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魔女っ子くろちゃんの映画鑑賞記録

映画大好き!わがまま管理人の私的な映画鑑賞記録です。名作・凡作関係なく、好き好き度★★★★★が最高。

白痴

2007年02月17日 | 黒澤明監督作品
★★★
監督:黒澤明
主演:森雅之、三船敏郎、原節子、久我美子
1951年 日本

 沖縄からの復員兵、亀田欽司は青函連絡船の中で赤間伝吉という男と出会った。欽司は親類である牧場主大野に身を寄せに、伝吉は自分を勘当した父親が亡くなったので、家へ帰るところだった。
 伝吉には勘当の理由となった、那須妙子という思い人が居たが、妙子は政治家東畑の囲い者であった。帰路の途中、その妙子の写真を目にした欽司は、その美しさに目を奪われてしまう。 
 欽司は癲癇性痴呆性で、自らを白痴だと公言した。その純粋無垢な人柄は人を引きつける何かがあった。
 東畑は妙子が出世の邪魔になってきたので、香山という男に60万円の持参金をつけて嫁に出そうとしていた。伝吉はその話を聞いて、100万円で妙子を譲り受けようとしたが、妙子はその金を暖炉に投げ込んで伝吉と一緒に去ってしまう。その一方で妙子は自分を哀れむ欽司に、反撥を覚えながらも強く心惹かれるのだった。
 赤間と欽司の間で揺れ動く妙子。しかしその果てに、ついに伝吉は妙子を刺殺してしまう。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 原作はドフトエフスキー。小難しいロシア文学を3時間ほどにまとめ上げるのはやや無理があるのか、いいやきっと私の頭が悪いせいだろう。見終わって印象に残ったのは「悪い奴ほどよく眠る」とはうってかわった森さんの演技と、三船さんの怖い顔。そして悪女、原節子さんも怖かった。・・・怖いけれど原さんの顔立ちを思うと、小津さんや成瀬映画のような、古き良き日本の妻・娘役よりは、妙子のような毒のある女性の方が似つかわしいように思う。

 障害者は心清く無垢で、俗人は汚れてしまっている。そんなよくある図式の原型なのか。
欽司は現実を生きる必要がないけれど、汚れていたとしても現実を生きる者は無垢のままではいられないじゃないか。ここの女性たちは欽司に心惹かれるいくけど、それじゃ他の男たちが浮かばれなさすぎ。あんなにも醜く描かれて。

 夢見るようなふわふわした森さんの、生活感のなさがとってもユニーク。だって手を握りしめながらぶりっこのようにしゃべったり。悲しいまでにみっともない香山役の千秋さん。彼のような現実を生きる男たちに、妙子たちの視線は辛辣で厳しいが、個人的には共感できず。ただただ、三船さんの狂気の表情、氷のような原節子さんの美しさに圧倒される。

野良犬

2007年02月13日 | 黒澤明監督作品
★★★★
監督:黒澤明
主演;三船敏郎、志村喬、木村功
1949年 日本

 新米刑事村上は不注意で、混んだバスの中でコルト式けん銃をすられてしまった。彼は警視庁捜査第一課の中島警部に報告し、即刻辞職も覚悟したが処分待ちとなった。
 コルトには七発の実弾が入っている。事の重大さに落ち着かない村上はスリ係の市川刑事を頼って、お銀という女スリを問いつめたが、気のはやりから拳銃奪還に失敗してしまう。
 その後、佐藤刑事とコンビを組んだ村上は、本多という男を挙げたのだが、コルトはすでに遊佐という男の手に渡っていた。遊佐はすでにその拳銃を使って強盗を働いていた。遊佐は村上と同じ復員兵で、その帰路の途中で、リュックを奪われたという同じ過去をもっていた。村上はその後刑事となったが、遊佐は脱落した人生を送っていた。
 遊佐による第2の事件が発覚した。狙われたのは善良なる普通の主婦だ。なんとしても遊佐を見つけ出さなければならない。
佐藤と村上は遊佐の情婦ハルミの存在を突き詰め、遊佐を追いつめていくのだが・・・。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 黒澤監督の映画って、つくづく男の体臭漂う、ぎとぎとでエネルギッシュで荒々しさが魅力なんだなと唸ってしまう作品。
真夏の熱気、汗ばむ体臭、ネットリ感、そしてスコーンと分かり易い単純さ。熟練した後年の作品がいまいち魅力に欠けるのは、この荒削りな勢いがないせいだと思う。

 未熟さ故の魅力を、一手に引き受けている三船敏郎の存在感。「酔いどれ天使」の時よりも数倍ハンサムで、もうもうただただクラクラしてしまいます。「赤ひげ」のおじちゃまぶりも捨てがたいが、この頃が最高に好きかも。
 遊佐を駅で発見するシーンの緊迫感。以後「白痴」でも彼の目のクローズアップにお目にかかるが、方や執念、方や狂気。格好いいだけじゃない、名優です。

 刑事コンビ物の原点と言われる作品だが、新米刑事とベテランの組み合わせのその後洋画でもよく目にするパターン。そのオリジナルになったのか?

 遊佐の存在が唐突に後半浮上してくるので少し戸惑い、前半部分に伏線があったらとも思うが、完璧でないところもまた良いかな。


悪い奴ほどよく眠る

2007年02月11日 | 黒澤明監督作品
★★★★
監督:黒澤明
主演:三船敏郎、森雅之、香川京子、志村喬
1960年 日本

 住宅公団の副総裁岩淵の娘佳子と、彼の秘書の西幸一の結婚披露宴のまっただ中、岩淵の部下であり課長補佐の和田が、建築会社大竜建設のとの癒着の容疑で逮捕される。その後大竜建設の経理担当の三浦も逮捕され、公団との収賄汚職事件として世間を震撼させた。
 三浦は一度釈放されるが再逮捕の直後に自殺してしまう。和田も岩淵たち上司を守るために自殺を図るが、ある男によって救われる。その男とは、岩淵の秘書で娘婿の西だった。
 実は西は6年前、やはり公団の不正入札疑惑によって自殺に追いつめられた男古谷の息子だったのだ。息子とはいえ古谷の私生児の西だが、一人罪をかぶって死んだ父の敵をとるために、岩淵の秘書になり佳子と結婚したのだった。
 西と和田は当時の課長・部長とを追いつめていった。全ては西の思惑通りに行くはずだった。しかし西の最大の誤算は、復讐に利用しただけの娘佳子を、本気で愛してしまったことだった。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 うーん、やっぱり三船さんは格好いい。格好いいけど貫禄ありすぎて、西役には少し育ちすぎてしまったかも。年代的には「野良犬」あたりの三船さんだとぴったりだったかな。だから復讐よりも愛に走ってしまう青臭さが、なんだかちょっと「おいおい」だったのは、酸いも甘いも知り尽くした熟年男性の風体のせいだ。

 けれども、映画はとても分かり易くい。だいたい題名からして真理をついていて小気味いいじゃないの。相変わらずぐいぐい引きずり込んでくれる黒澤ワールド全開だ。

 もう40年以上も前の映画なのに、この世のお偉方がやってる悪事はなんら変わることなく継承されている。題名からその後味悪いラストは容易に想像できるのだけれど、こんな結末にしたのは、結局このような腐敗は未来永劫続いていくのだ・・という確信からだと思ったり。
 この映画でもそうなように、表舞台に出てくるのは得てして小物。本当の大悪党の顔は決して見えない。岩淵だって顔を見せない相手にぺこぺこしているわけで、彼が失ったもの(家族とか)は大きく、決してよく眠れるわけではないだろう。
 本当の悪党は、決して顔をみせないのだ。

酔いどれ天使

2007年02月08日 | 黒澤明監督作品
★★★★
監督:黒澤明
主演:志村喬、三船敏郎、木暮実千代
1948年 日本

 貧乏医者眞田の元に、その界隈では名の知れた松永というヤクザがキズの手当にやってきた。乱暴に手当をしながら、松永が結核を患っていることに眞田は気がついた。しかしそのことを指摘すると松永は逆上し、去ってしまった。
 松永が気がかりな眞田は彼を捜し、レントゲンを撮るように勧めるが、松永は取り合わない。だが自分の健康状態について、松永は心中怯えていたのだった。
 そんなある日、松永の兄貴分の岡田が出所してきた。すると松永の健康も悪化の一途をたどり、シマは岡田に次第に支配されていく。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 円熟した黒澤ではない、荒削りだが力強くぎらぎらして、そして「におい」を感じさせる映画だ。それはヘドロで発酵しまくる沼の臭いであったり、颯爽とした松永のキザな体臭や煙草であったり、安い酒のにおいであったり、出所した岡田が夜中にギターを奏でる時の、危険な闇のにおいであったり・・・・・。

 口は悪いが人情に厚く、くだらない体裁と悪徳の限りを尽くし、まるで町の象徴である腐った沼のごときヤクザの世界を憎む医師。物を投げつけ、悪態をつく眞田の生命力あふれたエネルギーは全編衰えることがない。それに対比するかのように、肩で風を切って歩いていた松永が、死に神に取り憑かれどんどん衰弱していく。しかしこの二人は、根っこの部分で同類なのかも・・と互いが気がついているフシもある。

 いつも思慮深い役の多い志村さんが、体当たりで生きる熱血医師を演じるのも新鮮。また、生命の影を薄くしながらも存在感だけは強烈な松永扮する三船さんが凄い。特に海辺で棺桶に入っている悪夢のシーンと、ペンキにまみれながら窓を開け、白い洗濯物で溢れた日差しの中で果てるシーンは、なんというか「絵の描ける」監督・黒澤さんならではの映像である。優れた映画の多くがそうであるように、映像が「アート」しているのだ。

 汚れた町だと分かっていても、抜け出すことは難しい。それを最後に望んだ松永も、骨になってやっと抜け出せるのだ。汚れてしまった沼に、ゴミを捨て続けることが抵抗なくなるように、人はそのよどみにさえ鈍感になっていく。

 汚れを知らない結核の女子高生と、松永の骨を持った酒屋の女。住む世界もなにもかも交わることのない二つの世界の、橋渡し的存在が眞田医師なのかもしれない。

天国と地獄

2007年01月23日 | 黒澤明監督作品
★★★★
監督:黒澤明
主演:三船敏郎、仲代達也、香川京子
1963年 日本

 権藤金吾が専務の製靴会社「ナショナルシューズ」では、役員による造反の相談がなされていた。役員たちは権藤の協力を求めたが、もともと職人肌の彼は、”安かろう悪かろう”の方針に参道することができずに突っぱねる。実は権藤は密かに会社の持株買収を画策していた。
 そんな時、息子純の誘拐脅迫電話が突然かかってきた。犯人は3000万円の金を要求。金はあるが、それは会社買収のための大事な金だった。
 しかし誘拐されたのは純ではなく、お抱え運転手の息子進一だった。間違い誘拐であったが、犯人の要求は変わらない。お金は権藤にとって、一世一代の勝負をかけるもの。さりとて進一を見殺しにすることもできない。悩みに悩んだ末、権藤は犯人の要求に応じるのだった。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 もう、あんな人こんな人がこんなちょい役あんな役・・・でのてんこ盛り!黒澤監督のなせる技でありましょう。そして三船おじさまの格好いいこと(ハート)、一見成り上がりの大富豪、庶民の敵と思われながらも職人上がりの筋金入り。チープな製品なんぞプライドが許さない骨太男。刑事たちも最初は、別世界の異人種のような目で見ているのに、権藤が愛用の工具の入った鞄を取りだしてから、空気ががらっと変わる。この瞬間から本当の意味で、みんなが権藤の味方になる。偏見の垣根を取り払うのは、結局のところ「人間」なのだ。
 人間権藤を知らないばかりに、格差のみで逆恨みして誘拐事件を起こす犯人の、最後の最後での対面もまたあっぱれ。何一つ凄むことなく犯人を陥落させてしまう権藤の存在感は、三船御大あっての迫力で、ますます惚れてしまいます。

 後半は犯人捜しに翻弄し、追いつめていく警察部隊が主役となっていく。それはそれで白熱した展開なのだが、すぱっと二つに分かれてしまう展開がちょっと個人的には惜しい。

虎の尾を踏む男たち ★★★

2004年05月31日 | 黒澤明監督作品
監督 黒澤明 
出演 大河内伝次郎、 榎本健一、 藤田進、 志村喬

 源頼朝に追われた義経一行は山伏に扮装し、富樫が待ち受ける関所突破を試みる。
歌舞伎の勧進帳は未見だが、主君を守るため、弁慶がまっさらな紙を勧進帳に見立て読み上げたり、富樫のするどいつっこみに間髪入れずに答えるところは見応えがある。
 しかしながらそれもDVDで字幕入りで見たからこそ。それがなければおそらく何を言っているのか理解不能な音の聞き苦しさと言葉の難しさ。

 初めて見る伝説のエノケン。ベタなほど表情がくるくる変わる。
大河内伝次郎の弁慶はどうなのだろう?私にはピンとこなかったが。義経役の岩井半四郎はほれぼれするような美しさ(一瞬見せる御尊顔にどきっ)

 黒澤作品としては正直面白いのかどうなのかよくわからなかった。

赤ひげ 

2004年05月15日 | 黒澤明監督作品
★★★★★
監督 黒澤 明 
出演 三船敏郎、加山雄三、山崎努、二木てるみ
1965年 日本

 保本登は医師見習いとして小石川診療所に住み込んだ。彼は、自分が出世街道からはずれたと落胆し、貧相階級の患者がひしめくこの診療所に回されたことに腐っていた。しかし彼はそこで運命の医師、通称「赤ひげ」と出会う。
 ここから追い出されることを願って、ことごとく赤ひげに反発する保本。しかし彼と一緒に患者の治療にあたっているうちに、その診察の的確さ、常に弱者の立場に立って治療する人間としての深さに次第に魅了されていく。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 黒澤映画はやはり時代劇が好き。黒澤と三船が組んだ最後の作品であると同時に、最後の傑作といわれるこの映画、実に面白かった。3時間なんてあっという間だった。

 「赤ひげ」は山本周五郎の原作も読んだし、NHKで小林圭樹主演のドラマも見たことがある。(これもなかなかいいドラマだった)

 三船 演じる赤ひげは実に堂々たる威厳をもち、貫禄充分。決して話の中心にはならないのに、物語をぴしっと締める存在感がある。華があって、実にいい役者さんだ。
 その大根ぶりがどうにもならない加山雄三も、黒澤映画になるとその馬鹿っぽさがいい味になっている。保本しかり、「椿三十郎」でもそうだった。

 話はともすれば人間の生き方、あり方を問う内容なので説教臭く嫌みになりそうだが、そこはところどころのユーモア・センスと手堅い脇役陣の描写でうまく逃れている。
 実は音が聞き取りにくいのでDVD字幕付きで見たのだが、赤ひげがちんぴら相手に大立ち回りを演じるところで、その都度字幕で(骨の折れる音)とご丁寧に説明が入るのには笑ってしまった。(・・・これは映画とはあまり関係ない話だが)

  後半の保本ととよの交流、とよが心の傷を癒し、少女らしさを取り戻していくまでがとても丁寧に描かれている。盗人少年ととよの哀しい交流、救いのない現実。しかし少年は命をとりとめ、真の医療に目覚めた保本の未来も晴れやかで清々しい。

生きる 

2004年05月10日 | 黒澤明監督作品
★★★
監督 黒澤明 
出演 志村喬、千秋実、金子信雄
1952年 日本

 今の今までただ無気力に公務員としての日々を過ごしてきた渡辺。ところがある日医師から胃ガンを宣告され、余命幾ばくもないことを知る。
 これまでの人生への悔恨、死への恐怖、嘆きの中で、渡辺は遺された人生を、公園を懇願する市民のために費やそうと決心する。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

死宣告されて初めて生きてることの意味、実感、価値を見いだそうともがく主人公渡辺。彼は多くの人間の公約数な姿である。
そうなってみなければ、頭では判っていても実感できないのは人間の性。
いつかは訪れる自分の死、だがそれは明日ではない、まだまだ先だと誰しも昨日までと同じ日々を繰り返す。

 渡辺の最後の行為は誰のためでもない、自分のため。公園を作ってほしいという人々のためでもなければ、みんなに賛辞されたいためでもない。自分という人間が生きた証、実感が欲しかっただけ。
 だから通夜の席での喧々囂々、最後には渡辺さんは立派だったねと涙した同僚たちも、愛情を受けながら父を全く理解していなかった馬鹿息子とかわりない。その場の感傷、明日になれば消えてしまう思い。

 ある意味、人は自分の幸せのために生きる。奇しくも最後の姿を見かけた警官が「うれしそうに歌っていた」と語ったように。
 笑って歌って死ねたなら、このうえない幸せな人生と言えるだろう。

 黒澤映画を代表する人間ドラマであるが、正直なところ私はこの手のおも~い作品よりも「椿三十郎」のような笑いのある時代劇の方が好き。胸にずっしり来るものはあるのだが・・・。

どん底 ★★★

2004年04月26日 | 黒澤明監督作品
監督 黒澤明 
出演 三船敏郎、左ト全、山田五十鈴

 ロシアの文豪M・ゴーリキーの映画化。
汚い木賃宿とその周辺のみというセット、舞台劇ならではのセリフの応酬。古い日本映画特有のセリフが聞き取りづらい状況はかなりつらい。

 圧倒的に素晴らしいのは山田五十鈴、東野栄治郎、上田吉二郎、二代目中村雁治郎などの脇役陣。あと忘れちゃいけない「ずびずば~」の左ト全。

 明日への希望がまったく見いだせないまさにどん底の日々を送る人々。 ラストの「でんでんつくつくでんでけでん♪」に人間のたくましさを見る。

蜘蛛巣城 

2004年04月15日 | 黒澤明監督作品
★★★★★
監督:黒澤明 
出演:三船敏郎、山田五十鈴、千秋実
1957年 日本

 鷲津武時は森のけしょう(もののけ)に出会ってから徐々に権力欲に取り憑かれ、狂気の世界へ。そして破滅する・・・。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 シェークスピアの「マクベス」を下敷きにした怪作。昔見た洋画の「マクベス」(たしかポランスキー?)より格段に面白い。

 つくづくモノクロームの映像は美しいと思う。
「椿三十郎」とはうってかわった三船敏郎のシリアス演技。本当に華のある役者さんだ。(今の日本の役者さんにはちょっと匹敵する人がいないのが残念)
 歌舞伎のようなオーバーアクトがこれほどに様になる役者も希有。お気に入りの志村喬もお約束の出演。山田五十鈴も不気味な地獄への道先案内人で迫力満点。

 森が動くシーンは「ロード・オブ・ザ・リング」よりも美しい。

 惜しむらくはセリフが聞き取りにくくて何を言っているか分からない点。非常に神経をとがらせるので疲れる。(黒澤映画に限らず、昔の日本映画に言えることだが。)ビデオではなくてDVDで字幕出しながら観ることが必要だ。

椿三十郎 

2004年01月09日 | 黒澤明監督作品
★★★★★
監督 黒澤明 
出演 三船敏郎、加山雄三

 黒澤映画をきちんと観ようと思い立った。しかし1960年以前の円熟期の作品限定で。正直「夢」など晩年の作品はきれいだがなんの感動もない。黒澤映画はモノクロ時代に限る!と何かの本で読んだのがきっかけ。 

 過去、「羅生門」や「七人の侍」をちらっと観たことはあった。が、気合いをいれて観たのはこの「椿三十郎」が初めてかもしれない。
 く~、面白いじゃないの!!
 
  カット、カットその瞬間がモノクロームの芸術写真を見ているよう。無駄なカットが一つもなく、陰影美も脱帽。
 
  三船敏郎ってこんなに凄い存在感がある役者さんだったのか~。世界の三船、その価値を今更ながらに思い知った。そしてなにより、役者をうまく引き出す脚本の素晴らしさ。あの大根加山雄三でさえ、その大根ぶりが生きている。
(若き雄三はちょっと一茂似)

 無頼漢、三十郎とお馬鹿な9人、浮世離れした奥方(しかし妙にするどい)、なんともおとぼけな敵方人質、一人シリアスな仲代達也。
 人物全てが愛らしい。

黒澤映画独特のユーモア、円熟の一本。三船共々、世界の黒澤に納得の一本!