ポコアポコヤ

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「ポトスライムの舟」 私はこの小説好きだな

2009-04-11 | 小説・漫画他

今年の芥川賞を受賞した作品ということで読んでみました。
世間で評判が良くないみたいですが、私は面白く読んでしまいました。ちょっと自分とかぶる部分が多かったから共感しちゃったせいかな?4つ☆

この本を読む前に、津村さんの「ミュージック・ブレス・ユー」という既刊本を先に手に取ったのですが、どうも入っていけないというか、読みにくいというか・・・10頁くらいで止まってしまったまんまで・・・そこに「ポトスライムの舟」が届きました~のお知らせが図書館から来て。もしかして、ダメかもなあ・・・と思ったのに、「ポトスライム~」の方は最初からぐいぐい入って行くことが出来ました。

私も20代のころ派遣社員として働いていたこともあるし、850円という時給(私んときは550円ですよぉ・・)を時間計算して・・・って部分とか、世界一周のポスターに目が留まり・・って部分も解るなあ・・と思った(行ったことはないけど、未だにそういうポスターに目が行ってしまうし、かつてはバイトで稼いだお金は、貧乏海外旅行に使っていた時期もあったし・・)その目標の為に倹約・・ってのもしてたし・・。昼も夜もバイトしてた・・ってのも経験あるし・・。

そして20代の後半って同級生の仲間が、専業主婦になって子育てで手一杯で話題も興味も子供がほとんどをしめる様になってしまった子、独身の子、離婚しそうな子・・・それぞれ違う環境になってしまって・・って部分も、解るなあ・・・という部分が一杯ありました。

この小説を書いた津村さんは独身で子供もいないから、その立場での視点で描かれる主婦の人の愚痴のループとか・・色々・・が、グサっとリアルだったわ・・。私は両方の立場を経験したことがあるけど(自分が気ままな立場で専業主婦の人の話を聞く・・・ってのと、自分が専業主婦になった立場と)両方それぞれ辛かったり、大変だったり、良い部分があったり・・するのよね。

同じく芥川賞の「乳と卵 」と、ほんの少し似た部分があるな~と思いました。関西弁なこと、「乳と卵」は、姉とその娘が主人公宅に滞在するし、こちらは友人とその娘が滞在する部分が。

私がこの小説で好きだったのは、今の化粧品のラインで一緒に働いてる仲間の岡田さんが感じの良い人だったり、家を飛び出して来た、りつ子とその娘恵奈を自宅に同居させてあげる優しいナガセとその母にしばし感動・・(なかなか友達とはいえ、いつまで同居するか先が見えない母子を簡単に、いていいよ~とは言えないと思う)
そして、そんなナガセ親子の親切に甘えることなく、後に、律儀に滞在費やらなにやらを返す(どんな細かいお金でも)りつ子が、良い人だぁ~ そして、娘の為にはコートを買ってやったりするものの、自分はナガセやその母のお古の服や化粧品でなんとかしのぎ、必死にがんばるりつ子に涙・・・。
そして、けなげな恵奈・・・もともと手がかからない子供だったのか?それとも大人の迷惑にならないように・・と分をわきまえているのか・・・全くワガママも言わず素の紅茶を黙って飲む6才児・・・。今一番の夢で、「小学校に行けますように」と言った恵奈、、そしてナガセは自分の事は思い浮かばないからって、友達やその子供の夢がかないますように・・・とお願いするのよね・・・。
あ~~やっぱりこの話、私は好きだわ。

世間じゃ現代の蟹工船とか言われているそうですが、そこまで悲惨では無いです。慎ましく生きる人たちを描いていて、その人たちに幸あれ!と願いたくなるお話でした。タイトルにもある「ポトス」の小説の中での使い方も良かったし、「夏の積乱雲」のエピソードも、なるほど~と思ったし。あと、ヤドクガエルが出て来たのにはびっくり。

そして、この本には、もう一遍「十二月の窓辺」という職場で辛い目に遭うお話があって、そちらは好きなお話ではなかったものの、大学卒の女子が、高卒ばかりの女子社員がほとんど職場に行かされ。。。上司はとんでもないヤツで暴言を吐かれ・・・という状況に呆然・・・。せっかくきっと良い大学に進んだだろうに、卒業して就職した先がこれじゃあ・・・可愛そう過ぎる・・・と思いました。まるで「ポトスライムの舟」のナガセが、最初の職場で色々あって鬱になってしまった時のお話?と思わせられる内容でした。


(あらすじ・内容)非正規雇用者として3つの仕事を持つ29歳独身女性ナガセ。 そのうちの1つである、契約社員として働く工場での年収163万円と同額で世界一周旅行ができると知り、それを目標に貯金を始める・・・

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19 コメント

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Unknown (藍色)
2009-04-13 02:27:22
こんばんは。
記事を読んでとってもビックリしました。
時給の違いこそありますが、かなりナガセと重なってて、見てきたみたいですよね。
latifaさんのために書かれた一冊って言えるかもです。
そうそう「十二月の窓辺」は、前日談みたいでしたね。
考えてみると現代の蟹工船は、こっちのことのような気がします。
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こんにちは (ふる)
2009-04-13 12:04:37
おっしゃる通り、現代の蟹工船とは言いすぎですよね。
自分の経験とか考え方とか、主人公(あるいはストーリー)と共感できる部分が多いか少ないかで小説は堪能度が全然違うということをあらためて、latifaさんの記事を読んで思いました。
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Unknown (はまかぜ)
2009-04-13 12:25:45
latifaさんはこの作品が気に入ったのですね☆
酷評している人もいるとのことですが、私的には芥川賞に相応しいように思いました。
地味な中によく見る日常の生活が描き出されていたと思います。
この小説にあるように、なかなか現実は厳しいですよね。。。
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藍色さん☆ (latifa)
2009-04-13 16:52:19
くふっ・・時給の違いこそありますが~って部分が妙に可笑しかった~
現在と昔とでは時給が違うとはいえ、私がバイトしてたファーストフード店は、1980年当時、時給が300円だったんですよ~~信じられますか?!
あっと・・・それ以前にバイトした、郵便局の、お正月のはがきの振り分け、時給が280円だか・・とにかく200円台でした~
ちなみに現在私がバイトしてる仕事も、時給800円ですよーっ!!!
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ふるさん☆ (latifa)
2009-04-13 16:55:28
>自分の経験とか考え方とか、主人公(あるいはストーリー)と共感できる部分が多いか少ないかで小説は堪能度が全然違う
 言えてます!
私はどうも自分と似た経験とか、似たタイプの人が出て来る話は感情移入しやすいんですが、自分と交わらないような人のお話だと、どうもハマれないという傾向があるようで・・・

同じ作家さんの「ミュージックブレスユー」は、いまだ挫折したまんまです。そちらはバンドやってた子って設定です。
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はまかぜさん☆ (latifa)
2009-04-13 16:58:22
芥川賞って、選考基準とか、時々解らないなぁ~って事があったりします・・・。
今回のこの作品は、はまかぜさん的には、取ってもおかしくないって思われたのですね
私は、前回のあの中国の方の・・・は、私個人的に楽しめない小説だったのもあって、う~~ん・・・という感じでしたが、こちらは、賞に値するかどうかはさておき、好きな小説でした
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Unknown (牧場主)
2009-04-13 19:54:10
そうか、良かったですか・・・
私はちょっとダメでした・・・
「ミュージック・ブレス・ユー」はね、最後まで読みましたけど・・・こっちも苦手でした。
私は、「ポトス~」が全然面白くなかったんで、他の短編も読みませんでした。
何か書きたいことから逃げてる、って感じて。
でも、latifaさんの記事読むと、どうも、他の短編にそのことは書かれていたみたいですね。
私はもっと編集者が上手く促せば、もっと良くなる話だと思いました。
例えば、私だったら、ナガセの元彼氏を大卒、でも、派遣、しんどい、っていう似たような設定にして、だけど、ナガセのサクサクキャラがハッキリ際だつように、こっちはグデグデにして比較します。
やさぐれマックスキャラに。
で、例えば、ホテル代を時給で換算してしまうということがきっかけで別れさせる。
うん、私には、ナガセっていうキャラがね
ハッキリ見えなかったんですよ。
あとね、不況だから派遣とかの話を読まないかんのか、みたいな。
芥川取らなければ別に、ふーん、で済んだかも。
ま、ほんと、芥川賞って、取ったものを、用心して読むっていう、癖が。
もう、私も中国の人の、全然ダメでしたもん。
石原都知事の意見に同調だけはするまい、って思って読んだら、ホントに日本語のレベルが・・・


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牧場主さん☆ (latifa)
2009-04-15 08:44:27
そうかあ~牧場主さん、これダメでしたかー。でも、あちこち巡って見て来た感じでは、面白かったとか、よかったって言ってた人、ほとんどいなかったんですよ・・・

「ミュージック・ブレス・ユー」は挫折しちゃって良いですね・・もう・・

>何か書きたいことから逃げてる、って感じて。でも、latifaさんの記事読むと、どうも、他の短編にそのことは書かれていたみたいですね。
 う~~ん、どうだろう・・・ あまり読んでいて気持ちの良い話ではなかったです・・・。でも私は、ここまで酷い目には遭わなかったけれど、幾つかのバイト先や職場で上司の嫌がらせとか、回りとトラブルとか経験したことあるので、こちらも興味深く読みました。

>ナガセの元彼氏を大卒、でも、派遣、しんどい、っていう似たような設定にして、だけど、ナガセのサクサクキャラがハッキリ際だつように、こっちはグデグデにして比較します。
 なるほどね~。それも有りですね
ただ、私が思うに、この小説は男子が全然出て来ないんですよね。それは意識してそうしたのかもしれないなあ・・・と思って。

ナガセって私の中では、サクサクしたキャラって感じじゃなくて、ごく普通の、そして全然上昇志向じゃなくて、ちょっとぼんやりしてるキャラって気がしてたんです(あくまでも私は)

ナガセよりも、離婚調停中の友達や、ラインで一緒に働いてる先輩の方が、生活キツそうでしたよね・・・。なんか実生活の私の回りってそういう感じの人も半数いて(離婚したいけど離婚すると自分の稼ぎだけでは、子供の教育費とか無理だから旦那の定年まではしょうがなく離婚しないで我慢してる人とか・・)、だからこの小説、なんだか身近な感じがしたんですよ・・。
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なるほど・・ (牧場主)
2009-04-15 16:24:25
>この小説は男子が全然出て来ないんですよね。それは意識してそうしたのかもしれないなあ

ああ、そうかも・・・
だからいまいち私には物足りないのかも。

あと、私はその、主人公がぼんやりタイプ? それともさくさくタイプ? みたいな、そういうのがハッキリ分からなくて。
なんていうか、津村さん、派遣だって生きてるよ!みたいな事に対して、怒る元気もないのか、乗り越えて感情をコントロールしてるのか、それともこれでマックスに怒っているのか? みたいな・・・

まわりにも大変な人いますか。
そういう人は多分、津村さんの本を買う余裕もないかもしれませんね。
うちの店では売れなかったなぁ・・・


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牧場主さん☆ (latifa)
2009-04-16 17:07:55
こんばんは~!その後第一回会合はいかがでしたか・・?

>主人公がぼんやりタイプ? それともさくさくタイプ? みたいな、そういうのがハッキリ分からなくて。
 そういう事でしたか うん、確かにわかりにくいですね。つかみにくいです。

>派遣だって生きてるよ!みたいな事に対して、怒る元気もないのか、乗り越えて感情をコントロールしてるのか、それともこれでマックスに怒っているのか? みたいな・・・
 う~~ん、私も解らないんですが・・・。私が思うには、別に怒ってはいないんじゃないかな・・・っていうか・・・派遣について何か思ってることがあるという訳じゃなく、質素に生きてる人たちの日々の暮らし?みたいのを、たんたんを書いただけなのかな・・・?と思いました。

私の回りには、単行本(1000円以上は軽くしますよね。時に2000円近く)を買う人は年収に関係無く、ほとんどいません・・・。
私も図書館で待ってるしな・・・
こういう状態だもん、本が売れないわけですよね・・・・。
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