封印された驚異の才~サヴァン症候群~

2008-01-05 17:55:50 | 自閉スペクトラムな日記
昨日(平成20年1月4日)の読売新聞一面と二面にこの様な記事が出ていました。興味深かったのでそのまま書きます。

日本の知力
「野良犬がウイスキー飲んだ。ふらふらしてどうなる? 13億6747万3723.75。まむしは猛毒? 2億7349万4744…」。男性(33歳)がとりとめのない話を間断なくしながらボードを数字で埋めていく。彼が「大きい数」と呼ぶ9から11ケタの数と、大好きな「0.0625」との掛け算だ。
愛知県内の授産施設で働くこの男性を30年近くみてきた神野秀雄・愛知教育大教授(障害心理学)は、人並みはずれたこの計算能力の正体を「記憶」と見る。3~9ケタと1ケタの掛け算も1~2秒で即答でき、「計算にしては反応時間が短すぎるから」だ。
記憶だとしても驚異的だ。「9ケタ×1ケタ」の問題は約90億通り。神野さんは「人間がこんなに記憶できると言い切る自信はない」。男性の口からその奥義が説明されることはない。
「こんな才能は25年の臨床経験で1人だけ」。次良丸睦子・聖徳大教授(発達心理学)は1999年、6歳の男児に出会った。4歳でピアノを始め、幼児向けの「アイネクライネ・ナハトムジーク」を一度聞いただけで弾きこなした。
3週間前の演奏会。幼児向けの楽譜に見向きもせず、母親が前夜にCDで聴かせた大人向けのバージョンを弾き、周囲を唖然とさせた。

「サヴァン」…電光石火計算、再現演奏など狭い分野で特異な才能を発揮する人々をこう呼ぶ。これらの才能は孤立しており、創造性の発露は見られないのが普通だ。対人関係が苦手で、自閉症などと診断されるケースが多い。
サヴァンが広く知られるようになったきっかけは、驚異的な能力を持つサヴァン男性をダスティン・ホフマンが演じた88年の米映画「レインマン」だ。モデルの男性は9000冊もの本を写真のように忠実に記憶している。
サヴァンは知的障害が「あるにもかかわらず」ではなく、「あるからこそ」能力を発揮する。アラン・スナイダー豪シドニー大教授(脳科学)は「人はみな同様の能力を潜在的に持つが、普段は封じ込めている」とみる。サヴァンの場合は障害のため鍵が外れ、脳がのみ込んだ情報を抽象化も取捨選択もしていないナマの状態で出し入れできるというわけだ。実際、脳機能の一部を抑える実験でサヴァン的才能が現れた。
ニコラス・ハンフリー英ロンドン大教授(進化心理学)は「進化の過程で人類はサヴァンのような能力を積極的に放棄した」と考える。人類は集団を形成するようになったが、社会生活を送るうえで「あまりにも大きな能力」はかえって邪魔になる可能性がある。人類は、より抽象的で総合的な言語能力、対人能力を優先させたというのだ。

絵画の才を示すサヴァンもいる。幼児、自閉症と診断されたイギリスの人気画家スティーブン・ウィルトシャー氏(33)は2005年に来日。六本木ヒルズ屋上から東京を30分ほど眺めて景色を頭に焼き付けるとスタジオに1週間こもり、縦1メートル、横10メートルの細密なパノラマ画=2面に掲載=(こちらの日記では翌日に続きを書きます。)をサインペンで描き上げた。

膨大な記憶力、細部へのこだわり、忠実な再現力は現代の科学者や熟練技術者や芸術家にも有利な資質だ。人並みはずれた資質が人類の知的遺産の創造に寄与してきた側面もある。
仁平義明・東北大教授(認知心理学)は言う。「だが、人間が作る社会は実に多様な能力を人間に要求する。大切なのは異なる能力間のバランスなのだ」

新聞では二面に続くのだがそちらは明日の日記に書きます。
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