★★★★
監督:ポール・ハギス
主演:ドン・チードル、マット・ディロン、サンドラ・ブロック、ライアン・フィリップ
2005年 アメリカ
クリスマス間近のロス。刑事のグラハムと恋人で同僚のリアは偶然、若い黒人の死体捜索現場に遭遇した。
ペルシャ人の雑貨店経営者は、自分の店が強盗に度々襲われるので、護身用に鉄砲を買い求めたが、そこでイラク人に間違われ憤慨していた。彼は前科のあるヒスパニック系の男に店の鍵の取り替えを依頼するが、「鍵ではなくドアを直すべきだ」と言われ修理は行われなかった。後日彼の店は再び強盗に襲われ、保険も下りないことに絶望したペルシャ人は、鍵の修理屋を逆恨みする。
警官のライアンは病気の父親の看護に疲れて、そのこともあって黒人に対して憎悪の気持ちを持っている。ある日、パトロール中に、黒人TVディレクター夫婦に言いがかりをつけ、検問と称してその妻クリスティンにレイプまがいの行為をする。同僚のハンセンはそんなライアンを軽蔑し嫌っていた・・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
点在する個々の出来事が、次々と線でつながっていくロスの人間模様。そこに描かれるのは、この映画が語られる時に使われる「人種差別」というより、生きることに疲れてぼろぼろな人間たちのもがき。
いらだちを自分より劣ったものを見つけ貶め、根拠のない憎しみをぶつける事で解消しているといったらいいのか。
この映画で本当に人種差別されていると感じたのは、まるで家畜のように売買されようとしていたアジア人への扱いだった。意図したのかしないのか、しないのだとしたらここに一番の差別意識を感じてしまう。人種とかではなくて、英語とか、彼らの認めた文化を持たない=人間以下のような。(正直気分悪い)
だからこの映画、とても良くできていて感動もするのだが「人種差別」がテーマとは思いたくない。余裕のない都会に生きる、ささくれだった心を抱えた人たちの人間模様だと。
各エピソードそれぞれが重いのだが、秀逸に感じたのはやはりマット・ディロン演じるライアン巡査と黒人のクリスティンのくだり。
腹いせに黒人を憎み、おもしろ半分で犯したレイプ行為のつけを、その黒人女性への救助の拒絶という形で思い知るライアン。命よりもライアンの手を拒んだクリスティン。その怒りがもはや生理的嫌悪という形で自分に向けられたとき初めて、彼は自分が他人に対して犯した罪の深さを知った。その状態の中、命を懸けて彼女を救出し、ついにはその心を受け取ったクリスティンとの言葉を越えた和解のシーンは近年にない感動、どどーんとやられてしまった。
このエピソードがなければ、こんなにも心を動かす映画にはならなかっただろう。人間と人間の真っ正面からのぶつかり合いをきっちりと感じとった気分。
クリスティン役はERにも出ていたちょっと苦手な女優さんだったが、その苦手感もいい感じに働いたようだ。
他に印象的だったのはライアン・フィリップ演じるハンセン巡査。ライアン・フィリップ、顔が好みかも。これからどんどん注目したい。ちょっと好き加減が、ロン・エルダードに重なる。
ハンセン巡査の描き方はなんだか微妙だが、私は「そんなこと言っても君にも心の底には黒人差別が・・」とは思えなかった。あの状況であの行為は、果たして相手が黒人だからであっただろうか?(その後の死体遺棄はいただけないが)・・・結局は見知らぬ他人は誰一人として信用できない・・という、アメリカという大都会の現実を思う。
個人的には、射殺された若い黒人が、グラハムの弟というのはやりすぎというか余計な気がしたが、ずっしり心に残る映画でした。
監督:ポール・ハギス
主演:ドン・チードル、マット・ディロン、サンドラ・ブロック、ライアン・フィリップ
2005年 アメリカ
クリスマス間近のロス。刑事のグラハムと恋人で同僚のリアは偶然、若い黒人の死体捜索現場に遭遇した。
ペルシャ人の雑貨店経営者は、自分の店が強盗に度々襲われるので、護身用に鉄砲を買い求めたが、そこでイラク人に間違われ憤慨していた。彼は前科のあるヒスパニック系の男に店の鍵の取り替えを依頼するが、「鍵ではなくドアを直すべきだ」と言われ修理は行われなかった。後日彼の店は再び強盗に襲われ、保険も下りないことに絶望したペルシャ人は、鍵の修理屋を逆恨みする。
警官のライアンは病気の父親の看護に疲れて、そのこともあって黒人に対して憎悪の気持ちを持っている。ある日、パトロール中に、黒人TVディレクター夫婦に言いがかりをつけ、検問と称してその妻クリスティンにレイプまがいの行為をする。同僚のハンセンはそんなライアンを軽蔑し嫌っていた・・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
点在する個々の出来事が、次々と線でつながっていくロスの人間模様。そこに描かれるのは、この映画が語られる時に使われる「人種差別」というより、生きることに疲れてぼろぼろな人間たちのもがき。
いらだちを自分より劣ったものを見つけ貶め、根拠のない憎しみをぶつける事で解消しているといったらいいのか。
この映画で本当に人種差別されていると感じたのは、まるで家畜のように売買されようとしていたアジア人への扱いだった。意図したのかしないのか、しないのだとしたらここに一番の差別意識を感じてしまう。人種とかではなくて、英語とか、彼らの認めた文化を持たない=人間以下のような。(正直気分悪い)
だからこの映画、とても良くできていて感動もするのだが「人種差別」がテーマとは思いたくない。余裕のない都会に生きる、ささくれだった心を抱えた人たちの人間模様だと。
各エピソードそれぞれが重いのだが、秀逸に感じたのはやはりマット・ディロン演じるライアン巡査と黒人のクリスティンのくだり。
腹いせに黒人を憎み、おもしろ半分で犯したレイプ行為のつけを、その黒人女性への救助の拒絶という形で思い知るライアン。命よりもライアンの手を拒んだクリスティン。その怒りがもはや生理的嫌悪という形で自分に向けられたとき初めて、彼は自分が他人に対して犯した罪の深さを知った。その状態の中、命を懸けて彼女を救出し、ついにはその心を受け取ったクリスティンとの言葉を越えた和解のシーンは近年にない感動、どどーんとやられてしまった。
このエピソードがなければ、こんなにも心を動かす映画にはならなかっただろう。人間と人間の真っ正面からのぶつかり合いをきっちりと感じとった気分。
クリスティン役はERにも出ていたちょっと苦手な女優さんだったが、その苦手感もいい感じに働いたようだ。
他に印象的だったのはライアン・フィリップ演じるハンセン巡査。ライアン・フィリップ、顔が好みかも。これからどんどん注目したい。ちょっと好き加減が、ロン・エルダードに重なる。
ハンセン巡査の描き方はなんだか微妙だが、私は「そんなこと言っても君にも心の底には黒人差別が・・」とは思えなかった。あの状況であの行為は、果たして相手が黒人だからであっただろうか?(その後の死体遺棄はいただけないが)・・・結局は見知らぬ他人は誰一人として信用できない・・という、アメリカという大都会の現実を思う。
個人的には、射殺された若い黒人が、グラハムの弟というのはやりすぎというか余計な気がしたが、ずっしり心に残る映画でした。