが、

いずれにしても、健さんとは2度も至近に接近しながら、

ご縁のないまま、健さんは去られました。

・・・・・いや、でもこういう形でのご縁はあったのかもしれません。

いまだ健さんが私の心の中には「縁あったのに結ばれぬまま終わった方」という

感覚で
残ってはいるのです。

 

 

*誤変換及び文章の瑕疵は、後ほど推敲致します。

*アクセス数が増えるに連れ、ジャンクコメも時に紛れ込みます。
鬱陶しいのでとりあえず、お名前欄に無記名のもの、
杜撰なHNは1つの目安として、そのままスルーさせて
頂きます。


9 コメント

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先生、ありがとうございます。 (総太郎)
2016-12-26 13:43:52
昨晩は、夜行バスに揺られながら送信した為、誤字の多さに失礼致しました。
先生、ぬかった様、風鈴様の御意見も拝読しながら、改めて幻の「ロシアホテル」に思いを馳せます・・。

まさに武満徹先生辺りが理想だったかも知れませんね・・。
松竹映画「砂の器」やフジテレビ「大空港」の劇伴で知られる故・菅野光亮さん辺りもイメージ致します。
ポップス・演歌畑の方々も色々思い浮かべるのですが、やはりプロデューサーの方には当時、先生の御意見を前もって、伺って欲しかったですね!

「島へ」改めて素晴らしい作品で先生に感謝致しますm(__)m

武満先生も、まだまだお若かったイメージだけに残念で、改めて御冥福をお祈り致します。
個人的な思い入れとして、萬屋錦之介さん主演のテレビ朝日「赤穂浪士」の劇伴、
加山雄三さん主演の東宝ハードボイルド映画「弾痕」の劇伴が大好きな武満作品です。
「弾痕」の主題歌は反戦ソングとしても知られる谷川俊太郎さん作詞、武満先生作曲・高石友也さん歌唱の「死んだ男の残したものは」で、せつなくも格調高い名曲でした。

さて、生前退位の問題に関して一般国民の方々に覚醒して頂くのは難しいでしょうね・・。
渡部昇一先生、平川裕弘先生、桜井よし子先生始め、政界では亀井先生ら、皆様方、ぎりぎりの所で精一杯奮闘されている現実だと思います・・、もちろん安倍総理も・・。
今上陛下、皇后様ら皇族の皆様方個人への批判と取られるような発言は絶対に出来ませんし、ましてや東宮御一家への言及はタブーでしょう・・。

現実にネット上や左派系知識人・メディアでは平川先生、渡部先生ら反対派の方々に対する凄まじい非難が開始され、
「日本会議」に対する黒い勢力の攻撃ぶり!
皆様方、身体を張ってらっしゃる筈であり、もちろん井沢先生のお立場も!

これからも草の根運動ではありませんが、こちらで皆様方と語らいながら良き方向性を模索したい気持ちです。
そして、神々にお祈りするばかりです!
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「島へ」は (ぬかった)
2016-12-26 06:15:37
孤独を抱えながら永遠の恋人(ソウルメイト)を求め続けている恋歌……深い。そうだったのですね。お返事ありがとうございました。

「ロシアホテル」の物語性は、高倉健さんにぴったりだったでしょうに、残念ですね。しかし、「島へ」の詞も、伺ってみると健さんに繋がりそうです。

>身体に悪くても、食べる快楽のほうを選ぶという方は、それもまた価値観です。

これは、ストレートに効きます! 私も白砂糖を避けて、オリゴ糖や茶色いてん菜糖に替えてはいるのですが。えーと、価値観の刷新は、新年から…。
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総太郎さん (井沢満)
2016-12-25 23:36:43
>健さんに歌い易い簡単なスコア重視

も、あるかもしれませんが・・・・
その作曲家のヒットした曲想は全部、鼻歌モードなんです。
チャイコフスキーや、クレムリン広場と折り合うはずもなく・・・・
メロディが脳天気に明るく・・・・それは詞によっては
魅力にもなっているのでしょうが・・・・
チャイコフスキーという単語1つで、どういう世界を
目指したか、お分かりにならなかったのだと思います。
頼んだほうのミスでしょう。その作曲家にパセティックな要素は皆無です。
むしろ演歌畑がよかったかもしれません。


>「陛下の様々な行動や御発言は安倍政権への牽制の筈」旨

これが明らかな憲法違反だという認識がないのが
不思議です。
「平和憲法は世界に誇れる日本の宝」と言いながら、
陛下の憲法違反は特例許諾?天皇制を無用とする 左翼に都合の良い天皇皇后・・・・。
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こんばんは (総太郎)
2016-12-25 22:52:17
先生、お疲れ様です。
小生、先生並びに高倉健さんの大ファンとして「ロシアホテル」が世に出なかったのが残念ですね・・。

健さんの楽曲は、キングレコード時代、晩年のソニー時代の作品以外はCD化されていない作品が多数で
小生、近年もポニーキャニオンさん(かつては健さんや安藤昇先生ら映画スターの方々の楽曲多数発売)に直談判した事がある位なんですが、
「ロシアホテル」はどのような作曲家の方が理想だったか・・。

宇崎竜童さん、加藤登紀子さん、なかにし礼さんら色々な方々が提供されてはいるんですが、
どうしても健さんはプロの歌手とは違いますし、同じ低音の歌う俳優陣でも石原裕次郎さん、石橋正次さん、黒沢年男さんら程の器用さがない為、いつも難しいメロディーラインに苦労されているんですよね・・。

その作曲家のお方も、とりあえず、健さんに歌い易い簡単なスコア重視で、井沢先生の歌詞の素晴らしさを生かす事が二の次になってしまっていたのでは・・?と推測してしまいます(~_~;)

映画の企画もそうでしたが、先生と健さんのコラボレートは実現して欲しかった・・!と悔やまれます。

閑話休題。
ところで、「ウイル」「正論」の一月号は、皆様、御覧になられたでしょうか?

中々有意義な論文が多数で、生前退位問題他、かなり踏み込んでおり、花田紀凱さんの「月刊・hanada」も中々で、皆様方にお薦め致します。
「ウイル」に寄稿された産経新聞・ワシントン支局の古森義久さんのリポートによると、

人気司会者の久米宏さんが朝日新聞のインタビューや御自身のTBSラジオの番組で、一貫して
今上陛下・皇后様を絶賛!

久米さん曰く、「個人的に天皇制には疑問だが、今上陛下と皇后様の行動や御発言には深く共鳴」
「平和憲法は世界に誇れる日本の宝」
「陛下の様々な行動や御発言は安倍政権への牽制の筈」旨で、以上の結論から、陛下と皇后様を心から御尊敬・御指示されているそうです・・。

今更ながら、久米さんの御発言や思想に驚く程ではなく、思想・言論の自由ではありますが、
古森さんは朝日新聞、TBSラジオら、公共の電波や媒体を使って、私見の披露やプロバガンダを必要以上に行う問題点を指摘されていましたが、
確かな事は、今上陛下や皇后様が、久米さんのような見識のお方には、光輝く存在と見えておられ、本来政治的な意見を述べてはならず、感じさせてもならない筈なのに、確実にメッセージを感じさせている事でしょうね・・。

同じ著名人でも、偏った発言や行動をなさらず、神秘のベールを纏われた高倉健さん!

司会者・アナウンサーとして公正中立を生涯貫かれた小川宏さんにこそ、小生は美しい日本人・人間の姿を見い出だします!

(先程、誤字がございましたので、再送信実現致します)
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ありがとうございます。 (風鈴)
2016-12-25 18:30:57
先生、無理を言ってしまい申し訳ありませんでした。

高倉健さんは押し殺した表情の下に滾る飢餓感を抱えた役が多かったですね。
コートの襟を立てて異国の街角に佇む健さんの姿が見えてきそうです。

先生が集めてくださった断片をうかがうだけでも物凄くドラマチックな楽曲が誕生しそうだったのがわかります。

健さんも歌手としてというより役者としての本能を揺り動かされたのではないでしょうか?
返す返すも残念!
プロデューサーは万死に値します!

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追伸 (井沢満)
2016-12-25 11:29:39
「ロシヤホテル」の詞は忘れました。

記録を取った手書きノートを、紛失してしまってます。
高倉健さんのお手元に残った詞は、おそらく没後どなたかが、何のことやら解らず始末なさったでしょう。

「夢も眠れぬ白夜を旅して」

「クレムリン広場に佇めば 耳元を吹き抜ける
チャイコフスキー」

「ロシアホテルで眠るまで」

とか、断片をなんとなく思い出すだけなのです。
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お返事 (井沢満)
2016-12-25 11:25:16
風鈴さん

「ロシアホテル」は何かを(誰かを)求めながら
キリキリするような孤独を道連れに世界を
旅している男の世界を描きました。

探しているものは、あるいはクラムスコイの女で
あったかもしれません。

「何かを探しさすらっている」というモチーフは
「島へ」と同じですね。



ぬかったさん


「島へ」は、孤独を抱えながら永遠の恋人(ソウルメイト)を求め続けている恋歌です。

ただ解釈は自由です。
割にキリスト教関係の場で歌われることも多く
その場合は探し求めているのは信仰であり、
キリストなのかもしれません。


甘いもの。ただ甘いということだけで満足出来るなら、
豆乳ヨーグルトにかける蜂蜜とか、黒砂糖を
かじるとかで済むはずですが、そうでもないのでしょう?

とかく言う私も某ファミレスの濃厚な味のカットステーキと、その後の3段重ねの、生クリームとアイスクリーム添えのこてこてパンケーキという深夜メニューをわざわざ、何度も食べに通ったのですが・・・・。

一週間食を断って、本来の味覚と身体のセンサーを取り戻すと、「甘み」そのものは欲しくなりますが、生クリームとか白砂糖を使ったものとか、本能的に避けるようになります。出回っているスイーツは、一種の麻痺、一種の麻薬ですね。


身体に悪くても、食べる快楽のほうを選ぶという方は、それもまた価値観です。
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勝手な感想です (ぬかった)
2016-12-25 10:20:36
すてきな歌ですね。ガラスの回転扉、の一節だけでも、すてきだなあと思います。

武満さんは、西洋の時間観念が直線的であるのに対して、日本では円環的なもの、といったことを語られた方ですが、私は先生の「島へ」の詞にも、そんな印象を受けます。

うまく言えないのですけれど、「見知らぬ人」は全くどこの誰だか不確定な、偶然性に支配される相手ではなく、時の円環の中で巡り会うべく定められた、その人。出会うべき、けれども出会えずに終わったり、すれ違ってしまうかも知れない人。今生でも会いたい、あるいは今生でこそ会いたい、そんな人。

武満さんが「目を留め」られたのは、島に帰結する円環の中の恋を感じられたからかも…と、これは全く勝手な推理です。的外れでも、井沢先生はお怒りにならないだろうと。詞と曲も、そんな出会いなのかも、という気がしまして。

ダイエット、見習いたいのですが、甘いものの誘惑に負けています。新年の目標にすることにして、今のうちに食べておこう。そういえば、毎年、このパターンか…。
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「ロシアンホテル」 (風鈴)
2016-12-25 09:26:02
おはようございます。

是非その詩を拝見したいと思いますが無理なのでしょうか。

素晴らしくロマンの香りがする設定です。。
やはり恋の歌ですか?
高倉健さんが歌う予定だったとするともっと歴史的な感じになるのでしょうか?

クラムスコイの「忘れえぬ人」という絵画が脳裏に浮かびましたが。。


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