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絵を「描く」お仕事あれこれ(イラストレーター)

2012-01-28 20:23:16 | ■絵に関するお仕事って

●イラストレーター…イラストを売って生活する人。まんまですね。

私はイラストレーター業界については基本門外漢です。
「基本」という言葉をつけたのは、一応デザイナー時代に兼業でイラストレーターを名乗っていた(というか会社に名乗らされた)時期があったのと、今の事務員になってからもSNS経由などでイラストの仕事をちょこちょこしたことがあるからです。

しかし、がっつりイラスト専業で生活したこともなければ、しようと思ったこともない(一応少しはあるのですが、ちょっと調べてすぐ諦めました)ので、「基本門外漢」ということで・・・。

イラストレーターといってもいろいろな媒体、タッチがありますが、このサイトを見ている人のほとんどはコミックテイストのイラストを描く方だと思います。
ですので、ここではコミックテイストのイラストを想定して話をします。


イラストレーターについては、大きく二つの就業形態があります。

1.会社員として勤める
2.自営業

ただ、大きな問題がありまして・・・。

1.会社員として勤める→イラストレーター専業の就職なんてほとんどない。

2.自営業→いきなり自営業にして食べていけるイラストレーターなんてほとんどいない。

つまり、「どっちも無理じゃん!」という現実があるのです。

 

えええ、じゃあ普段私たちが見ているイラストレーターさん達はいったいどうしてるの!!??

という疑問が湧いてくるかと思います。もちろん人によっていろいろですが・・・。

1.他の職業と兼業している。

これが一番多いと思います。特に多いのはデザイナーなどではないでしょうか。デザイナーだと私がやっていたように仕事の中でイラストを描くことも可能ですので、働きながら実績やノウハウ、人脈を作れるからです。将来的にイラストレーターとして独立を考えている人の場合、そちら目当てでまずデザイナーとして就職する人もいるようです。美術教師や、美術系専門学校の講師などをする方もいます。

あと若い子だとフリーターをしながらというのも多いと思いますが、まあ博打ですね・・・。そのまんま、ただのフリーターで、気づけば三十路って可能性もありますから・・・。

2.ゲーム会社のグラフィッカーになる。

多くの子が「コミック系イラストレーターとして就職したい」と思う場合、コレしかないと思います。しかし、最初に「ほとんどない」と書いたとおり、非常に狭き門だと思っておいてください。学校出れば就職できる~なんて思っていたらオオハズレです。専門学校でダントツトップくらい上手な子で、なんとかなるかどうか??くらいだと思います。たいして上手でもないのに、ゲームやイラストの専門行ったって、まず無理ですよ。

今はSNSゲームなどの流行で一時的に増えていますけれどね。なお、地方だとほとんどないと思います。東京に集中しているんじゃないかな。

3.親や配偶者に経済的に頼っており、自分の稼ぎだけで生活していない。

こういう人も多いですね。若い人なら実家住まいが多いし、あとイラストレーターには女性が多いんですが、理由としては単純で「旦那さんが生活費稼いでくれるから」というのがあります。ただ結局職業人としては自立できていないということなので、若い人がいきなり目指すものではないですね。

4.上記1~3などの過程を経て、十分に稼げるようになってから独立(自営業)する。

今、独立してやっている人の多くがコレですね。広告会社やゲーム会社、アニメーターなどを経て、十分実績やノウハウ、人脈を築いてから独立するというものです。もちろん全然関係ない仕事をやりながら、イラストはイラストでフリーランスでやり続けて、イラストで独立する人もいます。

 

ということは・・・、上記のうち自立できていない3を除けば、「非常に狭き門」を目指してグラフィッカーとして就職するか、他の職業に就職するか、まずはどちらかしかないってことになります。

イラストレーターになりたい人は、高校のうちから、どちらを目指すのかよく考えておいた方がいいと思います。

というのは、どちらを目指すかによって進路が変わってきますので。

 

■グラフィッカーになりたい場合

美術系の進路を選ぶことになると思います。

私は、本当にコミック系グラフィッカーだけになりたい場合は、よほどお金に余裕があるおうちの子なら美大や芸大もいいと思いますが、そうでなければゲームやイラストの専門学校でいいと思います。コミック系イラストは美大や芸大では学ばないし、もし学んでもあんまり意味ないし、美大・芸大はとにかく学費が高いのでもったいないです。ただし、デザイナーなども視野に入れたいなら、大学の方が就職では有利になります。

なお、一部の大企業(スクエア・エニックスなど)はそもそも専門学校卒だと応募できないということがあります。目標とする会社が決まっているなら、必ずその会社の採用条件を調べておいてください。
また、専門学校によっては認可されていなければ、学歴とみなされないことがあります。これもちゃんと調べてください。
せっかくお金と時間をかけて専門学校に通ったのに「高卒」扱いとなってしまい、会社に応募できないという事態になってしまうかもしれません。

あと、重要なこととして・・・ゲームやイラストの専門学校からまともに就職できる子なんてほとんどいないと言います。なので、グラフィッカーになる目的で専門に行く場合は、これも相当の博打である覚悟が必要です。上述のとおり、「専門に行く前からプロレベルで上手な子」でないと意味はないと思いますね。そういう子なら、就職への足掛かりとして専門に行く価値は一応あるでしょうが、「たいして上手じゃない子」の場合は足掛かりとしても使えないので、どうしようもないです。なので、「自分は間違いなく専門ではトップレベル、日本全体の同年代の子の中でもトップテンくらいには入る自信がある」くらいの子じゃないと、そういう専門には行かない方がいいと思います。

グラフィッカーになりたい場合は、進路をどうこう以前に、独学でプロに匹敵するレベルになっておく必要があるってことですね。

ちなみに私の知人男性で、「ふつうの子に比べたらそこそこ上手だけど、プロレベルじゃない」くらいの人が、ゲーム専門学校に行って、当然就職なくて、フリーターしながらイラスト系就職活動をずっとやっていたけど、やっぱり就職なくて、気が付いたら20台後半になってたので、あわててふつうの就職探したけど、もうそれもなくて、工場派遣をずっとやっていたけど派遣切りにあって、30代になったら派遣の仕事もなくなってきて、仕方なくコンビニバイトをしていたけれど、30代半ばなのに大学生バイトからバカにされる生活に耐えられなくなって、アラフォーで無職・・・という人がいます。当然結婚もできない実家も出られない・・・です。怖いですが、これが現実の一つです。私はこの人の例を知っているので、ゲーム系の専門学校のリスクはどうしても高いように思ってしまいます・・・。

 

■他の職業と兼業する場合

その職業にあった進路を目指すことになると思います。

デザイナーなどならデザイン系の専門学校か美大・芸大ですね。ただし、コミック系のイラストレーターの場合、普通のデザイン会社や広告会社での兼業は難しいと思います。仕事上でコミック系イラストってそれほど描くこともないだろうし、クリエイティブ系の仕事は、たいてい深夜残業が当たり前など超激務なので、会社終わってからイラスト活動もほとんどできない可能性があります。

だから、本当は一番いいのは「安定していて堅実で、拘束時間が少ない仕事」なんですよね。事務職とか。そういう仕事につきたいなら、地道に高偏差値の国立大学でも目指すのが一番良いと思います。

でもイラストレーターになりたいって子は、なかなか「イラストレーターじゃ食べていけないから、まずは事務職を目指して、高偏差値の大学をめざします」とはならないんですよね。夢がないし、大学では絵の勉強したいから。

でも、長い目で見たときに、こういう道の方が長く堅実に絵を描き続けられるということもあるので、検討してみてください。

コミック系イラストレーターの場合はアニメーターや漫画家などとの兼業も多いですね。ただ、アニメーターはアニメーターで生活できない給料だし、漫画家はこのサイトに書いてるとおり、やっぱり大変な仕事です。なので、「イラストレーターでは生活できないから」という理由でこのあたりと兼業するのを目指すのは、あまり現実的じゃないかも。結果的に兼業になっていった、みたいな人が多いと思います。

あと、漫画が上手な人なら、二次創作の同人などを売って、生活費にあてる場合もあるようです。これは売れる同人誌が描ける人ならありでしょうが、生活費にできるほど売れる同人誌というのも、簡単に描けるようにはならないと思うので、こちらも最初から目指すようなものではないと思います・・・。腕に自信ありなら、これでいけるかもしれませんけどね。

 

で、就職や進路については、そういう考え方になると思いますが、副業でやるにしても専業でやるにしても、会社員イラストレーターでない限りは、自営業(フリーランス)での活動になると思います。

 

■自営業の活動

この記事にも書きましたが、自営業は会社からお金をもらう働き方ではなく、お客さんから直接お金をもらう働き方です。自分でイラストを出版社やゲーム会社などに売り込んで、自分で仕事をとります。

ちなみに、この働き方は学生でもできます。(高校生以下の場合、保護者の許可が必要だったり、会社によってはダメかもしれませんが)

なので、将来的に兼業だろうとグラフィッカーだろうと、とにかくなるべく早いうちから、実際にこういう活動をしていくと、イラストの実力も早く身に付くでしょうし、業界のこともわかっていくと思います。

・ポートフォリオを持ち込む・郵送する。

・イラストレーター登録サイト等に登録する。

・PixivやTINAMIなど宣伝効果があるSNSに投稿してランキングに入る。

・デザインフェスタなどの大きいイベントに出展する。

・自分のサイトを作って仕事を募集する。

・個展を開くなどして宣伝する。

↑こういうことをやって、自分で自分の絵を、クライアントにアピールするのが重要です。

 

 

ただフリーランスでイラストレーター専業でやるというのは相当に厳しいと思います。
よっぽど太いクライアントさんをガッチリつかめたら別ですが、コミック系イラストでは難しいでしょうね・・・。


これは、そもそもイラストレーターという職業が完全に労働集約型の仕事であるのに加え、近年IT化がすすみ、ちょっとしたイラストなら素人でも簡単に描けるようになって価値が大幅に下がったこと、特にコミック系のイラストはもともとまともな金額を出せるクライアントが少ない上に、需要過多で相場が下がっているからです。

Pixivなどをやっている方ならわかるでしょうが、高校生や学生、主婦でも、ちょっとしたプロレベルのイラストを趣味で描いてしまいます。

たとえば私など本業は会社員ですが、pixivなどを通して、SNSゲームや乙女ゲームのイラストの依頼が来ます。
びっくりするくらい安い値段で(笑)。まあ向こうも素人相手の相場で出してきているのでしょうが。

しかし「神撃のバハムート」レベルの絵を1枚すべて込みで5000円でといわれたときは驚いたなあ。さすがに断りました。イラスト仕事て打ち合わせや細かい修正対応もありますからね。
私の技量だと時給100円以下になりそうだったので・・・。こういうことを平気で言うクライアントさんが普通にいる業界なわけですよ・・・。


おまけに近年、日本よりずっと生活費が安い海外組まで進出してきましたからね。昨年だったかの電撃大賞の受賞者は確か韓国人とタイ人でしたから・・・。
Pixivをやっていますと中国の方(台湾が多いですね。中国はネット規制があるので)にも相当のレベルのイラストを描く方がたくさんいるのがわかります。

たとえば、日本の半額で生活できる国の人なら、イラストの値段だって日本人の半分で十分ということで、日本人よりずっと安い値段で、日本人と変わらないクオリティのイラストを描いちゃったりするわけです。そうなると、ますますイラスト価格の相場は下がるでしょうね。


イラストレーター専業というのは、漫画家として成功するより何倍も難しいと思っておいたほうがいいと思います。

漫画家は狭き門とはいえ、連載作家になれば連載が続いている間くらいは生活できる程度の収入は入りますし、一つでも人気連載をこなせば、印税がはいって、一時的であれ多く稼いでおくということもできますし、次の連載の話もくるでしょう。アニメ化されるような大人気の長期連載でもやれば、それこそ一生分稼いでおくのも可能っちゃ可能なわけです。
ハイリスクな反面、ハイリターンもあるわけです。

しかし、イラストレーターは連載という定期収入を得るのも難しいですし、連載があっても、漫画家のように毎回何十ページもあるわけじゃないですし。せいぜい小説のカット数点とか、イラストレポの1~2ページでしょう。
印税もないですから、一度描いたらその分のお金しかもらえませんしね。ラノベの表紙だって、相場5~10万くらいです(印税ほとんどないんですって)挿絵まであわせて20万あればいい方と聞いたこともあります。何百万部売れたって、イラストレーターには一ヶ月生活できるどうか、レベルのお金しか入ってこないわけです。ハイリスクですがローリターンという、鬼畜な仕事だと思います。

考えれば考えるほど、こんな仕事で一生生活なんて、どうするんだろう?と私なんかは疑問に思います。
私が知らないだけで、できる人はできるのかもしれませんが・・・。

ともあれ、完全フリーランスでイラストレーターを目指すならば、「生活費はどうするのか」「将来・老後はどうするのか」をある程度は真剣に考えておかないといけないと思います。
私はムリだと書きましたが、何らかの方法でちゃんと一生分お金を稼ぐ道をつくれるなら、もちろんそれでいいと思います。

 イラストレーターとして成功する、というのは漫画家以上に決まった道筋がありません。

ですので、気になる方は、自分が目標とするイラストレーターさんがどういう道筋をたどってそこまで行き着かれたのか、どうやって生活されているのか(こんなことは調べてもわからないかもしれませんが・・・あ、間違ってもご本人に問い合わせたりしないでくださいね。ものすごく失礼ですから・・・)多数調べてみるといいと思います。
何十人か調べれば、だいたいの傾向はわかるのではないでしょうか。

 


 

 補足


ネットの記事で気になったのものを見つけましたので。

主に法廷画家として活躍されている榎本よしたかさんの10年間のイラストレーターへの道を描いたエッセイコミックです。

トコノクボ

実をいいまして、私は芸術系の大学を出て、デザイン事務所に入って、漫画家でデビューして…という絵の関係をあっちかじりこっちかじりしているせいで、そういう仕事についていたり、目指したていたりという人は身近にたくさんいたし、今もいるんですけど、30代半ば以下(バブル以降にイラストレーターを目指した世代)でイラストだけで家族を養えるようになった人を一人も見たことがありません。

というか、自分一人ですら養えている人を知りません。(衣食住を実家や配偶者に依存していない人という意味)

なので、これは希少な経験談だ!と思い、ここで紹介させていただきます。実際にイラストで生活できている方の自伝ですので、非常に参考になると思います。

 

残念ながら(というのも変ですが)この方の基本は、いわゆる本当の漫画のようなコミック系ではなく、メインの仕事はリアル系の絵である法廷画、その他の仕事でも、イラスト系の仕事ではまだ一番需要があるキッズ・ファミリー系の絵柄のため、コミック系イラストレーターを目指す人の希望の星というわけではないのですが・・・。(キッズ・ファミリー系のイラストなら、太いクライアントさえつかめば、まだ生活できるようになる可能性は高く、コミック系の非ではないのです…)

ただし、タッチが何であろうと、フリーランスのイラストレーターがやらなければならないことはそう変わりませんので、この「トコノクボ」をずっと読んでいくと、大変参考になると思います。

だいたい、フリーランスのイラストレーターが仕事を増やすためにやっていることを、スタンダードにやっていってらっしゃいます。将来イラストレーターになりたい、っていう子は、これが上記2.のフリーランスでやる場合の、「イラストレーターのなり方」だと思っておくと、わかりやすいと思います。

たまに、人と話すのが苦手なのでイラストレーターになりたいとか言ってる子がいますが、それじゃとても務まらないのはよくわかるでしょう。

 

しかし、環境に非常に恵まれず、ハングリー精神だけでやってきたような方ですね・・・。忙しさだけなら、会社員時代は私も似たような状況でペンを握っていたことがあるので、状況はなんとなくわかりましたが、家族からかけられる金銭的・精神的負担の大きさは想像もつきません・・・。

ただ、自分の経験から、「この状況からなんとか抜け出してやる」というマイナスからのエネルギーというのは、プラスのエネルギーよりよほど強い場合が多いです。

今マイナスの状況にあると思う方は、そのエネルギーをすべて創作にむけてがんばってください。

 

この方の場合は、CADの専門スキルがあったこと、絵画教室という別の収入手段を確保したことなどに加え、法廷画家というニッチなジャンルを開拓してゆけたことが大変大きかったと思います。フリーランスで仕事をされる方は、やったことのない仕事、やれるかわからない仕事でも、とりあえず「やります!」と引き受けて、なんとかやりとげると良いと思います。

そしてやっぱり、イラストだけでは収入に限界があるようですね…。

これはしかたないと思います。

イラストレーターという職業は、イラストの単価が高くないと成り立たない仕事なんです。個人でやっている以上量産に限界がありますし、需要自体がそれほどあるわけじゃないから、量産すればいいってもんでもない。でも、今や高い単価のイラスト仕事なんて多くないです。バブル崩壊あたりからだだ崩れなので…。

収入につながりやすいのは、やっぱり印税というものがある、漫画の分野になると思います。そういうあたりを考えてこのように漫画にも挑戦されているようです。

生き残るのは強い生物でも賢い生物でもなく、変化に適応できる生物だといいますね。

世の流れや自分の状況などをよく考えて、生活手段を確保してゆく姿勢というのは大切だと思います。

 


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