カエサルの世界

今年(2019年)1月中旬から「休載中」ということになっているのだけど、まあ、ときどき更新しています。

■篆書の心(2)始皇帝のタマポコ

2018年01月10日 | ☆おえかき    

 冒頭の画像にこれを使うのはちょっと勇気が必要だったんですけど、篆書(てんしょ)での「心」という文字です。
 けっして「××タマと××ポコ」ではないのですが、そう見えてしまうので、この字形のことを「タマポコ」と呼ぶことにします。


 隷書(れいしょ)で「心」を書いてみました。トレースしたのではなく、見よう見まねで書いてみたんですけど、我ながら上手く書けたと思っています。

 漢字というものは、甲骨文字・金文として始まったものが、篆書としてまとめられ、隷書を経て、草書・行書・楷書になってきたということです。
 篆書ではタマポコみたいに見えた「心」が、隷書になった時点で、現在でも使われている「心」とほぼ同じ字形になっていたということになります。


 昨日の記事を書いたとき、「心」という文字は、篆書から隷書に移行する段階で激変した・・・と思っていたんですけど、このタマポコを何度も見ているうちに、そうでもないんじゃないかと思えてきました。

 篆書での「心」を書くとき、いろいろな字形を参考にしたわけですけど、4画で書くものだろうと思いました。
 そのことをわかりやすくするために、一画ごとに色を変えて書いてみました。


 1画目を赤2画目を橙3画目を黄4画目を緑で書いてみました。

 カエサルの目からすると、1画目の逆S字形4画目のS字形は異様にしか思えません。何よりも、書きにくいと思いました。
 この1画目4画目を簡略化してみると、次のようになります。


 これならばタマポコには見えないと思いますし、その気になって見てみれば、隷書以降の「心」に見えなくもありません。
 さらに、それぞれの画の位置を調節してみると、次のようになります。


 こうなると、隷書以降の「心」と同じ形と言ってもいいのではないでしょうか。
 篆書の「心」から隷書の「心」になるまで百年くらいはかかったんだと思いますが、こうした変化があったのではないかと思いました。わりと自然な変化だったんじゃないかという気がします。


 漢字は、紀元前 1300年頃、殷の時代に成立したらしいです。
 この時代、4000くらいの文字があったんだそうですけど、その中に「心」に相当する文字はなかったんだそうです。この話も凄いことだと思いました。「心」がなかったということは、それを部首とする文字、思想志忘忠念急怒恐怠忍息恵恋愛応恥添怪性怖忙快怯などなどもなかったということですからね。
 「心」という文字が現れたのは、西周(紀元前 1024~771年)の時代からなんだそうです。「心」を部首とする文字も現れてくることになりますけど、かなり時間がかかったみたいです。
 孔子が生きていた時代(紀元前552~479年)には、「志」や「惑」などという文字はなかったそうです。孔子は、十五にして学を■し、四十にして■わなかったということになります。

 それにしても、誰がこんな字形の文字をつくったんでしょう。心臓の形の象形文字・・・というような話はともかくとして、篆書体としてのこの字形は、古今東西を問わず、タマポコに見えると思うんですけどね。
 「心」をそういう形の文字としたのは、紂王? 妲己? などと考えてみると楽しいわけですが、カエサルとしては「始皇帝犯人説」を提出したいと思います。
 篆書は、戦国時代(紀元前443~221年)に発達・整理され、始皇帝が統一書体として制定したものです。戦国時代までの「心」はこんな字形じゃなかったのに、始皇帝がこの字形にしてしまったという可能性があります。
 そうじゃないとしても、始皇帝は「心」がこの字形であることを容認したということになります。そのことによって、現在でも、篆書体で「心」を書くとき、この字形を用いなければならなくなっているわけです。


 秦(紀元前221~206年)は、中央集権国家にして法治国家ですから、その公文書は膨大なものになります。それを扱わねばならない下級役人たちは走り書きをするようになり、書体が単純化・簡略化されていくことになったのだそうです。今回、カエサルの考えたような変化があったんだろうと思います。隷書への移行が始まったということになります。
 前漢(紀元前206~8年)では、隷書への移行が加速されたようです。政権が変わったということで「始皇帝の決めた字体なんか使えるか」などという気分もあったと思いますし、「心」については「こんなタマポコみたいな字を使いたくない」と思った人も多かったんじゃないかという気がします。


 ・・・と、まあ、シロートが調子に乗って中国古代史などに首を突っ込んでしまいました。この続きは、漢字好きの小学生に夏休みの自由研究とかでやってもらうといいんじゃないかと思います(笑)

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