過去ログ８７より

[17153] 019:アラビア 方丈いほり 2005年06月17日 (金) 17時24分
大いなるサウジアラビア油田国怒らせられない現代文明

[17168] 032:乾電池 Harry 2005年06月17日 (金) 21時16分
乾電池の寿命となりて分針は９のあたりを行ったり来たり

[17173] 042:官僚 恩田和信 2005年06月17日 (金) 22時12分
官僚の中にもきっといるはずだ気をもんでいる吉野家通が

[17190] 072:インク 萱野芙蓉 2005年06月18日 (土) 00時59分
文字になるまへのインクの藍ふかく人を沈めてかなしむやうな

[17191] 046:泥 近藤かすみ 2005年06月18日 (土) 01時01分
泥のごと眠るふりしてその背中さらす男の膏薬はがす

[17198] 088:食 野良ゆうき 2005年06月18日 (土) 06時28分
食べずには生きておられぬことなども悲しみとして食べておしまい

[17207] 057:制服 我妻俊樹 2005年06月18日 (土) 10時01分
制服から手足がのびる日ざかりのバス停でバスじゃないものを待つ

[17216] 065:城 常盤義昌 2005年06月18日 (土) 12時28分
汗拭けり　小谷城址の石垣に執心のごとく夏草は伸び

[17235] 034:背中 久哲 2005年06月18日 (土) 22時03分
丸まった背中を伸ばす理由など「空を見るため」それでええやん

[17243] 064:科学 みあ 2005年06月18日 (土) 23時26分
わたくしの錆びた左脳が憧れる科学者の名は＜お茶の水博士＞

[17291] 065:城 五十嵐きよみ 2005年06月19日 (日) 21時06分
渦を巻く孤独なかたち巻き貝はひとつひとつが美しい城

[17332] 069:花束 前野真左子 2005年06月20日 (月) 00時25分
最高の花束だった　泥も根も付くままに君がくれた野の花

過去ログ８６より

[16956] 039:紫 佐藤理江 2005年06月15日 (水) 01時03分
褒章の紫リボンくぐりぬけ　あつ！　あかねさす塚本邦雄

[16970] 010:線路 水須ゆき子 2005年06月15日 (水) 08時19分
子を背負い線路に伏した日もあるとばっちゃんは言う豆をもぎつつ

[16983] 048:袖 林　ゆみ 2005年06月15日 (水) 17時10分
半袖のセーラー服がさわさわと葉桜の下ペダル漕ぎゆく

[16995] 089:巻 史之春風 2005年06月15日 (水) 20時14分
なにもかも汚れていない朝でした　きゅうりのつるがくるくる巻いて

[17015] 047:大和 紫峯 2005年06月15日 (水) 22時01分
今塗りし朱色のごとく鮮やかな大和国家のキトラの古墳

[17027] 043:馬 我妻俊樹 2005年06月15日 (水) 23時14分
砂利道で森をめざすと馬がいて馬には馬の恋人がいる

[17034] 043:馬 みうらしんじ 2005年06月16日 (木) 00時07分
パチンコと競馬はしない　宝くじさえ買わないが保険には入る

[17056] 011:都 水須ゆき子 2005年06月16日 (木) 07時41分
ひさかたの都忘れの花あおく声から先に母は老いゆく

[17106] 063:鬼 みあ 2005年06月16日 (木) 22時06分
蝶々がカノンのように鬼ごっこ　重ならぬものさびしすぎるね

[17138] 059:十字 前野真左子 2005年06月17日 (金) 14時45分
山法師白き十字に花載せて一途に空を　空だけを見る

過去ログ８５より

[16791] 060:影 五十嵐きよみ 2005年06月11日 (土) 23時15分
人が皆チェロのかたちの影をもつ日になるでしょうと天気予報が

[16819] 036:探偵 杉山理紀 2005年06月12日 (日) 13時19分
しなやかにベスパに乗って探偵が距離を縮める昨日と明日の

[16820] 060:影 みあ 2005年06月12日 (日) 14時48分
去っていくものを見つめる影ひとつ 思い出はいつだってしあわせ

[16829] 098:未来 飛永京 2005年06月12日 (日) 20時58分
百日草になれるまで、あと［002日］未来は待っていてくれるから

[16831] 044:香 林　ゆみ 2005年06月12日 (日) 21時16分
好きだよの「よ」が終わるのを見計らうように線香花火がぽとり

[16852] 045:パズル 紫峯 2005年06月13日 (月) 01時48分
千個あるパズルのピ－スつなぎゆく今日は一個の願いが叶い

[16861] 068:四 ぴいちゃん 2005年06月13日 (月) 10時49分
おつかいの帰りは赤い電車みようね、母とりんごと四ツ谷の夕日

[16905] 094:進　 kitten 2005年06月14日 (火) 13時26分
新進歌人kittenさんの歌はへん。顔もへん。でも、いいの。えへん！

[16921] 013:焦 美和知空 2005年06月14日 (火) 19時23分
復讐心　笑顔はすでにこげついて脱力のなか帰る地下鉄

[16941] 032:乾電池 ひぐらしひなつ 2005年06月14日 (火) 23時10分
乾電池売場に迷う六月の蝶、やわらかな訃音の果てを

過去ログ８４より

[16556] 043:馬 佐藤紀子 2005年06月09日 (木) 08時32分
走り終へ鞍をとりたる馬の背に一瞬ぽつと白き湯気立つ

[16594] 068:四 萱野芙蓉 2005年06月09日 (木) 20時50分
十四になりし誕生日しら骨となりにし父を箸ですくひき

[16602] 075:続 ジテンふみお 2005年06月09日 (木) 21時54分
記念日よ続記念日よ続々と記念日繋げ開くアルバム

[16612] 071:次元 伊波虎英 2005年06月09日 (木) 23時41分
両耳をふさげば美術館（ミュゼ）の二次元の糸杉は吾の、世界のうねり

[16624] 030:橋 常盤義昌 2005年06月10日 (金) 02時11分
理由なき怒りはひとを語らしめ、岸にひかれて深く反る橋

[16626] 032:乾電池 常盤義昌 2005年06月10日 (金) 02時13分
腕時計ふたりの時を刻むなくしづかに腐蝕する乾電池

[16640] 045:パズル 常盤義昌 2005年06月10日 (金) 02時28分
暗闇に青いターバンの少女ゐてパズルのなかの罅割れた顔

[16641] 046:泥 常盤義昌 2005年06月10日 (金) 03時02分
靴底に泥は乾きてこぼれ落つ　死にたい理由は生きたい理由

[16697] 029:ならずもの 佐原みつる 2005年06月10日 (金) 23時28分
春の風色えんぴつを次々とゆくえふめいにするならずもの

[16729] 041:迷 萩原留衣 2005年06月11日 (土) 11時02分
本当の満月なんか一瞬で　だからいつでも迷ってばかり

過去ログ８３より

[16361] 099:動 秋中弥典 2005年06月05日 (日) 21時41分
唇が動くとおりに声を出すことの切なさ君は知るべし

[16374] 062:風邪 如月初香 2005年06月05日 (日) 23時52分
たとえれば風邪ひきさん、と何にでも「さん」づけ女性をひそかに憎む

[16376] 091:暖 飛永京 2005年06月06日 (月) 00時08分
腐葉土で生暖かく育ってもナスタチウムの葉っぱは辛い

[16398] 032: 乾電池 杉山理紀 2005年06月06日 (月) 16時40分
とめどない乾電池からあふれでるプラスマイナス以上の言葉

[16433] 045:パズル 海神いさな。 2005年06月06日 (月) 22時46分
なくなったパズルをやっと見つけたと言わんばかりに重ねる躯（カラダ）

[16436] 092:届 飛永京 2005年06月06日 (月) 23時02分
西方の父さんへ届け緑一色（りゅういーそ）象牙と竹の麻雀牌（じゃんぱい）で、ロン

[16446] 016:たそがれ 瀧村小奈生 2005年06月06日 (月) 23時29分
たそがれの色をあれこれ言い合って暮れてゆきたい一日である

[16479] 050:変 海神いさな。 2005年06月07日 (火) 16時23分
変わらないものなど何もないのなら別に愛でもよかったじゃない

[16509] 070:曲 伊波虎英 2005年06月08日 (水) 00時26分
Ｒ３００の曲線路（カーヴ）をなぞりつつ試運転車の厳かにゆく

[16537] 094:進 飛永京 2005年06月08日 (水) 23時16分
アッチダヨ コッチダヨってサルビアが指をさすから進めやしない

[16541] 004:淡 水須ゆき子 2005年06月09日 (木) 00時23分
生まれない子供の骨の淡さかな葉桜すべて葉となる五月

[16547] 073:額 ジテンふみお 2005年06月09日 (木) 01時23分
フラッシュも太陽さえも寄せ付けぬ強い額でカメラを睨む

過去ログ８２より

[16153] 010:線路 キタダヒロヒコ 2005年06月03日 (金) 12時26分
えりちやんをはじめてエリと呼んだ日にもう遠くまでのびてた線路

[16156] 089:巻 青野ことり 2005年06月03日 (金) 12時48分
上巻を閉じた余韻もそこそこに下巻の表紙に誘はれてゐる

[16156] 089:巻 青野ことり 2005年06月03日 (金) 12時48分
上巻を閉じた余韻もそこそこに下巻の表紙に誘はれてゐる

[16188] 064:科学 暮夜宴 2005年06月03日 (金) 21時26分
科学的説明なんか欲しくない好きか嫌いか二つに一つ

[16210] 040:おとうと 林　ゆみ 2005年06月04日 (土) 00時47分
おとうとがいれば家にもお墓にも縛られないで生きられたかな

[16229] 080:書 秋中弥典 2005年06月04日 (土) 02時01分
消すために書くような恋だったからあなたのことが忘れられない

[16262] 088:食 秋中弥典 2005年06月04日 (土) 19時35分
屋上のベンチに４人昼食を一緒にとれるほどの温度で

[16274] 041:迷 近藤かすみ 2005年06月04日 (土) 21時45分
迷信を肯ふ人は理屈言ふひとより大人と知りぬこの頃

[16289] 028：母 美里和香慧 2005年06月05日 (日) 00時13分
雲母（きらら）紙うすくのばして貼りましょう恋の景色も模様替え　春

[16295] 033:魚 露稀 2005年06月05日 (日) 01時39分
もうずっとだぁれもいない金魚鉢　あの夏の色閉じ込めたまま

[16322] 033:魚 佐藤理江 2005年06月05日 (日) 13時09分
魚から腸（わた）抜くときに血はすべてシンクの網をくぐりて逃げぬ

[16327] 23:うさぎ ケビン・スタイン 2005年06月05日 (日) 14時55分
いつもそう　悲しい夜に思いだすあの夏飼ったうさぎの重さ

[16344] 048:袖 KADESH 2005年06月05日 (日) 21時17分
「ほらあそこ」指さす君のジャケットの袖に大きな花柄ひとつ