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専門学校のカリキュラム

2012-02-06 14:18:44 | ■漫画専門学校について

専門学校について追記。

専門学校に通ったことがない私ですので、一応、記事を書くにあたっては、いくつかの漫画専門学校や、大学のマンガ学科のカリキュラムくらいは確認しています。

 

確かに、「キャラクター造形論」とか「演出論」だとか、漫画家志望にとっては、魅力的な項目が並んでいます。

私はこれらの講義を聞いたことはないので、どういった内容なのかはわかりません。

ただ、漫画を描いていた者としてはっきり言えるのは、こういった講義がたとえ有益な内容だとしても、それを役立てられるのは、あくまで「実際に漫画を描き続けている人だけ」ということです。漫画に限らず、スポーツでも仕事でもそうですが、「理論」は「実践」と同時進行でなければ役に立ちません。生まれてから一度もサッカーの試合をしたことがない人に、「サッカー原論」とか「チームワーク構築術」だとかをちょこちょこ2年教えたところで、その人がサッカーをできるようにはなりませんし、当然プロにもなれません。

漫画もそれと同様です。

そこで「実践」=「漫画制作」についてはどうなっているのかというと、ある大学の漫画学科では「一年次の集大成として8Pの漫画を制作する」とありました。ある専門学校では2年次の真ん中あたりにオリジナル漫画を制作する、とありました。

そこで「じゃあちゃんと実践についても学べるんじゃん!」と思ってはいけません。漫画の専門学校のカリキュラムに「漫画制作」があること自体が本来はおかしいのです。

なぜなら、学校の授業ではなく、日々自力でやっていて当たり前のことだからです。それがわざわざカリキュラムに入っているということは、少なくともそれらの学校では、生徒が「授業以外で漫画を描いていない」という想定をしていることになります。本気でプロを目指し、漫画だけに集中できる環境の学生が、それはあまりにひどいレベルです。

8Pの漫画なんて、小学校低学年が勝手に描くレベルです。その学校の学費は1年で160万弱です。

18歳で、本気で漫画家を目指そうとする人間が、1年間160万かけた集大成が、8P漫画一本。

あんまりにも・・・あんまりにもひどすぎます。

でも、そういうレベルを想定したカリキュラムになっている、ということなのでしょう。しかしこれは、到底プロを想定したカリキュラムではありません。

もし本当に本気で、18歳から2年間で、デビューが見えてくるレベルにまで学生を育てるなら…

入学直後から上記の講義と同時進行で、「毎週プロット最低3本、毎月ネーム最低3本」くらいはやらせ、入学後2ヶ月以内には30P前後の漫画を完成させて持ち込み、1年次の間に最低5本は持ち込みして担当付きを目標とし、2年次では担当がついた状態でのデビューを個人指導でアシスト」

、というようなカリキュラムになると思っています。ついてこれない子は見捨てるしかないと思います。本気の子に照準を合わせるなら、やる気のない子にかまっていられません。

というか、漫画の専門学校などに通っていない、普通の漫画家志望でも、本気の人はこれくらい自力でやるのが当たり前なんですけどね。

私だって働きながら一年10本くらい投稿・持ち込みしてましたし。大半の有望な漫画家志望者は漫画に関係ない高校や大学に通いながら、それくらいはやってるんですよ。

でもそんなカリキュラムになっている専門学校は(私が見た限りでは)ありませんでした。

結局「授業以外では漫画を描けない・描かないレベル」の子を相手にしている以上、プロを育てるようなカリキュラムにはできないのだと思います。もしそんなカリキュラムにしたら「今週中にプロット3本、ネーム1本つくってきなさい」と課題を出した時点で、「え~。そーゆーの自分でできないから、こういう学校に入学したんですよ~。ちゃんと初心者にもわかるように、基礎から丁寧に教えてくださいよ~」と言われてしまうのでしょう。

そういうレベルの、そういう考え方しかできない子は、かなりの確率でプロになんかなれないのですが、専門学校はお金を払ってくれる人には優しいですねえ。「そんなんじゃプロになんかなれないよ!」なんて説教はしません。私とは違います(笑)。

だって、結局そういうレベルの子しか、結局そういう学校には入学しないんです。この記事の6.に書いているとおり、本当に実力とやる気のある子で、そういう専門学校に入ろうという子は多くはありません。

なので、学校としては学費集めをしたければ、「自分では何もできず、やらず、とりあえず学校にすがる子」をターゲットにするしかない。そうするなら、そういう低レベルな子が釣れそうな低レベルな授業をするしかない。でないと入学してくれませんからね。金づるを捕まえられません。

でも、プロにはなれない。

 

ある作家さんが言っていました。巷に溢れているビジネス書など「●●すれば成功できる」的な本で、ベストセラーになるような本は、本当に成功できる方法は載ってないそうです。

なぜなら、本当に成功しようと思えば、人の何倍も努力をしなければならないわけですが、そんな大変な努力はほとんどの人にできない。そんな難しい方法を書いたって本は売れない。理解できないし、できないから。

だいたいそんな本に頼って安易に成功できるかも、なんて考える人が、難しい努力なんかできるわけないですよね。だから難しいコト書いたら売れないんですよ。そういうことできる人は、そういう本買わないから。

だから誰もできそうな簡単な方法が書いてあるような本の方が売れるけれども、誰でもできそうな簡単な方法で成功できるわけがない

でも売った側には買った人が成功しなくたって何の責任もないですからね。大事なのは「売れるかどうか」であって、「買った人が本当に成功できるかどうか」ではない

専門学校もそれと同じなのだと思います。

 

まあ、とりあえず。それでも専門学校にどうしても行きたい場合にも、最低でも、自力で投稿原稿を描けるレベルでないと、どうしようもないということは知っておいた方がいいと思います。

千歩譲って、講義や理論が有用なものだとしても、自力で漫画が描けなけりゃ、役立てようがないので。


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