2月12日(日曜日)、フロリダ州St. Petersburgで行なわれたロックンロール St. Peteハーフマラソンに参加。
今回の2泊3日の旅行は、もともと2011年1月にリニューアル・オープンしたばかりの「ダリの美術館」を見学するために企画していたものだったが、たまたま2012年からロックンロールシリーズのハーフマラソンが開催されることになったので、日程を合わせてついでに参加してみようということになった。フルではなくハーフというのも、息抜きのプチ・バケーションとしてはちょうどいい、と思ったのである。
年間の晴天日が360日に達することから「サンシャイン・シティ」とも呼ばれるSt. Petersburg(通称St. Pete)。
気温も高いだろうし、お気軽なリゾート・ランとして楽むつもりでいたのだが・・・
予想をくつがえすドラマが待っていた。
まず、現地に来てみると、思いのほか涼しい。
St. Peteに到着してEXPOに参加した金曜日こそ20℃を越えていたが、土曜日は強風の影響もあって10℃前後に下がり、レース当日は風こそ弱まったものの体感温度は0℃近くまで冷え込んだ。はからずもリゾート・ランより本気レースにふさわしいコンディションに恵まれてしまったのである。
そしてもうひとつ、旅行中に衝撃の出来事があった。
レースの前日Mieさんと一緒に夜のカーボローディングを終えて、レストランからホテルの自室に戻り、翌日に備えて早目に寝ようと思いながら何気なくCNNニュースのチャンネルをつけてみたら・・・
画面に現われたのは、なんとホイットニー・ヒューストンの訃報!
びっくりして目が醒めてしまい、延々と流れる緊急ニュースに釘付けになった。
これではまずいと思い、とにかく寝ようとする。しかしなぜかテレビをつけっぱなしにしたままベッドに入ってしまったので、寝ているのか起きているのかわからないような状態で朝4時になってしまった。ここまで来たら、もう起きているしかない。この日はハーフマラソンに参加するランナーのために朝5時から朝食が出るというのでロビー横のラウンジに下りてみたら、そこでもホイットニーの映像が延々と流れている・・・というわけで、一晩中聴かされた「I Will Always Love You」の歌声が脳裏にこびりついたままの状態でMieさんと待ち合わせ、レース会場に向かう羽目になってしまった。
とにかく、この朝は寒かった。ジャケットを羽織っていても寒いので、小走りでウォームアップしながらスタート会場に向かった。レースも本気で走らないと寒いだろうと思ったので、この時点で覚悟はできていたのだが、それでも昨年9月にロックンロール・フィリーで記録した「驚異の自己ベスト」を上回る自信はまったくなかったので、とりあえず確実にセカンドベストを狙える線で行こうと思い、設定ペースはマイル7分40秒台。だいたい1時間40分前後のフィニッシュを想定してレースを組み立てることにした。
Mile 01: 7分47秒
Mile 02: 7分47秒(15分34秒)
Mile 03: 7分46秒(23分20秒)
Mile 04: 7分42秒(31分02秒)
Mile 05: 7分36秒(38分38秒)
まずは序盤戦。MLBタンパベイ・レイズの本拠地トロピカーナ・フィールドの北側からスタートし、ぐるっと取り囲むような感じで再び北側のセントラル・アヴェニューに出て海岸のほうに向かっていく。コラル1のスタートだったので混雑もなくスムーズ。沿道には例によって1マイルごとにロックバンドの演奏があり、小規模ながらチアガールの応援も楽しめる。最初の4マイルまでは想定通りの快適なペースで7分40秒台。やがて南に向かう道に折れて5マイルを過ぎるころには、いい感じで体が温まってきたようで、自然に7分30秒台のペースに上がってきた。この時点で、このまま行けばセカンドベストに相当する1時間40分前後は間違いなかろうという感触になった。
Mile 06: 7分23秒(46分01秒)
Mile 07: 7分35秒(53分36秒)
Mile 08: 7分37秒(1時間01分13秒)
Mile 09: 7分30秒(1時間08分43秒)
Mile 10: 7分34秒(1時間16分17秒)
6マイル目ではさらにペースが上がり7分23秒。なんとなく昨年9月のロックンロール・フィリーに似たような調子になってきた。ひょっとしたら意外に行けるんじゃないか・・・と思っているうちに再び北向きのコースとなり、7マイルを通過。いよいよヤシの木の連なる風光明媚なタンパベイ沿岸が見えてきた。
そして、ここで決定的なターニング・ポイントを迎える。
ちょうど7マイルを過ぎたところで演奏していたバンドが、どこかで聞き覚えのあるイントロを奏で始めた。そう、フレディ・マーキュリー(QUEEN)の「I Was Born To Love You」だ!
この曲を聴くと不思議に燃えてくるのである。体の奥底に眠っている闘志に火がつくような感じで、普段の自分では考えられないような底知れぬエネルギーが湧き出てくるのだ。これこそ良い意味でのロックンロール効果というものだろうけど、あまりにもタイムリーだった。
高揚した気分のまま8マイルの手前でダリの美術館を通過。前日は3時間かけて「ロック世代の絵画」ともいうべき傑作の数々を鑑賞したのだが、その強烈な印象はレース時にも消えることがなかった。考えてみれば、マラソンもまさにイメージとリアリティが融合した「非日常」の世界。自分の内部に眠っている潜在的な力を引き出すためには、あえて過酷な環境に身を置いてみることも必要だ・・・などと妄想しているうちに、St. Pete観光の中心地「The Pier」に向かってまっすぐに伸びる桟橋に出る。「The Pier」の建物をぐるっと1周したところが9マイル。ここからしばらくは桟橋を逆に戻っていく折り返しコースとなる。
この折り返しでは一緒にスタートしたMieさんの姿を探しながら走る。しかし見つけることができないまま右に折れ、ベイショア・ドライヴを北に向かうコースへ。ヤシの木が連なる南国情緒満点の道路を走りながら10マイルの表示を越えた。残り3マイル。まだまだ余力はある。この時点で、起死回生の一発を狙ってみようか・・・という気持ちになってきた。
Mile 11: 7分34秒(1時間23分51秒)
Mile 12: 7分22秒(1時間31分13秒)
Mile 13: 7分04秒(1時間38分17秒)
最後の追い込みをかける終盤戦。11マイル目は今までのペースを維持しながらラスト・スパートに向けてのエネルギーを充電していくことを意識する。12マイルに向かう途中でこのレース唯一の橋越え。ここは一気に駆け上りながら勢いをつけるという戦法に出る。最終マイルはロケットエンジン全開の大爆発。先を行くランナーを次々にぶっちぎりながら猛然とスパートする。その勢いがあまりにもすさまじかったようで、追い抜かれた女性も「すごい!このまま頑張って!」(もちろん英語で)と歓声を上げるほどだった。
13マイル目のラップは短距離レースでもなかなか出せない7分04秒。どうしてそんな力が出てくるのか、わけがわからない。最後はノースショア・ドライヴの直線コースを全力疾走し、沿道の大歓声を浴びながらゴールゲイトに飛び込んだ。
Finish Time 1時間38分56秒(7:33/mile)。
自己歴代1位!
な・なんと! 最後の1マイルで難攻不落に思えたフィリーのタイム(1時間39分20秒)を逆転! 54歳のバースデー・イヴを飾る劇的な自己ベスト更新となった。
レース後は無料のビールがふるまわれるビア・ガーデンでMieさんと乾杯。
そしてロックンロールシリーズ名物のヘッドライナー・コンサートへ。
大物ラッパー、フロー・ライダー(Flo Rida) 登場でいつにも増して盛り上がった。
それにしても会心のレースだった。 昨年9月にハーフマラソンで初めて100分切りを達成した時、「おそらくこのコース(フィラデルフィア)でなければ、ここまでの神風は吹かないだろう」と書いたが、それからわずか5ヶ月後に、別のコースでそれ以上の神風を体験してしまった。
2度の神風が実現するとは、まさに「元寇」の再現である。
このレースで殊勲賞をあげるとすれば、前日多大なイマジネーションを与えてくれた巨匠ダリだろうか。あるいは夜中じゅう天使の歌声をプレゼントしてくれたホイットニーか、7マイル地点で眠れる闘志に火をつけてくれたフレディ・マーキュリーか。
いずれにしても天才の凄さを思い知らされた旅となった。
★MLBタンパベイ・レイズの本拠地トロピカーナ・フィールド内で行なわれたEXPO。
★トロピカーナ・フィールドの前で。この日は半袖でも大丈夫な気候だったが・・・
★13マイル地点通過。ここからゴールまでは一直線のコース。
★ヤシの並木道の彼方にゴールゲイトが見える。
★ゴール後の1枚。思わぬ自己ベスト達成で満足以上。
★ヘッドライナー・コンサートに登場した大物ラッパー、フロー・ライダー(Flo Rida)。
★最後は上半身裸になり、観客の群れに飛び込んでの大熱演。
★南国の色彩に彩られたゼッケンと完走メダル。
★オフィシャル・フォト(1)。9マイル目の桟橋を「The Pier」に向かって走る。
★オフィシャルフォト(2)。10マイルに向かうBay Shore Driveの石畳を走る。
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