『ありがち日記』

三津田信三『生霊の如き重るもの』

刀城言耶シリーズの第二短編集です。
学生時代の言耶が主人公で、まだ小説もどきっぽいものをノートに書き留めている頃のお話。そんなに若い頃から事件に遭遇しやすかったのね。


ストーリー
"天魔"は跳び"屍蝋"は滴る。怪異が其処に……。刀城言耶、揺籃の時代。奇っ怪な分身、"生霊"の目撃談が語り継がれる奥多摩の旧家、谷生家。それが現れるとき、当人に死の影が指すと恐れられる謎の現象である。同家を訪れた刀城言耶は、そこで不可解な復員兵の死に遭遇するのだが……。表題作他、全五編を収録した"学生時代の事件簿"と言うべき"刀城言耶"シリーズ第二短編集。 

刀城言耶シリーズの長編に比べれば少しだけ物足りなさもある…けれど、どの話も人間の仕業なのか怪異現象なのか、はっきりとどちらかであると言い切れない不思議な余韻が残されるところは同じ。この世界観が好きなので分厚い本を目の前にしていったん躊躇するも手に取ってしまうんだと思う💦
持ち歩きにも向かないし、手が疲れるんだよね…

長編でもそうだけど、言耶が謎解きを語りはじめ、すぐにその推理の矛盾点に気付いて内容をひっくり返し、また別の推理を語り始める。それを聴いている周りが置いてけぼりになる、という感じもまた面白い。言耶本人にしてみれば、自分の考えを整理し次第に真相に近づいていく過程なのだけれども。

どの話もぞくっとして面白かったけど、私は表題作となっている「生霊の如き重るもの」が一番印象に残ったかなぁ。戦後間もない時代背景や、山奥の慣習だらけの村で起こる事件というところがね。生きている人の生霊が見えるって、誰かが成りすましているんだろうって普通だったら考えるんだけど、舞台が舞台なのでつい信じてしまいそうになる。いや…本当にあるのかも…。

足跡消失の謎、人間消失の謎、推理モノとしてはベタだけど、怪異と現実との狭間で繰り広げられる推理を楽しめるのがこのシリーズの魅力なんだと改めて気付いたのでした。またしばらくは他の本を楽しんで、今度は長編にチャレンジしよう。

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