茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

明日への遺言

2008-03-13 13:08:59 | m-tamagoの物想い
 母に誘われて、映画を見に行った。“明日への遺言”。映画館に入って戦争の映画であることを知った。戦争映画は泣いて目が腫れるから嫌だなあと思いながら、結果その通りになったのだが、見てよかった。是非、高校生以上の子供たち(多分小さいと意味が理解できないと思う)、一人でも多くの大人たちに見てほしい。
 劇場においてあった産経新聞の記事を持ち帰り、自宅でもう一度読んでいる。それをベースに映画の概要と私の感想を述べたい。

 第二次世界大戦後、連合国による日本の戦犯を裁く軍事裁判が始まった。この“明日への遺言”は、名古屋空襲で無差別爆撃を行い、被弾して降下してきたB29の米軍搭乗員を処刑した責任ではじまった岡田資(おかだたすく)中将とその部下たち19人の法廷と獄中での物語である。原作は、大岡昇平のノンフィクション“ながい旅”。大岡氏は10年以上の取材活動からこの記録をほりおこし、昭和57年に発表したそうだ。
 日本刀で米国人を処刑した部下を守り、「実際に手を下すように指示したのは自分であり、すべての責任は私にある」と主張し、更に米軍が工場など軍事目的の建造物以外は爆撃しないとの国際法を違反して、無差別爆撃を行った事実とその罪を公判の中で立証し、そういった異常な状況の中での現実と理想の差を訴える。法戦と称して、戦勝国の論理だけで裁こうとする米国の裁判官や検事と対峠、非人道的な無差別空襲の罪を認めさせようとしたのだった。事実最後には、裁判官も検事も彼の真摯な態度に打たれ、米国の爆撃について考えるようになり、好意的な質問をして彼の刑が軽くなるよう導こうとするのだが、彼は自分の思うままを述べる。最後の法廷において、岡田中将は死刑を覚悟しつつ、米軍無差別爆撃について自分たちの言い分を法廷がきちんと扱ってくれたとして裁判官達に感謝を述べる。そして、昭和23年5月絞首刑が言い渡された。部下19名は終身刑~重労働5年に処せられ、死刑は逃れた。岡田中将は最後に言う、「アメリカの都合もあろう。自分はやれるだけのことはやった、本望である。」と。そして多くの人が惜しむ中、翌年9月、執行され、59歳の生涯をとじた。
 とにかく、映画の中に出てくる岡田中将の言葉は短くても重みがあり、また周囲への振る舞いひとつひとつも、心に迫るものがある。最近の日本は、何か起きると責任を誰かのせいにして自分は逃れようとしたり、上司が部下を本当の意味で大切にし守らない事象が多すぎる。自分の立場、周囲の状況、色々な問題がある中で、それら全てを飲み込んで自分の信念と人間としての誇りを失わない岡田中将の生きざまには涙が出た。自戒も込めて、かく生きたいと思った。
 
 戦犯には、ABCとある。これらがどのように分けられていたのか知らなかったのですが、産経新聞の説明では、A項「平和に対する罪」、B項「通例の戦争犯罪」、C項「人道に対する罪」。A級戦犯と呼ばれた人々が東京裁判で裁かれたのに対し、BC級戦犯の軍事法廷はマニラやシンガポールなど世界49か所で開かれたそうで、日本国内では唯一横浜法廷のみ。BC級戦犯は後に減刑になった者も含め、約1000人が死刑判決を受けたとありました。何をもってABCとするのか、複雑な気持ちになります。

 3月10日は東京大空襲で、今年は中村とおるさん主演で残された空襲の写真を扱ったドラマが放映されたり、空襲の後、仮墓所だった場所が今どのようになっているかを撮っている写真家の写真展があったり、お年寄りが空襲の悲惨さを絵にして残そうとしたり、様々な東京大空襲にまつわる話題がありました。名古屋空襲は、3月12日、昨日だったのです。戦争中も戦後も多くの人が地獄を見てきたことを思い知ります。
 小学1年生の時、学校の図書館で広島原爆の絵を初めて見たことは私の心に強い衝撃を与えました。それはとても手に取りやすい棚に置いてあり、何気なく開いたものだったのです。炎と真っ赤な膨れ上がった人々の絵。その後も、ガラスの兎、太陽の子てだのふあ、ほたるの墓など、様々な戦争を題材としたものを見る機会がありました。数年前には、広島の原爆資料記念館、徴兵された美大生が残した絵が飾られている無言館を訪ね、戦争の悲惨さを肌で感じました。今の日本の平和がこれらの人々の犠牲と思いによって繋がっていることを忘れてはならないと思う。その為にも戦争の悲惨さを知らせる絵やドラマなどは強い衝撃はあろうが現実にあったこととして子供たちにも見せた方がよいと思っている。戦争は人間を狂わせる。全ての巻き込まれた人を不幸にする。私は私の大事な人を絶対に戦場には行かせない、戦争に加担しないと戦争の話に触れるたび、思う。

 “明日への遺言”、宜しければ劇場に足を運んでみてください。映画はハッピーエンドが好きな私ですが、この映画は人として考えさせられることが多かったので。内容としては重たいので、見てもいいと思われる時にどうぞ。

明日への遺言HP
http://ashitahenoyuigon.jp/index2.html
(写真は岡田資中将の写真。産経新聞さんから拝借しました)
無言館
http://www.kk.iij4u.or.jp/~sjmatsu/mugonkan/mugonkan.html
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 五徳の蓋置 | トップ | 茶花 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
明日への遺言 (青い流れ星)
2008-03-13 20:12:52
明日への遺言 見ごたえのある映画のようですね。
機会があれば 見たいとおもいます。
いまの日本で最も必要なことは 一部で封建的だと
批判されていますが 日本の良き伝統・考えかたである
武士道(侍)の精神の見直しではないかと思っています。
政治家・官僚の幹部におられる方は特に必要ですよね(笑)
返信する
明日への遺言 (m-tamago)
2008-03-16 11:41:41
青い流れ星さん、こんにちは。
見ごたえのある映画でした。しかも、いわゆる戦争映画と違って、戦後の法廷での冷静なやりとりの中に人間味ややりきれなさがあふれています。法では裁ききれない不条理なものが戦争なんでしょう。
おっしゃる通り、政治家や官僚幹部の皆さんはご覧になった方がいいかもしれません。でも、この映画の深い思いやりや心の機微に気づく方が何人いらっしゃることやら?(笑)


返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

m-tamagoの物想い」カテゴリの最新記事