
うっとうしいと言えば、そのうち開始されることになる『裁判員』制度。
勿論、いいんですよ。ご自分の信念で、『裁判員は国民の義務だ。』『犯罪者が犯罪に陥った原因、情状を考慮しつつも、社会への影響・被害感情を考慮して、量刑を決める。それに国民が参加するのは国民主権なんだから当然だ。』と情熱に燃えて、裁判員制度が開始されるのを待っている立派な方。
でも、『裁判員なんてウゼ~』とか(笑)、『日当くれても面倒くせ~』とか、
『え!裁判員って裁判所からタクシーか何かで迎えに来てくれるんじゃないの?自分で裁判所探していくのかよ~』(爆)っていう方も当然いらっしゃるでしょ。
大体、司法制度改革とかって言えば聞こえはいいけど、国がやってることが失敗だったというか、化けの皮剥がれる寸前じゃないですか。

一例を挙げれば、鳴り物入りで導入された『法科大学院制度』と『新司法試験』。
どちらも導入して2年足らずなのに、既に破綻状態のトホホな結果。

だって、弁護士とか検察官、裁判官になるための『司法試験』が難しすぎて、受験者が予備校に依存し、暗記偏重に陥っているので、思考力重視の試験制度に変更する。そして、『法科大学院』を卒業すれば、7割は司法試験に合格する制度にするっていう話しだったんですよね。
ところが実際は合格率40パーセント前後。
それでも従来の司法試験の合格率が2,3パーセントだったことからすれば、驚異的に簡単な試験(だって、合格率40パーセントって言ったら、概ね二人に一人は受かる試験ってことですよね。)になったはずなのに、多数の合格者を輩出する所は一部の法科大学院に限られ、酷い所は40人以上受験して、受かったのたったの6人程度。合格率15パーセント位(爆)。

まあ、条件が完全に一致してるわけじゃないから単純に比較できないけど、そういう低学力(?)校は自然淘汰されるんじゃないでしょうか。
だって、二人に一人受かる試験にほとんど受かんないんじゃ、ほとんど詐欺だよ。教えてる内容が試験で問われることとずれちゃってるのか、教え方が余程へたくそなのか。よく学生から損害賠償請求訴訟とか起こされないですね(笑)。

まあ、こんな風に司法制度改革の一つの目玉は壊滅状態で、早晩修正せざるを得ないでしょう。
それなのに、国がごり押しする『裁判員制度』。大体、国が必死になってピーアールする制度っていうのはろくでもないと相場が決まっていますからね。

と、『裁判員制度』なんて余計な物を作りやがってとお嘆きの貴方、ここに救世主的な本が登場しました。

西野喜一著『裁判員制度の正体』(講談社現代新書 2007年8月20日第1刷 720円[税別])。
例によって、出版社が講談社だけに、タイトルは『僕はパパを殺すことに決めた』同様、センスが悪いです。

でも、内容はいたって真面目なもので、実用的(笑)でもあります。
第一、著者の西野氏は、元裁判官で、現在法科大学院の教授をしている方で、いわば、裁判のプロ。そんな人がこんなことまで書いちゃっていいの、ていう内容がてんこ盛りなのが、この『裁判員制度の正体』です。

本書の内容は、裁判員制度導入の経緯や外国の制度との比較、裁判員制度の抱える問題(違憲ではないのか。裁判員に課される守秘義務などの数々の負担。裁判員制度に真面目に出席したばかりに、会社をクビにされる危険性など)等、多岐にわたりますが、一番の目玉は、何と言っても、『裁判員制度』というお荷物から、いかに合法的にばっくれるか(爆)の部分ですね。

本当は全部書けばいいんでしょうけど、営業妨害になると困るから、さわりだけ書きましょう。興味のある人は本屋さんで立ち読みでもいいから読んでみてね。
まず、運悪く(笑)、『裁判員』候補となって裁判所から呼出状が来ても、とにかく、裁判所にいかない(爆)というのが肝要だそうです。

行かないって言ったって、理由が必要なんだろう?って思われますが、『病気』でも『親族の葬式』(笑)でも、理由がなければ理由を作って、とにかく裁判所にかかわらないのがポイントだそうです。本当だって、西野教授が書いてるんだから(笑)。

この辺になると、かなりきわどいけど、『呼出状なんか見てない。犬が食べちゃった』(爆)でも言いそうです(本当かよ 笑)。
それで、更に不運にも、裁判所に行っちゃって裁判員になるかについて裁判官の面接を受ける羽目になっちゃっても諦めるのは早い。
ここでも丸秘テクが炸裂。

できるだけ偏った人を演じるのがポイントだそうです。

つまり、『起訴されたんだから、有罪に決まってる。直ぐに死刑にすべきだ』(爆)とか、逆に『冤罪に決まってる。私が被告人の無罪を信じとる。』とか予断と偏見に満ちた態度を取るべきだそうです。

確かに、これは使えそうですね。だって、一応建前としては、裁判が決まるまでは『無罪推定の原則』が妥当するわけだから、裁判する前から『あいつは有罪だ』とかバリバリに予断に満ちている人を裁判員にはしにくいでしょうから。
他のテクとしては、できるだけ、『分けの分からない態度』(笑)を取るって言うのも有効だそうです。

すなわち、同じ話しをクドクド繰り返すとか。裁判官は論理の世界に生きている人なので、理屈の通じない人が一番苦手らしいです。
その他、必殺技としては、裁判官面接の日にお酒を飲んで、アルコールの匂いをプンプンさせて赤ら顔で行く。これも裁判官に嫌われる、というか、ウゼー『裁判員制度』からばっくれる一つの手段として使えるかもとのことです(但し、電車やバスで裁判所に行かないと、飲酒運転で捕まっちゃいますよ。笑)。
そのほか、詳しいことは本書を読んでください。

ちょっと、事実認定は専門的訓練を受けていないとできない(つまり、裁判官じゃやないと無理)というような話しが繰り返し出てきて、何か鼻につくのは確かです。

また、最初、『裁判員制度』に反対していた最高裁が何故導入に賛成し、今では必死に旗振り役になるまでに態度を変化させたのか、そこに何か密約や取引があったのか等、一番気になる所の叙述が薄いのが不満ではあります。
だけど、元裁判官で、現役の法科大学院教授がここまであけすけな内容の本を執筆するっていうのは、それ自体驚くべき事で、やっぱり、『裁判員制度』には様々な危険が内包されていて、日本は今、戻れない橋を渡ろうとしているんだという著者の必死の警鐘が聴こえてくるような気がします。
一読の価値はあるかも。

え!manbowhamamatsuの言う事なんて信じらないって?(笑)。
じゃあ、なお更、自分の目で確かめてみたら。
仮に、1冊買って、万一『駄目だ、こりゃ』(爆)と思ったとしても、損害は800円弱。
逆に、この本で理論武装して、『裁判員制度』っていう疫病神から逃れることができたとしたら、劇安じゃない。
何でも自己責任の時代。自分の身は自分で守らないとね。
とはいえ、所詮『人様のことじゃから』(爆)。無理強いはしませんよ~。プップー♪
