「やれやれ・・・」
いつものメンバーに、スリーライツ、はるかさんにみちるさんまで揃っての月野家訪問。それでなくても騒々しいのに更にテレビ局まで押しかけてきて、とりあえず慌てて隠れることになったのはいいけれど・・・と、焦った頭を冷静にするために現状を把握しなおす。
本当に焦っていたのでとりあえず適当な場所に飛び込んで、本当に適当だったのだと思う。トイレだ。数分ばかりの訪問者ならいざ知らず、あんな大人数のしかもいつ終わるか分からない番組収録。隠れる場所に相応しいとは言えない。
「・・・ここじゃぁ」
「ご、ごめんなさい、あんまり急だったものだから・・・」
一瞬の判断だったとはいえ、二人以上で入る場所としては、余りにも不覚過ぎる。
亜美ちゃんに腕を引っ張られ、そのまま揃って慌てて飛び込んだこの場所。狭いので彼女はあたしの腕の中だ。
「・・・まああたしも慌ててたけどね・・・それにしても急だったとはいえ随分なところに飛び込んじゃったね。普通はこんなとこ2人以上で入らないし・・・出るに出られないや」
「・・・そうね」
「全く、誰も来なきゃいいけどね。ごめんね亜美ちゃん、あたしおっきいから狭いだろ?ほんっと・・・いつになったら出られるのやら」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「亜美ちゃん?」
反応がないと、彼女の顔を覗き込む。そしたら亜美ちゃんはどこか熱っぽく瞳を潤ませて、あたしの服の裾を握る。
「・・・ま、こちゃ・・・」
「亜美ちゃん?どうしたんだい?」
「・・・まこちゃん、わ、わたし・・・」
狭いスペース。出られない状況。腕の中には親友。何故かその彼女の濡れて細められた瞳から目が逸らせない。頬は心なしか上気して、微かに開く唇からは色気すら漂っていた。
あたしの心臓は何故か水に上がった魚のように跳ね上がる。
「あっ・・・あみ、ちゃん?」
「まこちゃん・・・」
そして彼女のかかとがゆっくり浮き、あたしの顔にどんどん近づいてきて・・・
このシュチュエーションは・・・まさか・・・まさか、だよね?いや、そんなはずはないけど、でもこの取り巻く空気と亜美ちゃんの様子はあたしのありえない妄想を肯定する。
確かに映画や少女マンガで見るようなこんな展開。そして古典的なその次の展開をあたしは常識のように知っている。
しかし相手は亜美ちゃんで、親友で、女の子で・・・そ、そんなはずは・・・そう考えている間にも、それでなくてもほとんどない距離が埋まっていく。
「ああああああみちゃん・・・!」
「わたし、まこちゃんのこと、す・・・」
そこであたしの心臓は、今度はポップコーンの如く跳ね上がった。最早数センチの距離しかない亜美ちゃんにでなく、後ろから聞こえた声に。
「・・・水野さん、木野さん。私の存在を忘れてませんか?」
「たっ・・・」
「大気さん!」
「あぁ・・・っ、ごっ・・・ごめんなさい!」
そこで折り良くなのか美奈子ちゃんの悲鳴が聞こえて。
これ幸いとばかりに飛び出したはいいけど、派手に転んだ上うさぎちゃんに見られていた―何が起こったかは理解されていないようでよかった。振り向くと亜美ちゃんも大気さんもいつもと変わりない様子だ。
先ほどのあれはなんだったのだろう。場所が場所なので亜美ちゃんの顔がいつもより近くにあったのは間違いないけれど、あの心臓の鼓動は一体なんだったんだろう。雰囲気に酔ったとか。まさか人様の家のトイレに雰囲気があってたまるか。
しかしあたしはともかく、何よりあの亜美ちゃんの行動は―あたしはあんなふうになった状態の子をみたことがあるし、また、あたしも最近すっかりご無沙汰だがあんな状態になったことが多々ある。そう、あの行動にはものすごく見覚えと、その裏にある感情の真意が―
「―まさかね」
あたしの呟きは誰に聞かれることもなく空気に溶けた―
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あそこに大気さんがいなけりゃどうにかなったんじゃと思ったまこ亜美ストは多いはず(月野家のトイレで・笑)まこちゃん異様に慌てて飛び出してたし。頑張れ亜美ちゃん襲ってしま(ry
でも風呂場に夜天くんと二人で隠れてたレイちゃんも結構けしからんと思う。
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