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村内まごころ商法 & 剛毅の経営

昭和53年に出版された本と、ホームリビングに掲載された記事でたどる、村内道昌一代記

モノを売らないセールスマン

2007年05月17日 | Weblog
2.「まごころ商法」とはなにか

これまで述べてきたことは、商品、ディスプレイ、テナントなど、外から目に見える部分である。ホームセンターとは何かを外側から描写すれば、大まかなアウトラインは理解できるはずである。しかし、商売は外側から見える部分だけではない。モノを並べて売るだけだったら露店商法と変りはないし、郊外大型店がそれで成り立つわけはないのである。

村内ホームセンターがオープンし、順調に伸びているということを知って、全国からたくさんの業者が視察にきた。そして、あちこちに類似店、つまり郊外型のホームセンターがたくさんできた。その中でいまもうまくいっているところもあるが、多くの追従店がつぷれていった。

村内が成功し、そのマネをした店の多くがなぜつぶれたか、その中でうまくいっている店もあるのはなぜか。私は興味をもってしらべてみた。その結果わかったことは、村内ホームセンターを見て、その外観だけをマネした店のほとんどがつぶれ、システムまで学んでいった店は生き残っているということである。村内は常にさまぎまな商業戦略、戦術をシステム化していつもフルに回転させていることは、だんだんあきらかになっくると思うが、まずその中でも基本的な戦略のシステムの一つである「外渉」について説明しよう。

外渉というと、これも耳慣れない言葉だと思う。普通は外商と書き、洋風にいえばセールス。外交員が商品を売り歩くシステムである。しかし外渉とは字のごとく、外で商売をするのではなくPR活動をするだけなのである。

商売は店を開いて待っているだけではだめである。こちらから足を運んで顧客をつかむという積極さがなければどんな商売もうまくいかない。だが、セールスがいかに苦しい仕事かということを身をもって体験しているだけに、私は社員に「外へ行って商売してこい」とはいえなかった。

そこで私が考え出したのは「売らないセールスマン」のシステムだった。相手のところへでかけていって、モノを売り、納品して代金をもらうというセールスの仕事から、モノを売るという部門をはずしてしまったのである。

モノを売らないセールスマンとはなにか。その仕事の主なものは、情報の収集とお客様を店までつれてくることである。

システム的には、現在、ブライダル外渉とインテリア外渉の二つにわかれている。

まずブライダル外渉だが、この仕事の第一歩は、近く結婚する人に関する情報を集めることである。次にその相手を訪問し、婚礼家具を見に来店してはしいというアプローチを行なう。これを村内では「誘店活動」といっている。お客様を売り場まで連れてきたら、販売員にバトンタッチする。外渉の社員は原則的にはモノを売らないのである。

さて、たてまえは全社員が外渉活動を行なうということにはなっているが、現実に動く場合は店の戦略に従って五十人とか六十人といった外渉員が組織的に活動する。店のほうも「ご婚礼家具大予約会」とか「結婚展」といった、受け皿的な行事を定期的に行なっていくのである。

この外渉システムの有利なところは、社員に過大な負担を背負わせることなく営業活動ができるということである。モノを売って来なければならない、という心理的な圧迫感がないから、営業マンの動きは軽くなるし、落ちこぼれも少なくなる。

また、金銭上の問題が起こらないというメリットもある。外商の場合はセールスマンが現金を扱うのだから、長い間には必ず使い込むといったトラブルが起こってくる。しかし、村内の場合はそのようなケースは皆無である。金銭上のトラブルは社員の身を誤らせるだけでなく、対顧客の問題も含めて、店の信用を大きく傷つける場合が多い。 次へ