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僕&macbexとIFの世界

小説や遊戯王(インフェルニティ)や日常の事などを雑記していきます。

自転車を使った短編

2012-08-08 02:28:30 | 小説
自転車を使った短編。


 僕は坂を歩いている。
 この坂は、とにかく長ーい坂だ。その坂は人生の長さにも喩えられる。「人の一生は重い荷を背負って云々」と結構前に某(なにがし)将軍が言ってたらしいけど、本当にそんな人生だったら嫌だなって思う。自転車を使いたいなって思う。
 ここで言うまでもないかもしれない。でも敢えて言わせてもらうと、自転車は便利だ。自転車が便利であることにお気づきの利口な読者は、この行を丸々飛ばしてもらって構わない。自転車は天然資源に頼らないし、環境にやさしい。エコイズ自転車。自転車を発明したカール・フォン・ドライスさんは凄いと思う。まさか二輪が進むことによって自立を可能にするとは思わなかったに違いない。ダメで元々で走り出したら案外行けたから、きっと驚いたと思う。だが彼も、これが二百年先まで学生の主要移動手段として使われているとは思わなかっただろう。
 僕は坂を登っている。頂上には僕の自転車があるのだ。
 坂を自転車で登るとき、その先に下り坂があると確信しているから頑張れる。逆に、坂を登らずして下り坂にで出遭ってしまうと、避けられぬ上り坂の運命を実感してしまって、素直に下り坂を楽しめない。――じゃあ彼はどういう気持ちでこの坂を登っていったのだろう。この坂の先に崖があり、そして、自分が支払った対価が、崖という不条理な終焉に飲み込まれていると確信しながら。汗をポロポロと流しつつ、涙もポロポロ流しつつ、この整備されて酷く硬いインターロッキングブロックの道を、文句も言わず登っていったのだろうか。
 彼と僕は似ている面が多かった。と、彼がいなくなってから思った。同時に、彼と僕の決定的な相違も発見した。僕はとうとう首が回らなくなったとき、どこかへ自転車で逃げようかと彼に相談したのだが、彼が追い詰められたとき、彼は僕に相談しなかったし、案外近いところに逃げ込んでしまった。
 彼が最後に僕の家を尋ねたときのことが今でも思い返される。
 自転車を貸してくれ。
 いいよ。
 ありがとう。
 彼の力のない笑みが今になって恐ろしく感じる。
 彼はとても複雑な人間だったのだが、僕は恐ろしくシンプルな対応をしていた。それは逆に言えば、彼を(100%とは言わずとも、その大部分を)理解することを放棄していたと言う事になる。僕が理解できそうな人間は、会うたびにその形を、単純ながら変則的に変化させるので、僕はその形に合った対応を強いられるのだが、彼の場合は、変則的な変化がない代わりに、その形は難解を極めた。
 だから僕は、彼がどうして僕の自転車を使ってこの坂を登らなければならなかったのかが、分からない。自分の命を絶つ人間の思想なんて分からなくて当然と皆は思うかも知れないが、それは違うのだ。彼という人間は恐ろしく入り込んだ形をしていると同時に、それはツンドラ地帯の氷山のように固いのだ。たかが死の寸前なんかで変わるようなものではない。それは彼について、唯一僕が自信を持って語れることだ。
 なにか意味があるに違いない。坂を半分くらい登ってもいい考えは出ないけど、なにかしらの意味があることは確実だ。これが普通の青春小説ならば、「ここからの景色が見せたかったんだよ!」なんて臭い演出が坂の先にあるのかも知れないけど、あいにく、この辺りは背の高い木に覆われていて景色どころじゃない。その上蒸し暑いし、虫はでるし、酷い環境だ。もしも彼が最後の力を振り絞って、自分を理解してくれない(理解しようとしない)僕に嫌がらせをしたのだとするのならば、それは成功している。
 天国で(または地獄で)ザマアミロとでも思っているのなら、それはそれでいいさ。僕は君に恨まれるようなことをした覚えはないけれど、それで君の気が済むのならば、僕の自転車を富士の頂上でも、チョモランマの頂上でも、好きな場所に置き去りにしてくるがいいさ。唯一、君がそっちまで持っていってしまわないのなら、僕は必ず自転車を見つけにいくよ。そしてその度に、単純な脳みそが弾きだす暫定案を考えるのだろうね。
 頂上まで来ても、やっぱり景色は開けなかった。広場の中央にはエジプトにある「オベリスク」の縮小版みたいな、くっだらないモニュメントが遺棄されていて、僕の自転車もまた、その近くの駐輪場に立てかけてあった。放置の時間を感じさせない真っ赤で美しいボディに、高めに設定されたサドル。それは正しく「完璧」の具現だ。
 モニュメントの先を少し進んだところには、少量の献花が供えられていて、僕は驚いた。ちょっと考えればこういう自体は楽に想像できたはずなのに、僕は彼への献品というものを一切持ってきていなかったのだ。僕の頭の中には、僕の自転車にまつわることしか無かった。
 なかなかタフだな、と自分のことながら呆れてしまう。君が死んでから、胸の中のもやもやはすっとどこかへ行ってしまったよ。どうしてだろう。本当ならば、友の死を悼んで、号泣して、その献花の前に跪いて泣いてもいいのにな。全く悲しいと思えないんだ。
 彼が遺して行った自転車を、駐輪場から出す。大丈夫、恨みの言葉も感謝の言葉も、なにも書かれていない。僕はどこかでほっとしていた。それは、彼と僕との距離がそこまで近い物ではなかったから、彼の最後の言葉が自分に向けられるとは思いたくなかったのである。「君は最高の友達さ!」なんて書かれていた暁には、その部品を取り替えなければ気が済まない。
 自転車で坂を下りながら、僕は再び宛のない不安を覚えた。そして、その不安が「坂を登らずして坂を下ること」への不安ではないことを少し下ってから理解した。僕はこの自転車でどこまでも逃げてやろうなんて、つい数週間前まで本気で考えていたのだ。だが、彼が死んでしまったことで、そんな気はどこかへ行ってしまった。多分、彼が自転車と共にこの坂の上まで運んでしまって、その後、自転車をだけ置いて投身自殺してしまったからだ。
 ああ、彼は私に逃げるなと言いたかったんだな。
 その時、僕はある種の吐き気と、動悸に駆られた。とうとう、彼の一筋縄では行かない心を、少しだけ垣間見た気がしたからだ。僕は多分君のことを少しだけ理解できたと思う。君は死して尚、僕のことを気づかってくれていたんだね。彼の献身に、今更ながらに涙が出てくるよ。ざんねんだ。

 ペンチで切断されたブレーキと、加速を止めない自転車。
 僕は坂を落ちて行く。

 やっぱり、理解なんてできなかったんだよ。


あとがき。
30分で書くつもりが1時間も掛かったよ。
短編で、ちょっと不思議なムードと、理解し合えない友人間というものが書けたらなーって思ってる。
そして、死んでしまった「彼」の心が主人公の解釈一つでコロコロ変わっていくところを面白いと思ってくれたら、成功かな。

主人公がいきなり死ぬというパターン 泣空ヒツギの死者蘇生学

2012-08-07 13:11:43 | 小説
が最近多くね?
一発目はおお、なんかいきなり主人公死んでんぞwwってインパクトがあったんだけど、
二発目からはあ、また死んでんだって感じになって
最近は普通の小説を読んでも最初に主人公が死なない……だと? 斬新だ……。になりつつある。
で、最近管理人が読んだ

泣空ヒツギの死者蘇生学

というラノベも、その例に漏れず
いきなり主人公が死ぬ
でもまぁ、死んでから復活というのがデフォで、この作品もそのテンプレートを脱しない。
なんかヒロインに生き返させられる。

最初に死体を出すメリットは「冒頭には死体を転がせ」という有名
ミステリーの格言からも分かるとおり、高い。
その死に様が不可解であればあるほどに読者は興味をそそられる。
この「最初に主人公が死ぬ」というパターンは、それの応用だろうね。
また、管理人が個人的に思うんだけどオタクには潜在的に今の自分から脱したいという欲望があるのではないだろうか?
「なろう」に投稿されている小説とかを見ても、なんか「転生もの」というジャンルが確立されているし、
そして、転生後は神様から変な能力もらっておれTUEEEEEEEしてるし。

で、まぁこの「泣空ヒツギ」が面白かったかというと、
う~ん。
問題は明確で、
・地の文でバリバリ説明しすぎ
 創造の余地が無いくらい書きすぎてて、それがテンポを悪くしてる。
・メタネタを中途半端に入れるな
 初めてラノベを書く中学生とかがよくやるよね。
 此の人あんまりラノベ書いたこと無いんじゃないか?
・ヒロインが主人公に惹かれる理由もヒロインが主人公に惹かれる理由も分からない


最近此のパターン多くね?
美少女を可愛く見せるのは当然だけど、本当に重要なのは
主人公をかっこ良くみせる
ことだと思うね。
最近の商業ラノベはそれを軽視し過ぎていて、結果、こういう事態に陥るのだと思う。
おはなしは簡単で

主人公がかっこいい←かっこいい主人公に惚れるヒロイン←恋するヒロインが可愛い

こういう図式が成り立つのに、最近のラノベは

ヒロインが可愛い←ヒロインの可愛さを出すためにお風呂シーンとかを入れる

こんな安易な方法で萌えを抽出しようとするから困る。
それで結局主人公と恋愛するという目標を果たせなくなるから、無理やり惚れさせて、
その結果
全然かっこよくない主人公に惚れるヒロイン←惚れる根拠などは不明。
になてしまう。

人工羊 の方をさっさと推敲終わらせねーと……

2012-07-23 03:01:51 | 小説
ページが多くなりすぎて困る。
もう13万くらい書いている。これじゃあどこの賞にも出せなくなってしまうよ。
さらにさらに、他に書きたいところもいっぱいあるし、
人体実験の様子とかはもっと資料を集めて克明に書きたいと思ってる。

ハードSFを目指しているわけじゃないけれど、しっかりとした「科学」に裏打ちされた作品
を書きたいと思っているから、そういう所は手を抜きたくない。
今のラノベ業界、中身がすっからかんなライトノベルが充満していると思う。
管理人はそういう業界に一石を投じてやりたいと思っているし、
それをするだけの表現力は身につけてあるつもりだ。
後は考証説得力

でも、ここまで書いておいて主人公の魅力があんまりない事に気がついた。
そりゃあ最後は割とかっこいいけど、「何が得意」と言うわけでもないし、典型的な無個性主人公だ。
今更彼のキャラクターを変えるわけには行かないしなぁ……。