竹林には細いタケノコが数多く出ていて、ソウと母のユウはタケノコの根元を足で踏み倒しては背負い篭の中に入れた。
そんな作業の中でも、ソウは先ほど出会った娘の姿が頭から離れなく、黙り込んだままだ。
背負い篭の中に小さくて細いタケノコが10本余り貯まった。
「今日はこれだけにして帰ろう。」
ユウが言って帰ることになった。
途中、あの娘に出会うのではと期待半分、娘に自分を見られたくない気持ち半分で、先ほど通った堤に出た。
しかし、そこにはもう娘の姿はなかった。
ソウは気が抜け、急に疲れが出てきた。
夕飯後もタケノコを煮た良い香りが家の中に漂い、横になっているソウはその香りの中で、閉じた瞼に娘の姿を追ってうとうとと眠りに付いた。
田の稲が青々と波打つ暑い夏がやってきた。
地主のサダイがソウの家にやってきた。
「のう コキラ、この前頼まれていたソウの件だが。
棟梁に話したら、連れて来いということだ。
ソウは利発な子だから、きっと気に入られると思う。
この夏の終わりにでも、ワシが棟梁のところへ連れて行ってやる。」
家の隅で柴を積んでいるソウの耳に地主の話が入ってきた。
地主が帰って、待っていたように父コキラに訊ねた。
「おとう、地主さんは何を言いに来たんだ?」
「ソウよ、お前はもう10歳になった。
家で働くには田畑が少なすぎる。ワシとジンだけで十分だ。
そこで地主さんにお前の奉公先を探してもらっていたんだ。
町の大工の棟梁に頼んでくれたようだ。」
ソウは急に悲しくなった。
これまで父や母そして兄と別れて暮らすことなど考えてもいなかった。
しかし、隣のヤスは去年の秋に、町の着物の店に奉公に出ている。
最近、急に食べる量が増えてきたソウを、この家では養いきれないのは薄々気付いていた。
そんな作業の中でも、ソウは先ほど出会った娘の姿が頭から離れなく、黙り込んだままだ。
背負い篭の中に小さくて細いタケノコが10本余り貯まった。
「今日はこれだけにして帰ろう。」
ユウが言って帰ることになった。
途中、あの娘に出会うのではと期待半分、娘に自分を見られたくない気持ち半分で、先ほど通った堤に出た。
しかし、そこにはもう娘の姿はなかった。
ソウは気が抜け、急に疲れが出てきた。
夕飯後もタケノコを煮た良い香りが家の中に漂い、横になっているソウはその香りの中で、閉じた瞼に娘の姿を追ってうとうとと眠りに付いた。
田の稲が青々と波打つ暑い夏がやってきた。
地主のサダイがソウの家にやってきた。
「のう コキラ、この前頼まれていたソウの件だが。
棟梁に話したら、連れて来いということだ。
ソウは利発な子だから、きっと気に入られると思う。
この夏の終わりにでも、ワシが棟梁のところへ連れて行ってやる。」
家の隅で柴を積んでいるソウの耳に地主の話が入ってきた。
地主が帰って、待っていたように父コキラに訊ねた。
「おとう、地主さんは何を言いに来たんだ?」
「ソウよ、お前はもう10歳になった。
家で働くには田畑が少なすぎる。ワシとジンだけで十分だ。
そこで地主さんにお前の奉公先を探してもらっていたんだ。
町の大工の棟梁に頼んでくれたようだ。」
ソウは急に悲しくなった。
これまで父や母そして兄と別れて暮らすことなど考えてもいなかった。
しかし、隣のヤスは去年の秋に、町の着物の店に奉公に出ている。
最近、急に食べる量が増えてきたソウを、この家では養いきれないのは薄々気付いていた。
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