昔々、男の子と女の子がいました。生まれた時は互いのことを知らなかった二人ですが、何人かの犠牲を経て二人は出会い、堕落した日々を過ごし、おじいさんとおばあさんになりました。二人は何度か子宝に恵まれましたが、生まれた子供を「うるさい」という理由で捨て、毎回二人で口裏を合わし、無かった事にし続けた為、表向きは子宝に恵まれていませんでした。
ある日、二人は数年間行っていたひきこもりの生活を改善する為に家から外に出ることを決意しました。いざ外に出るには何かをしようと思い、おじいさんは室内のみで長い間過ごしていた為に溜まった鬱憤を晴らす為山へ、おばあさんは、着た服を前着た服の上に置き、それを繰り返し着る服が無くなったら一番下の服を着る事によって、自然洗浄気分という方法に、臭いの問題など様々な事に限界を感じていた為、川に洗濯に行く事にしました。
山に着いたおじいさんは、気を次々を斧でなぎ倒し、自分の自信をつけ自分の可能性を確信し、たまに襲ってくる熊をちぎっては投げ、首を刈っては投げを繰り返し、雄叫びをあげながら山中を駆け巡っていました。
おばあさんは川に着き、いざ洗濯を始めようと思い改めて洗濯物を見た所、溜め息も出ないほどのありえない量の洗濯物が視界に入った為、かなり落ち込み、悩みました。少し考えた後、洗濯物を持ち、川に着く前の状況からやり直しました。
そろそろ川に着くおばあさん。あと少しで川だというところでおばあさんは転んでしまい、持っていた洗濯籠を離してしまい、洗濯物を川に落としてしまいました。おばあさんは、失敗したなぁという顔をしながら、手はガッツポーズをしていました。
おばあさんが流れていく洗濯物を笑顔で眺めていると、上流からドンブラコドンブラコと大きな桃が流れてきました。しかし、同時に大量の洗濯物が流れている為、おばあさんは洗濯物に注意を奪われ、大きな物には気が付きませんでした。
大きな桃はおばあさんに気付かれないまま下流の方へと流れていきました。しかし、下流で待機していたボランティアの人達の協力もあり、もう一度上流から流れるチャンスを得る事が出来ました。
大きな桃の再チャレンジ、川の流れは最初の挑戦に比べると緩やかでした、おばあさんの流した大量の洗濯物が中流辺りで川の流れを防波堤のようにせき止めていた為でした。大きな桃は川の流れが遅い為、おばあさんの前に着いた時にはほぼ止まっていた状況でした。さすがにずっと目の前にあるのでおばあさんは大きな桃に気が付きました。
おばあさんは目の前にある大きな桃を、これから何が起こるんだろうと子供のような純粋な目をしながら眺めていました。
おばあさんが洗濯物を川に流してから数時間が経ち、いい加減おばあさんは今の状況に飽きてきました。そろそろ帰ろうとして、洗濯籠を持ってみたところ来る時は、背筋の筋トレをひきこももっている間毎日行っていたおばあさんでも辛かった重さの洗濯籠が驚くほどの軽さではないですか。ふと籠の中を見てみると、大量にあった洗濯物が一つもありません。もちろんおばあさんは自分がやった事を忘れています。おばあさんはこのまま手ぶらで家には帰れないと思い、仕方なく目の前の川にずっと浮いていた大きな桃を籠に入れ家へと向かいました。
その頃おじいさんは倒された木、倒された動物達を眺め、さすがにこれはヤバイかなと思い、証拠隠滅の為山に火を点け、一仕事終えたなという感じで額の汗をぬぐい、満面の笑顔で山火事をバックに家へと向かいました。
おばあさんが大きな桃を持ち、家へ向かおうとして川から離れたところ、肩をポンポンと叩かれました。
「おばあさん、ちょっと忘れ物ありませんか?」
とよくいるオバサン風の人言われ、おばあさんの持っていた桃を指差しました。
「おばあさん、自分が何したか分かっているね?ちょっと来てくれるかな?」
戸惑ったおばあさん、このままでは捕まってしまう。何かこの場から脱出する方法を考えなくてはと思い、持っていた桃をオバサンの頭部目掛けて全力投球。見事倒す事が出来ました。
「その時の感激・感触が忘れられなかった」
後々、昔の思い出をこう語るおばあさんが家に向かいながら、帰りに出会った人々全てに桃を全力投球をしたことは言うまでもありません。
一方おじいさんは、自分の犯した山火事に対してもの凄い罪悪感に襲われ、いてもたってもいられなくなり、大声で「俺はやってない」と叫びつつ家に着きました。
家に入ってみるとおばあさんはまだ帰っていない様子でした。お茶目なおじいさんは、後々帰ってきたおばあさんを驚かせようと思い、ドッキリを仕掛けようと行動しだしました。
家に向かいつつ桃の全力投球を続けるおばあさん、この桃の全力投球の最後の標的となったのはおじいさんでした。
おばあさんが家に着き、なぜか燃えている家の前で立ち尽くしていると、おじいさんがやってきて
「どう、驚いた?」と無邪気な笑顔で言ってきました。おばあさんは何の迷いも無く持っていた桃をおじいさん目掛け全力投球。するとおじいさんは驚くような薄さまで潰れてしまいました。
このままではおじいさんが死んでしまうと思い、急いで湯を沸かしおじいさんにかけました。すると紙キレのようなおじいさんは、約3分程で元のおじいさんに戻りました。
先ほど復活したおじいさん、大きな桃を持つおばあさんは、おじいさんの茶目っ気の為燃やされた家の前にて呆然と立ち尽くしていました。
その夜、無事前住んでいた人の除去作業も終わり一件落着した二人は、新しい家にておばあさんの持っていた大きな桃を眺めていました。二人とも桃を眺めながら何かい言いたそうな感じでしたが、お互い言い出せず気まずい空気のまま時間が過ぎていきました。
数時間が経過し、お互い限界だと言う意思を感じ取り、言いたい事を同時に言うと言うことになりました。せーのという掛け声のあと、二人の口から発せられたのは共に「桃が嫌い」という言葉でした。
その後の二人にはもはや会話などは必要ありませんでした。
おじいさんは、近くにあった棒を拾い、素振りを始めました。おばあさんは刀を作り始めました。二人とも今まで生きてきた中で一番熱中している時間でした。ほとばしる汗。まさに青春という感じでした。
それから数年が経ちました。おばあさんはついに最高の刀を完成させました。おじいさんの方は、橋を通る武士達を倒しては刀を奪い、ついに1000本の刀を集めました。
おじいさんはおばあさんから刀を受け取り、いざ桃を斬りに行こうとした所、そこにあったはずの桃がありませんでした。
おばあさんは口笛を吹きました。
しばらく経ち、二人の元にイヌ・サル・キジの三匹が到着しました。しかし、おばあさんはサルの到着がいつもよりも遅い事にご立腹の様子。サルはボス猿の毛づくろいをしていて抜け出せなかったと言い訳をしましたが、おばあさんの合図と共におじいさんの刀が振り下ろされました。
その光景を見ていたイヌは心底震え上がりました。おじいさんは手違いでサルだけでなく、キジも斬っており、その事に対しおばあさんは「よくある、よくある。」と軽い感じで済まし、今焼き鳥を食べているのです。
焼き鳥を食べている二人に、桃の行方を調べてこいと命令されたイヌは、それはそれは必死でした。全ての集中力を鼻に集め、桃があった場所の臭いをかぎました。今までに無いほどの感が研ぎ澄まされたイヌは、臭いをかいだだけで桃の居場所が分かりました。イヌはその居場所を二人に伝えました。「あ、それ知ってる。」というおばあさんの発言、その後イヌが見た最後の物はおじいさんの振り下ろした刀でした。
焼き鳥を全て食べた二人は、約二匹の動物の肉等で作った肉団子をきびだんごと名づけ、それを持ち鬼ヶ島へと向かいました。
その頃鬼ヶ島では、おじいさんとおばあさんが居場所を突き止め、こちらへ向かっているという報告を聞いた桃太郎が震えていました。自力でおじいさんとおばあさんの家から逃げ出した桃太郎を鬼たちは優しく迎えてくれました。しかし平和な時間にも終わりが近づいていました。鬼たちは桃太朗を守る為、臨戦態勢でおじいさんとおばあさんが来るのを待ちました。
鬼ヶ島の周りの海が大荒れになった夜、見張り役の鬼の断末魔の叫びとともに二人が来たことを確信した桃太朗は桃の中に隠れました。
桃に隠れてからどれくらいの時が経ったのでしょうか、現在どういう状況かと桃太郎は意を決し桃から出てみました。すると鬼の長が目の前に立っていました。桃太郎は助かったんだと安心した瞬間、鬼の長の首が桃太郎の方へと転がりました。鬼の長の体が倒れ、桃太郎から見えた景色は平和だった鬼ヶ島ではありませんでした。ふと背中に殺気を感じ、後ろを振り返ってみると鬼の返り血を浴びた二人が笑顔で立っていました。
「桃から生まれたから、お前の名前は桃太郎だ。」
そう言い、きびだんごを桃太郎に食べさせました。
鬼ヶ島から無事家に帰った二人は、平和な毎日を過ごしましたとさ。
めでたし、めでたし。