漫画家を目指す人へ

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漫画専門学校について

2012-03-12 12:22:00 | ■漫画専門学校について

本来は、「進路の考え方」に入れるつもりだったのですが、こちらだけちょっと特殊な気がしますので、別にいたします。

なぜ特殊かというと、個人的にこういった専門学校は「進路」として選ぶべき学校ではないと思うからです。

 

まず、私は漫画関係の専門学校というものの存在自体、漫画家志望者に良い影響を与えていないと思っています。

それは、こういう学校ができてしまったばっかりに、「専門学校に行けば漫画家になれる」「漫画家になるための技術は専門学校などで学ぶもの」という先入観を、中高生の漫画家志望者に植え付けている感が否めないからです。
もちろんその先入観は間違いです。そんなことを考えている人がいたら、すぐ考えを改めてください。
理由は詳しく下に書いてますが、とりあえず18歳から学校で初めて学ぶのでは遅すぎます。

漫画の専門学校は、美容師や看護師、服飾関係の専門学校とはまったく性質が異なります。
美容師などは専門学校でしか得られない必須の技術や資格があり、業界内でも専門を卒業して就職する道筋がついていますので、これらの専門学校を「進路」として選ぶのは、そういった仕事を目指すなら当然の選択です。

しかし、漫画家はまったくそういう職業ではありません。
専門学校でしか得られない技術や資格はなく、専門を出て漫画家になるような道筋も一切ありません。
専門学校なんかに行ったって、「漫画家」という仕事には何も結びつかないのです。

プロになるつもりがなく、趣味で通うならアリかもしれませんが、だとしたら学費が高すぎます。300万くらいしますから。
また、趣味というからには「お金を稼ぐ本業」が必要になりますが、その本業はどうするつもりなの?という話です。

趣味にしかならない学校を「進路」として選んでしまったら、本業を得るための進路を進むことができません。将来無職です。

なので、「進路」としては考えられないのです。

本気で漫画家になりたいなら、通うべきは専門学校ではなく編集部です。

というか、専門学校に行こうとも、編集部に通わなければ漫画家にはなれません。(遠い地方の人は投稿中心になるでしょうが)

中高生が漫画家になるためにやっておくことは、専門学校を目指すことではなく、自分で漫画を描いて自分で編集部に持ち込むことなんです。
このことをよく覚えておいてください。


とにかく学校と名のつく組織に入って安心したいタイプの人や、周囲にお膳立てしてもらわないと何もできません!という人は早いうちに違う道にすすみましょう。漫画家に向いてません。

では、おすすめしない詳しい理由です。

 

1. 専門学校から漫画家になれた人はほとんどいない。

これがすべてですね。
これは専門学校のHPなどで実績を見るとわかると思います。
デビューすら、学年に数人いれば上出来ではないでしょうか?
漫画家志望者ばかり数十人集めれば、完全放置しておいてもそれくらいの人数は勝手にデビューします。
なので、学校はまったく関係なく、もともとデビューできる能力のある人だけがデビューしているというだけです。

学年に数人しかその職業に就けない専門学校なんて何の意味があるんでしょう。



2.専門学校で学べる内容は、ほとんど本やネットで独学できる。

 

今は漫画家になるための本やサイトは山のようにあります。

サイトをかたっぱしから見てまわり、本を数冊買って読み込めば、少なくとも漫画を一作仕上げるくらいの知識は身につきます。
本気の漫画家志望者なら小中学生くらいで、このくらいは済ませています。


18歳にもなってこのレベルのことを学校に行かないと学べないような人は、いろんな意味で漫画家になるのは無理ですよ…。

思い出してくださいね。「漫画家になるのは一部の特殊な人」です。
漫画家どころか小中学生の漫画家志望者が自力でできることを18歳にもなって「教えてもらわないとできません」という人が、そういう「特殊な人」なわけがないって、わかりますよね。

ちなみに、私がこういう学校のカリキュラムを見た感想がこちらの記事です。 

 

3.本やネットで学べないことは、持込やアシスタントなど「プロの現場」で学ぶのが一番早い。

実際にどのようにストーリーを組み立てるか、キャラをどう設定し、エピソードをどう作るか、演出はどうするか…そういう「知識」だけではカバーできない部分については、実際に自分で漫画を描いては編集部に持ち込んで批評してもらうというのを繰り替えすのが一番です。

専門学校の先生がほめてくれたって、編集部がOK出さないとデビューはできません。
だったら、最初から編集部に見てもらったほうがいいに決まっています。

持ち込みは(交通費以外)無料です!何度でも行けますし、一つの作品を複数出版社に見てもらうのもできます。(投稿は一社だけですが)
地方から上京しなければならない人でも、専門の学費よりはずっと安上がりなはずです。

たまに、専門学校のカリキュラムで「作品を編集部の人に見てもらえる」というものがあるのですが、なぜ自力で無料でできることを、学校に学費払ってやらなければならないのか意味不明です。

アシスタントも編集部経由で紹介してもらえますよ。もちろんある程度の実力は必要ですが、その程度までも自力でいけない人は専門通っても無理ですから。

「学校で教えてもらえるようなことは独学で学べる」し「独学で学べないようなことは編集部やプロの現場から直接学ぶのが一番早い」んです。


これを一人ではできません、という人は漫画家になるのは厳しいです。もう理由は書かなくてもわかりますよね。



4.最終学歴が「漫画専門学校」は、漫画家になれなかったとき就職するには非常に不利になる。

まず、認可されていなければそもそも学歴にならないので高卒です。
しかし、漫画コンテンツ関連など、多少でも漫画に関係した会社に就職する場合以外では、本当にない方がマシというくらい、使えない学歴です。そしてもちろん、「漫画に関係した会社の就職」なんてそれ自体ほとんどありません。

つまり、就職に大変苦労するということです。

なぜなら、私がここに書いているような「専門学校に行かないほうがいい理由」を、まともな会社の採用担当者なら見抜くからです。

履歴書に「漫画専門学校卒」とある時点で、お勉強ができない・する気がない人なのはわかります。勉強ができる子は絶対そんな学校行きません。

さらに漫画家なんて基本独学でなる職業であり、学校なんか行ってもほとんどの人がなれないことくらい、漫画業界の人間じゃなくてもわかります。なのにわざわざ親に大金出させて学校なんかに通って、挙句に結局漫画家にもなれなくて…というあたりから、独学で努力できず、かつ無知で、計画性がなく、漫画の実力や才能もなく、さらに親に甘やかされた人物である、というのが透けて見えます。

そのうえ「漫画家になれなかったから仕方なく」という理由でその会社を受けにきたというのももちろんバレバレです。

高学歴の学生が就職にあぶれているようなこのご時世、そんな人はなかなか採用されません。
それくらいなら「高校を卒業してから家計を助けるためにずっと働いていました」という人のほうが大分マシです。親の金で遊んでいた人間と、働いていた人間なら、そりゃ後者を選ぶでしょう。

就職しなくても生きていける人や、強力なコネがあってどうにでもなる人以外は、人生詰みかねないです。

 

5.上記のような学校なのにも関わらず、学費だけは300万ほどと短大並み・・・。

これ、本当にひどいと思います・・・。

ちゃんとした美術系大学と、年間でみれば学費ほとんど変わらないんですよ・・・・。


内容を考えると、せいぜい数十万でしょう。
一般的に専門学校の学費ってね、何に対して払うものかといいますと、就職するのに使える「学歴」「資格」ほぼこの二つですよ。
漫画家にはもともと両方不要ですので、「漫画家になる」という目的においては、専門学校はまったく無意味です。

じゃあ漫画家になれなかったときに使える学歴や資格がとれるかっていうと4番に書いたとおり、ない方がマシなレベルです。
もちろん、肝心の「授業内容」ってものがありますが、これも2番と3番に書いたとおり独学を上回るレベルとは思えません。というか、独学でこの程度も学べない人間は漫画家には向いてません。二年学校に通っただけでなれるようなお手軽な職業なら、世の漫画家は苦労しないです、ホント。

少なくとも300万もの価値は絶対ありません。

300万って大変なお金ですよ?あなたの親があなたの将来のためにと、一生懸命貯めたお金です。平均レベルの収入の人が貯めようとすると、5年以上かかる金額ですよ?

それを将来に何もつながらない、「趣味のお稽古」に遣うのはやめてください。
そんだけお金があるなら、いっそ、そのお金で生活できる間ニートになって、死に物狂いで24時間漫画に費やし、持ち込みに明け暮れる方が大分マシです。

 


6.やる気がある漫画家志望者は上記のようなことはわかっている。わかってない時点で漫画家になれる可能性は低い。

ここまで読んできてわかったかもしれませんが、そもそも漫画家になれるような「自分で努力できる人」は、専門学校に行きません。

自分で調べ、学び、練習し、漫画を描き、投稿し持ち込みし、編集部にもまれてきていれば、私が1~5番に書いてきたようなことは自分でわかります。
編集部とやりとりして、受賞だ掲載だというレベルにいれば、漫画家として生きていく大変さも身にしみてわかります。

だから、本気で漫画一本に絞る覚悟がある人間は、ひたすら漫画を描きまくり、持込とアシスタントに明け暮れますし、漫画家になれなかったときのことを真剣に考える人なら、学歴として使える学校に進むなり、就職するなり、現実的な道を確保します。

今まで自力でそういう努力をしてこなかった人は、何もしてないから何もわかりません。

独学で何をどこまで学べるか、自分の実力がどれくらいか、漫画家という道がどれくらい厳しいか・・・。わかろうとする努力すらしなかった人が安易に「学校に行けば漫画家になれちゃうかも」なんて甘い期待をしちゃうのです。

だから専門卒の漫画家はほとんどいないんです。

もちろん、たまにちゃんと努力してきたにも関わらず、専門学校に入ってしまう人はいます。専門学校の宣伝は巧みですからひっかかってしまう人もいれば、他に何か目的があってデメリットを承知で入学する人もいるでしょう。デビューできているのはそういう人だけだと思います。

「漫画家になれるような人は専門学校には行かない、漫画家になれないような人だけが専門学校に行く。
ただし、たまに漫画家になれるような人がうっかり入っちゃうこともある。そういう人だけがデビューする」

専門学校はそういう場所です。
「漫画家になれないような人を漫画家にしてくれる夢の学校」ではないのです。

進路の選び方としては、とりあえずは学歴として使える「まとも」な学校に進むか、漫画以外の理由で進学できない人は、正社員として堅実に就職しましょう。
そして漫画については独学で頑張りましょう。

 

すでに専門学校に入ってしまった人は、学校は適当でいいので、とにかく編集部に持ち込みに行ってください。専門学校の空気に飲まれないように。
無駄だと思ったら学校は辞めてもいいと思います。役に立つとしたら、やっぱり編集部以外にネームチェックをしてくれる人を確保できるくらいですかね。


なお、専門学校ではなく、大学の漫画コースとかならば、腐っても「大卒」という肩書きが手に入りますので、一応卒業だけはしておいていいと思います。
学科がアレだとしても、「大卒」の肩書きは社会でかなり使えるのです。


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