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魔女っ子くろちゃんの映画鑑賞記録

映画大好き!わがまま管理人の私的な映画鑑賞記録です。名作・凡作関係なく、好き好き度★★★★★が最高。

ケス 

2004年01月03日 | け~こ
★★★★★
監督:ケン・ローチ 
出演:デイヴィッド・ブラッドリー、コリン・ウェランド、リン・ペレー
1996年 イギリス

 ケン・ローチのイギリス労働者階級に生まれた少年を見す目が好き。  装飾など一切を排除し、淡々と進む。現実は誰にもやさしくない。ビリーたちを取り囲む環境はどこまでも厳しく残酷である。それを肯定も否定もしないケン・ローチの作風は地味であるが真摯だ。

 ビリーに理解を示す教師役を除いて全て素人で撮ったという本作品、主演のデビッド・ブラッドリーが素晴らしい演技を見せてくれる。いや、これはもしかしてドキュメンタリーではなかろうかというほど。熱演、と言ってしまえば陳腐になってしまうほど自然。

 何に対しても無気力で投げやりなビリー。将来の夢や希望がないこの階級の子供たちの中にあっても、教師も手を焼く問題児。彼をいじめの標的にする、超自己チューな体育教師はまだ笑えるだけましと思えるほど、子供たちを取り巻く教師、親、大人たちは腐りきっている。
 明日への展望を何も見いだせない社会の腐敗のしわ寄せは、幼き者に容赦なく向かう。

 ビリーが初めて熱中し、情熱を傾けたハヤブサの調教。 「ハヤブサは人間に媚びないから好きなんだ」 それはこうありたいと願うビリーの心の叫びのようだ。

 目を輝かせて、情熱を抑えきることができずに、クラスメートの前でハヤブサの調教を説明するビリー。本当の感動はこうやって溢れ出てくるものだ。それを知っているだけに惨いラストは、出口のない当時のイギリスの状況を象徴している。

 でもあのビリーの静かに深く輝いた瞳に、希望を願わずにはいられない。