娘が近いうちに、格安スマホにすると言う。
すると、今まで利用していた家族間割引の無料電話が使えなくなる。
「お母さん、スマホにして」
そうすれば、ライン電話を利用できるからだ。
ガラケーで十分だったし、気に入っていたので抵抗したが無駄だった。
auからクーポンも届いていたので、スマホを買いに行くことにした。
一人では不安だったので、娘に同行してもらった。
その日は、雨。
auショップに向かう途中で、無人販売所の大根とねぎを買った。
その時は、大根が鉛のように重く体力を奪っていくことになるとは想像もしなかった。
雨の中、歩くこと30分、ショップに着いた時には疲れていた。
「ガラケーからスマホに替えたいんですけど」
「予約がないと、厳しいですね。明日、予約取られますか?」
「娘に来てもらっているので、今日でないとだめなんです」
「・・・・イズミヤのショップの方に行かれたらどうですか」
仕方がないので、イズミヤのショップに行くことにした。
ショップに着いた時には更に疲れていて、頭がぼ~としていた。
ショップで、プランやオプションなどの説明を受け、
いろいろ勧めらたが、もう判断力も無かった。
娘が不要なオプションを断ってくれ、最低限のプランで契約した。
スマホの基本操作を教えてもらって、ショップを出たのは2時間後だった。
これから、また30分以上傘をさし、
大根とねぎを持って歩いて帰るのかと思うと心が消えてしまいそうだった。
ねぎも数本ちぎれていた。
わたしのショップでの優柔不断さや、挙動不審な様子に
イライラしていた娘と疲労困憊しているわたし。
「お腹もすいてるし、イライラするから何か食べて帰ろう。
とにかく、休憩しよ」
カフェで、エビとアボガドのこっぺぱんのようなものを食べた。
スマホの基本操作が覚えられない。
娘は、ずっとイライラしている。
「メールの新規作成はどうすればいいん?」
「そこのアイコン、タップすればいいんや」
「アイコンって、どれ、タップって何?」
「これ」
「吹き出しに+ って、こんなんわからへんやん。
だれや、こんなわかりにくいアイコン、デザインしたのは、
ここは、吹き出しに・・・ やろ」
もう、スマホに八つ当たりするしかなかった。
暗い雨の中、とぼとぼと歩き始めた。
もう、娘とは口も聞きたくなかった。
(誰のせいで、こんなしんどい思いしなあかんの。
ガラケー好きやったのに!!!
やさしく、スマホの使い方教えるのが普通やろ。
理不尽や!!!)
久しぶりに怒りの感情が湧き上がってきた。
100均で、適当な保護シートと充電ケーブルを買って帰った。
帰宅してから、シートはサイズが少し大きかったので、
カッターで切り埃が入らないように浴室で貼った。
(どんなもんだい! ちゃんと貼れた。上出来やん。
娘は、自分では上手く貼れないので、プロに頼んでいる)
それから、スマホに四苦八苦。
いじってたら、友人に電話がつながる。
電話がかかってきても、受話器が見えないのでとれない。
ストレス以外の何物でも無い。
取りあえず、娘とライン電話できるようになり
らぐさんの様子もビデオ電話で知らせることができるようになった。
だが、「電話を切るよ」と言ってからすぐには切れない。
受話器が出てこないのだ。
使いこなすのに、どれだけの時間が必要なんだろう。