皆さん、こんにちは。
今日は暖かいですな。というより暑いですね(汗)。本当に冬なんでしょうか(笑)。
さて、振り込め詐欺の被害金を横取りした書記官など法律実務家の不祥事が発生していますが、今度は司法書士さんです。
この司法書士さん、多重債務に陥っていた人の債務整理を専門にしていたんですが、その報酬金を5つくらいの銀行口座に分散して保管。
そのうち一つの口座の所得しか申告せず、2007年度から2年間になんと2億4000万円余りの所得を隠し、約9000万円
を脱税したとして、東京国政局に所得税法違反で刑事告発されたとのことです。
はあ~
。
債務整理って儲かるんですね。
何故債務整理が儲かるかというと、債務者の人が返済したお金が払いすぎになっていることが多くて、いわゆる過払い金というのを消費者金融業者から返してもらえるのですが、もともと債務整理を依頼する人は借金が少しでも少なくなればいいと思っているので、お金が返ってくるとまでは思っておらず、過払い金分について高率の報酬を請求しても文句が出ないらしいからなんです
。
ところで、過払い金(かばらいきん)っていうのはなんじゃい?ってことなんですが、これは利息制限法の上限金利と出資法の制限利息との差額部分(グレーゾーン金利)によって発生するものです。
例えば50万円お金を消費者金融業者から借りたとしましょう。
この場合、利息制限法では上限金利は現在年利18パーセントですが、出資法では年27パーセントと、制限利息に9パーセントの差があるわけです。
そして、この9パーセント部分を金銭消費貸借契約で業者が受け取れるとするかどうかは、事実上業者が自由に決められるんです。
というのは、利息制限法の制限利息を超える利息を請求しても、出資法の範囲内(具体的には年利27パーセント)までは、刑事罰がないんですね
。
だから、利息制限法上は取ることができないんだけど、出資法の刑事罰には触れないという意味で、この差額部分をグレーゾーン金利と呼び、多分、かつての消費者金融業者はすべて請求していたはずです。
しかし、出資法上刑事罰がないと言ったって、利息制限法上請求できないわけだから、債務整理を依頼された弁護士さんなり司法書士さんは、まともな仕事をしている人であれば、取引履歴に基づいて、利息制限法の制限利率で引きなおし計算を実施するはずです。
そうじゃないと、債務者の人が法律上返還しなければならない債務額を確定することができないからです
。
そして、このような引きなおし計算を実施していくと、グレーゾーン部分の金利は払わなくていいものを払っていたわけですから、元本に充当していくことになり、どんどん元本が減っていきます。
それどころか、ある時点をすぎると、元本がないのにお金を返済していたという事態に陥ります。
これは法律上支払いの義務がないのに業者に支払ってしまったお金ということで、法律上不当利得(民法703条、704条)ということになり、債務者の人は業者にお金を返すどころか、業者に対して『払いすぎていたから返せ。』といえることになります。
この払いすぎだから返してくれというお金を、俗に過払い金(かばらいきん)と言っているわけです
。
グレーゾーン金利は今は9パーセント前後ですけど、かつては出資法の上限金利が40パーセントほどだったので、グレーゾーン金利が20パーセントを超えることもあり、契約時期が古く、長く返済しているほど(大体6,7年)ほど、過払い金が発生する可能性があり、『もう破産するしかない。』と思いつめていた人が勇気を出して弁護士さん等に相談して、利息制限法に基づく引き直し計算を実施してもらったら、残債務がほとんどなかったり、逆に、過払い金を返せと言える場合に該当し、破産する必要がなかったなんていう場合が少なくないそうです
。
現実に債務が減るか過払い金(まあ、これは天引き預金をしていたようなものですね。笑
)が発生するかは、個々の取引によって異なり、必ず過払い金が発生するなんていうことは言えず、取引履歴(借り入れと返済を一覧表にしたもの)を取り寄せて計算してみる必要があります。
ところが、昔は、業者がこの取引履歴を出してこなかったんですね。
なぜなら、取引履歴を開示してしまうと、債務が大幅に圧縮されてしまったり、逆にお金を業者が債務者に返済しないといけない(過払いの場合)ことがばれてしまうからです。
ところが、法律が改正されて業者は取引履歴の開示要求があった場合には、取引履歴を開示しなければならなくなったので、債務整理はパソコン
と利息制限法に基づく引き直し計算ソフト(解説本付きで3000円前後で市販されています)があれば、誰にでもできる非常に簡単な仕事になってしまったのです。
そして、業者が任意に過払い金の返還に応じない場合、訴訟を提起すれば、業者側には過払い金を返還しない言い訳(抗弁(こうべん)と言います)をまず提出できないので、必ず勝ててお金を取り立てることができるという大変おいしい仕事なので、従来は弁護士さんや一部の熱心な司法書士さんしか取り扱っていなかったのに、特に司法書士さんが大挙して債務整理の分野に参入するようになったわけです。
更に、法律の改正で、司法書士さんも法務大臣の実施する研修を受けて試験に合格すれば、『認定司法書士』として、金額が140万円までの訴訟なら代理人なることができるようになったことも大きいです(従来は特別の例外に当たる場合でないと、弁護士以外は訴訟代理人になることができませんでした)。
しかし、『認定司法書士』制度は、あくまで訴訟実務をする能力があるか否かを認定するだけで、法律実務職としての高度の倫理性を有しているか否かまで認定するわけではありません(勿論、立派な認定司法書士さんも多いんでしょうけど)。
ですから、債務整理報酬を脱税するような輩も出てくるわけですね
。
そして、このような輩は今後増えることが予想されています。
というのは、利息制限法の制限利率と出資法の上限金利が数年のうちに一致するよになる予定であって、グレーゾーン金利そのものがなくなってしまうのです。
これはどういうことを意味するかというと、クレーゾーン金利に由来する過払い金がなくなってしまうということです。
ですから、一部の債務整理を扱う専門家は、『今のうちに稼げるだけ稼いでおこう』ということで、脱税や所得隠しもいとわないというのが現状のようです。
なんとも情けない話しですが、これが現実です
。