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魔女っ子くろちゃんの映画鑑賞記録

映画大好き!わがまま管理人の私的な映画鑑賞記録です。名作・凡作関係なく、好き好き度★★★★★が最高。

クラッシュ

2006年03月24日 | 
★★★★
監督:ポール・ハギス
主演:ドン・チードル、マット・ディロン、サンドラ・ブロック、ライアン・フィリップ
2005年 アメリカ

 クリスマス間近のロス。刑事のグラハムと恋人で同僚のリアは偶然、若い黒人の死体捜索現場に遭遇した。
 ペルシャ人の雑貨店経営者は、自分の店が強盗に度々襲われるので、護身用に鉄砲を買い求めたが、そこでイラク人に間違われ憤慨していた。彼は前科のあるヒスパニック系の男に店の鍵の取り替えを依頼するが、「鍵ではなくドアを直すべきだ」と言われ修理は行われなかった。後日彼の店は再び強盗に襲われ、保険も下りないことに絶望したペルシャ人は、鍵の修理屋を逆恨みする。
 警官のライアンは病気の父親の看護に疲れて、そのこともあって黒人に対して憎悪の気持ちを持っている。ある日、パトロール中に、黒人TVディレクター夫婦に言いがかりをつけ、検問と称してその妻クリスティンにレイプまがいの行為をする。同僚のハンセンはそんなライアンを軽蔑し嫌っていた・・・・。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 点在する個々の出来事が、次々と線でつながっていくロスの人間模様。そこに描かれるのは、この映画が語られる時に使われる「人種差別」というより、生きることに疲れてぼろぼろな人間たちのもがき。
 いらだちを自分より劣ったものを見つけ貶め、根拠のない憎しみをぶつける事で解消しているといったらいいのか。
 この映画で本当に人種差別されていると感じたのは、まるで家畜のように売買されようとしていたアジア人への扱いだった。意図したのかしないのか、しないのだとしたらここに一番の差別意識を感じてしまう。人種とかではなくて、英語とか、彼らの認めた文化を持たない=人間以下のような。(正直気分悪い)

 だからこの映画、とても良くできていて感動もするのだが「人種差別」がテーマとは思いたくない。余裕のない都会に生きる、ささくれだった心を抱えた人たちの人間模様だと。

 各エピソードそれぞれが重いのだが、秀逸に感じたのはやはりマット・ディロン演じるライアン巡査と黒人のクリスティンのくだり。
 腹いせに黒人を憎み、おもしろ半分で犯したレイプ行為のつけを、その黒人女性への救助の拒絶という形で思い知るライアン。命よりもライアンの手を拒んだクリスティン。その怒りがもはや生理的嫌悪という形で自分に向けられたとき初めて、彼は自分が他人に対して犯した罪の深さを知った。その状態の中、命を懸けて彼女を救出し、ついにはその心を受け取ったクリスティンとの言葉を越えた和解のシーンは近年にない感動、どどーんとやられてしまった。
 このエピソードがなければ、こんなにも心を動かす映画にはならなかっただろう。人間と人間の真っ正面からのぶつかり合いをきっちりと感じとった気分。
 クリスティン役はERにも出ていたちょっと苦手な女優さんだったが、その苦手感もいい感じに働いたようだ。

 他に印象的だったのはライアン・フィリップ演じるハンセン巡査。ライアン・フィリップ、顔が好みかも。これからどんどん注目したい。ちょっと好き加減が、ロン・エルダードに重なる。
 ハンセン巡査の描き方はなんだか微妙だが、私は「そんなこと言っても君にも心の底には黒人差別が・・」とは思えなかった。あの状況であの行為は、果たして相手が黒人だからであっただろうか?(その後の死体遺棄はいただけないが)・・・結局は見知らぬ他人は誰一人として信用できない・・という、アメリカという大都会の現実を思う。

 個人的には、射殺された若い黒人が、グラハムの弟というのはやりすぎというか余計な気がしたが、ずっしり心に残る映画でした。
 

グッバイガール

2006年03月09日 | 
★★★☆
監督:ハーバート・ロス
主演:リチャード・ドレフィス、マーシャ・メイソン、クイン・カミングス
1977年 アメリカ

 おしゃまな娘のルーシーとNYで暮らすポーラはシングル・マザー。俳優の恋人にいつも捨てられてしまう彼女は、またトニーという愛人に置き手紙で突然さよならされてしまった。
 生活するために再びダンサーとして職をさがすポーラだったが、30歳も越えている身ではそうそう簡単なことではない。おまけにトニーが、住んでいたアパートを自分の俳優仲間に又貸ししてしまい、家まで失いそうになる。
 突然ポーラたちの部屋にやってきたのはエリオットという、これまた俳優志望の男だった。エリオットは強引に部屋の明け渡しを要求し、仕方なくポーラは理不尽ながらも彼との同居を承諾する。しかしこのエリオット、強引な上にかなりの変わり者。マイペースなその生活ぶりにうんざりするポーラだったが、娘のルーシーは次第にエリオットに心を開いていった。
 やがてポーラにも心の変化が訪れる。だが、俳優の男にまた捨てられるのではないかという不安はいつもつきまとうのだった。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 現代ではもうめずらしい、男性依存症(?)な母親ポーラ。足がなが~くて見かけはボーイッシュなマーシャ・メイスン(ニール・サイモン夫人)が演じれば好感度も高い。こんなちょっと情けない母親におしゃまな娘。このルーシーのこまっしゃくれ感が結構好きだ。エリオットの言葉に心ならずも涙を流してしまう所なんかたまらん。
 個人的にはエリオットみたいな男の良さがなかなかわからないタイプの私ではあるけれど(偉そうな物言いの男は好かないので)、ポーラみないな女性にはぴったりなんだろうな。ただ俳優という芸術家タイプにありがちな子供っぽさ、わがままな感じを許容できるには母性が必要か。(母性乏しいので、エリオットにはむかついちゃうことが多そう。)
 娘を覗いた登場人物に、キャラとして魅力をあまり感じることができなかったけど、映画としての雰囲気は良かった。

グラフィティ・ブリッジ

2006年01月11日 | 
★★☆
監督:プリンス
主演:プリンス、モーリス・デイ、ジェローム・ベントン
1990年 アメリカ

 「パープル・レイン」から数年後。キッドとモリスは店の所有権をめぐって争っていた。キッドの音楽では人を呼べない、とキッドから店を汚い手を使っても奪おうとするモリスは金の亡者。あくまでも自分の音楽に固執するキッドだったが、その実自分の音楽性を見失いかけていた。
 そんなキッドとモリスの前に現れた謎の美女オーラ。店とオーラをめぐって二人の対立は加速する。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 「パープル・レイン」の幻の続編。初DVD化だとか。
話がややこしくなって、単純明快だった前作には出来は及ばないが、この頃はジャパン・ツアーを行った時期。頭でっかち(物理的に)を強調する結果にはなるが、長髪のプリンスは独特のオーラがあってよろしい。本編よりも特典のPV「THE QUESTION OF U」は無類の格好良さ!そうそう、このヌード・ツアーでプリンスにしびれたんだっけ。

 ただ話もイマイチなら曲も前作に比べるとパンチ不足。オーラ役の女優さんはスタイル抜群なものの、美人なのか否か微妙なところ。天使か人間か・・・(^^;)。才能の塊、さすがのプリンスもストーリーの才能まではなかったというべきでしょうか。
 私には特典映像のPVだけで充分でした・・・・。

クローサー

2005年12月14日 | 
★★★
監督:マイク・ニコルズ
主演:クライブ・オーウェン、ジュード・ロウ、ジュリア・ロバーツ
2004年 アメリカ

 小説家志望のジャーナリスト、ダンは交差点で視線を交わし合った後、交通事故にあったアリスと意気投合し同棲を始めた。その一年後、処女作の出版にあわせ写真を依頼したフォトグラファーのアンナと恋に落ちるが、ダンにアリスという恋人がいることを知ったアンナはダンへの思いを封印する。
 アンナへの軽い復讐で、彼女になりすましチャットで釣ったのは、スケベ心を持った医師ラリー。それがダンのいたずらとも知らず出会った二人は意気投合しつきあうことに。
 数ヶ月後、アンナの写真展で再会したアンナとダンはお互いの気持ちを再認識してしまったために、4人の恋模様は複雑に絡み合っていく・・・・。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 
 もともとは舞台劇だと聞いて、なるほどと思った。時間経過の説明がセリフで行われるので、しばらくして「ああ、そうなのか。前の場面とは一年経っているのか」と納得する。その繰り返しについていくのがちょっとしんどい。目に見える変化がまるでないので、さっきの場面から今は~ヶ月経っているのよと言われてもなあ・・・。やっぱり映画なんだから目で見えるように納得させてほしいし、4人のぐちゃぐちゃに入り乱れた情事もそれなりに映像で見せてくれても良かったかも。(生々しくなくていいから)
 独特なスタイルを醸し出してはいるものの、すごく不親切な映画だった。話も・・よくわからん。

 お目当ては男優。もっと言えば他3人には興味がないので、クライブ・オーウェンのみ。
おお、「キング・アーサー」や「すべては愛のために」で冴えなかったオーウェンであったが、この目をまんまるに見開いたド○ケベな医師役はいいんじゃない?段々ルー・大柴とだぶって見えた。おいしい役どころだったが、評価されてうれしい。

 ジュード・ロウはその女にだらしなく情けない感じが、実生活と重なってしまって・・・スキャンダルって恐い。ダメ男ダン、というよりダメ男ジュード・・・。これってうまかったのか、地でいったのか。

 ナタリー・ポートマンを初めて美人なのかもと思い、何を演じてもジュリア・ロバーツにしか見えないアンナでは、男たちがああも固執する気持ちが全く理解できないのは、彼女が苦手だからか。

グリニッチ・ビレッジの青春 

2005年10月18日 | 
★★★★
監督:ポール・マザースキー
主演:レニー・ベイカー、クリストファー・ウォーケン、シェリー・ウィンタース、アントニオ・ファーガス、エレン・グリーン
1976年 アメリカ

 ラリー・ラピンスキーは俳優志望の22才。ブルックリン生まれのユダヤ人。1953年大学を卒業し、両親から独立。グリニッチ・ビレッジに引っ越した。
 独立したのは、恋人サラとの逢瀬を楽しみたいからというのが本当の理由。過保護なママの元を離れ、この町で仲間たちとの生活を満喫する。
 ある日仲間の一人、アニタが自殺騒ぎを起こす。狂言とも本気ともとれる彼女は常習犯。そしてサラがラリーの子供を妊娠。産んで結婚してくれと言うラリーを押し切り、友人ロバートの紹介でサラは中絶手術を受ける。
 やがて自殺常習犯のアニタが本当に自殺してしまった。そのことに一番ショックを受けたのはゲイのバーンスタインだった。
 ラリーが映画会社のオーディションを受けていたとき、ロバートがみんなでメキシコに行かないかと持ちかける。渋るラリーはサラがロバートと関係してしまった事実を知り、打ちのめされる。
 結局サラと別れたラリーはオーディションに合格し、ハリウッドを目指すため、ママとパパに別れを告げた。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 監督自身の体験を元にした映画だという。ラリーとサラはユダヤ人。パーティで集まる面々を見るまでもなく、様々な人種の若者が集い、それぞれの夢に向かって挫折や成功を繰り返す街。まさに人種のるつぼニューヨーク。
 ここで必要なのは生きていく力。孤独な彼らは仲間同士で助け合って生きていくが、時にはその手が届かないこともある。アニタの自殺成功事件は、結局は誰にも入り込めない心の孤独の深さをみんなに思い知らしめたのではないか。アニタの死は彼ら自身にも起こりうることだ。

 恋人サラとの苦い別れを経験し、結局は過保護でうんざりのママの元からハリウッドに旅立っていくラリー。この凄すぎるお母さんと息子のふれあいは微笑ましくもあるが、実際あんなママは大変だな~。
 でもこの母と父(良い味だしてる)がルーツなのだという、しっかりした基盤があるからこそ夢に向かって旅立てるラリーは幸せ。始めは男の子は母より恋人・・・でも結局母は強し!
 男にとって恋人と母、二人の女への愛は全く別物。どちらも必要で、どちらが勝るというものでもない。
 きっとロバートには、こんなぬくもりがなかったのではないかと思わせるウォーケンの冷たく寂しい眼差しも印象的だった。

 佳作ながら、主演俳優陣が凄い。ウォーケン、ウィンタース、「スタスキー&ハッチ」のひょろまつでおなじみのファーガソン。ちょい役で若きジェフ・ゴールドブラム(あのくどい顔はそのまま)、カメオでビル・マーレイも顔を出している、お宝発見的楽しさもある。


グリース 

2005年10月13日 | 
★★★★
監督:ランダル・クレイザー
主演:ジョン・トラボルタ、オリビア・ニュートン・ジョン
1978年 アメリカ

 高校3年のダニーとサンディは避暑地の海岸で出会い、ひと夏の恋をした。新学期が始まり、夏の想い出を仲間に自慢するダニー。なんと同じ高校にオーストラリアに帰ったはずのサンディが、転校生としてやって来た。一瞬再会を喜び合う二人だが、純情娘サンディとつっぱりグループのダニーとではあまりにも違いすぎる。仲間の目を気にして、クールに振る舞うダニーに、サンディは失望をかくせない。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 年をとって、ふくよかになって味が出てきたと言われる彼だが、歌い踊る若きトラボルタがめちゃくちゃ格好いい!腰振るだけで様になる。「サタデー・ナイト・フィーバー」は未見だが、伝説になるだけある。
 彼のいいところは、格好いいのにださく三枚目なところ。あの甲高い高音の歌声も容姿から受ける印象とのギャップが大きくて、好きなのだ意外性のある男。

 もともとミュージカルなのか、話はあってないようなもの。このアメリカン・グラフィティなノリの中身のない明るさは好きだ。なにしろ、将来を憂えるのは一人だけで、他は皆、あのことしか考えていないノー天気ぶり。
 楽曲も主題歌「愛のデュエット」と「グリースのテーマ」ぐらいか知らなかったが、「想い出のサマー・ナイト」などなどポップでかわいい曲が多い。実はオリビアの歌声は苦手だったのだが、トラボルタと組むとあの甲高い高音が気にならなかった。(負けず劣らずトラボルタの声が高いせい?)

 「ウエストサイド物語」のようなダンス・パーティのシーン。「アメリカン・グラフィティ」のようなカー・レース。「ベン・ハー」そのままの妨害・反則シーン。どれも微笑ましくて笑えるが、一番びっくりなのが、30歳で18歳の役を堂々と演じたオリビア。どう見てもトウが立っていたが、それでも時々らしく見えるのがすごかった。(しかし細いわ!)

グッバイ、レーニン! 

2005年02月21日 | 
★★★
監督:ヴォルフガング・ベッカー 
出演:ダニエル・ブリュール、カトリーン・ザース、チュルバン・ハマートヴァ
2003年 ドイツ

 アレックスの母親クリスティーネは夫が西に亡命。依頼ばりばりの東ドイツ愛国歌だった。ある日彼女はアレックスがデモに参加しているのを見てショックを受け、心臓発作を起こしたまま昏睡状態に陥ってしまった。
 母が眠っている間に東西ドイツは統一され、国はすっかり変わってしまった。奇跡的に目をさました母親のために、アレックスは策を労し、以前と変わらぬ東ドイツを母親に見せるのだが・・。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 母は父の西側亡命の後を追う勇気がなかった。その事実を打ち消すため、社会主義国家に身を捧げ忠誠を誓って生きてきた。しかし子どもたちはそんな母の本当の理由を知らなかったので、社会主義国家に身を捧げることが母の生き甲斐だったと信じてしまう。

  アレックスは、母の消えそうな心臓にはこの国家崩壊の事実には耐えられないだろうと、まだ東ドイツが変わりなく存在しているかのように芝居をうつ。やがてその茶番劇はアレックス自身の生き甲斐に変わっていく。

 東ドイツ時代はさしたる信念もないままデモに参加していた彼だが、いざ東西が統一されて一番戸惑っていたのはアレックスだったのかもしれない。
 このような時、女性の方が現実的でたくましい。劇的な歴史の前になすすべなく、ぐちを言うしかない老人とアレックスは同類だが、彼には若さがあり、行動する力があり、母を助けるというエクスキューズがあった。

 東西統一というのは、はたから見ると歴史的に素晴らしい事件であるが、それを当事者側、特に「東側の人たちの動揺」という視点で描いているのは興味深い。それは自由という名の得体の知れない大きな波。希望よりも不安が勝るのは当然といえば当然か。

 しかし母を理由にして現実から目を背けていたアレックスも、父との再会によりこの茶番劇を完結させる。事実をすでに悟っていた母はそんな彼に「ステキね」という言葉を残し逝ってしまった。母を思う息子、息子への感謝の気持ちがやさしい眼差しとなってアレックスに注がれる。。

 母の目の前を、レーニン像の上半身が手を上げて通り過ぎるシーンが印象的。母はここで偽りの人生にレーニンと共に別れを告げたのかな?これからの生活が不安だらけでも、愛する家族がいさえすればきっと人生はいい方向に向いていくのだと思わせるラストがステキだった。

黒馬物語 ブラック・ビューティー

2004年11月21日 | 
監督:キャロライン・トンプソン
出演:ショーン・ビーン、デビット・シューリス
1994年 アメリカ

 ショーン・ビーンのファースト・クレジットで借りてみたのだが、冒頭にちょこっと出ただけだった・・・・。でも馬の視点から描いたこの映画、なかなか面白い。動物のお涙頂戴物語は大の苦手分野なのだが、馬が語り部になっているので人間が客観的に描かれている。(ちなみに同じ原作でマーク・レスター出演作品もある)

 その思いなどおかまいなしに、飼い主次第でその境遇が二転三転してしまう馬たち。愛情を注いでくれる人間もいれば、ただの道具としてしか扱わない人間もいる。過酷な運命に翻弄されるブラック・ビューティーが思い起こす、かつて仲間達と野原で戯れ合った至福のシーンが美しく悲しい。

 数々の愛しい人たちとの別れ。馬は家族には成りえなかった。せめて犬であれば、一緒に田舎にでも連れて行ってもらえただろうに。
 やさしいが、イマイチ頼りなくて信用できないジョー。潰される運命にあるブラック・ビューティーにも気がつかない鈍感さだが、最後は彼の元で余生を生きるハッピーエンド。
  かつての飼い主たちはその後どうなったのか、ビューティーと一緒に思いをはせてみる。

クッキー・フォーチュン 

2004年06月05日 | 
★★★
監督 ロバート・アルトマン 
出演 リブ・タイラー、グレン・クロース、ジュリアン・ムーア
1999年 アメリカ

 一人暮らしのクッキーはある日ピストル自殺してしまう。発見した姪のヶミールは熱心なクリスチャンであるため、銃をかくし他殺を演出したために、この小さな町は大騒ぎになってしまう。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 アルトマン映画は大好き。この人の描く、ちょっととぼけて毒のあるブッラクな人間たちが好き。善人とか悪人とかひとくくりにできない、普通の人たち。ある意味すごくリアル。

 全員が知り合いのような小さな町で起こった人騒がせな事件。夫の後追い自殺をした老女クッキーを殺人事件にしたててしまった姪のグレン・クロース。(すごくうまい)そのおかげで巻き起こるてんやわんやの珍騒動。

 リブ・タイラーはショートカットですごくキュート。なぜあの父親にして、こんな娘ができるのだろうか?(ただ役どころとしてはつまらないが)

 最後のオチも読めるので、これはお気楽にアルトマン劇場を楽しみたい。

くたばれ!ハリウッド 

2004年03月29日 | 
★★
監督:ブレッド・モーゲン&ナネット・バースタイン 
出演:ロバート・エヴァンス
2002年 アメリカ

 「ある愛の詩」や「ゴッドファーザー」のプロデューサー、ロバート・エバンスの自叙伝映画。
彼の言葉通り、確かに事柄には3つの面がある。一つは他人から見た面、そして自分から見た面、最後が真実。

 これはエバンスから見た当時のハリウッドの真実、裏話。

「ローズマリーの赤ちゃん」にまつわるシナトラとミア・ファーローの離婚劇や、コッポラ監督との確執などその当時の映画を知る身には裏話は興味深い。

 ただ、アリ・マックグローを賛辞されてもつらい。未練タラタラな語り口は微笑ましくもあるけれど・・・・・。

クロウ/飛翔伝説 

2004年01月02日 | 
★★★★★
監督:アレックス・プロヤス 
出演:ブランドン・リー、アーニー・ハドソン、マイケル・ウィンコット
1994年 アメリカ

 近未来都市。あるハロウィンの夜、ロック・ミュージシャンのエリックは恋人と共に何者かに惨殺されてしまう。一年後カラスの不思議な力を得て、復讐を果たすために墓場から蘇るエリック。次々と犯人の一味を血祭りにあげていき、ついに黒幕街の犯罪王、トップ・ダラーと対決する。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 ブルース・リーの遺児、ブランドン主演。自身もこの映画の撮影中に拳銃の発砲事故で若くしてこの世を去ってしまった。

 ジェームズ・オバーのアメコミが原作。話もシンプル、作りも粗いし、はっきりいって超B級映画。しかしこれほど多くの人たちの熱き支持を集めているB級映画もそうはあるまい。

 ほとんどが夜の陰鬱とした暗闇の世界なのだが、月明かりの陰影がとても美しく、その映像は香り立つようだ。この映画の最大の魅力と言っていいかもしれない。

 美しい顔立ちのブランドンは残念ながらほとんどその素顔をメイクで隠してしまうが、最愛の恋人を無惨に殺された怒りが(自分も殺されているのだが)痛いほどに切ない。
 ブランドンの悲報はこの映画を伝説にしたかもしれないが、そうでなくても十分に語り継がれた作品だと思う。
 

グレイストーク ターザンの伝説 

2004年01月02日 | 
★★★★★
監督:ヒュー・ハドソン
出演:クリストファー・ランバート、アンディ・マクドウェル、イアン・ホルム
1983年 イギリス

 かくも美しく哀しいターザン映画。ターザンと言う言葉は一度もでてはこないのだが。
 
  ジョン・チャールズ・クレイトン。赤ちゃんの頃から猿に育てられた貴族の御曹司。養父母(猿)の愛情を一身に受け、たくましい森の勇者へと成長した若者はやがて本当の祖父、グレイストーク伯爵に引き取られることになる。
  祖父も心からジョンを愛し、ジョンも祖父の愛に包まれ、親戚でもあるジェーンへの恋にも目覚めていく。
 全てが順調にいくかに思えながら、誰もがジョンを愛していたのに、人間社会で生きていくことができなかったのはなぜなのだろうか。

 きっかけは祖父の突然の死であった。彼を人間として愛する人々がいる一方で、猿に育てられた男は格好の研究対象である。私利私欲や思惑が渦巻く人間社会にジョンの居場所はない。
 祖父という最大の理解者を失い、偶然にも義父(猿)が剥製にされされかかっているのを発見した時、ジョンは人間としてのコントロールを失い混乱してしまう。無惨に射殺されてしまった猿は、まちがいなく自分にとってのかけがえのない父。父を下等な動物としてしか見ない人間社会に、自分を偽って生きる狡猾さを彼は持ち合わせてはいなかった。そんなものは森に生きる者にとっては必要のないことだ。
 
 人間と猿。種族は違うが愛する者を同時に失ったグレイストーク伯は恋人ジェーンをおいて森に帰って行く。このラストは「アシタカは好きだ。でも人間とは一緒に生きては行けない」という宮崎駿の「もののけ姫」に通じるメッセージであろう。
 同じ地球上に生きとし生ける者が共存できない、そんな社会であっていいのだろうか。  祖父を失い義父を殺されたジョンの絶叫は痛いほど胸にしみた。森へお帰り、と心ある者ならそう告げるだろう。

 野生的でありながら気品ただようクリストファー・ランバートには即、参ってしまった。(残念ながらこれ以降、本作品を超えるランバートには出会っていない。どんどん気品が失われて行くようだ。)