投稿者:コマッタヨ 投稿日:2003/12/08(Mon) 16:47
著者:マイケル・ドロズニン
訳者:木原武一
発行:新潮社
分類:トンデモ本
この本には、99.99%の日本人にとって未知の言語であるヘブライ語が敷き詰められた、「暗号表」が頻出します。一般の読者は読み飛ばしている所でしょうが、あえて「暗号」を味わうためにも(意地悪)、ここで、ヘブライ語の基礎的な特徴を簡単に紹介しておきます。
まずヘブライ語には母音にあたる字(A/E/I/O/U)がありません。たとえばエルサレムは「YRWSLM」と表記します。子供用の絵本などには各文字に母音記号が付されていますが、普通に教育を受けたユダヤ人は記号がなくてもイェルシャライムと読めます。ちょうど日本人が、漢字にルビを振らなくても熟語を読めるようなものです。
したがって、「広島」は「HRSM」という綴りになりますが、この本は母音記号というものの存在を完全に無視していますので、読もうと思えばハルサメとも読めます。だから、暗号文に「HRSM」と現れたからって、それが広島の事を表しているとは限らない。実は暗号の作者は1945年に原爆がどこかの春雨工場を破壊した悲劇を予言していたんじゃないか、という解釈もできます(←それじゃ『ノストラダまス』だよ!)。
そしてヘブライ語アルファベット22文字には各々1から400までの「数価」があり、数字を使わずとも文字で数を表す事ができます(オカルトでおなじみの数秘術などにもこの数価が利用されている)。暗号文中の「年号」(と著者が言っている部分)も数字や言葉ではなくこの数価で表されています(例:HTSNW=5,400+300+50+6→5756)。要するに聖書のヘブライ文字は全部数字に置き換えられるわけで(笑)、組み合わせ次第でほぼ無限の年号を導き出す事が可能です……っておいこら!
いちおう年号はユダヤ暦でカウントして「それらしさ」を演出していますが、これがまたズサンで。たとえば《日本》《原爆によるホロコースト(暗号表では「ホロコースト」じゃなくてちゃんとヘブライ語の「虐殺」にあたる「ショアー」SW'H になっている所はまぁほめてあげよう)》と一緒に《5705年(西暦1945年)》という年代が現れているという【暗号表45】を見ると、「705」としか書いてない。1997年を「'97」と表記するように千の位は省略してオッケーと思っているんでしょうが、数千年単位のスパンで書かれた予言が年号の千の位を省略しちゃ何の役にも立たないと思うんですけどねぇ。
ついでにツッコむと、「広島」は「原爆が投下された年と同じ 1945字の文字間隔で記されている」(P.123)んだそうですが、何故ここだけいきなり西暦になるんだコラ。
何にせよ本書に紹介された予言解読法の最も困った所は、最初に特定のキーワードを得て検索しない限り、聖書の中にどんな予言が隠されているか知る由もないという点です。つまり、ラビン暗殺や広島の原爆など、すでに起こった事件のキーワードならいくらでも検索できますが、未来に起こるであろう予想外の事件事故に関する予言は探しようがないのです。つ、使えねぇー……(涙)。可能なのはせいぜい、たとえば《日本》と《滅亡》が一緒に出てくる箇所を検索して、そこから他の関連単語を探し「予言」と言い張るぐらい。
……何かどこかで聞いたような話ですね。そう、凡百の「ノストラダムスの大予言」解読本と同じ構造です。結局この手の本は似たようなパターンになるようです。予言が外れた時も、やっぱり同様にシラを切るんでしょうな。
それにしてもこんな素敵な本が徳●や光●社やた●出版ではなく、教養書籍に関しては定評のある(はずの)新潮社から出版されているってんですから、いい時代になったもんです。こと宗教方面においてはミソとクソの区別もつかない日本人の教養のウスさを象徴してて嬉しくなります。
余談ながら著者のドロズニンは、リップス&ウィツタムの両人から「誰も『聖書の暗号が最終戦争を黙示している』なんて言っとらん」と非難され(1997年6月エルサレムでの記者会見より)、ヘブライ語を解するイスラエルの学識者たちからは本書の計算の妥当性を大いに疑問視され「ゴミ」「たわごと」など散々言われてるそうです(Jerusalem Report 誌 1997.9.4号)。まぁ、こんだけ売れてりゃ何言われたって気になんないだろーけど。ああうらやましい。
著者:マイケル・ドロズニン
訳者:木原武一
発行:新潮社
分類:トンデモ本
この本には、99.99%の日本人にとって未知の言語であるヘブライ語が敷き詰められた、「暗号表」が頻出します。一般の読者は読み飛ばしている所でしょうが、あえて「暗号」を味わうためにも(意地悪)、ここで、ヘブライ語の基礎的な特徴を簡単に紹介しておきます。
まずヘブライ語には母音にあたる字(A/E/I/O/U)がありません。たとえばエルサレムは「YRWSLM」と表記します。子供用の絵本などには各文字に母音記号が付されていますが、普通に教育を受けたユダヤ人は記号がなくてもイェルシャライムと読めます。ちょうど日本人が、漢字にルビを振らなくても熟語を読めるようなものです。
したがって、「広島」は「HRSM」という綴りになりますが、この本は母音記号というものの存在を完全に無視していますので、読もうと思えばハルサメとも読めます。だから、暗号文に「HRSM」と現れたからって、それが広島の事を表しているとは限らない。実は暗号の作者は1945年に原爆がどこかの春雨工場を破壊した悲劇を予言していたんじゃないか、という解釈もできます(←それじゃ『ノストラダまス』だよ!)。
そしてヘブライ語アルファベット22文字には各々1から400までの「数価」があり、数字を使わずとも文字で数を表す事ができます(オカルトでおなじみの数秘術などにもこの数価が利用されている)。暗号文中の「年号」(と著者が言っている部分)も数字や言葉ではなくこの数価で表されています(例:HTSNW=5,400+300+50+6→5756)。要するに聖書のヘブライ文字は全部数字に置き換えられるわけで(笑)、組み合わせ次第でほぼ無限の年号を導き出す事が可能です……っておいこら!
いちおう年号はユダヤ暦でカウントして「それらしさ」を演出していますが、これがまたズサンで。たとえば《日本》《原爆によるホロコースト(暗号表では「ホロコースト」じゃなくてちゃんとヘブライ語の「虐殺」にあたる「ショアー」SW'H になっている所はまぁほめてあげよう)》と一緒に《5705年(西暦1945年)》という年代が現れているという【暗号表45】を見ると、「705」としか書いてない。1997年を「'97」と表記するように千の位は省略してオッケーと思っているんでしょうが、数千年単位のスパンで書かれた予言が年号の千の位を省略しちゃ何の役にも立たないと思うんですけどねぇ。
ついでにツッコむと、「広島」は「原爆が投下された年と同じ 1945字の文字間隔で記されている」(P.123)んだそうですが、何故ここだけいきなり西暦になるんだコラ。
何にせよ本書に紹介された予言解読法の最も困った所は、最初に特定のキーワードを得て検索しない限り、聖書の中にどんな予言が隠されているか知る由もないという点です。つまり、ラビン暗殺や広島の原爆など、すでに起こった事件のキーワードならいくらでも検索できますが、未来に起こるであろう予想外の事件事故に関する予言は探しようがないのです。つ、使えねぇー……(涙)。可能なのはせいぜい、たとえば《日本》と《滅亡》が一緒に出てくる箇所を検索して、そこから他の関連単語を探し「予言」と言い張るぐらい。
……何かどこかで聞いたような話ですね。そう、凡百の「ノストラダムスの大予言」解読本と同じ構造です。結局この手の本は似たようなパターンになるようです。予言が外れた時も、やっぱり同様にシラを切るんでしょうな。
それにしてもこんな素敵な本が徳●や光●社やた●出版ではなく、教養書籍に関しては定評のある(はずの)新潮社から出版されているってんですから、いい時代になったもんです。こと宗教方面においてはミソとクソの区別もつかない日本人の教養のウスさを象徴してて嬉しくなります。
余談ながら著者のドロズニンは、リップス&ウィツタムの両人から「誰も『聖書の暗号が最終戦争を黙示している』なんて言っとらん」と非難され(1997年6月エルサレムでの記者会見より)、ヘブライ語を解するイスラエルの学識者たちからは本書の計算の妥当性を大いに疑問視され「ゴミ」「たわごと」など散々言われてるそうです(Jerusalem Report 誌 1997.9.4号)。まぁ、こんだけ売れてりゃ何言われたって気になんないだろーけど。ああうらやましい。
本格的な投稿をありがとうございます。勉強になりました。
ハセクニオさんとの話にも関係しますが、「困った」本がキリスト教書店の書棚を占領している現状に対して、健全な本がもっと出てほしいと思いますし、コマッタヨさんのような的確な書評が盛んになるといいな、と思います。
僕にはそんなもの書けませんが、この掲示板がそういう場になれたら最高です。
これからもよろしくお願いします。