漫画家を目指す人へ

漫画家を目指す人へ参考になれば。

コマ割

2012-04-05 21:29:50 | ■漫画を描いてみる②絵

最初に・・・ちょっと注意してほしいのですが、「コマ割がうまくできない」と言っている人の中には、コマ割の問題ではなく、そもそもストーリーの細部が固まっていない、という場合があります。

ネームの段階で最初にコマを割ることになることが多いと思いますが、その段階で詳細なストーリー展開が決まっていないので、何をどう描いていいのかわからず、当然どうコマを割っていいかもわからないという場合です。

これをコマ割の問題と思っていると解決しませんので、自分のネームが進まないのが本当にコマ割の問題なのか、ストーリーの問題なのか、ちゃんと特定するようにしてください。

漫画に関わらずですが、表面上の問題だけを見るのではなく、表面の底に潜む、本当の原因をきちんと特定してゆくというのは大切なことです。
でないと、本当に必要な解決方法ではない方法を模索することになってしまい、時間と労力の無駄なだけなく、間違った方向にいってしまうこともあります。

 

■確認方法

自分がどちらなのか確認する方法としては、もしもざっくりしたプロットしかない場合、そのプロットをもっと細かく詰めて、「脚本」を作ってください。

例:

ごく普通の平和な住宅街の朝の光景。男子高校生(主人公)が学校に遅刻しそうになって走っている。

主人公:「やばい、遅刻する~」

同時に、女子高校生(ヒロイン)が主人公の走る道路に向かって走っている。

ヒロイン:「もう~、また寝坊しちゃった~」

角でぶつかる二人。ぶつかる瞬間、二人の眼が合う。

二人:「やばい、ぶつか…」

二人がぶつかった瞬間、そこからすさまじい爆発が起きる。爆発は住宅街から日本全体、さらには地球全体を包みこむ。

荒廃した日本の光景

モノローグ:この闇の時代はこうして始まったのだった・・・

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このように、「どこで、誰が、何をして、何をしゃべって、誰とどうなって」ということをことこまかに書いてゆきます。これがちゃんとできるなら、コマ割りが苦手、これができないなら、そもそもエピソードがちゃんと作れていない、ということだと思います。

 

■コマ割自体が苦手な場合の練習方法

さて、ストーリーはきちんと固まっているけど、純粋にコマ割という作業が苦手だという場合についてですが。

まずは、漫画をたくさん読み、「ストーリーをコマで表現する」という感覚をつかむのが第一でしょう。
作家によって、コマ割をいろいろ工夫し、中には面白い表現をしている人もいます。
あと、映画も参考になるでしょう。
そもそも、何十年も昔に手塚治虫先生が、それまで単調な四コマ漫画でしかなかった日本漫画に、映画の「カット割」の考え方を導入してできたのが、日本のストーリー漫画です。
そうすると、漫画のコマ割の基礎は映画のカット割にあるのかもしれません。

私はあまり映画みないのでえらそうなことは言えないのですが、映画のカット割は参考になると思います。 

あと、具体的な練習方法としては、まず既存の漫画(なんでもいいから好きな漫画)を、漫画の状態から、脚本にしてみてください。上記のように、登場人物のセリフや動作を文章で書き出します。

そして、その書き出した脚本を、元の漫画を見ずに、漫画の形にしてください。そして後から、自分のやったコマ割りと見比べてみてください。

別に、元にした漫画と同じでなくてもいいのです。ひょっとしたらあなたがやったコマ割りの方がより魅力的かもしれませんから。でも、自分がやった方が読みづらい、盛り上がらないなと思ったら、元の漫画がどういう工夫をしているのか、よく分析してみてください。

その練習をしていけば、じきに「コマでストーリーを表現するコツ」がつかめると思います。


■そのほか、小手先のアレコレ


もう少し小手先的なことも記載します。
私が漫画を描くにあたって注意していることなどです。

1.1Pには5~7コマ。多くても9コマまで。

これは人によりますので、作風作品にあっていれば別に1P1コマだろうと10コマだろうといいのですが、一般的な普通の作風の読みきりだと、これくらいが一番読みやすいと思います。
9コマというのはかなり見づらいので、できれば7コマくらいまでがいいですね。

2.ただし、最初・クライマックス・最後は1ページ3コマくらいなど余裕をもつ。

最初からコマが詰まってたら読む気がしません。
クライマックスでコマが詰まってたら盛り上がりません。見開き使っていいくらいです。
最後までコマが詰まってたら余韻が残りません。

多少、他を詰める結果になったとしても、この3箇所は余裕をもって、読者の印象に残るようなシーンを描きましょう
漫画は緩急も大事なんです。

3.ページ内でのコマの大きさにメリハリをつける。

まずはそのページで一番大きく見せたいコマを決めて、そこを大きく見せられるように他のコマの大きさを決めてゆくといいと思います。

同じような大きさのコマがただ並ぶと変化に乏しく退屈ですし、全体的に窮屈に見えます。
また、読者もどこに重点をおいて見ればいいのかわからなくて困ります。
自分が漫画を読むときをよく思い出してみたらわかると思いますが、読者もすべてのコマに重点をおいて読むのはとても大変なので、無意識のうちに、「なんとなく読み飛ばしていいコマ」「ちゃんと見るコマ」をわけながら読んでいます。

「ないと困るけど、なんとなく流すだけでいいコマ」は極力小さく、「ここはちゃんと見てほしいコマ」は極力大きく見せるといいでしょう。

4.必ずページの最後に「ヒキ」のコマをつくる。

読みきり作品の場合、作中で「きりがいい」ところを作らないようにしましょう。
きりがいいと、そこで読者が読むのをやめてしまうかもしれません。
全ページとまではいいませんが、できれば奇数ページだけでも、最後に「次のページに続くようなコマ」を入れて、読者にページをめくらせるようにしましょう。

5.読む順番をわかりやすくする。

変則的なコマ割はうまくつかえば効果的なのですが、読む順番がわからないと台無しです。
読者がたてに読み進むのか、横に読み進むのかわからないようなコマ割りになっていないか等注意しましょう。

また、これはフキダシやモノローグも同じです。読者の目の動きにそった順番になっているか注意しましょう。
また、作画にこだわりのある人だと、よくフキダシのシッポを省略しているのを見るのですが、あれは読者からすると誰のせりふかわからないです。
多少不恰好になってもいいから、必ずシッポをつけて誰のセリフかわかるようにしましょう。
読者は作者が思うほど作品のことを理解してくれません。わかってくれると思うこともけっこうわかってくれません。

読者を無駄なところで悩ませたり迷わせたりすると、物語に入り込めなくなったり、気分がしらけたり、読むのがめんどくさくなったりするので、漫画への好感度が落ちます。損ですよ。

演出上わざとわからなくしているなど特殊な場合を除き、必ず読者が迷わず読める配置にしましょう。

6.コマ割でスピード感や緊張感を演出する。

このへんは本当に漫画や映画などから感覚を磨くのが一番だと思いますが。
映画がカット割りでスピード感や緊張感を演出するのと同じく、漫画はコマ割でこういったものを演出します。
スピード感を出したいところは細かいコマを重ねることが多いです。形も鋭角的に変則にすると雰囲気が出ます。
まったり感を出したいところは、正方形や横長の長方形で大きめのコマを並べる感じですね。
一般に、横長のコマは安定感、縦長のコマは緊張感を出しやすいです。
このへんは感覚的なことが大きいですので、いろいろな漫画を読んで研究してみてください。

 

補足

こんなすてきな企画?を見つけました。

漫画家(ほったゆみさん)の方がお題を出して、素人の方が実際にコマを割ってみるというものです。

はじマン はじめての漫画チャレンジ

とても勉強になりますので、ぜひ一緒にやってみてはいかがかと思います。

また、こちらの各作品を読みますと、同じセリフなのに人によってキャラクターや、話の展開まで変わってきてしまっていることに気がつくと思います。

登場人物の服装、表情、動作、セリフ以外のいろいろなもので、物語が変わるのです。登場する作品の多くは、ほとんど絵も描いたことがないレベルの人です。それでも、絵での表現で、それだけのものが変わってきています。

絵がヘタだから~~と言って漫画をかかない人がいますが、絵はもちろん漫画では大切な要素ではあるのですが、他にも大切なことが多いことが、こちらを読むとよくわかると思います。

 

実は私、ものごころついたときには、絵本という形ではありますが、物語を描いていまして、7歳くらいのときは漫画を描いていました。

なので、実はコマ割ができないという状況がわからないのです。もちろん、「ここで大ゴマとりたいのに、これじゃ入りきらない」とか、「ここにヒキをもってきたら、この構図で絵を描けるコマを入れられない」とか、そういうところで悩むことはありましたが、コマ割がわからないとか、できない、という気持ちは正直わかりません。

でも、この企画を見る限り、多くの人はやっぱり、ストーリーの細部さえちゃんと決まっていたら、コマ割はできるのだと思います。今中高年までの日本人の多くは漫画を必ず子供の頃に読んでいます。多少でも漫画を読むのがすきな人なら、上手ヘタの差はあっても、コマ割は感覚的にできると思います。

 

なので、漫画家志望だって人が、コマ割をできない、というのは私はやっぱりコマ割じゃなくて、エピソードが定まってないだけではないのかなあ?と思ってしまうんですけどねえ。

ちなみに、私が全部読ませていただいた中では、以下の二つが特に印象的でした。ネタバレを含みますので、読了されてから読んでいただくと良いかと思います。上から目線っぽくなってしまっているのは、こういうブログなのですみませんです。

 

第3回 雪だるまの話:17歳のポンコツさん

セリフどおりの進行なのですが、よく見ると女の子の持ち物がボロいのです。それが一番よくわかるのは最終ページで女の子がカサを広げるところ。(それ以前にもカバンもボロかったりと、ちゃんと伏線があります)

そして、雪だるまに失望して、一人でボロボロの傘をさして帰っていく女の子のランドセルには、ひどい落書きがあります。

そう、彼女は学校でひどいイジメにあっていたのです。きっと人間の友達は一人もいないのでしょう。だからこそ、雪だるまであっても、友達の存在が嬉しかったのです。

それに気づいてから、最初から見直すと、友達ができたんだと思ったときの、女の子の表情がとても活きてきます。心から嬉しそうですよね。

そして、それだけに、最後の一人寂しそうに帰っていく女の子の後ろ姿が、より寂しく効果的に見えます。もうこれを打ってるだけで泣きそうです。

私が上記に書いたようなことは、作中にセリフなどでは出てきませんし、エピソードとしてすらありません。表情や持ち物、女の子の後ろ姿など、純粋に「絵」の力です。

「絵で伝える」ということをよくわからせてくれる作品だと思います。

 

第7回 犬と猿とキジの話:14歳のねこみやわかねさん

やっぱりあの2Pが秀逸かと・・・。すごく印象に残りました。猿が後ろを向いていて犬が正面を向いているのも効果的ですよね。

なかなか、あのお題からああいうコマ割(?)にたどり着かないと思うのですが、こういうのをセンスというのかもしれないですね。

あのお題のなかで、多くの人に一番メッセージとして伝わるのは、あの2Pの犬のセリフだと思います。「伝えたい部分を効果的に伝える」という意味で、非常に大胆で、大成功だと思います。

 

しかし、こういう作品をみると、私のこのブログも含めてですが、学校などで「漫画を教える」というのは難しいことだと思います。

14歳という、まだ感性の若いこの作者が、私が上記に描いているように「1ページ、5~7コマくらいを目安にしましょう」とか、そういうレクチャーを真面目に素直に受け取ってしまったら、この作品のようなコマ割りは生まれないかもしれません。

よく知らないからこそ自由で斬新な発想が生まれるということはあると思います。

優秀な編集さんなどは、特にデビュー前後のド新人には、敢えて具体的な指導をしないという方も多いです。(私の担当さんもそういう人でした。ダメなものはダメと言いましたが、具体的な指導はナシ・・・)

その編集さんはその理由を「デビューくらいは、人の指導ナシでもできるレベルじゃないと、どうせプロになってやっていけないから」とおっしゃっていましたが、それだけでもなく、漫画慣れした人間の指導によって、自由な発想や可能性を摘んでしまうリスクもあってのことなのかもしれないですね。

 


構図について

2012-03-19 07:25:33 | ■漫画を描いてみる②絵

私はこの言葉は「コマの中にどのような大きさ・角度・視点でどのように人物や背景を配置して描くか」という意味で使っています。
(人によって違うこともあるようですので要注意です)

「アングル」とも言いますね。アングルは角度のことですので、構図よりはやや狭義な定義かもしれませんが、あまり厳密に分けて使う人は少ないと思います。
基本的な用語として、以下くらいは覚えておきましょう。編集さんも普通に使うので知っていないと指摘内容がわからなくなるかも。

「俯瞰」・・・上から見た構図
「あおり」・・・下から見た構図
「アップ」・・・何かの一部を(主には人物の顔を)大きく描くこと
「バストアップ」・・・人物の胸くらいから上を描くこと
「ロング」・・・人物の全身画(たまに、人物に関係なく遠くから見た構図のことを言う人もいます)


プロの作品をよく見てみましょう。
すべてのコマの構図に、「なぜこういう構図にしたのか」理由があるはずです。

ここは、場面転換したところだから、まず俯瞰で背景をいれ、人物の状況がわかるようにしているのだなとか。
ここは、人物の表情を大きく見せたいから、アップにしているのだなとか。
ここは、人物のポーズが変わるところだから、ポーズが変わったことをわかるように見せているのだなとか。



1.人物がどこにいて、どんなポーズ・立位置で、何をしているのか常にわかるように描く


初心者にありがちなのが、人物の顔のアップとバストアップばかりが並んでしまうというもの。
一番描きやすいので、ついついそうなるんですね。
でも、それじゃその人物がどこに、どういう姿勢でいるのかもわかりません。
人間って、そういうものを常に把握しながら読まないと、なんだか不安になるんですよね。落ち着かないです。

なので、1Pに最低でも1コマくらいは、人物がどこで、どういう姿勢でいるのか、わかるようなコマを入れてください。
そのためには俯瞰や遠景の構図を取り入れたり、背景だけのコマを入れたりするといいと思います。


2.ページ画面内に変化をつける。

似たような構図が続くと読者は退屈に感じてしまいます。(演出としてわざとやる場合はありますが)
かといって不必要に俯瞰になったりあおりになったり、普通のシーンなのにぐるぐる視点が動き回っても読む方が疲れてしまいます。
ですので、読者がスムーズに読める程度内で、構図に変化をつけるようにしましょう。

また、これもプロの漫画を読めばわかりますが、何も全コマに人物を描く必要はなく、表情を見せる必要がないコマでは背景を見せたり、敢えて体の一部だけを見せる、また、何も描かずセリフだけを目立たせるなど、いろいろと変化をつける方法はあります。

だいたい全コマにぎっちり人物が詰まっていると窮屈で読みづらくなるので、どこかを「抜く」ことは意識しましょう。


3.話している人物同士の位置関係に気をつける。

たとえば、向かい合ってしゃべっている二人の人物がいたとして、あるコマでAさんが左向きの構図でしゃべっていて、それに対しBさんも左向きの構図で返事を返していると、向かい合ってるはずなのに、二人そろって左を向いているような不自然な印象を受けてしまいます。
たとえコマが分かれていても、向かい合っている二人なら、向かい合っているように見える構図にしましょう。

AさんがBさんを見上げているなら、Bさんの顔がAさんより上にあるような立ち位置(Bさんのほうが背が高い、Bさんは立っていてAさんは座っているなど)でなければなりません。
また、さっきまで横に座っていた人物が、次のコマではなぜか振り向いてしゃべっていたりすると、読者は二人の位置関係がつかめなくて混乱します。

一つのコマの中だけで構図を考えるのではなく、ちゃんと話の流れにそって、読者が人物の位置関係を不自然なく把握できるように注意しましょう。


4.構図で演出する。

これもプロの漫画をry(こればっかりですね)
たとえば、話している相手が主人公を脅している恐ろしい人間だとします。その場合は威圧感を出すためにあおりの構図で描くとよいでしょう。

また、主人公の不安感をあらわしたいなら、わざと斜めや横、さかさまの構図で描くというような工夫もよくありますよね。
コマ割とあわせて、いろいろな演出ができますので、研究してみましょう。

ただこれも、変わった構図をむやみに使うと、ただ読んでいて疲れるだけで、ここぞというところが目立たない作品になってしまいます。
全体のバランスを考え、特殊な構図は「ここ一番」という使いどころで使うようにしましょう。

ペン入れ

2012-03-18 07:42:27 | ■漫画を描いてみる②絵

ペン入れについては、はっきり言って練習あるのみです。

最初はかなり苦労すると思います。初めて使うときは多分絵どころか線一本もまともにひけないと思います。
私が初めてペンを握ったのは10歳のときでしたが、「こんなもので漫画を描くとか嘘だ」と思った記憶があります。

でも10歳なりになんだかんだで大学ノート5冊くらい両面びっちり練習したんですね。それでようやく絵らしきものが描けるようになりました。

ただ私は最後までペン入れは下手でした。ちなみに今も下手です。線が硬いんです。おまけに性格が雑なので、しょっちゅうボタ落ちするわ、手でこするわ…。修正も下手なんで、まあ大変なことになっていました。
ペン入れが苦手なのもデジタルに切り替えた理由の一つでしたね。

ただ、デジタルにしたところで、アナログ(このブログでは「デジタルではない」という意味にとらえてください)でちゃんと描けない人間がそう劇的に上手になるわけもないので、欠点はあまり変わっていません。

というわけで、具体的なアドバイスは難しいのですが、一応これも小手先的なものになりますが、コツみたいなものを書いておきます。ちなみにこれはアナログの場合ですが、デジタルもたいして変わりません。

なお、細かいペンの使い方とかコツとかは、ちゃんと「漫画の描き方基礎編」みたいな本を買ったら多分書いてあると思います。(丸投げですみません)


○漫画で使われるペンとは

シャーペンやボールペンなどと、漫画を描くのに使うペンの大きな違いは、「筆圧による線の強弱」です。
ペン先を手でいじってみましょう。ちょっと力を入れると、インクが出てくる割れ目が簡単に広がったり狭まったりします。

これで手にこめる力の強弱を、そのまま線の太さに反映させることができます。
手で線の太さを細かく調節しながら描くことによって、絵の立体感を表すことができるのです。
これが、漫画がペンで描かれている理由です。

敢えて線の強弱をつけない、平坦な絵柄の人の中には、ボールペンやミリペンでペン入れをする作家もいますが、普通の少年少女マンガなどでは難しいでしょう。


○ペン先とインク(墨汁でもいい)は新しいものを

ペン先は消耗品です。どんどん取り替えてゆきます。
そのことに思い当たらなかった私は、10歳のときのままの錆び切ったペン先を取り替えることなく初投稿作を仕上げましたが、なんかもうペンを使っている意味がないようなすごい線になっていました。(太めのボールペンみたいな線になってた)

なお、ペン先には当たり外れがあるようです。プロの作家でも、「ダメペン先」にあたるとすぐ取り替えたりしているようです。
初心者の場合、あくまで練習用なので、そんな贅沢しなくてよいですが、「ペン先にも当たりはずれがある」ことは覚えておいた方がいいと思います。

取り替える基準は人それぞれですが、最初は「書きづらくなってきたら取り替える」でいいと思います。
こうでなければならないというのはないです。

インクや墨汁も、あんまり古いものだとベタベタして書きづらいです。
購入して半年以内くらいなら大丈夫です。

最初は墨汁で練習するのが手軽といいと思います。お金に余裕があったら製図用インクも試してみるといいでしょう。乾きが早いのが長所です。

あと、練習するときは汚れてもいいような服をきて、さらに腕まくりしてくださいね。
墨汁は洗濯してもなかなか落ちないので、お母さんに怒られますよ。


○最初は線や丸から

もちろん最初から絵を描こうとしてもいいんですが、多分無理だと思います。
そういうときは無理せず、まずは線を引く練習をしてみてください。
まずは上から下へ。右利きの人は左から右へ。線を引きやすい方向というのがあると思います。
線をひきやすいように紙を動かしていいので、ペン先がひっかからないようにスムーズに線を引ける角度を探してください。


○すばやく

実際やってみればわかると思いますが、ペンでゆっくり線をひくと、ぷるぷるして線は震えるし、インクがぼたっと落ちて台無しになったりします。

これを防ぐには、軽く力をこめてすばやく線をひかなければなりません。

また、指先だけでひくのではなく、短い線は手首ごと動かして、長い線は腕ごと動かしてひくようにするといいでしょう。
すばやく力をこめて、しゃっとひくと、ぷるぷるしません!

細かい部分はどうしても指先だけでかくことになるかと思いますが、力を軽くこめてひく、軽くこめてひく、という感覚をつかむようにしてください。

こういうことをしながら、かつ下書きの線をちゃんとなぞって絵を描くというのはかなり大変だと思いますが、上で書いたように紙を描きやすいように細かく動かしたりしながら、慣れるようにがんばってください。

また、すばやくしゃっと線をひくと、どうしてもはみ出します。これはあきらめて後でホワイトで修正してください。ぷるぷるした線よりマシです。


○線の強弱で立体感を表現する

これはすみませんが、漫画を見て、やりながら覚えてもらうしかないです。

プロの漫画を見ると、線の強弱がかなり細かくついていますよね。無機物などは平坦な線で描かれていることが多いと思いますが、人物をはじめ、自然物や生物は線の強弱がついていると思います。

まあペンで絵を描くとどうしてもそうなりますが、だいたい「曲がってるところ」は太め、「まっすぐなところ」は細めになってますね。

少女マンガだと全体的に細い線ですし、少年漫画だと太めだったりします。

これは自分の絵柄や画風・作風にも係わってくるところですので、どういう線(タッチ)での絵が自分にあっているのかも考えながら、練習していってください。


○デジタルの場合

最後に、デジタルでのペン入れについて。
「ペンタブレット」という、ペン型のマウスを使います。

これはソフトの機能に大きく左右されます。私が使用しているのはコミックスタジオProです。
かなり細かく設定ができるものの、アナログのペンほど細やかなタッチが表現できるわけではありません。

とはいえ、私はもともとアナログペンの使用もたいして上手ではなかったため、たいした差は出ませんでした。
細かい、微妙なタッチで美しい作画にこだわる人の場合は、あまり向いてないかもしれません。

どうしても機械ですので、機械で設定された以上のことはできないのです。

利点としては、まず何度でも簡単にやりなおしができること(大きい!)。ボタおち・かすれなどのミスが出ないこと。修正が楽なこと。服や周囲が汚れないこと、ペン先やインクが不要、などですね。

補正機能などを使えばきれいな線をひくこともできますが、やっぱりそれなりにコツがいるので、アナログで全然ダメだった人が、デジタルになったとたんとても上手になる…というようなことは残念ながらありません

個人的にはまずアナログのペンで練習してから、デジタルのほうがあう人はデジタルにうつった方が良いと思います。
アナログでペンの扱いになれていたら、デジタルでもそのままその技術は使えます。(上記のように機械の限界はありますが)

アナログのほうがとっつきは手軽で安上がりですし、難しい分上達が早いと思います。

効果・擬音

2012-02-11 22:25:14 | ■漫画を描いてみる②絵

■効果

漫画を盛り上げるための、記号や模様のことを言います。映画などならBGMになるところでしょうね。
BGMのない漫画では、主人公の感情を表現したり、バトルや試合を盛り上げたり、キャラを目立たせたりするのに使います。
具体的には、集中線、スピード線、カケアミ、点描などのことを指します。
少女マンガでは効果についてもトーンが多く使われます。花がとんでたり、ふわふわした光の玉がとんでたりしますね。

今は集中線もカケアミもトーンがありますので、手で描かなくてもトーンでかなりのことはできます。
こだわりのある人は、手描きの作家さんも多いですね。(連載作家の場合は、このへんはだいたいアシスタントがやる作業ですが)

こちらも、むやみやたらにやると、画面が見づらいうえ、ここぞというところで盛り上がらないので、使いどころが大事です。

どこにどう使えば効果的、というようなマニュアルはないので、こちらもプロの漫画を参考に、どういう場面、どういう効果を出すために、作家さんがどういう描画やトーンを使っているのか、よく注意してみるようにしましょう。
そして、最初は見よう見真似でいいので、「こういうシーンはこういう効果を使ってみたらいいのかなあ」という感じでやってゆくと、だんだん感覚的につかめると思います。

■擬音

擬音についても、同じく漫画を盛り上げるものです。映画でいうならSEですね。
こちらもむやみに入れすぎても、うるさくて読みづらくなるだけですし、雑に入れるとせっかくきれいに書いた原稿が台無しになったり、人によっては字が読めなくて、違う字に見えたりすることもあるようです。

擬音も大事な演出で、画面の一部ですので、十分気を使っていれましょう。
「ジョジョの奇妙な冒険」のように、アニメにまで登場させてしまうほど印象的な擬音効果を使う作家さんもいますし、「浦安鉄筋家族」もわざと変わった擬音を使って、ギャグの一部にしていましたね。
使いようによっては作家の個性を出せるツールでもありますので、いろいろ工夫しても面白いと思います。


個人的によかった練習方法

2012-02-10 23:06:08 | ■漫画を描いてみる②絵

私自身がやってみて、上達に役立つと思った練習方法です。

1.今より上手になりたいと思って描く

2.絵の上手な作家の作品を横に並べて見比べながら描く

3.絵の上手な作家に、自分がなりきって描く。

4.クロッキー。10分とかでなく1枚1分くらいでひたすら枚数を描く。

5.なるべく実際の物を見て描く

6.毎回、限界まで妥協せずに描く

7.漫画を描く

8.厳しい評価に定期的に作品を晒す

9.ライバルをつくる

10.立体の形と構成を意識する

説明します。

 


1.上手になりたいと思って描く

当たり前じゃん・・・・と思うかもしれませんが。意外と心構えって大事です。
絵は描けば描くほど上手になる、なんていいますが、何も考えずに闇雲に描いていてもそれほど上手になりません。
というより、下手なままの自分の絵に眼や手が慣れてしまうことによって、余計に下手になることもあります。
大事なのは常に「今の自分より上手になりたい」と思い、頭も手も眼も使って、上を目指すことです。


2.絵の上手な作家の作品を横に並べて見比べながら描く。
3.絵の上手な作家に、自分がなりきって描く。

人は自分の頭でイメージできたものしか描けません。
その頭に描くイメージのレベルが低ければそれ以上のものは描けません。
上手な絵と見比べながら描くと、頭の中のイメージが常にその上手な絵のレベルに引き上げられますので、現在の自分のレベルより高いものが描けます。模写をするのもいいと思います。

作家になりきるのもこれと同じです。
今描いている絵を見ながら、
「●●先生なら、このシーンをこんな風に、こんな画力で描くだろうか?」と想定してみましょう。
あの先生なら、ここはもっとこうする、ここはこんな風にはならない、と自分のレベルより高いレベルで絵を考えることができるはずです。

考えることができたら描けるわけではありませんが、今のレベルよりは上に進むことにつながります。
同じ理由から、とにかく上手な絵をたくさん見るのも大事です。


4.クロッキー。10分とかでなく1枚1分くらいでひたすら枚数を描く。

人体の練習にはこれが一番いいと思います。
詳しくは「デッサンとクロッキー」のところを読んでください。


5.なるべく実際の物を見て描く

やっぱり「見る」のは「描く」の基本です。デッサンですと「1分見て30秒描く」というくらい、「見る」のが重要となります。漫画ではそこまでは不要かもしれませんが、「ちゃんと見る」能力は必要です。

よく見知っていると思っているものでも、実際の資料をちゃんと見て描くのと、想像で描くのとは違います。

資料を用意できるものはなるべく資料を用意して、ちゃんと見て描きましょう
特に植物や動物、建築物や乗り物など、適当に描くと思わぬ間違いがあって恥をかくことも汗。

余談ですが、ある編集者が絵が下手な志望者の原稿を見て怒ったという話を聞いたことがあります。
その志望者は「手」がちゃんと描けていなかったそうです。私も手は苦手ですが。

「手なんて自分の身体についてるじゃない。何にも特殊なものじゃないし、資料が手に入らないわけでもない。いつでも見れるものなのに、明らかに見て描いてない。なんでちゃんと見て描かないの?なんで漫画家志望だって人間が、その程度のこともしないで、編集部に漫画持ってくるの?」

私も「手を上手に描くコツはありますか?」と聞かれたことがあります。
「毎回自分の手を鏡に映したりデジカメで撮って描いてます。なれてきたら少しずつ見なくても描けるようになってきます」と答えると、
「やっぱり見て描くんですか・・・」と、がっかりされました。
「ある作家さんは裸足の足が苦手だったので、ノート一冊丸々練習しまくったら描けるようになったそうですよ」と重ねて言うと、
「そういうのしかないんですかね・・・」ともっとがっかりされました(苦笑)。
何かもっと簡単に手早く描けるコツを教えて欲しかったのでしょう。

「描けない」と言っている人の大半が、ちゃんと見ていません。

人間のポーズや、体のデッサンや、服のシワ、光の当たり方など、資料を用意できるものは限られているかもしれませんが、それでもできる限り、実際の現物をみながら描く癖をつけましょう。

また、なぜか「資料を見ないで描く」ことに憧れがある人がいるようなんですが・・・。それは「資料を見ないでも、完全に頭に入れてしまうまで、膨大な時間・枚数を、資料をきちんと見て描いてきた人が結果的にそうなった」だけであって、最初からいきなり目指すようなことではないです。

早くそうなりたいなら、なるべく最初から、きちんと資料を見る癖をつけることをおすすめします。

 

6.毎回、限界まで妥協せずに描く

これは私が中1のときに編み出した練習法です!というほどの練習法でもありませんが。
今思えば未熟な分上達も早かったのでしょう、描いているときは「これでいい」と思っていた絵も、数ヶ月後見ると悶えたくなるほどひどくて、「こんな絵を友達に見せていたのか・・・!」と穴に入りたいような気持ちになりました。絵を描く人なら誰でも体験していると思いますが、私はそれが嫌でたまりませんでした。

どうしたら昔に描いた絵を見ても、悶えずにすむのか、あの嫌な気持ちを味合わずにすむのか・・・。
考えているうちに気づいたのですが、たまに「これは我ながらかなりいい!」という、RPGで言うなら「会心の一撃」「クリティカルヒット」にあたるような絵が描けることがあります。自分でも何日も見ていたくなるような、お気に入りの一枚です。
そういう絵なら、数ヶ月後に見ても、それほど悶えずにすむのです。

「それなら、すべての絵をクリティカルヒットにすればいいんだ!」というのが私の結論でした。12歳なりに一生懸命考えたので笑わないでやってください。

というわけで、時間と体力気力が許す限り、自分が描く絵をすべてクリティカルヒットにすべく、とにかく限界まで妥協しないということにして、絵を描くようにしたのでした。
もちろんあんまりにも妥協しないと永遠に仕上がりませんので、「これが今の自分の限界だ」と思うところまで頑張ったら、いったんそこでちゃんと仕上げます。
限界まで頑張ったのにうまくいかなかったものについては、次回の課題とするのです。

なお、これはあくまで練習の話です。
実際に漫画を描くときには投稿の締め切りとかもあるので、漫画を適度なスピードで仕上げるというのも重視してください。漫画は絵だけではありませんので。
ただ、重要なシーンや、アップの表情などについては、他を割いてでも時間をかけて妥協せずに描いてください。


7.漫画を描く

「練習法」と描いているのに練習じゃない方法ですが。
実は、全体的な画力を上げたいなら漫画を描くのが一番なんですよ。

連載始めは絵が下手だった新人漫画家が、1年も連載するとびっくりするくらい上手になったりするでしょう。(その後慣れすぎて劣化したり変な絵柄になる人もいますが・・・)
やっぱり数を描くというのはとても大事なのです。また、プロだと当然他の先生方と同じ誌面に並んで掲載されますよね。あれも実は大きいです。私も経験ありますが、雑誌として読んでいくとき、自分のところでいきなり絵のレベルが下がると心底ショックを受けます笑。
2,3に描いた「上手な人と比べながら」という効果も入るわけです。

なので、「絵が下手なので、練習して上手になってから漫画は描きたいと思う」という人には、「じゃあ練習がてら漫画を描けばいいじゃん」と言ってます。
漫画を描くとなぜ上達するかというと、「模写」のところでも描きましたが、とにかくいろんなポーズ、アングル、表情、老若男女、動物、背景、総合的に全部全部描かなければならないからです。

イラストばかり練習していても、「玄関で靴を履き替えようとしているポーズを上から俯瞰のアングルで」なんてのや、「振り向いて話しながら、椅子に座ろうとするポーズを後ろのアングルから」だとかいうのは、なかなか描けるようになりません。
だってイラストだと「自分が描きたいもの」しか描きませんもん。
かわいい女の子、かっこいい男の子がキメポーズしているような絵しかかかないでしょう。描きやすいポーズ、描きやすい表情しか描かない。
イラストばかり描いて練習しても、漫画の絵が描けるようになるわけではないのです。
漫画を描きながら練習するのが、一番上達します。

ついでに、漫画の絵では、人体のデッサンがとれていればいいという話ではなく、ページ全体の構成や、コマの中の構図のとり方など、総合的に考えなければなりません。
そういう練習も含め、漫画を描くのが一番なんです。

 

8.厳しい評価に定期的に作品を晒す

某質問サイトでも、「絵の批評お願いします」ってアップしている人がいますが、ああいうのでもいいです。身近に厳しい批評をしてくれる人がいるなら、もちろんそれでもいいですが。

人間やっぱり、自分の作品にダメだしされたり、けなされるのは嫌なもんです。

だから、一度そういう目にあうと、今度はダメ出しされないように、けなされないように、必死で描きます。今までなら手を抜いていたところも、「こんな手抜きをしたら、絶対あの人につっこまれるよな」ということが頭をよぎり、ギリギリまで努力して描くようになります。

そもそも、不特定多数の人目に、批評もふくめて晒しモノになるわけですからね。生半可なモノは出せないでしょう。

6の妥協せずに描く、につながります。

またもちろん、自分の知らなかった短所を指摘してもらえたり、練習が必要な部分を教えてもらえたりすることもあります。

お世辞しか言わない友達同士で馴れ合いで褒めあっていたり、自分より低いレベルの人から褒められまくっていても、あまり上達しないので、厳しめの評価をくれる人がいる場所にアップするといいでしょう。

私は某巨大掲示板でこれをやっていたことがありますが、意外と厳しい意見が来ず・・・多分見ていた人が素人レベルだったからかも。質問サイトの方がいいかもしれませんね。

あと、「けなされたくない」「誰かわからん人に批評とか受けたくない」「そもそも恥ずかしい」とかいうタイプの人は、漫画家あんまり向いてないんじゃないかなあ~と思いますが・・・。漫画家って、漫画のプロとは限らない編集者に認められないと作品出せないし、出したあとも不特定多数の読者の評価で、価値を決められる仕事なんで・・・。

あと、ランキングや評価がつく、お絵かきSNSもおすすめです。ただ、ああいうところってオリジナル作品で評価を得るのはものすごく大変なんですよね。そもそも見てもらえないので。あと、どうしてもカラー作品中心になるので、漫画に必要なデッサン力や表現力の評価という部分では、ちょっとズレるかも。デッサンいまいちでも、色彩センスだけで評価されることも多いですし・・・。

 

9.ライバルをつくる

私が子供のころからをずっと思い返してみると、常に、「自分よりちょっと絵が上手な友達」がそばにいたように思います。そういう人がいたときには、絵を描く量も多く、向上心も強かったです。その子に負けたくない、馬鹿にされたくないという気持ちがあったんでしょう。

上記の8.と似たようなものですけれど。

別に、「ライバル宣言」なんかしなくていいので、学校でも、ネット上でも、「自分よりちょっと上手な人」を見つけて、勝手に脳内ライバル認定してみるといいでしょう。

私は漫画の投稿のときにそういうことをしていましたね。同じくらいの順位の人を勝手にライバル認定という。自分がなまけている間、その人は必死で絵を描いているのかもしれないと思うと、やる気も出ますよ。

 

10.立体の形と構成を意識する

物を描くときの基本ですが。絵を描きなれてない人は、まずいきなり輪郭だけ描こうとしたりしますが、その前に、描こうとしているものが、「どういう立体で」「どう構成されているのか」を把握した方が描きやすいです。

たとえばティッシュの箱は立方体ですね。人間の指は円柱です。りんごは球体だし。ちょっと難しい形だと、たとえば電球は「電球部分」は「球体」ですし、ソケット部分は「円柱」です。球体と円柱がくっついた形になっています。

人間の体だって、頭は球体、首は円柱というように、複数の立体物で、複雑に構成されています。

そういうように立体と構成を意識しながら描くと、形がとりやすいと思います。

 

という感じです。

もっと直接的に役立つ方法を期待していた方がいたらすみません・・・。