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ジョージィのおとなりさんたち

【個人史】「人生って、とっても楽しいもの」
そんな風に感じている今日この頃。Blogでメモっておきたい。

始めてのパトカー体験

2006年08月24日 12時05分23秒 | Weblog
年末のことだった、
8月4日のBlog で記述したように、横浜での生活第2弾の滑り出しは上々だった。
その春からの業務内容も変えた転職であったが、仕事では、職場や顧客の評判も良い。
中途採用の新人教育は私の担当となり、実務も自分のやり方で仕事も進めることが出来ていた。

その日も仕事を終え、東京・浜松町駅から京浜東北線に乗り東神奈川で降りた。
仕事帰りは時間に余裕があるので品川と横浜で乗り換える必要のある東海道線ではなく、浜松町駅から座って来られる京浜東北線を利用するのである。
いつもの外食コースである 六角橋 を目指してブラブラ歩いていた。

そして途中にある東急・東横線東白楽駅のところで事件は起こった。
今は無くなってしまったようだが当時は刃物屋さんがあり、その店先を通り過ぎる時だった。対向してきた初老のおやじさんが肩をぶつけてきた。

突然おやじさんはオーバーコートの上から私の胸ぐらを掴み『何しやがる!』と言いがかりをつけてきた。

私は両手をコートのポケットに突っ込んだまま、
”やれやれ、また面倒な事に巻き込まれたか..”と思いながら恐がりもせず応対していると、今度はいきなり商品の並ぶ店先の台の上に押し倒されてしまった。
近くにいた女性の二人組が悲鳴を上げたので店主も飛び出してきた。

私は立ち上がろうと台に手をつこうとしたが、むき出しの鎌(かま)や出刃包丁、ハサミのたぐいがびっしり並んでいて危ないったらありゃしない。
幸いにも怪我もしなければ衣類も一切破れはしなかった。
手をポケットにつっこんでいなければ、倒された拍子に台に手をついて大けがをしたことだろう。

私は咄嗟に思った。
安月給の身で眼鏡を壊されてはかなわない。壊される前に安全なところにしまって置こうと、ようやく立ち上がってからゆっくりと眼鏡を外した。
するとそのおやじさんは、私が本気でやる気になったと勘違いしたらしく慌てて出刃包丁と鎌(カマ)を取り上げて私に向けた。

その初老のおやじさんにとって不幸な事は、私にはトラブルは慣れっこなので相手から何をされても全然怖くないのだ。
しかしこのままでは、見ている女性達が怪我をするかも知れない。
女性たちが逃げないのには理由がある。
直前を歩いていた女性達がおやじさんが歩いてくるのを見て脇によけようとしたのだがおやじさんはなおも女性たちに近づいて行った。
その時私が肩を割り込ませておやじさんを止めたのだ。

店主は大慌てで店先の刃物を片づけ始めた。
私はおやじさんを店の横の人のいないところへと誘い出した。
それでもまだおやじさんは出刃と鎌(カマ)を振りかざして、私を脅してくる。

私は思った。
「ん?もしかすると刺されたときのヒトの心の動きを経験できるかも知れないなぁ..痛いんだろうなぁ..」と心を決めた。
正に、キチガイに刃物である。
しかしこの場合は「キチガイに刃物を向けても空しい」という意味で、本来とは別な意味だ。

おやじさんは、いくら脅してもコートのポケットに両手を突っ込んだまま全く動じないし、刃物を向けられているのに大声で怒鳴りつけてくるという全く予測不能な事態に困り果てている。
とうとう手に持っていた刃物を自分の足下に投げ捨てて、
『オレはヤクザでこのあたりでは顔だから、何かあればオレに云ってくれれば良いから』と照れ笑いしながら去って行った。
するとその方向から警官二人が歩いて来るのが見えた。

刃物屋の店主は警官に向かって私を指さしながら「この人と今そっちに逃げて行ったソイツです」と叫んでいる。
私は慌てて警官の元へ行き『いや、もう終わりましたから..(私は)大丈夫ですから..』と説明すると、
その警官は「ヤクザが二人、店先で喧嘩してると通報があったのだ。もう終わりましたじゃない!」とすぐ後からやってきたパトカーに私を押し込んだ。

車道側のドアに私を押しつけるように警官が横に座ったまま暫く待つと、もう一人の警官もあのおやじさんを連れて帰ってきた。
私とおやじさんを分つように警官が真ん中に座ったかたちでパトカーは警察署へと走り始めた。

たぶん後部座席は内側からドアは開けられないのであろう。
狭い後部座席の両窓側に被疑者らを座らせ、警官が真ん中に座れば身動きができない。
外に目をやりながら『私が被害者なんだけどなぁ~』『歩いて来たら助けにならないじゃん』と思いながら始めてのパトカー乗車を経験した。

感想:
 警察官監視下の車内は狭いしキツイし惨めな気分にさせられた。後部座席は乗っても大して面白くない。

連行された警察署では長い時間調べあげられたが、
あのおやじさんは観念したらしくありのままを自供したのでようやく私が被害者であると分ってくれた。

警官が、おやじさんは一泊させるが私は帰っても良いと云ったのでもう一度おやじさんと話がしたいと頼んだ。

嫌われ者ジョージィのかまし技、最後のシメ(嫌がらせ)を行うつもりだった。
私はしょぼんとしているおやじさんに手を差し出し握手を求めた。
相手の手を堅く握り、自分に引き寄せて、
「今後私以外のヒトに何かやっているところを見かけたらタダでは済まさないよ!」
と脅すつもりだった。

私は嫌気たっぷりにおやじさんの手をぎゅっと握った。..が、私はハッとしておやじさんの手を見つめた。
荒れてカサカサになっているしヒビ割れもある。

私は何も言えなくなって、そのまま手を放し帰ってきた。
見ていた警官には「ヤクザの身内同士の別れ方」に見えたかも知れない。
翌日から私の近所で聞き取り調査が入ったようである。

警察署からの帰り道、寒い夜道を歩きながら気がついた。
「あぁ~っ!また失敗しちゃった。おやじさんに私の手袋あげてくればよかった」
今から戻るには遠すぎる。相変わらずの自分の気の回りの悪さを情けなく思いながらそのまま歩いて帰ってきた。

※ 白黒模様のパトカーにはこのときが最初で最後。次回からは覆面パトカーの助手席にしか座らせてもらえなかった。