「つくつく日記」

NGO代表、空手家、学校の講師とちょっと変わってる私の日々の雑感をお届けします。

台湾への旅 「台湾総統府で出会った蔡さん」~その2~

2005年05月08日 | 「台湾への旅」

蔡さんの話は、現在の日本に対する想いや、靖国問題について進んでいきます。

「現在の日本は大切なものを見失っている。経済発展をしたのは良いが、日本人らしい誠実さ、勤勉さを失っている。もっと胸をはって堂々として欲しい。中国に対してもなぜあんなに弱腰なのか?韓国に対しても同じ。今起こっている反日運動なんていうのは台湾ではありえない。」

「中国政府と韓国政府がやっていることは内政干渉であり、もし日本が同じように教科書修正を中国に要求したら絶対に聞き入れないでしょう。内政干渉と言って脅してくるはず。日本は政治家が弱い。昔の日本人は誇りを持って、しっかりと自分の意見を言える政治家が沢山いた。」

「もちろん、植民地だから悪いこともあったけど、台湾にも台湾の開発に尽くした日本人が多くいた。今の台湾の基礎は日本が作ったんだよ。八田興一先生(鳥山頭ダムを作った方)は台湾人すべてに感謝されているし、尊敬をされている。そういう人たちを忘れてはならない。」

「靖国問題もそう。あんなのは外国に批判される事ではない。内省人の政治家が靖国神社に御参りに行くと批難する外省人が沢山いる。靖国神社には台湾人25,000人が日本兵として戦って祭られているんだ。その時は台湾は日本だったんだから靖国に祭られているんだし、御参りしたっていいじゃない。」

話を要約するとこのような感じでした。これをもし日本人が言っていたら「右翼」というレッテルを貼られ、植民地の正当化をするな!等批判されると思いますが、統治を受けた台湾の方が言っているので重みが違います。そして、日本にもこうあって欲しいという例として、李登輝前総統のあるエピソードを紹介してくれました。

台湾には国民党と民進党という二つの大きな政党があります。国民党=外省人系、民進党=内省人系として言われていますが、蒋介石率いる国民党が独裁政治を行っていました。この、いわゆる外省人たちは、傍若無人な振る舞いを繰り返したそうです。

これに対し、日本統治時代を懐かしむ声や国民党へ対する本省人の怒りが、1947年2月28日に爆発。台湾全土で民衆が蜂起し、蒋介石はこれを武力により鎮圧しました。これが2.28事件と言われるもので、2万8千人に上る犠牲者が認定されています。

そして、この弾圧によって特に親日の知識階級は徹底して弾圧された為、現在の台湾では80歳以上の学者が極端に少ないそうです。

李登輝前総統は内省人でしたが、国民党に所属し、中から国民党を変えようとしてきました。そして総統に就任後一番最初に行ったことは台湾国民に対する2.28事件に関する謝罪でした。この行動は多くの台湾人に受け入れられ、国民党に対する見方を変えるとともに、李登輝前総統に対する支持を絶大なものにしたのです。

蔡さんはこの李登輝前総統のエピソードを通して、政治家としてのあるべき姿、トップとしての責任を伝えたかったのではないでしょうか。そして押すべきときは押し、引くべき時は引く、時勢を見極める能力も必要だと言う事が言いたかったのだと思います。

今の日本の政治家にその力が備わっているのかとどうか、、。

そして、蔡さんは最後に日本人へのメッセージとしてこのような事を投げかけてくれました。 

「日本の統治を50年間受けたにも関わらず、台湾には親日家が多く、当時の日本人の先生と台湾人の生徒は今も深い交流が続いている。いわば、台湾は世界で一番の親日国家。日本の文化も台湾にしっかりと根付いている。しかし、戦後の日本は中国共産党と国交を樹立し、台湾は日本に見捨てられた。」

「反日で共産国家の中国と国交を結び、親日で民主国家の台湾は日本から国として認められていない。それが私は一番悲しい。多くの台湾人もそう思っています。日本のみなさんにはこの事についてもっと良く考えて欲しい。」

中国で台湾を武力制圧するための「反国家分裂法」が制定され、反日運動が広がる今、そんな蔡さんの問いかけを私たちはどう考えていけば良いのでしょうか。

多くの問題提起と新たな日本・台湾の歴史を知り、もっと両国の関係について勉強し、考えてみたいと思いながら蔡さんに別れを告げ、台湾総統府をあとにしました。

次回は台北の「私立伯大尼育幼院」訪問について報告します。

台湾関連記事 「国民新聞」 より

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おもしろかった (もりいてつや)
2006-07-24 17:53:41
台湾関連の記事、とてもおもしろかった。

こういうのは便利だね。

批判されていた「台湾論」も読んでみようと思う。
返信する